新型iPhone、税込40万円超でも会社で一括経費にできる?「30万円→40万円」に変わった新基準を税理士が解説

9月10日午前2時(日本時間)、Appleが特別イベントを開催し、iPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro Max、そして初の折りたたみモデル「iPhone Duo」を発表しました。
Apple Storeの価格はProが税込219,800円から、Pro Maxが239,800円から、Duoが364,800円から。最上位のDuo 2TBは574,800円、Pro Maxの2TBも449,800円に達します。
社用スマートフォンとして会社で買うなら、気になるのは「その年に全額を経費にできるのか」です。「30万円未満が一括経費の上限」という知識は、2026年4月以降は古くなりました。
店頭の値札が税込40万円を超えていても、一括で落とせる場合はあるのでしょうか。税理士に聞きました。
一括で経費にできる上限は、40万円未満に上がっている
中小企業者等の少額減価償却資産の特例(租税特別措置法第67条の5)は、令和8年度税制改正で取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。適用されるのは令和8年4月1日から令和11年3月31日までの間に取得して事業の用に供した資産からです。
判定は事業年度ではなく取得日ですから、9月18日発売のProシリーズも、10月23日発売のDuoも、40万円未満の基準で判断します。利用できるのは青色申告書を提出する一定の中小企業者等で、今回の改正では対象法人の従業員数基準が原則500人以下から400人以下へ縮小されました。年間300万円までという上限があり、確定申告書等への明細書の添付も必要です。
たとえばiPhone Duoは税込364,800円で、税抜経理なら取得価額は331,636円です。旧基準の30万円未満には収まりませんが、新しい40万円未満の基準なら対象になり、事業の用に供した期に全額を損金にできます。通常の減価償却と比べて損金算入を前倒しでき、その期の税負担を抑えられるのが特徴です。ただしこれは原則として税負担の時期をずらす効果であり、取得価額を超える損金が生まれるわけではありません。なお300万円の枠は端末専用ではなく、その事業年度に特例を適用する資産全体で使います。ほかにこの特例を使う資産がなければ、35万円の端末で8台分という計算になります。
値札が40万円を超えても、税抜経理なら特例が使える
40万円未満かどうかは、自社が採用している経理方式で判定します。税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額です。このルールは今回の改正では変わっていません。
税込価格でいえば、44万円未満がひとつの目安です。iPhone 18 Proの2TB(税込429,800円)は、税抜経理なら390,727円となり40万円未満に収まります。一方、税込経理では429,800円のため対象外です。同じ端末でも、経理方式によって特例を使えるかどうかが分かれます。
これに対して、Pro Maxの2TB(税込449,800円)、Duoの1TB(税込469,800円)と2TB(税込574,800円)は、税抜でも40万円以上となるため、経理方式にかかわらずこの特例は使えません。
なお、免税事業者は税込経理しか採用できないため、税込金額で判定します。また、取得価額には本体価格だけでなく、事業の用に供するために直接要した費用も含まれます。本体価格だけでは40万円未満でも、取得価額に含める費用によっては基準を超えることがあります。
10万円・20万円・40万円の3つの境目で選択肢が変わる
取得価額が10万円未満なら、一定の要件のもとで全額をその期の損金にできます。10万円以上20万円未満は、一括償却資産として3年で均等に落とす方法があり、一定の中小企業者等なら40万円未満の特例で全額を落とすこともできます。20万円以上40万円未満は一括償却資産が使えず、特例の対象になれば全額損金です。40万円以上は特例の対象外で、通常の減価償却となります。
今回発表された新型iPhoneはいずれも開始価格が20万円を超えているため、実際には「40万円未満に収まるか」が大きな分かれ目になります。
なお、特例を使った資産は償却資産税(固定資産税)の申告対象になりますが、一括償却資産なら対象外です。そのため10万円以上20万円未満では、即時償却が常に有利とは限りません。また、耐用年数表にはスマートフォンという区分が明示されていないため、40万円以上で通常の減価償却になる場合は税理士に確認してください。
私的利用が大きければ、役員への「経済的利益」が問題になる
会社が業務用として保有する端末を役員に貸与している場合、私的利用が一部あるだけで直ちに役員給与と決まるわけではありません。国税庁も現物給与について、主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるものには、金銭による給与と異なる取扱いがあると説明しています。ただし、どこまでなら問題にならないという線引きはありません。会社の負担で役員個人が実質的な利益を受けていると認められれば、経済的利益として給与課税が問題になります。
備えになるのは、業務上の必要性を説明できる状態にしておくことです。回線契約が法人名義であること、業務利用の実態を示せること、貸与のルールが決まっていること。法律上の要件ではありませんが、業務用だと説明する際の裏づけになります。購入してから整えるのではなく、契約の時点で用意してください。
まとめ
少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得する資産から上限が40万円未満に引き上げられました。今回の新型iPhoneのように税込価格が40万円を超えていても、税抜経理なら特例の対象になるケースがあります。一方、税抜でも40万円以上なら通常の減価償却です。
購入前に300万円枠の残りと自社の経理方式を確認し、あわせて業務利用の実態を説明できる状態にしておきましょう。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」
国税庁 タックスアンサー No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
国税庁「耐用年数の適用等に関する取扱通達」(第2章第7節 器具及び備品)
Apple「iPhone Duo」購入ページ
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東京国税局で15年にわたり、税務調査・審理・国税不服審判所の業務に従事。非居住者課税の相談実務に精通する。大手YouTuberエージェンシーでの実務経験から、フリーランス・インフルエンサー特有の税務にも明るい。その後、IT企業でのプロダクトマネジメントを経て神奈川県川崎市で独立。現在はクリエイターやスタートアップの税務支援を中心に活動し、税務メディアの記事監修も多数手がける。国税の現場で培った課税庁側の視点を活かした解説を得意とする。
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