コメも電気代も下がったのに、なぜ食費は3.1%上昇?──6月CPI+1.7%、転嫁できない中小企業はどうする?

2026年7月24日、総務省統計局が6月の全国消費者物価指数(CPI)を公表しました。総合指数は113.6で前年同月比+1.7%と、5月の+1.5%から上昇率が再び加速しています。一方で中身を見ると、コメ類は-8.7%、電気代は-1.7%と「下がった品目」も目立ちます。それなのに、生鮮食品を除く食料は+3.1%——。「コメも電気代も下がったはずなのに、食費や仕入コストの負担は軽くならない」という実感と数字のズレはなぜ生まれるのでしょうか。本記事では6月CPIの中身を腑分けし、価格転嫁に悩む中小企業がこの数字をどう読み、どう動くべきかを解説します。
6月の消費者物価は+1.7%——5月から再加速
6月の全国CPI(2020年=100)の主な数字は次のとおりです。
・総合指数:113.6(前年同月比+1.7%、前月比・季節調整値+0.3%)
・生鮮食品を除く総合(コアCPI):113.1(同+1.6%)
・生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI):112.2(同+1.7%)
総合の上昇率は2026年に入って1%台前半で推移してきましたが、6月は5月から0.2ポイント拡大し、+1.7%へ再加速しました。日銀が政策金利を1%に引き上げた後も、物価の基調は簡単には鎮まっていないことを示す数字です。
コメは-8.7%、電気代は-1.7%——「下がった品目」のカラクリ
今回の統計で目を引くのが、下落品目です。米類は前年同月比-8.7%と大きく下がり、電気代は-1.7%、都市ガス代は-3.4%、エネルギー全体でも-0.1%とマイナスになりました。
ただし、ここには注意が必要です。米類の指数は195.0で、2020年と比べるとほぼ2倍の水準のままです。前年の急騰の反動で「前年比では」下がっただけで、水準そのものが安く戻ったわけではありません。2025年産の増産・在庫増で新米価格の下落が見込まれる背景は、こちらの記事で詳しく解説しています。
新米5kgが3,000円を割る可能性は?2025年産の豊作と在庫増加が価格に与える影響を解説
また、エネルギーの下落にはガソリン暫定税率廃止などの政策効果が効いています。統計局の試算では、政策効果がエネルギー全体で総合指数を0.74ポイント押し下げたとされています。つまり、政策で抑えられている分を除けば、物価の実勢は見かけの+1.7%より強いと読むこともできます。
それでも食費が3.1%上がる理由
下がった品目がある一方、生鮮食品を除く食料は+3.1%と高い伸びが続き、寄与度0.78ポイントと総合指数の最大の押し上げ要因になっています。内訳を見ると、上昇しているのは加工食品や嗜好品が中心です。
・コーヒー豆:+23.3%
・まぐろ:+17.9%
・灯油:+16.5%
・弁当:+10.6%
・チョコレート:+8.8%
・飲料:+6.8%/菓子類:+5.7%
・肉類:+4.3%(豚肉・国産品は+5.3%)/調理食品:+4.2%
コメや電気代のような「素材・インフラ」は前年の反動や政策効果で下がる一方、原材料高・物流費・人件費の上昇分を反映した加工食品・調理食品の値上げは今も続いている——これが「コメは下がったのに食費は上がる」というねじれの正体です。
中小企業への影響——仕入コストは「まだら」に上がる
経営者にとって重要なのは、コストの上がり方が品目によって「まだら」になっている点です。飲食業や食品関連業では、コーヒー豆・肉類・調理食品など仕入の中核部分の上昇が続いており、負担は軽くなっていません。一方、電気・ガスなどエネルギーコストはいったん一服しており、固定費を見直す好機ともいえます。
さらに人件費です。2026年度の最低賃金は7月下旬に目安額の答申が見込まれており、昨年に続く大幅引き上げとなれば、仕入コストと人件費の上昇が同時に押し寄せることになります。物価上昇率+1.7%という平均値だけを見て「落ち着いてきた」と判断するのは危険です。
価格転嫁——「平均+1.7%」ではなく「自社の仕入品目」で語る
価格転嫁の交渉や値上げの告知では、CPIの使い方がポイントになります。実務上の要点は3つです。
・1. 根拠は「総合+1.7%」ではなく自社に関係する品目の指数で示す:たとえば飲食店なら「コーヒー豆+23.3%・肉類+4.3%」など、自社の原価構成に対応する品目・中分類の数値を使うほうが、取引先や顧客への説得力が格段に高まります。
・2. 値上げは品目別・小刻みに:全品一律の値上げは顧客離れを招きやすいため、コスト上昇の大きい品目から優先順位をつけて改定します。
・3. 転嫁しきれない分は資金繰りとセットで考える:金利のある世界に戻り、借入コストも上昇しています。運転資金の借換えや固定費の見直しは、値上げと同時に進めるべき課題です。金利上昇の影響はこちらの記事で解説しています。
国債金利が29年ぶりに2.7%台!中小企業の借入金利・運転資金への影響はいくら?
まとめ
6月の全国CPIのポイントを整理します。
・総合指数は113.6・前年同月比+1.7%で、5月の+1.5%から再加速
・米類-8.7%・電気代-1.7%と下落品目はあるが、米類の水準は2020年比ほぼ2倍のまま
・ガソリン暫定税率廃止などの政策効果がエネルギーで総合を0.74ポイント押し下げており、実勢はより強い
・生鮮食品を除く食料は+3.1%で最大の押し上げ要因。加工食品・調理食品の値上げが継続
・中小企業は「まだら」なコスト上昇に合わせ、自社の仕入品目ベースで価格転嫁の根拠を示すことが重要
7月下旬には最低賃金の目安答申も控えています。平均値の落ち着きに安心せず、自社のコスト構造を品目レベルで点検し、転嫁と資金繰りの手を先に打っておきましょう。
原価上昇分をどこまで価格に載せるか、転嫁しきれない分をどう資金繰りでカバーするかは、自社の数字を踏まえた個別の判断が必要です。顧問税理士に早めに相談し、価格改定と資金計画をセットで検討してください。まだ顧問税理士をお持ちでない場合は、ビスカスの税理士無料紹介サービスをご活用ください。
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