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「もらった」つもりはないのに、贈与税が!?気をつけたい「みなし贈与」

「もらった」つもりはないのに、贈与税が!?気をつけたい「みなし贈与」

2023年3月2日

子どもなどに現金などを一定金額以上渡したら贈与税がかかることは、ご存知だと思います。ところが、例えば「借金をチャラにする」といった、一見贈与とは思われない行為についても贈与税の課税対象になることがあるのです。これを「みなし贈与」といいます。どのようなケースが該当するのか、「ついうっかり」で高額の税金を取られないためにはどうすべきなのか、解説します。

「贈与」と「みなし贈与」の違い

贈与についておさらい

贈与は、財産を渡す側の「あげます」という意思と、受け取る側の「もらいます」という双方の合意に基づき、相手に無償で財産を譲ることをいいます。法的な贈与財産には、現金だけでなく不動産、自動車、有価証券、貴金属、美術品など基本的に換金できるものすべてが該当します。

贈与には、1年間に110万円までの「基礎控除額」があり、これを超えた金額に対して、もらった人に贈与税が課税されます。また、こうした「歴年課税」とは別に、通算で2,500万円までは非課税で贈与できる「相続時精算課税」があります。相続が発生した際に、もらった人が贈与を受けた財産額を相続財産の額に加算して、相続税を納めます。

暦年課税の課税額は次のような計算になります。

(1)夫婦間の贈与、親から未成年への贈与など、次の(2)以外のケース

〈一般贈与(一般税率)〉

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
一般税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円
(2)祖父母や親から18歳以上(2022年3月31日以前は20歳以上)への贈与

〈特例贈与(特例税率)〉

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
特例税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

※上記表ともに贈与税の計算と税率(暦年課税)【国税庁】より引用

例えば、(1)のケースで500万円の贈与を行うと、基礎控除額(110万円)を差し引いた課税価額は390万円で、一般贈与の表の「400万円以下」(税率20%・控除額25万円)に該当します。

ですから、税額は「390万円×20%-25万円=53万円」。このレベルで、贈与した1割以上が税金になるわけですが、表を見てわかる通り、贈与額が大きくなるほど高い税率が課せられることになります(累進課税)。

みなし贈与とは?

説明したように、贈与には、双方に「あげる」「もらう」という意思のあるのが基本ですが、そうでなくても「みなし贈与」と判断されるケースが、けっこうあります。その場合にも、通常の贈与と同じ税率の贈与税が課税されるのです。

ただし、みなし贈与に当たるのか当たらないかの明確な判断基準が、すべて法律などに示されているわけではありません。最終的には、税務署の判断に委ねられることになりますから、注意が必要です。

みなし贈与の具体例

不動産などを安く譲ってもらった

例えば、親が子どもに、所有する時価6,000万円の土地を3,000万円で売ったとします。子どもからすると、6,000万円出さないと買えない土地が半額で手に入り、差額3,000万円の利益を得たことになります。この場合は、不動産が「著しく低い価額」で譲渡されたとされ、みなし贈与に該当します

「著しく低い価額」は、「時価の80%未満」という過去の判例が1つの基準になっています。つまり、時価の80%以上、今の例でいえば、例えば5,000万円で売却すると、贈与税はかからないことになります。

不動産以外でも、例えば株などの有価証券や貴金属などを時価よりも低額で譲渡すると、みなし贈与と認定される可能性があります。

借金の返済を免除してもらった

他人に貸していたお金の返済を免除した場合、借り手は財産の譲渡を受けたわけではありませんが、借金分の利益を得たことになります。 「500万円貸したが、返すのは100万円でいい」というような返済の一部免除や、無利息で高額を貸したような場合も含めて、みなし贈与になる可能性があります。

借金の肩代わりをしてもらった

他者からの借金の返済を本人の代わりに行った場合にも、やはり借り手本人が返済分の利益を得ることになりますから、贈与税の課税対象とされることがあります。

借金には、要返済の奨学金も含まれます。「子どもが大変そうだから」と返済を肩代わりすると、税金が発生する可能性があるわけです。ちなみに同じ「教育資金」でも、親や祖父母から一括贈与を受ける場合には、1,500万円まで贈与税は非課税です。

納税を肩代わりしてもらった

これも子どものことを慮って、本人に代わって納税を肩代わりすると、みなし贈与になります。納税金額分を贈与した(=その分、子どもが利益を得た)と判断されるのです。

親などが保険料を支払った保険の保険金を受け取った

例えば親が保険契約者となって保険金を支払っていた養老保険が満期になり、保険金の受取人に指定されていた子どもがそれを受け取った場合には、親から子へのみなし贈与とされ、贈与税の課税対象になります。

一方、生命保険(死亡保険)の場合は、契約者が亡くなって子どもが受け取る保険金は、「みなし相続財産」といい、相続税の課税対象です。

無償で不動産の名義変更を行った

親名義の自宅をただで子どもの名義に変更した場合、子どもは自宅の時価分の利益を得ていることになりますから、みなし贈与と判断されます。

また、例えば親子が1/2ずつの共有名義で自宅を購入した場合に、親の負担額が1/2を超えていたら、やはりその分は子どもが利益を得たとして、みなし贈与とされるでしょう。

離婚による財産分与が偏っていた

離婚の際に、築いた財産を貢献度などに応じて分け合うことがあります(財産分与)。この財産分与の手続きを経て手にした財産には、通常贈与税は課税されません。 しかし、もらった財産が明らかに多すぎる場合(過剰な財産分与)は、みなし贈与とされる可能性があります。

中には、贈与税を逃れる目的で「偽装離婚」するようなケースもあるようです。過剰な財産分与については、過剰だと判断された部分が課税対象ですが、偽装離婚などの悪質な行為が判明すると、財産すべてに課税されることになります。

みなし贈与が発覚するとどうなる?

贈与の認識がなくても課税される

みなし贈与にも、通常の贈与と同じルールで贈与税が課税されます。ただ、「まさか税金がかかるとは思わなかった」というケースが少なくないのが、みなし贈与の「怖さ」。突然、税務署から税務調査(※)を受けて納税を求められるだけでなく、たとえ税逃れなどの意思がなくても、「加算税」「延滞税」というペナルティを課せられることになるかもしれないのです。

※税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

「申告漏れ」のペナルティ

贈与税に限らず、税金の「申告漏れ」が発覚すると、本来支払うべき税金の不足分に加えて、次のようなペナルティが課せられます。

◆無申告加算税:本来の申告期限までに申告をしていなかった場合
原則、本来の納付額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分に対して20%の割合で加算されますが、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、5%に軽減されます。

◆過少申告加算税:期限内に申告はしたが、申告した額が少なかった場合
自主的に修正の申告をした場合はかかりませんが、税務署から通知が来てから申告した場合には10%、一定額以上には15%の割合で加算されます。

◆重加算税:書類を偽造するなどの不正行為など、悪質な税逃れが認められた場合
最も重いペナルティで、最高で50%の税率が適用されます。

さらに、法定納期限の翌日から完納するまでの日数に応じて、「延滞税」が加算されます。贈与税が発生しているとは気づかずに時間が経過すると、それだけペナルティの支払額が増えていくことになるわけです。

「専門家に相談」がベスト

意外なことまでみなし贈与とされる可能性があるのを、ご理解いただけたでしょうか。税金に関していえば、それと知らずに贈与を行った後で対策を打とうとしても、ほぼ不可能になってしまいます。

上に挙げた例に限らず、それなりに多額のお金や不動産を含む高額のものを動かす(譲渡する・される)場合には、事前に税理士などの専門家に相談するのが安心です。

上手に贈与を活用する方法は?

一方で、子どもなどにお金を渡せば、必ず贈与税がかかってくるというわけではありません。税金がかからない、あるいは負担の少ない状態で贈与を行えば、相続財産を減らす(=相続税を減額する)ことができます。最後に、賢い贈与の仕方をまとめてみました。

生活費や教育費の援助は、そもそも「非課税」

例えば大学に通うために離れて暮らす子どもに親が生活費を仕送りした場合、年間110万円を超えたら贈与税がかかるのでしょうか? いいえ、よほど多額の現金を送っているといったことでもない限り、そんなことはありません。

扶養義務者(配偶者、親、祖父母、子など)からもらう「生活費」「教育費」には、「贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲」(国税庁)であれば、贈与税は非課税です。高齢の親の面倒をみる費用などにも、贈与税はかからないのです。

「非課税」の制度を利用する

贈与税に限らず、税金の「申告漏れ」が発覚すると、本来支払うべき税金の不足分に加えて、次のようなペナルティが課せられます。

●暦年課税による110万円の基礎控除
説明したように、年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額が110万円までは、贈与税がかかりません。

ただし、24年以降の贈与については、相続税への「生前贈与加算」が、現在の相続開始前3年間から7年に、順次延長されることが決まりました。生前贈与加算とは、相続開始前の一定の期間の贈与については、贈与税の基礎控除を認めず、相続財産に加算して相続税を課税する仕組みです。この期間が長くなるというのは、今まで以上に早めに贈与したほうが得、ということを意味します。

●相続時精算課税による2,500万円の特別控除
歴年課税ではなく、相続時精算課税による贈与の場合、18歳以上の人が60歳以上の親や祖父母からもらった財産は、合計2,500万円まで贈与税が課税されず、相続発生時に「精算」します。

なお、一度この相続時精算課税を選択すると、その後は暦年課税を利用することはできません。

●住宅取得等資金の贈与
親や祖父母から自宅の購入資金やリフォーム資金の贈与を受けた場合、一定額まで非課税です。

●教育資金の一括贈与
前に述べたように、親や祖父母から教育資金の一括贈与を受けた場合は、贈与を受けた人が30歳に達するまでに支払った教育資金について、最大1,500万円まで贈与税がかかりません。

●結婚・子育て資金の一括贈与
18歳以上50歳未満の人が、親や祖父母から結婚費用・子育て費用に充てるために一定の手続きにより受け取った贈与は、最大1,000万円まで非課税です。

●特定障害者に対する贈与税の非課税制度
特定障害者(特別障害者又は特別障害者以外で精神または身体に障害のある人)が一定の手続きによりもらった贈与は、6,000万円(特定障害者のうち特別障害者以外の人が受けた贈与は3,000万円)まで非課税です。

まとめ

不動産の譲渡や金銭の貸し借り、保険金の受け取りなど、みなし贈与となるケースはさまざまありますから、注意が必要です。資産を移動するとき、不明な点がある場合には、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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