相続放棄とは?基本の仕組みと他の選択肢との違い
相続が発生すると、相続人は故人の財産と負債の両方を引き継ぐことになります。ただし、相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの法的選択肢があり、状況に応じて適切な方法を選ぶことで、不利益を回避することが可能です。相続放棄は借金などの負債が多い場合に有効な手段ですが、一度選択すると撤回できないため、制度の仕組みをしっかり理解しておく必要があります。
相続放棄とは何か?仕組みとメリット・デメリット
相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に「一切の相続を放棄します」という申述を行い、それが認められることで成立する法的手続きです。相続放棄が認められると「最初から相続人ではなかった」という扱いになるため、被相続人の借金や負債を支払う義務が一切なくなります。
相続放棄の最大のメリットは、借金や連帯保証債務などの負債から完全に解放されることです。例えば、故人が事業で多額の借金を抱えていた場合や、連帯保証人になっていた場合でも、相続放棄をすれば一切の支払い義務を免れることができます。また、滞納していた税金の支払い義務もなくなります。
一方で、デメリットとして、預貯金や不動産などのプラスの財産も一切相続できなくなる点が挙げられます。相続放棄は「全部を放棄する」という選択であり、「借金だけ放棄して預貯金は相続する」といった部分的な選択はできません。
さらに重要な点として、相続放棄は一度認められると原則として撤回できません。後から「やっぱり相続したい」と考えても、取り下げることは不可能です。そのため、相続放棄を選択する際には、財産と負債の全体像をできる限り正確に把握したうえで、慎重に判断する必要があります。
限定承認・単純承認・財産放棄との違い
相続には、相続放棄以外にも「単純承認」「限定承認」という法的選択肢があります。また、家庭裁判所を通さない「財産放棄」という方法も存在しますが、これは法的な相続放棄とはまったく異なります。それぞれの違いを理解することで、自分の状況に最適な方法を選べます。
単純承認とは
単純承認は、故人の財産も負債もすべてそのまま相続する方法です。単純承認は、熟慮期間(原則3か月)内に相続放棄・限定承認をしない場合や、相続財産の処分等(民法921条)を行った場合に成立します。プラスの財産が明らかに多い場合や、負債がほとんどない場合には、単純承認が適しています。
限定承認とは
限定承認は、相続によって得た財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ方法です。例えば、遺産が2,000万円で負債が5,000万円の場合、2,000万円分の負債だけを相続し、残りの3,000万円については支払う必要がありません。逆に、後から資産が負債を上回ることが判明した場合には、その差額を相続できます。限定承認は、被相続人の債務がどの程度あるのか不明で、財産が残る可能性もある場合に有効です。
ただし、限定承認には注意点があります。相続人全員の同意が必要であり、1人でも反対すれば成立しません。また、財産目録の作成や官報への公告、債権者への弁済など、手続きが煩雑で時間がかかり、専門家のサポートが必要になることが多いです。
さらに、税務上の注意点として、限定承認を選択すると被相続人が不動産などを時価で譲渡したものとみなされ、被相続人側に所得税等が生じ得ます。これは準確定申告で申告・納税し、納付税額は相続税計算上、債務控除に算入できます。
財産放棄とは
財産放棄は、相続人同士の話し合いで財産を相続しない意思を表明する方法です。遺産分割協議書に「財産を相続しない」と明記することで成立します。しかし、財産放棄は家庭裁判所を通さない私的な合意に過ぎず、債権者に対しては効力がありません(債務支払請求は拒めません)。法律上の相続人の地位はなくなりませんので、債権者から借金の返済を求められた場合には、支払いを拒否できません。財産放棄と相続放棄は名前が似ていますが、法的効果はまったく異なるため、混同しないよう注意が必要です。
相続放棄の手続きと必要書類、流れ
相続放棄を選択する場合、家庭裁判所での手続きが必要です。期限や必要書類が決まっているため、事前に流れを把握しておくことでスムーズに手続きを進められます。手続きにかかる費用は比較的少額ですが、書類の準備には時間がかかることもあるため、早めに着手することが重要です。
相続放棄の手続きの流れと期限
相続放棄の手続きは、「自己のために相続の開始があることを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります。この3か月という期限は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が財産と負債の状況を調査し、相続するかどうかを判断するための期間です。
重要な点として、この起算点は相続人ごとに異なります。例えば、第一順位の相続人(子)全員が相続放棄をした場合、第二順位の相続人(親)は、自分に相続権が回ってきたことを知ったときから3か月の期限が始まります。そのため、先順位の相続人が放棄した事実を知らなければ、後から相続放棄をすることも可能です。
具体的な手続きの流れは以下のとおりです。
- 財産と負債の調査:故人の預貯金、不動産、借金、税金の滞納などを調べます。金融機関や信用情報機関への照会、郵便物の確認などが有効です。
- 申述書類の準備:相続放棄申述書を作成し、必要な戸籍謄本などの書類を揃えます。
- 家庭裁判所への申述:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申述書と必要書類を提出します。
- 照会書への回答:家庭裁判所から照会書(質問書)が送られてくるので、相続放棄の理由や経緯を記入して返送します。
- 受理通知の受領:問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。これで相続放棄が正式に認められます。
3か月の期限内に手続きが完了しない場合でも、家庭裁判所に期間伸長の申立てを行うことで延長が認められる場合があります。相続財産管理人選任手続き中や金融機関への照会中など、調査に時間がかかる事情を添えて申し立てることで、期間延長が認められるケースがあります。特に、遠方に住んでいて事情がわかりにくい場合なども、期間延長の申し立てを検討すべきです。
必要書類と費用の目安
相続放棄の手続きに必要な書類と費用は以下のとおりです。
【必要書類】
- 相続放棄申述書(家庭裁判所の窓口またはウェブサイトから入手可能)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 相続関係によっては追加書類(例:被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本など)
【費用の目安】
- 収入印紙:800円(申述人1人あたり)
- 郵便切手:数百円程度(裁判所によって異なる)
- 戸籍謄本等の取得費用:1通450円〜750円程度
合計で数千円程度の費用で手続きが可能です。ただし、戸籍謄本の取得には本籍地の役所に請求する必要があり、郵送でのやり取りになる場合は時間がかかることもあります。期限ギリギリになって慌てないよう、早めに書類の準備を始めることが大切です。
司法書士や弁護士に依頼する場合は、別途報酬が発生します。相場(参考)としては5万円〜10万円程度ですが、複雑なケースではさらに費用がかかることもあります。
相続放棄申述受理証明書の取得と活用方法
相続放棄の手続きが完了すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。しかし、この通知書は再発行ができないため、紛失に注意が必要です。債権者や役所などに相続放棄の事実を証明する必要がある場合には、「相続放棄申述受理証明書」を取得することをおすすめします。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄を受理した家庭裁判所の窓口で申請できます。申請には、申請書と収入印紙(1通150円)、本人確認書類が必要です。郵送での申請も可能です。
【活用シーン】
- 債権者から借金の返済を求められた場合に、相続放棄の事実を証明する
- 被相続人名義の固定資産税などの納税通知書が届いた際に、役所に提出する
- 不動産の名義変更手続きなどで、相続放棄の事実を示す必要がある場合
相続放棄後も、被相続人名義の税金の督促状などが届くことがあります。第三者には相続放棄の事実がすぐにはわからないため、証明書を提示することでトラブルを回避できます。
相続放棄を選ぶべきケース・選ばない方が良いケース
相続放棄は借金から解放される有効な手段ですが、すべてのケースで最善とは限りません。財産と負債のバランスや、家族の状況、将来的なリスクなどを総合的に判断することが重要です。状況によっては、限定承認や単純承認の方が適している場合もあります。
相続放棄したほうがよい典型ケース
相続放棄が適しているのは、明らかに負債がプラスの財産を上回っている場合です。以下のようなケースでは、相続放棄を積極的に検討すべきです。
借金や負債が多額にある場合
故人が消費者金融やカードローンで多額の借金をしていた場合、または事業の失敗で多額の負債を抱えていた場合には、相続放棄を検討すべきです。負債が資産を明らかに上回る場合、相続すると自分の財産から返済しなければならなくなります。
連帯保証人になっていた場合
被相続人が他人の借金の連帯保証人になっていた場合、主債務者が返済できなくなると相続人に請求が来ます。保証債務の額が大きい場合は、相続放棄が有効です。連帯保証債務は金額が確定しにくいため、リスク回避の観点から相続放棄を選択するケースが多くあります。
関係が疎遠で財産状況が不明な場合
長年連絡を取っていない親族が亡くなり、財産状況がまったく分からない場合、調査の結果、負債が多いことが判明するケースがあります。リスクを避けるために相続放棄を選ぶことも選択肢です。
相続争いに巻き込まれたくない場合
相続人間でトラブルが予想される場合、関わりたくないという理由で相続放棄を選ぶ人もいます。相続放棄をすれば「最初から相続人ではなかった」扱いとなり、遺産分割協議への参加義務がなくなるため、相続争いから完全に離れることができます。
限定承認など他の選択肢が有効な場合
資産と負債のバランスが不明で、プラスになる可能性もある場合には、限定承認が適しています。例えば、故人が事業を営んでいたが、取引先からの入金があるかどうか不明な場合や、不動産の価値が未確定な場合などです。
限定承認を選択すれば、後から新たな負債が発覚しても、相続した財産の範囲内で支払えば良いため、リスクを限定できます。また、結果的に資産が負債を上回った場合には、その差額を相続できるというメリットもあります。
ただし、限定承認には以下のような注意点があります。
- 相続人全員の同意が必要:1人でも反対すれば成立しません
- 手続きが煩雑:財産目録の作成、官報への公告、債権者への弁済など、専門家のサポートが必要になることが多い
- みなし譲渡課税の問題:限定承認すると、被相続人が不動産などを時価で譲渡したものとみなされ、被相続人側に所得税等が生じ得ます。これは準確定申告で申告・納税し、納付税額は相続税計算上、債務控除に算入できます
こうした負担を考慮したうえで、限定承認が本当に適しているかを検討する必要があります。判断に迷う場合は、相続に強い税理士や弁護士に相談することをおすすめします。

末永 寛
記事監修者からのワンポイントアドバイス
ご紹介の通り、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から 3ヶ月以内に申述を行うことになっています。この期間を過ぎてしまうと、基本的には相続放棄が一切できなくなります。
では、実際にご家族が亡くなった場合、亡くなってから最初の1ヶ月は、死後の手続きに忙殺されることが多く、実際には2ヶ月目から被相続人の財産・債務を調査し始めることが多いです。その場合、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述するのは、かなり時間的にはタイトとなります。
これは、離れて暮らす親などの財産・債務を把握していないというケースが多いために起こる事で、このような時間切れを避けるためには、日頃から元気なうちに財産・債務の状況を共有しておくことが非常に重要となります。
相続放棄の注意点とよくある誤解
相続放棄には知らないと大きなトラブルにつながる注意点が数多くあります。特に、相続財産に手をつけてしまうと相続放棄ができなくなる場合があるため、慎重な対応が必要です。また、相続放棄に関する誤解も多く、正しい知識を持っておくことが重要です。
相続財産の処分行為に注意—放棄できなくなるケースとは
相続財産を処分する行為を行うと、民法921条1号により「単純承認」したものとみなされ、以後は相続放棄ができなくなります。これを「法定単純承認」といい、たとえ相続放棄を希望していても、一度単純承認したとみなされると取り消すことはできません。
【相続放棄ができなくなる行為の例】
- 被相続人の預貯金を引き出して自分のために使う
- 不動産や車などの名義変更をする
- 遺産を売却する
- 借金の一部を返済する
一方で、以下のような行為は相続財産の処分にあたらず、相続放棄が可能です。
- 葬儀費用の支払い:社会的儀礼の範囲内であれば問題ありません。ただし、過度に豪華な葬儀は認められない可能性があります。
- 被相続人の入院費や医療費の支払い:被相続人が生前に負担すべき費用を、相続財産から支払うことは認められます。
- 遺品の形見分け:経済的価値が低い日用品や衣類などを形見分けとして受け取ることは問題ありません。
- 固定資産税などの請求書を受け取る:単に郵便物を受け取っただけでは、財産の処分にはあたりません。
判断に迷う場合は、相続財産に一切手をつけないことが最も安全です。特に、被相続人の預貯金を引き出す場合は、用途をしっかり記録し、葬儀費用など正当な目的であることを証明できるようにしておく必要があります。少しでも不安がある場合は、何も触れずに専門家に相談することを強くおすすめします。
相続放棄と税金・年金・生命保険の関係
相続放棄をした場合、税金や年金、生命保険金の扱いがどうなるのかは、多くの人が疑問に思うポイントです。それぞれの関係性を正確に理解しておくことで、相続放棄の判断材料になります。
税金について
相続放棄をすれば、被相続人が滞納していた税金の支払い義務もなくなります。これは、相続放棄によって「法的に相続人ではなくなる」ためです。
通常、相続が発生すると、被相続人の所得税については、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に相続人が準確定申告を行い、納税する必要があります。しかし、相続放棄をした者には準確定申告の義務はありません。これは相続人でなくなるためであり、不用意に準確定申告を行うと単純承認とみなされるリスクもあるため注意が必要です。固定資産税や住民税の滞納分についても同様に、支払い義務は消滅します。
ただし、相続放棄後も被相続人名義の固定資産税の納税通知書などが届くことがあります。これは、役所が相続放棄の事実を把握していないためです。通知書が届いた場合は、相続放棄申述受理証明書を役所に提出することで、督促を止めることができます。
年金について
遺族年金・未支給年金はいずれも相続財産ではなく、受給権者の固有財産として扱われます(最高裁平成7年11月7日判決)。したがって、相続放棄をしても受給可能です。ただし、受給要件を満たしていることと、所定の請求手続きを行うことが必要です。受給には所定の請求と期限管理(時効)に注意してください。
遺族年金は遺族の生活保障を目的とした社会保険制度であり、未支給年金は亡くなった時点で受給権者に発生していた給付を遺族が代わりに受け取るものです。いずれも相続とは別の制度として機能するため、相続放棄の影響を受けません。
生命保険について
生命保険金の受取人が指定されている場合、その保険金は相続財産には含まれず(相続税法上はみなし相続財産)、受取人固有の財産となります。そのため、相続放棄をしても、生命保険金は受け取ることができます。
ただし、受取人が「被相続人」となっている場合には、保険金は相続財産となり、相続放棄をすると受け取れません。なお、受取人が指定されていない場合は、一般的には保険会社の約款に基づいて法定相続人が受け取ることが多く、この場合は相続放棄をしても受け取れる可能性があります。保険証券や約款を確認し、受取人がどのように定められているかを確認しておくことが重要です。
よくある誤解
相続放棄には多くの誤解があり、正しい知識がないまま判断すると思わぬトラブルに発展することがあります。ここでは、実際に相談の多いケースを取り上げ、正しい理解を深めていただきます。
相続放棄をすると次の順位の相続人に影響が出る場合
子が相続放棄をすると、次順位である被相続人の親(または祖父母)が相続人になります。親もすでに亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。借金が多い場合、放棄しないと次の順位の親族に迷惑がかかる可能性があるため、関係者全員で相続放棄を検討する必要があります。
ただし、代襲相続は発生しません。つまり、子が相続放棄をしても、孫が代わりに相続人になることはありません。これは、相続放棄をすると「最初から相続人ではなかった」ことになるためです。
遺産分割協議書で「相続しない」と書いた場合
遺産分割協議書に「相続しない」と書いても、それは家庭裁判所での正式な相続放棄ではありません。遺産分割協議書による「財産放棄」と、家庭裁判所での「相続放棄」はまったく別のものです。遺産分割協議書に相続しない旨を記載しても、法律上の相続人の地位は失われず、債権者から借金の返済を求められた場合には支払い義務が残ります。借金から逃れるためには、必ず家庭裁判所での正式な相続放棄手続きが必要です。
相続放棄後に気が変わった場合
原則として、一度受理された相続放棄は撤回できません。ただし、詐欺や強迫によって相続放棄をさせられた場合や、未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄をした場合など、一定の要件を満たせば取り消すことが可能です。しかし、これらは極めて例外的なケースであり、通常は撤回できないと考えるべきです。

末永 寛
記事監修者からのワンポイントアドバイス
相続放棄を行った場合に、生命保険金が受け取れるか否かについて誤解している人がいます。
相続放棄をしても、その人が死亡保険金受取人に指定されていれば、死亡保険金を受け取ることが可能です。一方、死亡保険金受取人が「相続人」となっている場合は、相続放棄をした人は相続人ではないとみなされますので、受け取ることができません。
このように、死亡保険金の受取人が誰なのかを確認しなければ、一概に受け取れるかどうかは判断できません。
また、相続税の計算上、生命保険金には一人当たり500万円の非課税枠が用意されています。しかし、この制度は「相続人のみ」利用可能です。
よって、相続放棄をした人が受け取った生命保険金には、非課税枠は1円も使えないので、よく理解するようにしましょう。
まとめ
相続放棄は、被相続人の借金や負債から解放される有効な手段ですが、一度選択すると撤回できず、プラスの財産も一切相続できなくなるという重大な決断です。手続きには3か月という期限があり、相続財産に手をつけてしまうと放棄ができなくなる場合もあるため、早めに財産状況を調査し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することが大切です。
相続放棄をすべきか迷ったときは、相続に強い税理士に相談することをおすすめします。税理士は財産と負債の調査、相続放棄と限定承認の比較、税金面での影響など、総合的な観点からアドバイスを提供できます。相続財産センターでは、相続に精通した税理士を無料でご紹介しています。ご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q:相続放棄の期限を過ぎたらどうなる?
3か月の期限を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされ、相続放棄はできなくなります。ただし、「相続財産がないと信じており、そう信じることに相当な理由がある場合」など、例外的に期限後の相続放棄が認められるケースもあります。期限を過ぎてから借金が判明した場合は、すぐに弁護士や司法書士に相談しましょう。
Q:相続放棄したら他の相続人はどうなる?
あなたが相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移ります。例えば、子全員が放棄すれば親(直系尊属)へ、親もいなければ兄弟姉妹へと順位が移動します。借金が多い場合、親族全体で相続放棄を検討する必要があります。相続放棄をする際は、次順位の相続人に事前に連絡し、状況を説明することがトラブル回避につながります。
Q:相続放棄後に注意すべきことは?
相続放棄後も、被相続人名義の固定資産税の納税通知書などが届くことがあります。これは役所が相続放棄の事実を把握していないためです。通知書が届いたら、相続放棄申述受理証明書を提出することで督促を止められます。また、債権者から連絡が来た場合も、証明書を提示して相続放棄の事実を伝えましょう。証明書は家庭裁判所で何度でも取得できるため、必要に応じて複数枚用意しておくと便利です。
Q:相続放棄をしても管理責任は残る?
改正民法940条により、相続放棄をした時点で相続財産を「現に占有している」場合に限り、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、管理責任が生じます。例えば、被相続人と同居していた場合や不動産の鍵を管理している場合などが該当します。単に相続人の地位にあるだけでは管理責任は生じません。