相続財産が家だけだと揉める理由。評価・分割・登記の判断を税理士が回答

相続財産が家だけだと揉める理由。評価・分割・登記の判断を税理士が回答
最終更新日:2026/09/28
この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
家庭裁判所で解決された遺産分割事件を見ると、遺産額5,000万円以下のケースが約8割を占めています。相続争いは、資産家だけの問題ではありません。とくに相続財産の中心が家などの不動産の場合、現金のように簡単には分けられず、相続人同士の調整が難しくなることがあります。 さらに2027年3月31日には、2024年4月1日の相続登記義務化より前に発生し、すでに相続による不動産の取得を知っていたケースについて、原則として登記申請の期限を迎えます。相続財産に家が含まれるときに判断を迫られる評価・分割・登記・売却の論点を、監修税理士への質問形式で整理します。

相続で揉めるのは資産家だけではない 遺産5,000万円以下が約8割

家をめぐる相続では、財産額の大きさだけでなく、簡単に分けられない不動産が財産に占める割合も重要です。

国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税額のある申告書に係る相続財産のうち、土地は30.2%、家屋は4.8%で、合わせて35.0%を不動産が占めています。また、被相続人全体に占める相続税の課税割合は10.4%でした。

一方、家庭裁判所で解決される遺産分割事件は、高額な遺産をめぐるものばかりではありません。最高裁判所の司法統計によると、認容・調停成立となった遺産分割事件のうち、遺産額1,000万円以下と1,000万円超5,000万円以下を合わせると約8割を占めています。

遺産額が比較的小さいケースでも、遺産分割をめぐる対立が家庭裁判所で解決されていることがわかります。

とくに家は物理的に分けることが難しく、誰か1人が取得する場合には、ほかの相続人との公平性をどう確保するかが問題になります。家を取得する人に代償金を支払う資力がなければ、数字の上では公平な分割案でも実現できないことがあります。

さらに2024年4月から相続登記が義務化されました。遺産分割がまとまらないからといって、いつまでも亡くなった人の名義のまま放置することも難しくなっています。

家の相続でつまずきやすい6つの論点を税理士に聞く

家の相続では、分割・評価・特例・登記・売却という、期限や性質の異なる判断が重なります。

相続税の申告が必要な場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税する必要があります。一方、相続登記や不動産売却時に使える税制上の特例には、それぞれ別の期限があります。

順番を誤ると、利用できた特例を逃したり、後から解消しにくい共有状態をつくったりする可能性があります。ここからは、実際に寄せられる質問をもとに、監修税理士に論点ごとの判断基準を伺います。

相続財産が家だけのとき、兄弟でどう分ける?

質問:父が亡くなり、相続財産は実家だけで預貯金はほとんどありません。同居していた私が住み続けたいのですが、弟が納得しません。どう分ければよいですか。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

住み続けたいなら代償分割をおススメします。家を単独で取得し、法定相続分との差額を現金で他の相続人に支払う方法です。現物・代償・換価・共有といった分け方がありますが、共有にすると、共有物全体の売却などには原則として共有者全員の同意が必要になります。次の相続で共有者が増えれば、さらに意思決定が難しくなるおそれがあります。代償金が用意できない場合は、家を担保にした借入(相続不動産担保ローン)やリースバックなどによる資金確保も選択肢になります。いずれの場合も、代償金の額・支払期日・支払方法などを遺産分割協議書に明記しておくことが重要です。

家の相続税評価額はどうやって決まる?

質問:実家は売れば3,000万円ほどと言われました。この金額で相続税を計算するのでしょうか。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

原則として売買価格ではなく、土地と建物をそれぞれ相続税評価額で評価します。土地は、路線価が設定されている地域では路線価方式、路線価が設定されていない地域では倍率方式で評価します。路線価方式では、路線価を基礎として土地の形状や奥行きなどに応じた補正を行います。倍率方式では、固定資産税評価額に国税庁が定める評価倍率を掛けて計算します。建物は、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。路線価は、地価公示価格などを基にした価格の80%程度を目途に設定されていますが、実際の相続税評価額と売却価格との差は物件によって異なります。路線価や評価倍率は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付される課税明細書や、市区町村が発行する固定資産評価証明書などで確認できます。

不整形地の補正、貸家建付地の評価減、登録免許税や固定資産税を含めた税金全体の整理など、不動産の評価と税額計算の詳細は以下の記事で解説しています。

小規模宅地等の特例は別居していた子でも使える?

質問:私は持ち家がなく賃貸暮らしです。別居していた親の家を相続する場合、評価額を下げる特例は使えますか。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

使える可能性がありますが、複雑な要件が定められています。特定居住用宅地等に該当すれば、330㎡まで土地の評価額を80%減額できます。別居していた親族が適用を受ける場合は、被相続人に配偶者がいないことや、一定の同居親族がいないことなどに加え、居住状況に関する要件を満たす必要があります。具体的には、相続開始前3年以内に、本人や配偶者、三親等内の親族などが所有する国内の家屋に居住していないことや、相続開始時に本人が居住している家屋を過去に本人が所有していたことがないことなどが求められます。また、原則として申告期限までその宅地を所有し続ける必要があります。適用要件は細かいため、「現在は賃貸に住んでいる」という事実だけで利用できるとは判断できません。なお、小規模宅地等の特例を適用した結果、相続税額が0円になる場合でも、特例の適用を受けるためには原則として相続税の申告が必要です。

賃貸を転々としていた場合やリースバックを利用していた場合など、判断が分かれるケースごとの適用可否と、申告時に必要な書類は以下の記事にまとめています。

相続登記をしないとどうなる?

質問:遺産分割がまとまらず、実家の名義を父のままにしています。急いだほうがよいですか。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

急いだほうが良いです。2024年4月1日から相続登記は義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由なく登記をしなかった場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。義務化前に発生した相続にも適用され、2024年4月1日時点ですでに相続による不動産の取得を知っていた場合は、原則として2027年3月31日までに対応する必要があります。遺産分割協議がまとまらない場合は、「相続人申告登記」を利用して、相続登記の申請義務をいったん履行することもできます。ただし、これは所有権を取得した相続人を確定させる登記ではないため、遺産分割が成立した後には、その内容に応じた相続登記が改めて必要になります。相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。ただし、一定の土地については免税措置が適用される場合があります。司法書士報酬は物件数や相続人の数、権利関係などによって異なるため、事前に見積もりを確認しておきましょう。

住まない実家は売却と保有のどちらが有利?

質問:誰も住まない実家を相続しました。すぐ売るべきか、しばらく持っておくべきか迷っています。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

売却する可能性があるなら、期限のある特例に留意しましょう。相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」により、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。制度上は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象ですが、個々の相続については「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限もあります。対象となるのは、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物ではないこと、売却代金が1億円以下であることなど、複数の要件を満たす必要があります。また、令和6年1月1日以後の譲渡では、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除限度額は2,000万円になります。一方、保有を続ける場合も管理コストには注意が必要です。適切な管理をせず、「管理不全空家」や「特定空家」として自治体から勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税等の特例措置が受けられなくなる場合があります。売却価格だけでなく、税制上の期限や今後の維持管理費まで含めて判断してください。

家具や家電などの家財道具も申告が必要?

質問:実家に残された家具や家電、母の着物なども相続財産として申告するのでしょうか。

徳永 圭先生

徳永 圭先生

家具や家電などの家庭用財産も相続財産に含まれます。相続税の申告が必要な場合は、これらも評価して相続財産に含めます。財産評価基本通達では、一般動産は原則として1個または1組ごとに評価します。ただし、1個または1組の価額が5万円以下の家庭用動産については、一世帯ごとにまとめて評価できるため、実務上は「家財一式」などとして計上するケースがあります。一方、高額な貴金属やブランド品、書画骨董、自動車などは、それぞれの時価を確認して個別に評価する必要があります。また、日常礼拝の用に供している仏壇・仏具や墓地・墓石などは、原則として相続税の非課税財産にあたり、課税価格には含めません。

仏壇・墓地のほかにも、生命保険金や死亡退職金には一定の非課税限度額があります。課税されない財産の全体像は以下の記事で確認できます。

まとめ

家の相続では、財産額の大小だけでなく、「簡単に分けられない財産をどう扱うか」が大きな問題になります。

押さえておきたいポイントは4つです。

  1. 家を1人が取得する場合は代償分割などを検討し、安易な共有は将来の意思決定を難しくする可能性があること。
  2. 相続税評価額は売却価格とは異なり、土地は路線価方式や倍率方式、建物は原則として固定資産税評価額を基準に評価すること。
  3. 相続登記には期限があり、義務化前の相続でも2027年3月31日が一つの重要な期限になること。
  4. 売却を検討するなら、空き家の3,000万円特別控除など期限のある制度から逆算すること。

小規模宅地等の特例や空き家の3,000万円特別控除は、要件や期限を外すと税負担が大きく変わる可能性があります。また、相続税の申告期限は原則10か月ですが、登記や不動産売却に関する特例にはそれぞれ異なる期限があります。

そのため、家を相続したときは、まず財産の評価額と相続人を確認し、誰が取得するのか、売却するのか、利用できる特例があるのかを早めに整理することが重要です。

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この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
大学で財務会計ゼミに入ったことがきっかけとなり税理士資格を取得。総合不動産会社、不動産証券化(SPC)特化型事務所、総合会計事務所を経て令和へ年号が変わるとともに開業。これまでの職歴から不動産周りの税務会計、資産税(相続)に強みがあります。

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この記事の執筆者
相続財産センター編集部

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