所得税・相続税に適用される「障害者控除」の基礎知識・申請方法などを解説

障害を持つ人やその家族を対象とした所得税・住民税、相続税の負担軽減措置=「障害者控除」をご存じでしょうか。適用には要件があり、控除額は障害の程度によって異なります。具体的にどのような制度なのか、解説します。
所得税・住民税の障害者控除とは
所得控除の1つ
所得税や住民税は、基本的に所得を基にして計算される税金です。所得とは、収入(売上)から事業のために使った経費などを差し引いた利益を指します。
税額は、この所得(課税所得)に税率を掛けて算出されるため、所得が高いほど納める税金は増えます。逆に所得を抑えることは、節税につながるわけです。
所得控除とは、決められた要件を満たすと、所得から一定の金額を差し引ける仕組みをいい、「医療費控除」「配偶者控除」などがあります。「障害者控除」もそうした所得控除の1つです。
障害者控除の概要
障害を持つ納税者本人や、親族(同一生計配偶者または扶養親族)が次に説明する「所得税法上の障害者」に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを障害者控除といいます。
この障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族が障害者の場合にも適用されます。
障害者控除は、大きく下記の3つの区分に分けられ、それぞれで対象となる条件や控除額が異なります。障害の程度が重いほど、家族の負担が大きいほど、控除額は多くなります。
・障害者
・特別障害者
・同居特別障害者
「同居特別障害者」は、特別障害者と同居し、同じ家計内で生活している家族をいいます。
障害者控除の対象となる人
今の区分について、少し詳しくみていきます。
障害者
以下のようなケースが、通常、(一般)障害者として障害者控除の代表例になります。
・知的障害者と判定された
・身体障害者手帳:3~6級
・精神障害者保健福祉手帳:2~3級
・療育手帳:B判定
・65歳以上かつ市町村によって障害者控除の対象と認められている
・戦傷病者手帳の交付を受けている など
特別障害者
以下の項目に該当する場合には、特別障害者として障害者控除の対象になります。
・重度の知的障害と判定された
・身体障害者手帳:1級もしくは2級
・精神障害者保健福祉手帳:1級
・療育手帳:A判定
・原子爆弾被害者の認定を受けている
・寝たきりで複雑な介護を必要としている など
一般の障害者よりも、障害の度合いが高いケースが当てはまります。
障害者手帳がなくても対象になることがある
障害者控除は、手元に障害者手帳がなくても、市町村から「障害者に準ずる状態」とする認定を受ければ、適用可能です。例えば、要介護認定を受けていて常時の介護が必要な高齢者、認知症により日常生活に著しい支障がある人などが該当します。
適用の可能性がある場合には、自治体の窓口で相談してみましょう。
障害者控除の控除額
所得税の控除額
障害者控除の対象となる人が、所得税を計算する際に控除される金額は、次の通りです。
・障害者:27万円
・特別障害者:40万円
・同居特別障害者:75万円
住民税の控除額
障害者控除は、所得税だけでなく住民税にも適用できます。控除額は、次の通りです。
・障害者:26万円
・特別障害者:30万円
・同居特別障害者:53万円
税金はいくら減額されるのか
障害者控除が適用されると、納税額の計算の際に、上記の金額を所得から差し引くことができます。その結果、所得税の納税額がいくら減るのかは、その年の所得によって異なります。
実際の「減税額」がいくらになるのか、年収250万円の会社員(一般の障害者)のケースでみてみましょう。順を追って、次のように計算します。
「基礎控除」は、一定の所得以下の人すべてに適用される控除で、年間所得2,400万円以下の場合は、48万円です。
「給与所得控除」とは、所得税の課税対象となる給与所得を算出する際に、以下のように年収額に応じて一定額を控除できる制度です。
【給与所得控除額の計算表】
収入金額(源泉徴収票の「支払金額」)
190万円まで:65万円
190万円超 〜 360万円まで:収入金額 × 30% + 8万円
360万円超 〜 660万円まで:収入金額 × 20% + 44万円
660万円超 〜 850万円まで:収入金額 × 10% + 110万円
850万円超:195万円(上限)
(注)2025年12月1日に施行され、同年分から適用されている金額です。
所得税は、所得が高いほど税率もアップしていく累進課税という仕組みになっています。②で計算した㋑所得92万円を、以下の速算表(国税庁)に当てはめると、税率は5%に該当することがわかります。
ですから、障害者控除(所得から差し引かれる金額)に税率5%を掛けた1万3,500円が、実際に減額される税額ということになります。

また、住民税については、税率が一律10%です。
同じ条件の場合、障害者控除額は26万円なので、差し引かれる住民税の金額は、
26万円×10%=2万6,000円
となります。
特別障害者、同居特別障害者についても、所得税、住民税に関する計算方法は変わりません。
所得税、住民税の障害者控除の申請方法
所得税や住民税の障害者控除の適用を受けるためには、申請が必要です。申請方法は、会社員か個人事業主かによって異なります。
会社員は「年末調整」のとき
会社員が障害者控除を受けるには、年末調整の際に、勤務先に以下の書類を提出します。
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」⇒控除対象の障害者を記載
・「障害者手帳の写し(身体・精神・療育のいずれか)」または「障害者控除対象者認定書」(会社から提出を求められる可能性がありますが、義務ではありません)
年末調整で申請漏れがあった場合には、次に説明する確定申告で申請することができます。
個人事業主は「確定申告」のとき
年末調整を受けていない個人事業主などは、確定申告で手続きを行います。確定申告は、1年間(1月1日~12月31日)の所得について、原則として翌年2月16日から3月15日の間に行います(開始日と最終日が土日祝になる場合は、翌営業日が開始日・最終日となります)。
申告書への記入は、以下のように行います。
〈第一表〉
「勤労学生、障害者控除」の欄に、控除額を記入(一般の障害者なら27万円、特別障害者の場合は40万円)
〈第二表〉
・控除の対象者が本人:「本人に関する事項」の「障害者」「特別障害者」のいずれかに〇印
・控除の対象が扶養親族:「配偶者や親族に関する事項」欄に、続柄など必要事項を記入
申告書には、添付書類などは必要ありません。
申告書の提出には、税務署の窓口で提出する方法、郵送で提出する方法、e-Tax(電子申告)で行う方法があります。
相続税の障害者控除
障害を持つ相続人に適用される
遺産を相続する際にかかる相続税に関しても、障害者控除があります。
相続税の障害者控除は「相続人が障害者であるとき」に適用されます。被相続人(亡くなった人)ではありませんから、注意してください。
適用の要件
この控除を受けられる条件は、次の3つです。
・相続時に日本国内に住所がある
・相続時に障害者であること
・法定相続人(被相続人の配偶者、被相続人の血族)であること
以上のすべてにあてはまる場合に、控除を受けることができます。
控除額の計算方法
相続税の障害者控除は、対象者(障害を持つ相続人)の85歳までの年数に応じて、以下のように計算されます。
・障害者:10万円×(85歳−相続開始時の年齢)
・特別障害者:20万円×(85歳−相続開始時の年齢)
例えば、
Ⓐ55歳の一般の障害者の場合:10万円×(85−55)=300万円の控除
Ⓑ65歳の特別障害者の場合:20万円×(85−65)=400万円の控除
となります。
なお、相続税の障害者控除は、所得税などで説明した所得控除ではなく、税額から直接差し引ける「税額控除」です。
上記の例でいえば、仮に普通に計算した相続税額が400万円だった場合、
Ⓐの相続税納税額:400万円-300万円=100万円
Ⓑの相続税納税額:400万円-400万円=0円
ということになります。
相続税の障害者控除によって相続税が0円になった場合は、申告の必要はありません。また相続税よりも障害者控除の金額が上回った場合、残額をその障害者の扶養義務者の相続税から差し引くことが可能です。
まとめ
所得税や相続税などには、障害を持つ人やその家族を対象にした障害者控除があります。ただし、控除を受けるためには、申請が必要です。疑問点がある場合などには、税理士などの専門家に相談してみましょう。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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