相続税申告は必要か?基礎控除・申告が必要なケースと注意点を徹底解説

相続税申告は必要か?基礎控除・申告が必要なケースと注意点を徹底解説
最終更新日:2026/04/15
この記事の監修者
松井 信行 公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行 (税理士・公認会計士)
「遺産が少ないから申告は不要だろう」と判断したまま10ヶ月が経過し、後から加算税を課されるケースは実際に起きています。申告不要の基本条件は「正味の遺産額が基礎控除額以下で、申告要件のある特例を使わない場合」。ただし相続税がゼロでも申告が必要な例外があり、見落とすと特例の適用が消えます。本記事で判断基準と落とし穴を整理します。

相続税申告が不要になる条件

申告不要の判断は「正味の遺産額(課税価格)と基礎控除額の比較」が出発点です。基礎控除の計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」。この金額を超えなければ相続税は発生せず、申告も不要です。ただし基礎控除以下であっても、申告要件のある特例・控除を利用する場合は申告が必要になります。

以下のいずれかの条件を満たす場合、申告は不要です。

  1. 正味の遺産額(課税価格)が基礎控除額以下で、申告することが適用要件になっている特例や控除を利用しない場合
  2. 正味の遺産額(課税価格)が基礎控除額超であっても、申告することが適用要件になっている特例や控除を利用せず、かつその他の控除(未成年者控除・障害者控除等)で税額がゼロになる場合
監修者

松井 信行

記事監修者からのワンポイントアドバイス

「遺産総額が基礎控除額以下なら相続税の申告はしなくても良い」と誤って理解されている方は結構いらっしゃいます。
多くのケースではその通りですが、解説にもあるように「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」を適用した結果、課税価格の合計額が基礎控除額を下回る、あるいは相続税額がゼロになったとしてもその場合は申告が必要です。相続税を申告することが適用の要件になっているからです。
また、相続等によって財産を取得した人に被相続人からの生前贈与財産(現時点では相続開始前3年以内)がある場合や相続人に被相続人からの相続時精算課税適用財産がある場合は、それらの財産価額も課税価格に含めなければなりませんので、基礎控除額と比較する際は注意して下さい。

基礎控除の計算方法と法定相続人のカウント

基礎控除額は相続財産から差し引ける非課税枠です。この金額以内なら相続税は発生しません。

基礎控除額の計算式:「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」

例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、法定相続人は合計3人なので、基礎控除額は4,800万円です。正味の遺産額が4,800万円以下で、申告要件のある特例・控除を利用しなければ申告は不要となります。

法定相続人の数を数える際の注意点

  • 相続放棄をした人も、基礎控除額の計算上は法定相続人の数に含める(相続放棄の有無を相続税額の計算に影響させないため)
  • 養子の数には制限がある(実子がいる場合:養子1人まで/実子がいない場合:養子2人まで)。養子縁組を利用した過度な節税を防ぐための制限です。
  • これは基礎控除額等の計算上の制限であり、遺産分割や法定相続分の計算における相続人の数とは異なる場合がある

基礎控除の詳細な計算方法はこちらで解説しています。

相続財産に含まれるもの・含まれないものの詳細はこちらをご参照ください。

「相続税ゼロ」でも申告が必要なケース

「相続税がかからない=申告不要」という考えは大きな誤解です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などは、申告して初めて適用される制度です。特例を使うことで相続税がゼロになる場合でも、申告を怠ると本来の評価額で課税され、多額の相続税が発生します。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が取得した財産が1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、相続税はかかりません。この特例により相続税がゼロになる場合でも、申告をしなければ特例の適用を受けられません。 
申告期限までに遺産分割が完了していない場合は、『申告期限後3年以内の分割見込書』を期限内に提出すれば、分割後に更正の請求により特例の適用を受けられます。

小規模宅地等の特例

被相続人の自宅や事業用地について、一定の要件を満たす場合に評価額を最大80%減額できる制度です。例えば、評価額1億円の自宅土地が2,000万円の評価となり、基礎控除額以下になるケースもあります。この特例も申告をして初めて適用されるため、申告を怠ると本来の評価額で課税されてしまいます。 
特例の適用要件は複雑で、同居要件・所有要件・居住要件など細かい条件があります。専門家への相談が推奨されます。

その他の申告要件のある特例

農地の納税猶予・寄付金控除なども申告が必要な特例です。これらは期限後申告不可のため特に注意してください。各特例の期限後対応は以下の通りです。

特例・控除 期限後対応
配偶者の税額軽減(配偶者控除) 申告期限までに遺産分割が確定していれば期限後申告可

※遺産分割が確定していない場合は後述の通り。
小規模宅地等の特例 申告期限までに遺産分割が確定していれば期限後申告可

※遺産分割が確定していない場合は『申告期限後3年以内の分割見込書』を期限内に申告書とともに提出すれば分割確定後に適用可
農地の納税猶予 期限後適用不可
寄付金控除 期限後適用不可

その他の控除

  • 未成年者控除(2022年4月以降は18歳に達するまでの年数×10万円)
  • 障害者控除(85歳に達するまでの年数×10万円、特別障害者は20万円)

下記チェックリストのいずれかに該当する場合は申告が必要な可能性があります。

申告要否チェックリスト

  • ☐ 配偶者の税額軽減を受ける予定がある
  • ☐ 小規模宅地等の特例を適用する予定がある
  • ☐ 農地の納税猶予を受ける予定がある
  • ☐ 相続時精算課税制度を利用した贈与がある
  • ☐ 被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けている
  • ☐ 名義預金など判断が必要な財産がある

適用できる特例・控除の一覧はこちらで確認できます。

申告漏れを招く財産と注意点

申告要否の判断は基礎控除との比較が基本ですが、相続財産に含める範囲を誤ると申告漏れに直結します。生前贈与・みなし相続財産・名義預金の3点が特に見落とされやすく、税務調査で最も指摘されやすい項目です。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内で、遅延すると加算税・延滞税のペナルティが発生します。

生前贈与の加算(持ち戻し期間に注意)

相続等によって財産を取得した人が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産は、贈与時の価額で相続財産に加算する必要があります。令和6年1月1日以降の暦年課税による贈与については、この加算期間が段階的に7年に延長されます。

相続開始時期によって生前贈与加算の対象期間は以下の通りです。

相続開始時期 加算対象期間
令和6年1月1日~令和8年12月31日 相続開始前3年以内
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日~相続開始日
令和13年1月1日~ 相続開始前7年以内

延長分(相続開始前3年超7年以内)の贈与は、総額100万円まで加算対象から除外されます。被相続人から3年以内に贈与を受けた場合、贈与契約書や贈与税申告書を確認し、暦年課税で対象となるものがあれば金額に関わらず相続財産に加算してください。

相続時精算課税制度の加算

相続時精算課税制度を選択している場合は、制度選択後に受けた贈与財産すべて(年110万円の基礎控除を超える部分)が相続財産に加算されます。2,500万円の特別控除がありますが、これを超える部分には一律20%の贈与税が課されており、相続時に精算されます。制度選択後は暦年贈与に戻ることができないため、長期的な視点での判断が必要です。 
令和6年1月1日以降の相続時精算課税制度には年110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除の範囲内の贈与は相続財産に加算されませんが、基礎控除を超える部分はすべて加算対象です。制度が複雑化しているため、適用を受けている場合は必ず専門家に確認してください。

みなし相続財産と名義預金

生命保険金や死亡退職金は、民法上は相続財産ではありませんが、相続税法上は相続財産とみなされます。受取人が相続人である場合の非課税枠はそれぞれ500万円×法定相続人の数です。例えば法定相続人が3人であれば、生命保険金は1,500万円まで非課税となります。 
名義預金も見落とされやすい財産です。子や孫名義の預金でも、実質的に被相続人が管理していた場合は相続財産になります。通帳や印鑑の管理状況・預金の原資・名義人の認識などから総合的に判断されるため、該当する可能性がある預金はすべて申告に含めることが安全です。

申告期限とペナルティ

相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限後申告となった場合、以下のペナルティが発生します。

  • 無申告加算税(税額の5〜30%)
  • 延滞税
  • 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が受けられない場合がある

税務署から『相続税の申告等についてのご案内』が届いた場合は申告が必要と思われる方に送付される書類です。放置すると税務調査に発展する可能性があるため、速やかに内容を確認し、必要に応じて期限内に申告書を提出してください。

申告漏れとペナルティの詳細はこちらで解説しています。

監修者

松井 信行

記事監修者からのワンポイントアドバイス

相続税の申告要否の一義的な判断基準は"課税価格の合計額が基礎控除額を超えるか"ですので、そこに迷う余地はあまりありません。
もし迷われるとすれば、"相続財産に何をどこまで含める必要があるのか(例えば、名義預金やみなし相続財産)"、あるいは"財産価額を幾らで評価して申告するのか(例えば、土地や非上場株式)"という点で、そこには相続税に関する専門的な知識と経験に基づく高度な判断が必要になります。
そのような点が全くない簡易なケースであれば相続人が自身で相続税の申告を行うことも可能ですが、そのために要する時間や労力、更には万一内容に誤りがあった場合に税務調査や追徴課税を受けるリスクを考えれば、多少費用がかかったとしても専門家に相談・依頼された方が確実・安心で得策なのではないでしょうか。

まとめ

相続税申告の要否は、正味の遺産額と基礎控除額の比較が基本です。ただし次の3点を見落とすと、申告不要と判断した後にペナルティが発生します。

申告しないと特例が消える:配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は申告要件。ゼロ円でも申告が必要です。 
生前贈与・精算課税は課税価格に加算:相続開始前3〜7年以内の贈与や相続時精算課税制度の財産は相続財産に持ち戻されます。 
みなし財産・名義預金を見落とさない:生命保険金や被相続人が実質管理していた口座は相続財産です。

申告期限は10ヶ月と限られています。不動産の評価や特例の適用可否など専門的な判断が必要な場面では、早めに税理士へ相談することで申告漏れと節税の両立が可能です。

相続財産センターでは、経験豊富な税理士を無料でご紹介し、申告の要否判断から申告書作成、二次相続対策まであなたの相続をトータルでサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

相続税がゼロになる場合でも、申告は必要ですか?

特例を利用した結果として相続税がゼロになる場合は申告が必要です。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例・農地の納税猶予などは申告が適用要件となっています。特例を一切使わずに基礎控除以下で税額がゼロになる場合は申告不要です。

遺産が基礎控除額ギリギリの場合、申告は必要ですか?

遺産額が基礎控除額をわずかでも超える場合は申告が必要です。ただし財産評価には幅があり、特に不動産は評価方法により金額が変わるため、専門家に相談することで基礎控除以下と判断されるケースもあります。

申告期限に間に合わない場合はどうすればよいですか?

概算でも期限内に申告し、後日修正申告を行うことが重要です。期限後申告となると特例が受けられなくなる可能性があります。遺産分割が未了の場合は、法定相続分で仮申告を行い、分割後に更正の請求を行います。

税務署から『相続税の申告等についてのご案内』が届きました。必ず申告が必要ですか?

必ずしも申告が必要とは限りませんが、放置すると税務調査に発展する可能性があります。再度、申告の要否を確認したうえで、申告が不要であればその旨を回答し、必要であれば期限内に申告書を提出してください。

生前贈与を受けていたか分からない場合はどうすればよいですか?

税務署で過去の贈与税申告書の開示請求を行うことができます。また、通帳の入金履歴や贈与契約書の有無を確認してください。不明な場合は念のため相続財産に含めて申告することで、後日のペナルティリスクを回避できます。

この記事の監修者
松井 信行 公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行 (税理士・公認会計士)
大学卒業後、東京で大手IT企業や監査法人にて情報システムの新規事業企画や会計士としての実務に長年携わる。その後、自身が相続を経験したことを契機として2014年に相続専門の個人会計事務所を地元で開業。現在は阪神間(主に神戸市・芦屋市・西宮市)で相続税をはじめとする各種税務申告や生前の相続対策相談など、相続に纏わる様々なサービスを数多く手掛けている。

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この記事の執筆者
相続財産センター編集部

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