相続税の申告期限は10ヶ月?申告期限を過ぎるとどうなるか、対処法も解説

相続税の申告期限は10ヶ月?申告期限を過ぎるとどうなるか、対処法も解説
最終更新日:2025/11/27
この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
「相続税の申告期限は死亡から10ヶ月」と誤解している方が少なくありません。正確には「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」で、申告と納付を同時に完了させる必要があります。期限を過ぎると最大30%の無申告加算税と延滞税が課され、本来の税額の1.5倍以上の負担になることもあります。本記事では、申告期限の正確な計算方法、期限超過時のペナルティ、期限内に完了させるための具体的なスケジュール、間に合わない場合の対処法まで、実務的な観点から解説します。

相続税の申告期限とは?基本ルールをおさらい

相続税の申告期限を誤ると、ペナルティが発生し税負担が増えます。申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」で、申告と納付を同じ期限内に完了させる必要があります。期限の計算は国税通則法に基づき暦に従うため、「起算日に応当する日の前日」が満了日となります。土日祝日が期限の場合は翌営業日に繰り下げられますが、期限超過は無申告加算税の対象となるため、早めの準備が不可欠です。

申告期限の正確な計算方法

申告期限は「相続開始を知った日の翌日」から10ヶ月後の「起算日に応当する日の前日」です。多くの方が「亡くなった日から10ヶ月」と誤解しますが、正確には国税通則法で定められた計算方法に従います。

例えば2025年1月15日に相続開始を知った場合、1月16日が起算日となり、10ヶ月後の11月15日の前日である11月14日が申告期限です。この計算方法は暦に従うため、月によって日数が異なっても、応当日を基準に判断します。

国税通則法では「期間の初日は算入しない」「月または年で定める期間は暦に従う」「起算日に応当する日の前日に満了する」と規定されています(国税通則法第10条)。相続税の申告期限についての詳細は国税庁ウェブサイトでも確認できます。

「相続開始を知った日」の考え方

申告期限の起点は「死亡の事実を知った日」であり、実際の死亡日とは異なる場合があります。海外在住で連絡に時間を要した場合や、災害により死亡確認が遅れた場合など、特殊な状況に配慮した規定です。

ただし税務署は「社会通念上、死亡を知り得た日」を基準とするため、客観的な理由が必要です。相続人が複数いる場合、それぞれが死亡を知った日が異なれば相続人ごとに申告期限が変わる可能性もありますが、税務署に認められるかは不透明です。実務上は死亡日を基準に準備を進めることをお勧めします。

申告と納付は同じ期限

相続税は申告書の提出と税金の納付を同じ期限内に完了させる必要があります。申告だけして納付が遅れた場合でも延滞税が発生します。

申告書の提出先は、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する税務署です。提出方法は窓口持参、郵送、e-Taxから選択できます。納付方法は、税務署や金融機関での現金納付、e-Taxを使った電子納税、ダイレクト納付、クレジットカード納付などから選べます。

特殊なケースの申告期限

通常の相続とは異なる状況では、申告期限の起算日や計算方法が変わります。土日祝日の場合は翌営業日に繰り下げ、数次相続では二次相続の開始日から10ヶ月が原則です。戸籍上の死亡日が特定されていない場合は記載された期間の最終日が相続開始日となるため、自身のケースに該当するか確認してください。

土日祝日が期限にあたる場合

申告期限が土曜・日曜・祝日にあたる場合、翌営業日が期限となります。例えば11月14日が日曜日なら、翌15日の月曜日が申告期限です。前倒しにはならないため、土日祝に該当する場合は期限延長のメリットがあります。

e-Taxや郵送を利用すれば期限日ぎりぎりまで対応できますが、システムトラブルや配送遅延のリスクを考慮し、数日前には完了させるべきです。郵送の場合は消印日付が期限日であれば有効ですが、配達状況を追跡できる方法を選んでください。

戸籍上の死亡日が特定されていない場合

戸籍に記載された期間の最終日が相続開始日となります。震災や事故などで死亡日の特定が困難な場合、戸籍に「令和6年11月死亡」「推定令和6年11月15日死亡」「令和6年11月1日から7日間死亡」といった記載がされます。

それぞれのケースで相続開始日は次のように決まります。「令和6年11月死亡」は11月30日、「推定令和6年11月15日死亡」は11月15日、「令和6年11月1日から7日間死亡」は11月7日が相続開始日です。財産評価もこの日を基準に行い、申告期限は原則通り「相続開始を知った日の翌日」から10ヶ月以内となります。

数次相続が発生した場合

一次相続の手続き中に相続人が亡くなった場合、亡くなった相続人の一次相続の申告期限は二次相続の開始日から10ヶ月となります。例えば父が2025年2月10日に死亡し、その相続人である母が4月10日に死亡した場合、母の父の相続の申告期限は2026年2月10日です。

一方、母以外の相続人(子など)の父の相続の申告期限は当初通り2025年12月10日のままです。数次相続では遺産分割協議が複雑化し、書類の準備にも時間がかかるため、できるだけ早い段階から専門家に相談することをお勧めします。

申告期限を過ぎた場合のペナルティと対処法

相続税の申告期限を過ぎると、本来の税額に加えてペナルティが課されます。延滞税は納付遅延に対する利息、無申告加算税は期限内未申告に対する罰金、重加算税は悪質な隠蔽に対する重罰です。税務署からの調査通知前に自主申告すれば無申告加算税は5%に軽減されますが、調査後は最大30%まで跳ね上がります。相続税には5年(悪質な場合は7年)の時効がありますが、時効を待つ間に発覚すれば重いペナルティの対象となるため、期限を過ぎても速やかに申告してください。

延滞税:納付遅延に対する利息

延滞税は期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される利息的なペナルティです。納付が遅れるほど金額が増え続けるため、申告と同時に納付できない場合でも、まず申告を優先すべきです。

延滞税の税率は2段階に分かれます。令和6年の場合、期限から2ヶ月以内は年2.4%ですが、2ヶ月を超えると年8.7%に跳ね上がります。税率は毎年変動するため、延滞期間が長引くほど予想以上の負担となります。詳細は国税庁ウェブサイト(延滞税の割合)で確認できます。

無申告加算税:期限内に申告しなかったペナルティ

無申告加算税は期限内に申告しなかった場合に課されるペナルティで、申告のタイミングによって税率が5%~30%の範囲で変動します。税務署からの連絡前に自主申告すれば大幅に軽減されます。

税務署からの調査通知を受ける前に自主申告した場合、納付税額の5%に抑えられます。調査通知後でも税務署の指摘を受ける前に申告すれば、50万円以下の部分は10%、50万円を超える部分は15%です。調査後に申告または税務署による更正を受けた場合は、50万円以下の部分は15%、50万円を超える部分は20%となります。

さらに令和6年以降の申告期限分からは、納付税額が300万円を超える部分について10%が上乗せされ、最大30%となります。また過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合も、税率が10%加算されます(国税庁:確定申告を忘れたとき)。期限を過ぎたことに気づいた時点で、税務署からの連絡を待たずに申告することが、ペナルティを最小限に抑える唯一の方法です。

重加算税:悪質な隠蔽に対する重罰

重加算税は財産の隠蔽や書類の改ざんなど、意図的に税を免れようとした場合に課される最も重いペナルティです。無申告の場合は税額の40%、過少申告の場合は35%が加算されます(国税庁:確定申告を間違えたとき)。

重加算税の対象となるのは、帳簿の破棄、二重帳簿の作成、虚偽の書類提出など、明らかに悪質な行為がある場合です。単なる計算ミスや知識不足による申告漏れは対象外ですが、税務署から悪質と判断されれば、無申告加算税に代えて重加算税が適用されます。延滞税も併課されるため、最終的な負担は本来の税額の1.5倍以上になることもあります。過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%上乗せされます。

相続税の時効は5年(悪質な場合は7年)

相続税には時効があり、申告期限の翌日から5年が経過すると税務署は課税できなくなります。ただし財産隠しなど悪質な行為があった場合は7年に延長されます(国税庁:確定申告を忘れたとき)。

時効があるからといって申告を避けることは極めて危険です。税務署は相続発生の情報を金融機関や法務局から入手しており、時効までの間に発覚すれば重いペナルティの対象となります。令和4事務年度の国税庁統計では、実地調査8,196件のうち申告漏れが発覚した件数は7,036件で、85.8%に上ります。時効を待つ間の精神的負担も大きく、発覚時には延滞税が膨らんでいるため、期限を過ぎても速やかに申告することが最善の選択です。

申告期限までの具体的な流れとスケジュール

相続税の申告・納付には、相続人の確定から財産評価、遺産分割協議、書類作成まで多くの手続きが必要です。相続放棄は3ヶ月以内、準確定申告は4ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内と、それぞれ期限が異なります。特に遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で時間がかかるため、死亡後すぐに着手すべきです。期限内に遺産分割が整わない場合でも法定相続分で申告できますが、各種特例が使えず税負担が増えるリスクがあります。

死亡後すぐ~3ヶ月以内:相続人・相続財産の確定

死亡後すぐに戸籍謄本等を収集し、法定相続人を確定してください。相続人が確定しないと遺産分割協議を始められず、後の手続きが全て遅れます。

同時に預貯金の残高照会、不動産の登記簿確認、証券会社への問い合わせなどで相続財産を洗い出します。この段階で借金が財産を上回ることが判明した場合、相続放棄を検討してください。相続放棄は被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要で、期限を過ぎると借金も相続することになります。

死亡後4ヶ月以内:準確定申告

被相続人の死亡年の所得について、死亡日から4ヶ月以内に準確定申告が必要です。これは相続税とは別の手続きで、被相続人が事業所得や不動産所得があった場合は必須です。

準確定申告を済ませることで、還付金がある場合は相続財産に加算され、納税がある場合は債務として相続税から控除できます。この金額が確定しないと正確な相続税額を計算できないため、早めに対応してください。

死亡後10ヶ月以内を目標:遺産分割協議と必要書類の準備

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、最も時間がかかる手続きです。誰がどの財産をどれだけ相続するかを決め、遺産分割協議書を作成します。

協議と並行して申告に必要な書類を収集してください。戸籍謄本一式(被相続人と相続人全員分)、被相続人の除籍謄本、遺産分割協議書の原本、預貯金の残高証明書、不動産の評価証明書、債務や葬式費用の領収書、過去3年以内の贈与税申告書の写しなどが必要です。金融機関や役所への書類請求には数週間かかる場合もあるため、死亡後2~3ヶ月以内には着手すべきです。

期限内に遺産分割協議が整わない場合でも、法定相続分で申告することは可能です。ただし小規模宅地等の特例など税負担を大幅に軽減できる特例が使えず、後日協議がまとまった時点で修正申告が必要になります。

死亡後7~9ヶ月:申告書の作成

財産が確定したら申告書の作成に入りますが、不動産評価や株式評価、特例適用の判断には専門知識が必要です。自分で作成する場合は最低でも2~3ヶ月の余裕を見てください。

税理士に依頼する場合、財産評価の適正な判断、小規模宅地等の特例など各種特例の適用判断、準確定申告との調整を一括して対応できます。相続税は財産評価の方法によって税額が大きく変わるため、不動産や非上場株式がある場合は専門家への依頼を検討すべきです。

死亡後10ヶ月以内(期限日):納税資金の確保と申告・納付

申告期限日までに申告書の提出と納税の両方を完了させる必要があります。納税資金が不足する場合、相続財産の売却や金融機関からの借入れを検討してください。

申告書は被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する税務署に提出します。提出方法は窓口持参、郵送、e-Taxから選択でき、納付は現金納付、電子納税、ダイレクト納付、クレジットカード納付などから選べます。郵送の場合は消印日が提出日となりますが、配送遅延のリスクを考慮し数日前には投函してください。

申告期限に遅れそうな場合・納付が困難な場合の対処法

申告期限が迫っているものの準備が間に合わない、または納税資金が不足しているケースがあります。申告期限の延長は限定的な事由でのみ最大2ヶ月認められ、納税については延納制度(最長20年の分割)や物納制度(不動産等での納付)が利用可能です。ただしいずれも事前申請と要件確認が必要なため、期限の3ヶ月前には税理士に相談し、対応策を検討してください。

申告期限の延長が認められるケース

申告期限の延長は、遺言書の新たな発見、胎児の出生、相続人の異動など限定的な事由でのみ最大2ヶ月認められます。遺産分割協議の難航や書類準備の遅れは延長事由に該当しません。

延長が認められる可能性のある事由は、遺言書の新たな発見や遺贈の放棄、相続人となる胎児が生まれた場合、認知等により相続人に異動が生じた場合、死亡退職金の支給が確定した場合です。海外在住の相続人による書類準備の遅延や災害による資料散逸も、客観的な証拠があれば検討対象となります。

申請は申告期限前に所轄税務署へ行い、延長が必要な理由を具体的に示す資料を提出します。ただし安易な延長は認められず、延長期間内に速やかに申告・納付を完了させる必要があります。期限延長の検討は専門的な判断が必要なため、期限の3ヶ月前には税理士に相談し、スケジュール管理と必要書類の準備を進めてください。

納税資金が不足する場合:延納制度

延納制度は相続税を分割納付できる制度で、納付税額が10万円を超え、一時納付が困難で、担保提供が可能な場合に最長20年の分割が認められます。ただし延納税額には利子税が課されます。

延納の要件は4つあります。納付税額が10万円を超えていること、金銭で一時に納付することが困難な事情があること、担保を提供できること、延納税額に対して利子税が課されることを了承することです。延納申請には、延納申請書、担保提供関係書類、財務状況を示す書類が必要で、申告期限までに提出してください。

延納が認められた場合でも、分割期間中は利子税が発生し続けるため、総支払額は一括納付より増えます。延納期間は相続財産に占める不動産の割合によって異なり、不動産が多い場合は最長20年、動産や現金が中心の場合は最長5年となります。

延納でも困難な場合:物納制度

物納制度は現金の代わりに不動産や有価証券で納税する制度で、延納を利用しても納税が困難な場合にのみ認められます。物納できる財産には優先順位があり、第1順位は国債・地方債、第2順位は不動産、第3順位はその他の財産です。

物納を希望する場合、申告期限までに物納申請書と物納財産の詳細を示す書類を提出します。税務署による財産評価が行われ、適正と判断されれば物納が認められますが、審査には時間がかかるため早めの準備が必要です。物納に適さない財産(担保権が設定されている不動産、境界が不明確な土地など)もあるため、事前に税理士に相談してください。

その他の納税資金確保方法

延納・物納以外にも、相続財産の売却、金融機関からの借入れ、生命保険金の活用などで納税資金を確保できます。それぞれの方法には準備期間が必要なため、期限の数ヶ月前から検討してください。

相続財産の不動産売却

相続した不動産を売却して納税資金を確保する方法で、相続人全員の合意があれば実行できます。ただし売却完了まで3~6ヶ月かかるため、早めの着手が必要です。

不動産売却では、相続人全員の合意、適正価格での売却、売却までの時間を考慮する必要があります。急いで売却すると相場より安くなるリスクがあるため、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握してください。相続登記が完了していないと売却できないため、登記手続きも並行して進めます。

また相続した不動産を申告期限から3年以内に売却すれば、譲渡所得税の特例(取得費加算)を利用でき、税負担を軽減できます。売却のタイミングは納税資金の確保だけでなく、税制面も考慮して決定すべきです。

金融機関からの借入れ

金融機関では相続税納付に対応した融資制度を用意しており、不動産担保ローンや相続税対策専用ローンが利用できます。審査に1ヶ月程度かかるため、期限の2~3ヶ月前には相談してください。

不動産担保ローン

相続した不動産や既存の不動産を担保として融資を受ける方法です。一般的な不動産担保ローンと比べて金利が低く設定されていることが多く、比較的長期の返済期間を設定できます。担保評価や返済計画の審査があるため、申込から融資実行まで1ヶ月程度の時間が必要です。担保価値は評価額の60~70%程度が目安となります。

相続税対策専用ローン

相続税の納付に特化した金融商品で、一般的な不動産担保ローンよりも手続きが迅速です。都市銀行や信託銀行を中心に取り扱っており、相続税額の最大90%程度まで借入できる場合もあります。審査基準も相続税納付に配慮した設計となっており、返済期間は1~10年程度が一般的です。金利は年1~3%程度で、延納の利子税より低い場合もあります。

事業性融資(事業用資産を相続した場合)

事業用の不動産や事業そのものを相続した場合、事業性の融資を活用できる可能性があります。この場合、事業の収益性や将来性も考慮した審査となるため、純粋な不動産担保融資よりも有利な条件となることもあります。事業承継に伴う運転資金や設備投資も含めて融資を受けられる場合があるため、事業を継続する予定なら検討すべきです。

いずれの借入方法も、金融機関によって融資条件や審査基準が異なります。複数の金融機関に相談し、金利、返済期間、審査期間を比較してください。借入から実際の融資実行まで一定の時間を要するため、納付期限に余裕を持って相談することが重要です。

生命保険金の活用

被相続人の生命保険金は比較的早期に受け取れ、500万円×法定相続人数まで非課税となるため、優先的に納税資金に充てるべきです。保険金請求から入金まで1~2週間程度で完了します。

生命保険金は相続税の課税対象ですが、非課税枠(500万円×法定相続人数)があるため、この範囲内であれば相続税がかかりません。非課税枠を超えた部分は相続財産に加算されますが、保険金は現金で受け取れるため納税資金として最も活用しやすい財産です。

保険金の請求手続きは、保険会社に死亡診断書と保険証券を提出するだけで完了します。他の相続財産と異なり、遺産分割協議の対象外となる場合が多いため、受取人が指定されていれば迅速に現金化できます。納税資金が不足する場合は、まず生命保険金の請求から着手してください。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
申告期限に遅れるケースが絶対にないとは言えません。ただし、専門家(税理士)へ依頼があって正式に受託された相続税申告において期限後申告となるケースは少ないでしょう。専門家である以上、期限内申告にこだわっているという点もありますが、期限に間に合わなそうな依頼を受け付ける税理士が少ないという背景もあります。
当該「期限に間に合わなそう」と専門家が判断する最も典型的なパターンが相続人同士揉めている(遺産分割協議がまとまらない)場合です。双方とも代理人(弁護士)を立てて争うという状況下では税理士はご依頼の受託を躊躇します。
専門家が仕事を受けられないようなケースにおいては申告期限に間に合わないという事態も予想されます。
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭

特殊なケースで申告期限が変わる・手続きが複雑になる例

相続税の申告は、状況によって手続きが複雑になったり、通常より時間を要したりすることがあります。ここでは、特に注意が必要な特殊なケースについて解説します。

海外在住の相続人がいる場合

近年、海外在住の相続人がいるケースが増えています。この場合、書類の取得や連絡調整に通常以上の時間がかかるため、早めの対応が必要です。
海外在住者との相続手続きで特に時間を要する点として、戸籍謄本等への署名や押印の取得、現地の公証手続き、書類の国際郵送などがあります。これらの問題に対処するため、日本国内の親族や専門家に包括的な委任状を作成してもらい、代理人として手続きを進めることも検討に値します。
また、海外在住の相続人が日本の相続手続きに不慣れな場合も多いため、現地の法律専門家と日本の税理士が連携して対応することで、スムーズな手続きが可能となります。

相続放棄・限定承認の検討

相続人は、相続開始を知った日から3ヶ月以内であれば相続放棄や限定承認を選択することができます。この熟慮期間は相続税の申告期限(10ヶ月)より短いため、まずはこの判断を優先して行う必要があります。
相続放棄を選択した場合、その人の相続税申告は不要となりますが、他の相続人の税負担が増える可能性があります。例えば、被相続人に多額の借金があった場合、相続放棄をした人の分の債務も他の相続人が負担することになります。
限定承認の場合は、相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務を返済する責任を負います。ただし、手続きが複雑で専門家のサポートが必要になることが一般的です。

遺産分割協議が長期化したとき

相続人間で遺産分割の協議が長引くケースは少なくありません。しかし、申告期限は協議の進行状況に関係なく設定されているため、期限内に分割が確定しない場合でも申告は必要です。
このような場合、法定相続分などに基づいて一旦申告を行い、その後分割が確定した時点で修正申告を行うという対応が可能です。具体的には次のような流れになります。

  1. 申告期限までに:法定相続分などで暫定的に申告
  2. 遺産分割協議成立後:実際の分割内容に基づいて修正申告

このように、特殊なケースでは通常以上に慎重な対応が求められます。特に、海外在住者がいる場合や遺産分割協議が難航しそうな場合は、早い段階から税理士などの専門家に相談し、期限に余裕を持って手続きを進めることが重要です。

相続税申告を成功させるためのポイント

相続税の申告を円滑に進めるには、早期着手と専門家の適切な選択が重要です。死亡後すぐに相続人確定と財産調査を開始し、3ヶ月以内に相続放棄の判断、4ヶ月以内に準確定申告、10ヶ月以内に相続税申告を完了させる必要があります。相続税に精通した税理士を選ぶ際は、申告実績件数、相続専門チームの有無、報酬体系の透明性を確認し、相談のしやすさも重視してください。

税理士の選び方

相続税の申告を任せる税理士は、相続税の申告実績、専門チームの有無、報酬体系の透明性で判断してください。相続税は財産評価の方法で税額が大きく変わるため、実績豊富な専門家を選ぶことが重要です。

申告実績は年間10件以上を目安とし、不動産評価や非上場株式評価の経験を確認してください。相続専門チームがある事務所は、複雑なケースにも対応できる体制が整っています。報酬体系は着手金と成功報酬の内訳、追加費用の発生条件を事前に確認し、不明瞭な点は質問してください。

また相談のしやすさや説明の丁寧さも重要な判断基準です。初回相談で専門用語を分かりやすく説明してくれるか、質問に真摯に答えてくれるかを確認し、信頼できる税理士を選んでください。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
相続税申告をスムーズに進めるために重要な点を何か一つ挙げるとするなら、相続開始前の「被相続人が行う準備」につきます。相続が発生してからではできることが限られてしまうからです。
現行法において日本は、各相続人が一定の権利を主張できるため法定相続分から逸脱した遺産分割案を受け入れるのは難しく、そのような案を考えているのであれば被相続人が生前から遺言書を準備する、生命保険に加入するなどの対策が必要となります。
また、各相続人へ資産を平等に分配しようと考えていたとしても、主たる資産が不動産のみでは分割が難しく売却や共有を検討しなくてはなりません。売却を急げば、適正価額での取引が損なわれるし、所有権者が多くなる共有は権利関係が複雑になり、おススメできません。生前から分割しやすい資産に組み替えるなどを検討しておきましょう。
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭

まとめ

相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」で、申告と納付を同時に完了させる必要があります。期限の計算は国税通則法に基づき「起算日に応当する日の前日」が満了日となり、土日祝日の場合は翌営業日に繰り下げられます。

期限を過ぎると無申告加算税(5%~30%)と延滞税が課され、悪質な場合は重加算税(40%)の対象となります。税務署からの調査通知前に自主申告すれば5%に軽減されるため、期限超過に気づいた時点で速やかに申告してください。

申告期限までには、相続人確定(3ヶ月以内)、準確定申告(4ヶ月以内)、遺産分割協議、申告書作成、納税資金確保と多くの手続きが必要です。特に遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で時間がかかるため、死亡後すぐに着手すべきです。

期限に間に合わない場合、申告期限の延長(最大2ヶ月)は限定的な事由でのみ認められます。納税資金が不足する場合は延納制度(最長20年)や物納制度を利用できますが、事前申請と要件確認が必要です。いずれの場合も、期限の3ヶ月前には税理士に相談し、対応策を検討してください。

この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
大学で財務会計ゼミに入ったことがきっかけとなり税理士資格を取得。総合不動産会社、不動産証券化(SPC)特化型事務所、総合会計事務所を経て令和へ年号が変わるとともに開業。これまでの職歴から不動産周りの税務会計、資産税(相続)に強みがあります。

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この記事の執筆者
相続財産センター編集部

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