AIの狙い打ちで税務調査の追徴金が過去最高!KSK2は2026年9月24日稼働、国税庁のAI活用と必要な実務対応を解説

AIによる申告分析の本格化に加え、国税庁の基幹システムが2026年9月24日に次世代版「KSK2」へ更改されることで、税務調査は大きな転換期を迎えています。実際、令和6事務年度は、所得税の追徴税額が1,431億円と過去最高を記録し、法人税でも実地調査件数が減少する反面、追徴税額は3,407億円に増加しました。
これらの数字が示しているのは「数多く調べる方針」から「AIで絞り込み、重点的に調査する方針」への変化です。本記事では、AIやKSK2の導入が税務調査に与える影響や、経営者・個人事業主が今すぐ備えるべき具体的な対策について紹介します。
1. 件数は減っているのに追徴税額は過去最高 数字が示す「狙い打ち時代」の到来
国税庁によると、令和6事務年度に行われた法人税の実地調査件数は前年比で減少しているにもかかわらず、追徴税額は過去最高を記録しています。これが何を意味しているのか解説します。
所得税の追徴税額1,431億円・法人税3,407億円 令和6事務年度の最新統計が示す異変
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度の調査は、税務調査のあり方が大きく転換していることを示しています。所得税に関しては、調査等件数が73.6万件であり、前年比では21.7%増加しました。また、追徴税額は1,431億円に達し、過去最高を記録しています。
一方で、法人税の実地調査件数は5万4千件と、前年比7.4%減少しました。ここだけを見ると「調査は減っている」と感じるかもしれませんが、注目したいのは内容です。法人税の追徴税額は3,407億円であり、前年比6.6%増加しているのです。
税務署は以前のように数多く件数をこなす方針から、より見込みの高い対象に絞り込んで重点的に調査する方針へ移行していることが明確にわかります。これは、単に調査方針を変更しているだけではなく、背景には2023年から本格活用が始まったAIによる申告分析があります。
AIを活用すると、膨大な過去データや同業比較を瞬時に行い、「不自然な申告」を高精度に抽出することが可能です。つまり、令和6事務年度の統計は「税務調査が減った」訳ではなく「無駄が減った」ことを示しています。
税務調査はランダムに選ばれるのではなく、AIの分析によって不自然な申告がより高い確率で狙われる時代に入っているといえます。
AIによる調査対象の選定やKSK2の税目横断分析が進むなかで重要になるのは、日々の経理を「説明できる状態」に保つことです。書面添付制度の活用や経理体制の点検、9月24日の様式変更への対応は、顧問税理士と早めに相談して進めてください。まだ顧問税理士をお持ちでない場合は、ビスカスの税理士無料紹介サービスをご活用ください。
令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況|国税庁
【報道発表資料】令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要|国税庁
国税システムの更改について|国税庁
国税システムの更改に伴うメンテナンス時間について|e-Tax(国税庁)
法人数は10年で13%増なのに実地調査件数は30%減 実調率1.7%という現実の意味
さらに注目したいのは、法人数と実地調査件数の推移です。この10年間で国内の法人数は約13%増加している一方で、法人税の実地調査件数は約30%減少しています。
実調率は1.7%であり、数字上は50年に1回の頻度です。この数字から安心してしまう経営者がいるかもしれません。しかし、税務調査の件数が減っているのは、税務署が手を抜いていることが原因ではない点に注意が必要です。
これは、反対に調査対象を厳しく選別していることを意味しています。AI分析によって、多額の追徴を確実に狙える法人が優先的に選定される仕組みへ変化しているのです。
1件あたりの追徴税額が倍増している理由 「数打つ」から「確実に仕留める」戦略への転換
税務調査の件数が減少しているにもかかわらず、追徴税額が増加しているのは、1件あたりの追徴税額が大幅に跳ね上がっていることを意味します。これは国税庁の戦略を「数」から「質」へ転換し「確実に仕留める」効率化が進んだ結果といえます。
従来の税務調査では、経験豊富な調査官の経験や勘への依存が大きかったのが、AI導入後は、膨大な申告データを横断的に比較し「統計的な異常」を抽出できるようになっているのです。「たまたま選ばれる」のではなく、不自然な申告が選定理由とされます。
この内容を自社のケースで確認したい方へ
マネーイズムの運営元・株式会社ビスカスが、全国の税理士を無料でご紹介しています。
どれにあてはまりますか?(入力は30秒)
累計 44万件
登録税理士 8,758人
相談・紹介料 無料
※ 実績値は同社調べ(累計ご紹介実績2026年1月時点/登録税理士数2026年10月時点)。
2. AIはすでに動いている 税務調査の対象選定に何が起きているのか
AIはすでに、税務調査の対象選定に導入されています。ここでは、AIを活用する仕組みや、AIが「異常値」として検出するパターンなどについて解説します。
国税庁が公式発表した「AIを活用して調査先を選定」の意味と仕組み
国税庁は2023年より、所得税調査においてAIを本格活用していることを公表しています。申告情報や過去の調査結果などをもとに申告漏れの可能性が高い納税者を判定し、職員が調査対象を選ぶ参考にしています。申告データを機械学習によって分析し、申告漏れや不自然な計上の可能性が高い案件を抽出する仕組みです。
ただし、AIが実際に税務調査を行う訳ではありません。AIの分析を参考に、調査官は自分の経験と勘を踏まえて、調査対象を絞り込みます。これにより選定精度が大幅に向上しているのです。
AIが「異常値」として検出するパターン 同業平均と乖離した経費・売上の急変・税目間の矛盾
AIが抽出するのは、以下のようなパターンです。
同業他社との乖離:同業種、同規模の企業と比較して、経費率が異常に高い場合、AIは瞬時に抽出します。
売上の急変:過去数年間の申告データと比較して売上が急減している場合に、計上漏れを疑われる可能性があります。
税目間の矛盾:法人税や消費税、所得税など、異なる種類の税金をまたいで矛盾がある場合、AIは即座に抽出することが可能です。
このように、AIは申告データや過去の調査結果、業種別の傾向などを横断的に分析し、調査の優先度が高いと考えられる対象を抽出する役割を担っていると考えられています。
2025年7月からは相続税にもAI分析が本格導入 対象が拡大し続けている現状
AIの活用は所得税から始まりましたが、2025年7月からは相続税の調査においても、導入されています。相続税申告書をAIが分析し、過去の不正や申告漏れの事例パターンと照らし合わせて、スコア化する仕組みです。
相続税においては、現金や預貯金、不動産、有価証券をはじめ、名義預金やタンス預金、生命保険、債務関係までAIの分析から逃れるのが難しくなっています。そのため、漏れなく正確に申告することが重要です。
3. 2026年9月24日「KSK2」稼働でさらに何が変わるのか
「KSK」とは「国税総合管理システム」の略称です。全国の税務署や国税局をオンラインでつなぎ、納税者の申告情報や納税履歴、調査情報などを一元的に管理するために整備された国税庁のシステムです。
これまで税務行政のデジタル化を支えてきた中核インフラであり、申告受付や情報照会、調査支援など幅広い業務に活用されてきました。そして国税庁は、令和8年(2026年)9月24日に国税システムを次世代版「KSK2」へ更改すると公表しました。更改作業に伴い、e-Taxは9月19日(土)0:00から9月24日(木)8:30まで、および9月26日(土)0:00から24:00まで利用できません。申告・納税の期限が近い場合は、この期間を避けたスケジュールを組む必要があります。
税目縦割りの壁が崩れる 法人税・所得税・消費税・相続税が一元管理される衝撃
従来のKSKでは、納税者情報は法人税・所得税・消費税・相続税など、複数の税金についてはそれぞれ管理されていました。しかし、KSK2では、複数の税金をまたいで横断的に扱える点がもっとも大きな特徴です。
これにより、たとえば、これまでは法人税の申告で発見されなかった違和感が、消費税データとの照合で見つかる可能性があります。そのほか、法人側の支払情報と個人の所得申告や資産移動まで横断的に確認されることも考えられます。
また、この機能を活用すると精度の高い調査対象の抽出もできるでしょう。
調査官が調査先から直接データベースにアクセスできるようになる 調査スピードと深度の変化
これまでは、たとえば調査官が法人税の税務調査に行った際に、所得税について不明点があっても、その場で申告内容を確認できませんでした。しかしKSK2が導入されれば、複数の税金についての情報を調査先からでも参照できるため、その場で正確な申告内容を把握できます。
さらに、インターネットを介して外部データを取り込み、調査に活用することも可能です。このような機能の追加によって、一層精度やスピードが向上することが期待されています。
インボイス・電子帳簿保存法はKSK2のデータ収集基盤だった 紙提出でもAI-OCRで読まれる現実
KSK2への移行は、2023年10月に始まったインボイス制度や、2024年1月に完全施行された電子帳簿保存法とも関連しています。
たとえば、納税者が電子データで保存し、国税庁がデータで処理する「デジタル完結」の流れが確立される流れです。これらの制度改正は、KSK2をフル活用できるデータ基盤を整備するための、段階的な施策であったと考えられています。
また、KSK2の運用においては、AI-OCRなどの文字認識技術を活用したデータ化が進むと考えられています。「紙で申告しているから、デジタル調査の影響は受けない」といった考えは通用しません。紙で提出した申告書でも、AI-OCRによって自動的にデータ化され、分析対象とされるのです。
納税者側にも実務対応が必要 申告書の様式変更・お問い合わせ番号13桁・電子交付の一括同意
KSK2への更改は、税務署の内部だけの話ではありません。国税庁は、納税者側に影響する変更点をあらかじめ公表しています。
申告書等の様式が変わります。一部の書面の申告書や申請・届出書、法定調書の様式が新しくなり、申告書の控用はなくなり、配色は原則として白黒になる予定です。受付開始後は最新の様式で提出する必要があるため、手元にある古い用紙をそのまま使わないよう注意してください。
納付書の「整理番号」欄(8桁)が「お問い合わせ番号」欄(13桁)に変わります。税務署から送付される通知等にもこの13桁の番号が印字され、問い合わせの際に伝えることで照会がスムーズになります。所得税徴収高計算書も同様に様式が変更されます。
処分通知等の電子交付は「事前の一括同意」方式に変わります。9月24日から電子交付の対象が拡大されるとともに、同意方法が「申請等の都度の同意」から「事前の一括同意」に変更されます。これまで電子交付を利用していた方も含め、9月24日以降にe-Tax上で改めて一括同意の手続が必要です。
このほか、e-TaxのIPアドレスが固定から動的(接続のたびに変化)に変わるため、IPアドレスを指定して接続している場合は9月24日以降URLでの接続に切り替える必要があります。また、税務署から送付される文書や納税証明書等で使用する漢字はJIS第1水準から第4水準までとなり、旧字体などの一部は字形が置き換わる場合があります。
いずれも「知らないまま当日を迎えると慌てる」類の変更です。顧問税理士や経理担当者と、9月中に対応状況を確認しておくと安心です。
4. 経営者・個人事業主が今すぐすべき具体的な対策
ここでは、経営者と個人事業主が今すぐするべき具体的な対策について解説します。
AIにフラグを立てられやすい申告の特徴 経費の業種平均乖離・雑費多用・売上期ズレを点検する
AIにフラグを立てられやすい「経費の業種平均との乖離」「雑費の多用」「売上計上時期のズレ」を点検しましょう。
経費:業種ごとの平均的な経費率と大きく乖離している場合、フラグが立ちやすくなるため、平均から大きく乖離していないかを確認します。とくに経費が多いときは、証拠の書類を保管しておくことが大切です。
「雑費」の多用:内容が不明確な雑費が多いと、AIに「説明できない経費を隠蔽している」と判断されやすいため、適切な科目に振り分けます。
売上の期ズレ:フリーランスや個人事業主に見られやすい誤りです。売上は発生主義で計上しましょう。入金ベースで売上を計上していると、AIの分析で異常を検出されやすくなるのです。
国税庁は、申告漏れの可能性が高い納税者の選定にAIを活用しています。結果として、実地調査件数の減少、1件あたり追徴税額の増加といった傾向が表れています。AIに選ばれる前に、防衛策として申告内容を点検することを習慣にしましょう。
書面添付制度の活用 税理士の一言コメントがAIの「不自然」判定を抑制する理由
「書面添付制度」は、税理士が申告書を作成した際に、根拠や申告内容の判断プロセスを記載した書面を申告書に添付できる仕組みです。税理士が「なぜこの数字になったのか」を詳しく記載した書面を添付することで、AIがフラグを立てた場合でも、調査官が記述を見て「納得」すれば、税務調査を回避できる可能性が高まります。
書面を添付していると、税務調査に入る前に、税務署から税理士に連絡が入り、税理士からの説明によって、税務調査が省略されるケースもあります。このように、適切な書面添付は調査リスクを低減できる可能性があるのです。
電子帳簿保存・インボイス対応・日次入力の徹底 「説明できる状態」を日常にする経理体制づくり
進化していく税務調査に対応するためには「経理の透明性」が重要です。
電子帳簿保存への対応・インボイス制度への対応・日次入力の徹底を行い「説明できる状態」を習慣にしましょう。
電子帳簿保存への対応:電子取引における電子データについては、電子帳簿保存法に対応する義務があります。しかし同時に、電子データとして証拠を保全することは、自社にとっての防御にもなります。取引の電子データを日常的に保管しておくことで、調査が入った際に「説明できる書類がない」といった事態を避けられるでしょう。
インボイス制度への対応:仕入先からの適格請求書(インボイス)を保管しておきます。消費税の仕入税額控除を適用する場合、KSK2の税目横断チェックで不整合が検出される可能性が高まります。
日次入力の徹底:会計ソフトなどを用いて毎日の取引をその日のうちに正確に入力することも大切です。日次入力は人的なミスを防ぎ、データの整合性を保つための基本です。月末や決算前の一括入力では、記憶が曖昧でミスが生じてしまい、AIに見抜かれて一貫性のないデータと認識されてしまう可能性があります。
AIやKSK2の活用によって税務調査の制度やスピードがますます向上することが予測されています。複数の税目を横断したデータの照合やAIによる分析が行われるため、企業はこれまで以上に正確で整合性のとれた経理処理を心がける必要があります。
まとめ
令和6事務年度では、所得税の追徴税額が1,431億円、法人税の追徴税額が3,407億円と高水準を記録しました。背景には、AIの分析による対象選定の高精度化があります。調査の件数を増やす方針から、データ分析によって確度の高い対象を狙う方針へ転換しています。
さらに、2026年9月24日にはKSK2が稼働し、税目横断分析や調査のリアルタイム化が進む見込みです。あわせて申告書等の様式変更、納付書の「整理番号」から「お問い合わせ番号」(13桁)への切替え、処分通知等の電子交付における事前の一括同意など、納税者側にも手続の変更が生じます。これから経営者・個人事業主に求められるのは、調査を恐れることではなく、数字の整合性を保ち、いつでも説明できる状態を整えることです。AI時代の税務調査における最大の防御策は、日々の正確で透明性の高い経理体制にあります。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
新着記事
人気記事ランキング
-
2026年10月1日の酒税改正、ビールとチューハイはいくら変わる?加熱式たばこの値上げも税理士に聞いた
-
貯蓄「平均2,059万円」に届かない世帯が3分の2——中央値1,264万円との795万円差はどこから生まれるのか
-
平均給与は1.9%増、源泉徴収された所得税は17%増。なぜ?今年の年末調整で起きることも税理士に聞いた
-
アジア大会の報奨金、五輪と違って税金がかかる?ぷよぷよ11歳金メダリスト「報奨金なしの見通し」から税理士が解説
-
100歳以上が初の10万人超え、親100歳・子80歳の「老老相続」で税金はどうなる?税理士が解説
-
元税務署職員が競艇に8億6,000万円、脱税1億3,500万円か。税理士「使った額はそのまま引けません」
-
プルデンシャル生命に業務停止命令、解約したら税金は?ドル建て保険は円安だけで課税も、税理士の見解は
-
新型iPhone、税込40万円超でも会社で一括経費にできる?「30万円→40万円」に変わった新基準を税理士が解説
-
「節税しただけ」なのになぜ逮捕?エンジェル税制、節税と脱税の境界線
-
全東信の未入金、今期の損金にできる?決算月で分かれる境目を税理士が解説



