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相続税の課税割合がジワリ上昇、9%に接近!遺産の内訳では「土地」と「現預金」が拮抗

相続税の課税割合がジワリ上昇、9%に接近!遺産の内訳では「土地」と「現預金」が拮抗

2022年7月1日

さきごろ国税庁が公表した2020年分の相続税の「申告事績」によると、課税割合(相続税が発生する相続の割合)が8.8%まで高まりました。被相続人(亡くなった人)1人当たりの相続税額は、1,700万円あまりとなっています。今回は、相続税に関する税務調査の結果と併せて、相続税の最近のトレンドについて解説します。

相続税課税の最新事情

国税庁が公表した「令和2年分 相続税の申告事績の概要」は、2021年11月1日までに税務署に提出された相続税申告書(修正申告を除く)のデータに基づいています。相続税の申告は“相続が発生した時から10ヵ月以内”となっており、20年12月31日に亡くなった人の申告期限がこの日にちとなるためです(21年10月31日は休日)。では、20年の状況から見ていくことにしましょう。

被相続人数は減少も、課税対象は増加

被相続人数(死亡者数)は137万2,755人で、前年に比べ微減(0.6%減)でしたが、そのうち「相続税の申告書の提出に係る被相続人数(相続税が発生した被相続人の数)」は12万372人と、逆に前年よりも4.4%増加しました。その結果、前者を後者で割った「課税割合」は8.8%(前年比0.5%増)となりました。

一方、相続税の納税者である相続人数は26万4,455人(3.9%増)で、その課税価額(※)の総額は16兆3,937億円(3.9%増)、申告税額の総額は2兆915億円(5.9%増)でした。税額を1人当たりにすると1,737万円となり、前年に比べ23万円、率にすると1.4%増加しました。

総額17兆4,000億円あまりの遺産(相続財産)の構成比は、次のようになっています。
・土地 34.7%(前年比△0.3ポイント増)
・家屋 5.3%(同△0.1ポイント増)
・有価証券 14.8%(同▼0.4ポイント減)
・現金・預貯金等 33.9%(同△0.2ポイント増)
・その他 11.3%(同▼0.2ポイント減)

※この「課税価格」は、相続財産価額に相続時精算課税適⽤財産価額を加え、被相続人の債務・葬式費⽤を控除し、さらに相続開始前3年以内の被相続人から相続人等への⽣前贈与財産価額を加えたものです。

「11件に1件」の相続が課税対象に

まず前提として、相続税は、全ての相続にかかるわけではありません。相続財産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される「基礎控除額」以下であれば課税はされず、基本的に相続税申告の必要もないのです。さきほどの相続税の「課税割合」というのは、「被相続人の遺産が基礎控除額を超えたため、相続税の納税が必要になった相続件数の割合」ということになります。

その課税割合のここ10年間の推移をみると、次のようになります。

2015年(上図だと平成27年)にポイントが突然倍近くに上昇したのは、この年から基礎控除額が大幅に引き下げられた(従来は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」)ためです。つまり、それだけ課税のハードルが下がった(=課税対象になる相続が増えた)わけですが、それ以降も課税割合は上昇基調にあるのが見て取れます。

平たく言えば「年々相続税がかかるような多くの財産を残して亡くなる人が増えている」ということになるでしょう。ちなみに課税割合8.8%というのは、被相続人のおよそ11人に1人の相続が課税対象になったことを意味します。

増加基調の「現金・預貯金」。その問題は?

その財産の内訳も、ここ10年の推移を見ると、ある特徴が浮かび上がってきます。「土地」「現金・預貯金等」「有価証券」の構成比を、2011年→基礎控除引き下げのあった15年→今回公表された20年、の順に並べてみましょう。
●土地 45.9%→38.0%→34.7% =減少トレンド
●現金・預貯金等 24.4%→30.7%→33.9% =増加トレンド
●有価証券 13.0%→14.9%→14.8% =横ばい

相続では不動産が問題になりがちですが、相続財産に占める割合は意外にも減少傾向です。また当然ですが、被相続人の多くは高齢者層になります。相続財産の中の金融資産のうち、有価証券が15%弱の横ばい推移となっている半面、「現預金」が着実に増えているというのも、ある意味日本的な状況といえるのかもしれません。

相続税の節税という点からすると、評価額を下げる余地がある不動産などに比べ、基本的にストレートに相続財産に加算される現金・預貯金は“不利”です。高額の蓄えがある場合などには、適切な対策を検討すべきかもしれません。

相続税の税務調査の状況は?

実地調査1件当たりの追徴税額は、過去10年で最高に

国税庁は、「令和2事務年度における相続税の調査等の状況」も公表しています。こちらは2020年7月~21年6月まで(2020事務年度)の集計です。この期間は新型コロナの感染拡大が直撃した時期に当たるため、調査官が被相続人の自宅などに出向く「実地調査件数」は前年度比52.0%減の5,106件にとどまりました。

ただし、申告漏れなどの「非違割合」は87.6%(前年度比2.3ポイント増)と高率で、1件当たりの「申告漏れ課税価格」は3,496万円(22.0%増)、同じく加算税などを加えた「追徴税額」は過去10年間で最高の943万円(47.3%増)となりました。 「資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について」集中的に調査を行った結果だとみられます。

このように実地調査が制限される状況下で、国税当局は「⽂書、電話による連絡⼜は来署依頼による⾯接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの接触(簡易な接触)」にも取り組みました。

こちらの「接触件数」は1万3,634件と、前年度比57.9%の大幅増でした。「非違件数」は3,133件(前年度比37.3%増)、1件当たりの「追徴税額」は47万円(2.0%減)となっています。

「無申告」の1件当たり追徴税額は1,000万円超え

さらに、国税当局の「調査に係る主な取組」についてみてみましょう。

まずは「無申告事案」について。当局は、「無申告事案は、申告納税制度の下で⾃発的に適正な申告・納税を⾏っている納税者の税に対する公平感を著しく損なうものである」という認識の下、その把握に努めています。

20事務年度は、「実地調査件数」はやはり前年度比57.1%減の462件にとどまりましたが、非違割合は88.5%(前年度比3.0ポイント増)、実地調査1件当たりの「申告漏れ課税価格」9,848万円(17.0%増)、同じく「追徴税額」は1,328万円(48.2%増)に上りました。これは、無申告事案に対する実地調査1件当たりの追徴税額の集計を始めた2009事務年度以降で最⾼だったそうです。

納税者の資産運用の国際化などに対応した「海外資産関連事案」では、「実地調査件数」は551件(前年度比45.3%減)、「非違件数」96件(35.6%減)、非違1件当たりの「申告漏れ課税価格」3,579万円(31.1%減)でした。

相続の際に問題になるポイントの1つが、事前に相続人に贈与された財産への課税状況です。当局はこの「贈与税事案」に関しても、20事務年度に1,869件(前年度比44.8%減)の実地調査を行いました。「非違件数」は1,769件(45.0%減)、1件当たり「申告漏れ課税価格」は584万円(9.2%減)、同じく「追徴税額」は201万円(13.3%減)となっています。

贈与税の場合、非違は「無申告」が圧倒的に多いのが特徴で、今回も全体の82.2%を占めました。財産別にみると「現金・預貯金等」が74.2%を占め、「有価証券」10.0%、「土地」「家屋」が合わせて2.2%などとなりました。

新型コロナの影響を強く受けた税務調査ですが、今後感染が沈静化に向かえば、実地調査の“再始動”も予想されます。

まとめ

相続財産が基礎控除額を超え、相続税の課税対象となる割合が少しずつ上昇し、「10件に1件」に近づいています。相続財産の内訳では、現金・預貯金が増加気味。事前の相続対策の重要性は、ますます大きなものになっています。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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