亡くなった親が加入していた生命保険がわからない場合に知っておきたい「生命保険契約照会制度」について解説


「亡くなった親が生命保険に入っていたはずだけど、どこの保険なのか聞いていなかった」「認知症になって、加入状況がわからなくなってしまった」。そんな場合、以前は親族が保険証書や関係書類を探すなどして、確かめるしかありませんでした。しかし、2021年7月に「生命保険契約照会制度」がスタートし、親族などが必要な手続きを取ることで、生命保険についての契約の有無を、一括で問い合わせることが可能になりました。制度の概要と利用方法について解説します。
どんな制度なのか
生命保険の受取には請求が必要
生命保険(死亡保険)の保険金を受け取るためには、受取人の請求が必要です。契約者の死亡により保険会社側から連絡があったり、自動で支払われたりすることはありません。しかも、保険金の支払いには、亡くなった日の翌日から3年という時効があり、これを過ぎると受け取れなくなる可能性があります(3年を過ぎても、保険金の支払いに応じるケースもあります)。
近年、親などの保険契約者が一人住まいのまま亡くなったり、認知症を発症したりして、親族が生命保険契約について把握できていないケースが増えています。このような場合、従来は次のような手立てで、その存在を突き止める必要がありました。
・保険証券を探す
・生命保険会社から定期的に送付される案内などの通知物を探す
・契約者の預金通帳の保険料の口座振替履歴などを確認する
・年末調整や確定申告で、生命保険料控除の適用を受けていないかを調べる
ゼロから調べるのは大変で、限界もあります。結果的に生命保険の存在がつかめず、保険金を受け取ることができなければ、契約者や受取人にとって大きな不利益となってしまうでしょう。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
業界団体を通じて一括で調査、回答を行う
そうした問題を解決するために設けられたのが、生命保険契約照会制度です。照会の窓口になり、その業務を行うのは、生命保険会社全社が加わる一般社団法人生命保険協会です。
契約者または被保険者(保険の保障の対象となる人、契約者と同一の場合も別の場合もある)=「照会対象者」が亡くなったり、認知判断能力が低下したりした場合などに、同協会が法定相続人や親族などからの照会を受け付け、対象者の生命保険契約の有無について一括して生命保険各社に調査を依頼し、その結果をとりまとめて照会者に回答する――というのが制度の仕組みです。
なお、調査対象となる契約は、照会受付日現在(照会対象者が死亡している場合の照会では、死亡日まで最低3年間は遡ります)、有効に継続している個人保険契約です。例えば、死亡保険金支払済、解約済、失効済の契約は含まれません。財形保険・財形年金保険、支払が開始した年金保険、保険金などが据置きとなっている保険は対象外です。
照会が可能な3つのケース
正確には、以前から災害によって契約者が死亡した場合などに限って、こうした照会が可能でした。新たに設けられた制度では、平時においても、それができるようになったのです。
照会対象者がどのような状態になった場合に利用することができるのかを整理すると、次のようになります。
1.平時において死亡した場合
2.平時において認知症などにより認知判断能力が低下した場合(医師による診断が必要です)
3.災害で死亡、行方不明となった場合
生命保険契約照会制度の利用方法
平時において死亡した場合
照会対象者が病気などで亡くなり、生命保険契約の存在が分からない場合は、
・法定相続人
・遺言執行人
などが保険加入状況を照会できます。
申請の際には、照会者の本人確認書類や相続関係を証明する戸籍などが必要です。
平時において認知判断能力が低下した
照会対象者の認知判断能力が認知症などにより低下し、生命保険契約の存在が分からない場合は、
・法定代理人:成年後見人などの法律であらかじめ決められている代理人
・任意代理人:法定代理人以外のすべての代理人
・3親等内の親族
などが保険加入状況を照会できます。
申請の際は、照会者の本人確認書類のほか、生命保険協会指定の診断書などが必要です。
災害で死亡または行方不明となった
災害救助法が適用された地域で被災し、家屋などの流失または焼失などにより生命保険契約に関する請求が難しい場合、
・死亡または行方不明となった人の配偶者、親、子、兄弟姉妹
が保険加入状況を照会できます。
照会の方法、料金
●平時における死亡/認知能力低下の場合
・オンライン、または郵送で照会します。
・費用は、照会1件につき3,000円(税込)です。該当する契約がなかったとしても、返金されません。
●災害時の場合
・電話で照会可能です。
・費用はかかりません。
申請後の流れ
照会申請を行うと、生命保険協会が利用料金の支払いを確認したときから2週間程度で、保険会社ごとの生命保険契約の有無が開示されます。
ただし、この制度で開示されるのは、あくまでも「契約の有無」に限られることに注意してください。詳細な保険契約の内容については、開示された情報を基に、各保険会社へ個別に確認する必要があります。
保険金の支払い可能な契約があった場合は、該当する保険会社に請求方法を問い合わせ、手続きを進めるようにします。保険金の請求に当たっては、あらためて必要書類などを用意する必要があります。
本制度により契約の有無を一括確認できる点は実務上非常に有用ですが、あくまで「契約の有無」のみの開示となるため、詳細内容については各保険会社への個別確認が必要となります。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
まとめ
亡くなった親の生命保険の加入状況が不明な場合などには、生命保険契約照会制度を利用して、保険会社ごとの状況を知ることができます。料金も発生しますから、保険証書を探すなどの手立てを講じたうえで、どうしてもわからないときに利用するのがいいでしょう。
自分の死後に確実に保険金が支払われるよう、家族が保険の存在を知ることができるようにしておくことも大切です。
生命保険金は相続税の課税対象となるケースがあり、一定の非課税枠も存在するため、契約確認後は税務面も含めて専門家へ相談することが望ましいといえます。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
記事監修者 中澤税理士からのワンポイントアドバイス
生命保険の契約内容がわからない場合でも、「生命保険契約照会制度」を活用することで、複数の保険会社に対して一括で契約の有無を確認できる点は非常に有用です。
特に相続時においては、生命保険は見落とされやすい資産の一つであり、確認漏れがあると本来受け取れる保険金を失うリスクもあります。
また、生命保険金は相続税の課税対象となるケースもあるため、契約の有無を把握したうえで税務面も含めた対応が重要です。
保険がわからない場合には、早めの確認と制度活用をおすすめします。
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