相続財産とは、被相続人が残した権利義務のすべて

相続財産とは、被相続人(亡くなった方)が亡くなった時点で持っていた財産と債務のすべてです。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払いの税金といったマイナスの財産も含まれます。相続人は、これらを個別に選ぶことなく包括的に引き継ぎます。ただし民法上の相続財産と相続税がかかる財産は範囲が一致しません。最初にこのズレを押さえておくと、以降の判断で迷わなくなります。
相続財産と遺産は同じ意味
相続財産と遺産に意味の違いはなく、同じものを指しています。民法の条文では相続財産という言葉が使われ、日常会話や実務では遺産と呼ばれることが多い、という使い分けの問題にすぎません。
根拠となるのは民法896条です。「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と定められており、権利だけでなく義務(債務)も承継の対象になることがここから読み取れます(e-Gov法令検索:民法)。
民法上の相続財産と相続税の課税財産は範囲が違う
相続財産をめぐるトラブルの多くは、「遺産分割で分ける対象」と「相続税がかかる対象」を同じものだと考えてしまうことから起きます。この2つは重なる部分が大きいものの、一致しません。財産は次の3つに分類できます。
| 区分 | 主な例 | 取り扱い |
|---|---|---|
| 民法・税法とも対象 | 不動産、預貯金、有価証券、借入金 | 遺産分割の対象になり、相続税もかかる |
| 民法上は相続財産でないが課税される | 死亡保険金、死亡退職金、名義預金、一定期間内の生前贈与財産 | 遺産分割の対象外だが、相続税はかかる |
| 民法上も相続の対象外 | 墓地・仏壇、一身専属権、香典 | 遺産分割の対象にならず、相続税もかからない |
たとえば受取人が指定された死亡保険金は、受取人固有の財産なので遺産分割協議で分ける必要がありません。それでも被相続人が保険料を負担していれば、みなし相続財産として相続税がかかります。逆に墓地や仏壇は、祭祀を主宰する人が承継するため分割の対象外であり、相続税も非課税です。
国税庁も、相続税がかかる財産を「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」と定義したうえで、みなし相続財産や生前贈与財産を別枠で課税対象に加えています(国税庁:No.4105 相続税がかかる財産)。
相続財産に含まれるもの
相続財産は、価値のあるプラスの財産(積極財産)と、返済義務のあるマイナスの財産(消極財産)に分かれます。金銭に見積もることができる経済的価値のあるものは、形の有無を問わずすべて相続財産です。不動産や預貯金のように目に見えるものだけでなく、借地権や損害賠償請求権、暗号資産のように実体のないものも対象になります。ここでは両方を一覧で確認し、あわせて債務のほうが多かった場合の判断期限も押さえます。
プラスの財産(積極財産)
| 種類 | 具体例 | 評価・確認のポイント |
|---|---|---|
| 不動産・不動産上の権利 | 土地、建物、マンション、農地、山林、借地権、借家権 | 土地は路線価方式または倍率方式で評価。小規模宅地等の特例で最大80%減額 |
| 金融資産 | 現金、預貯金、上場株式、投資信託、国債、社債、出資金 | 上場株式は4つの価額のうち最も低い額を採用できる |
| 動産・その他の権利 | 自動車、貴金属、美術品、骨董品、ゴルフ会員権、貸付金、損害賠償請求権 | 相続開始日の時価で評価 |
| 事業用資産・知的財産権 | 店舗設備、在庫、売掛金、のれん、著作権、特許権 | 収益性や契約内容によって価値が変わる |
| デジタル資産 | 暗号資産、ネット証券口座、ネット銀行口座、電子マネー | 相続開始日の取引価格で評価。存在自体に気づきにくい |
不動産は、相続税の計算では実勢価格ではなく相続税評価額を使います。市街地の土地は路線価方式、路線価が定められていない地域は固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式です。該当地域の路線価は国税庁:路線価図・評価倍率表で確認できます。被相続人の自宅や事業用の土地であれば、小規模宅地等の特例により居住用宅地330㎡まで評価額が80%減額される可能性があります。ただし同居実態や保有継続などの要件が細かく、判定を誤ると特例を使えません(国税庁:No.4124 小規模宅地等の特例)。
上場株式は、相続開始日の終値、相続開始日の月の毎日の終値の平均額、その前月の平均額、その前々月の平均額という4つの価額のうち、最も低い金額で評価できます(国税庁:No.4632 上場株式の評価)。非上場株式は会社の財務内容をもとに類似業種比準方式や純資産価額方式で評価するため、税理士による算定が必要です。
見落としが起きやすいのがデジタル資産です。暗号資産も相続財産に該当し、相続開始日の取引価格で評価して相続税の対象になります。ネット銀行やネット証券は郵便物が届かないため、家族が口座の存在に気づかないまま申告を終えてしまうケースがあります。パソコンやスマートフォンのメール、クレジットカードの利用明細から取引所や証券会社の名前を拾っておいてください。
マイナスの財産(消極財産)
| 種類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 借入金 | 住宅ローン※、カードローン、リボ払いの残債、事業性の借入金 | 相続税の債務控除の対象になる |
| 未払金・未納税金 | 所得税、住民税、固定資産税、医療費、公共料金、家賃 | 亡くなった月の請求書が後から届く |
| 保証債務 | 連帯保証、法人の借入に対する個人保証 | 書面が家庭に残っておらず発覚が遅れやすい |
最も危険なのが保証債務です。被相続人が法人の代表者だった場合は、会社の借入に対して個人保証をしていないか必ず確認してください。法人が返済不能になれば、その債務が相続人に及びます。友人や親族の借入に連帯保証していたケースも同様で、家族が事情を知らないまま数年後に請求を受けることがあります。金銭消費貸借契約書や保証契約書、被相続人の印鑑証明書の交付履歴、法人との契約書類を確認しておきましょう。
マイナスの財産が多いときは3ヶ月以内に判断する
債務がプラスの財産を上回りそうなら、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に相続放棄または限定承認を選んでください。この3ヶ月を熟慮期間といい、何もしないまま経過すると単純承認したものとみなされ、借金も含めてすべてを引き継ぐことになります。
相続放棄は、家庭裁判所に申述書と戸籍謄本などを提出して単独で行えます。一度受理されると撤回できません。限定承認は、プラスの財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ手続きですが、相続人全員が共同で申述する必要があり、実務上は選びにくい制度です。
調査が3ヶ月に間に合わないときは、同じ3ヶ月以内に熟慮期間の伸長を家庭裁判所へ申し立ててください。期限を過ぎてからでは原則として認められません。手続きの詳細と必要書類は裁判所ホームページで確認できます。

末永 寛
記事監修者からのワンポイントアドバイス
相続が発生した際に、被相続人の財産(プラスの財産及びマイナスの財産)をもれなく把握することが重要です。この財産の中には不動産や動産(家財や絵画など)のように「目に見える財産」もあれば、「目に見えない財産」も存在します。このうち、目に見える財産は、相続人において認識・発見がしやすいですが、目に見えない財産は、その存在に気付かない事があります。
中でも、最近問題になっているのが「デジタル財産」です。生前にインターネット取引において、株式の売買や仮想通貨の取引を行っていると、相続時に財産として評価する必要性が出てきますが、被相続人より取引の有無やID・パスワードの共有が行われていない場合、相続人において財産の有無に気付かない事があり、最悪のケースでは申告漏れが起こりえます。よって、生前から財産情報を共有しておく事が、相続人の労力軽減と思わぬ税負担を防ぐことにつながります。
相続財産に含まれないもの
祭祀財産、一身専属権、受取人が指定された死亡保険金・死亡退職金、香典や弔慰金は、民法上の相続財産に含まれません。これらは遺産分割協議で分ける対象にならず、相続放棄をしても受け取れるものがあります。ただし相続財産でないことと相続税がかからないことは別の話で、死亡保険金のように分割対象外でも課税される財産があります。4つに分けて整理します。
祭祀財産(民法897条)
お墓、墓石、仏壇、仏具、位牌、家系図といった祭祀財産は相続財産に含まれず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。相続人が複数いても分割の対象にはならず、承継者が単独で引き継ぎます。
民法第897条(祭祀に関する権利の承継)
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
出典:e-Gov法令検索:民法
公営墓地や霊園の使用権も同じ扱いで、名義変更や管理料の支払い義務は祭祀を主宰する人が引き継ぎます。
税務上も、日常礼拝している墓地・墓石・仏壇・仏具・神棚は相続税の非課税財産です。ただし骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものには相続税がかかります(国税庁:No.4108 相続税がかからない財産)。なお、生前に墓地・墓石を購入しておけば非課税財産に変わるため相続税の対象から外れますが、購入代金が未払いのまま亡くなった場合、その未払金は債務控除できません。
一身専属権(民法896条ただし書)
被相続人本人にしか帰属しない権利や義務は、相続の対象になりません。具体的には次のようなものです。
- 生活保護受給権、年金受給権
- 扶養請求権、認知請求権などの身分上の権利
- 医師や税理士などの国家資格、運転免許
- 代理権、雇用契約における被用者の地位
- 歌手の歌唱義務のように、本人でなければ果たせない債務
公的年金の受給権は一身専属権にあたり、相続の対象になりません。一方で企業年金や個人年金は契約内容によって扱いが変わり、定期金に関する権利としてみなし相続財産になる場合があります。年金規約や契約書の確認が必要です。
生命保険契約に関する権利は一身専属権ではありません。被相続人が保険料を負担し、契約者が別の人になっている契約の権利は相続の対象であり、相続税法上もみなし相続財産として課税されます。ここを誤ると申告漏れにつながるため注意してください。
受取人が指定された死亡保険金・死亡退職金
受取人が指定された死亡保険金は、保険契約の効果として受取人が直接取得するもので、民法上の相続財産には含まれないというのが判例の立場です。死亡退職金や埋葬料も、社内規程などで受給者が定められていれば同様に受給者固有の財産となります。
したがって遺産分割協議で分ける必要はなく、相続放棄をした人でも受け取れます。ただし相続税は課税されるため、後述のみなし相続財産の項目もあわせて確認してください。
なお、保険金額が遺産総額に比べて著しく高額で、相続人間の不公平が看過できないほど大きい場合には、特別受益に準じて持戻しの対象とされた裁判例があります。相続財産の大半を保険料に充てていたようなケースでは、分割協議で争点になることがあります。
香典・弔慰金・未支給年金
香典は喪主に対して贈られるもので、相続財産には含まれません。社会通念上相当な範囲であれば、相続税も贈与税もかからず、葬儀費用に充てて差し支えありません。
弔慰金は、勤務先などから遺族へ支払われるものです。業務上の死亡なら普通給与の3年分、業務外の死亡なら普通給与の半年分までが弔慰金として扱われ、これを超える部分は退職手当金等として相続税の対象になります(国税庁:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い)。この普通給与に賞与は含まれません。
未支給年金は、遺族が自己固有の権利として請求するものであり、相続財産ではありません。相続税ではなく、受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります。
葬式費用も相続財産には含まれません。被相続人の債務ではなく、相続人が負担する費用だからです。ただし相続税の計算では、通夜や告別式の費用、火葬・埋葬・納骨の費用、遺体の運搬費、読経料は課税価格から差し引けます。一方で香典返しの費用、墓地・墓石の購入費や借入費用、初七日や四十九日などの法要費用は差し引けません(国税庁:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用)。お布施のように領収書が出ない支出は、支払先・日付・金額をメモに残しておいてください。
相続財産ではないのに相続税がかかる財産
相続税は民法上の相続財産だけにかかるわけではありません。みなし相続財産、一定期間内の生前贈与財産、家族名義で管理していた名義預金は、遺産分割の対象外でも相続税の課税対象になります。税務調査で申告漏れを指摘されるのは、その多くがこの3つです。順に確認します。
みなし相続財産
被相続人が亡くなったことによって受け取る財産を、相続税法では相続で取得したものとみなして課税します。代表的なものは次のとおりです。
- 死亡保険金(被相続人が保険料の全部または一部を負担していたもの)
- 死亡退職金(被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの)
- 生命保険契約に関する権利(被相続人が保険料を負担し、契約者が被相続人以外のもの)
- 定期金に関する権利(被相続人が掛金を負担していた個人年金など)
死亡保険金と死亡退職金には、それぞれ非課税限度額が設けられています(国税庁:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金、国税庁:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金)。
法定相続人が配偶者と子2人の合計3人、死亡保険金が3,000万円の場合
非課税限度額:500万円 × 3人 = 1,500万円
相続税の課税対象:3,000万円 - 1,500万円 = 1,500万円
この非課税枠を使えるのは相続人が受け取った場合に限られます。相続放棄をした人や、孫・内縁のパートナーなど相続人以外が受取人になっている場合は枠を使えず、受け取った金額の全額が課税対象です。なお非課税限度額の計算では、相続放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。
生前贈与財産
生前に贈与された財産は本来の相続財産ではありませんが、一定のものは相続税の課税価格に加算されます。暦年課税による贈与と、相続時精算課税による贈与の2つです。
暦年課税では、被相続人の相続開始日が令和8年12月31日以前であれば、相続開始前3年以内の贈与が加算対象です。令和9年1月1日以降は加算対象期間が段階的に延び、令和13年1月1日以降の相続では7年以内となります。延長された4年分については、その期間の贈与額の合計から100万円を差し引いた額が加算されます。贈与税の基礎控除110万円以下の贈与であっても加算対象になる点に注意してください(国税庁:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。
相続時精算課税を選択している場合は、選択後に贈与を受けた財産が贈与時の価額で加算されます。ただし令和6年1月1日以後の贈与には年110万円の基礎控除が設けられ、その範囲内の贈与は相続財産に加算されません。すでに納めた贈与税は相続税から控除され、控除しきれない分は還付されます。
名義預金
名義預金とは、口座の名義は家族でも、実質的には被相続人の財産と判断される預金のことです。相続税の課税対象になるかどうかは口座の名義ではなく、資金の出どころと誰が管理していたかで判断されます。専業主婦である配偶者名義の高額な口座や、子や孫の名義で被相続人が積み立てていた口座が典型例です。
税務署は主に次の点を見ています。
- 入金された資金は誰の収入から出ているか
- 通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管していたか
- 名義人が口座の存在を知り、自由に使える状態だったか
- 贈与の事実を示す契約書や贈与税の申告があるか
被相続人の名義ではないからと申告から外しておくと、税務調査で指摘され、過少申告加算税や延滞税を含めて追徴されます。生前対策として贈与を行うなら、贈与契約書を作成し、受贈者本人が普段使う口座へ振り込み、通帳と印鑑を本人が管理してください。
相続財産を調べる方法と財産目録の作り方
相続財産の調査は、財産の種類ごとに調べ先が決まっており、6分野を順に潰していけば漏れを大きく減らせます。相続放棄の判断期限が3ヶ月であることを踏まえると、遅くとも2ヶ月以内に全体像をつかむのが目標です。調査結果は財産目録にまとめ、遺産分割協議と相続税申告の基礎資料にします。
| 財産の種類 | 調べ方 | 主な照会先 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 通帳・キャッシュカード・郵便物を確認し、残高証明書を請求 | 各金融機関 |
| 有価証券 | 取引報告書・残高報告書を確認。不明なら加入者情報の開示を請求 | 証券会社、証券保管振替機構 |
| 不動産 | 登記事項証明書、名寄帳、固定資産税の納税通知書を取得 | 法務局、市区町村 |
| 生命保険 | 保険証券、保険料の口座引き落とし履歴を確認。生命保険契約照会制度も利用 | 保険会社、生命保険協会 |
| 動産・デジタル資産 | 貴金属・美術品は査定を依頼。暗号資産は取引所の残高を確認 | 買取業者、暗号資産交換業者 |
| 負債 | 契約書・請求書・引き落とし履歴を確認し、信用情報の開示を請求 | CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター |
不動産の調査では、市区町村で名寄帳を取得してください。その市区町村内で被相続人が所有する不動産を一覧で確認でき、固定資産税の納税通知書には載らない非課税の私道や共有持分も把握できます。複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれで取得が必要です。
預貯金は、通帳やキャッシュカードが見つからなくても各金融機関へ照会できます。被相続人宛ての郵便物、カレンダーやタオルなどの粗品、キャッシュカードの控えが手がかりになります。ネットバンキングは紙の通帳も郵便物もないため、パソコンやスマートフォンのメール履歴を確認してください。
負債の調査では、信用情報機関3社へ開示請求すれば、金融機関やクレジットカード会社からの借入をほぼ網羅できます。ただし個人間の貸し借りや連帯保証は登録されないため、契約書や預金通帳の入出金履歴からたどる必要があります。
見落としやすい財産と負債
調査を一通り終えたあとに発覚しやすいものを挙げておきます。相続税の申告後に新たな財産が見つかると修正申告となり、過少申告加算税や延滞税がかかります。
- 連帯保証や個人保証。書面が家庭に残っていないことが多い
- ネット銀行・ネット証券・暗号資産。郵便物が届かず存在に気づけない
- 名義預金。家族名義のため財産目録から外してしまう
- 貸金庫の中身。開扉に相続人全員の同意を求められる場合がある
- 未登記建物、共有持分、遠方の山林や農地
- 従業員持株会、社内預金、未受領の配当金

末永 寛
記事監修者からのワンポイントアドバイス
相続財産調査ですが、可能な限り被相続人が亡くなってから2ヶ月以内に終了させることが望ましいです。それは、もしマイナスの財産が多額な場合、相続放棄も念頭に置かなければなりません。しかし、相続放棄の期限は亡くなってから3ヶ月以内となることから、2ヶ月以内に財産調査が終わっていなければ相続放棄の可否判断に間に合わない事が考えられます。
また、相続財産調査には、短くても1ヶ月程度の時間は要します。よって、亡くなってから相続財産調査を依頼したのでは、時間的にギリギリになる可能性があります。
よって、被相続人が元気なうちから、税理士等の専門家を見つけ、財産目録等により財産を把握しておくことが非常に重要となります。
相続財産がいくらから相続税の対象になるか
相続税がかかるのは、課税価格の合計額が基礎控除額を超えた場合だけです。基礎控除額は3,000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額で、法定相続人が3人なら4,800万円になります。申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
法定相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
課税価格の合計額が4,800万円以下であれば、原則として相続税の申告は不要
課税価格の合計額は、プラスの財産にみなし相続財産と加算対象の生前贈与財産を足し、非課税財産・債務・葬式費用を差し引いて算出します(国税庁:No.4152 相続税の計算)。
注意したいのは、税額がゼロでも申告が必要になるケースがあることです。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って納税額がゼロになる場合、これらの特例は申告を条件に適用されるため、申告書の提出が必要です。基礎控除以下だから何もしなくてよい、という判断は基礎控除の計算が正しいことが前提になります。
相続財産の把握に迷ったときの相談先
相続財産の調査と評価は、相続税の申告が必要になりそうなら税理士、分け方で揉めているなら弁護士、不動産の名義変更なら司法書士と、論点によって適任が変わります。まずは相続税がかかるかどうかを見極め、そこから必要な専門家につなぐのが最短ルートです。
1. 相続に強い税理士を無料で紹介してもらう
相続税の申告実績は税理士によって差が大きく、財産評価の判断ひとつで税額が変わります。税理士紹介センタービスカスでは、相続に精通した税理士を無料でご紹介しています。財産の全体像がまだ見えていない段階でも、何をどう調べればよいかから相談できます。
2. 税理士会・自治体・税務署の無料相談を使う
各地の税理士会や市区町村が定期的に無料相談会を開催しています。一般的な考え方を確認するには十分ですが、個別の財産評価まで踏み込んだ回答は得にくいため、判断が必要な論点があれば税理士へ依頼してください。
3. 分割協議や名義変更は弁護士・司法書士へ
遺産分割がまとまらない場合や遺留分が争点になる場合は弁護士、不動産の相続登記や戸籍収集は司法書士が担当します。相続登記は令和6年4月から義務化されており、取得を知った日から3年以内の申請が必要です。
相続財産に関するよくある質問
相続財産と遺産は同じ意味ですか
同じ意味です。民法の条文では相続財産、日常会話や実務では遺産と呼ばれることが多いという違いにすぎず、指している範囲は変わりません。
借金も相続しなければいけませんか
単純承認をすると、プラスの財産だけでなく借入金や保証債務といったマイナスの財産もすべて引き継ぎます。プラスの財産だけを選んで相続することはできません。
借金のほうが多い場合はどうすればよいですか
相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述して相続放棄をするか、プラスの財産の範囲でのみ債務を引き継ぐ限定承認を選びます。調査が間に合わない場合は、同じ3ヶ月以内に熟慮期間の伸長を申し立ててください。
死亡保険金は相続財産に含まれますか
受取人が指定された死亡保険金は受取人固有の財産で、民法上の相続財産には含まれず遺産分割の対象にもなりません。ただし被相続人が保険料を負担していた場合は、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。
相続放棄をしても死亡保険金は受け取れますか
受取人固有の財産であるため、相続放棄をしても受け取れます。ただし相続放棄をした人は500万円×法定相続人の数の非課税枠を使えず、受け取った金額の全額が相続税の課税対象になります。
お墓や仏壇は相続財産になりますか
墓石や仏壇などの祭祀財産は民法897条により祭祀を主宰すべき者が承継するもので、遺産分割の対象にはなりません。日常礼拝しているものであれば相続税もかかりませんが、骨とう的価値があるものや投資目的で所有しているものは課税されます。
香典は相続財産に含まれますか
香典は喪主に対して贈られるもので相続財産には含まれず、社会通念上相当な範囲であれば相続税も贈与税もかかりません。葬儀費用に充てて差し支えありません。
葬儀費用は相続財産から差し引けますか
通夜や告別式の費用、火葬・埋葬・納骨の費用、読経料は相続税の課税価格から差し引けます。一方で香典返しの費用、墓地・墓石の購入費、初七日や四十九日などの法要費用は差し引けません。
亡くなる直前に贈与された財産はどう扱われますか
被相続人の相続開始日が令和8年12月31日以前であれば、相続開始前3年以内に暦年課税で贈与された財産が相続税の課税価格に加算されます。令和9年1月1日以降は加算対象期間が段階的に延び、令和13年1月1日以降の相続では7年以内となります。
妻や子の名義の預金にも相続税がかかりますか
口座の名義ではなく、資金の出どころと実際に管理していた人で判断されます。被相続人が資金を出して通帳や印鑑も管理していた場合は名義預金とされ、相続税の課税対象になります。
相続財産はいくらから相続税の対象になりますか
課税価格の合計額が基礎控除額を超えた場合に相続税がかかります。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、法定相続人が3人なら4,800万円です。
相続財産の名義変更はどこで手続きしますか
不動産は法務局で相続登記を行い、預貯金や有価証券は各金融機関や証券会社で手続きします。相続登記は令和6年4月から義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。
まとめ
相続財産とは、被相続人が亡くなった時点で持っていた財産と債務のすべてです。プラスの財産だけを選んで受け取ることはできず、借入金や保証債務も含めて包括的に引き継ぎます。
判断を誤りやすいのは、遺産分割で分ける対象と相続税がかかる対象が一致しない点です。死亡保険金や死亡退職金、名義預金、一定期間内の生前贈与財産は分割の対象外でも課税され、墓地や仏壇は分割の対象にも課税の対象にもなりません。この線引きを押さえておけば、財産目録の段階で大きな取りこぼしは防げます。
調査は亡くなってから2ヶ月以内を目標に進めてください。相続放棄の判断期限が3ヶ月、相続税の申告期限が10ヶ月であることを考えると、ここが実務上の分岐点になります。連帯保証、ネット口座や暗号資産、名義預金の3つは特に発覚が遅れやすいため、意識して確認しましょう。
相続税がかかるかどうかの目安は、課税価格の合計額が基礎控除額を超えるかどうかです。超えそうであれば、財産評価の判断が税額に直結します。相続財産センターでは、相続に精通した税理士を無料でご紹介しています。何から手をつければよいか分からない段階でも、まずはご相談ください。