生命保険金は相続財産になるのか?基本知識と例外を解説
生命保険金は原則として相続財産に含まれません(受取人固有の財産)。この原則と限定的な例外について、最高裁判例(平成16年・平成14年)を根拠として解説します。
生命保険金の基本的な仕組みと相続財産との違い
生命保険金とは、被保険者(保険をかけられている人)が死亡した際に、あらかじめ指定された受取人に支払われる金銭のことです。生命保険金は原則として相続財産には含まれません。これは、保険金が受取人固有の財産として扱われるためです。
受取人固有の財産とは:生命保険金は、保険契約に基づいて受取人が直接取得する財産であり、被相続人の遺産を通じて取得するものではありません。そのため、相続人全員で分割する必要がない財産のことを指します。
民法上、相続財産とは被相続人が生前に所有していた財産のことを指します。しかし、生命保険金は被保険者の死亡を条件として発生する受取人の権利であり、被保険者が生前に所有していた財産ではありません。保険契約によって受取人に直接権利が移転するため、遺産分割協議の対象外となるのが原則です。
例えば、父親が妻を受取人とする生命保険に加入していた場合、父親の死亡により保険金を受け取る権利は妻が単独で取得します。この保険金は、父親の他の財産(預金、不動産など)とは別に扱われ、相続人全員で分割する必要はありません。
ただし、この原則には限定的な例外があります。受取人の指定方法や特別な事情によっては、取り扱いが異なる場合もあるのです。
生命保険金の取扱いで例外的に注意すべきケース
生命保険金の取り扱いに関する例外的なケースは以下の通りです。
受取人が被保険者本人の場合(相続財産に含まれる)
被保険者自身が受取人となっている契約では、被保険者の死亡により保険金請求権が相続財産となります。この場合、相続人が法定相続分に応じて保険金を受け取ることになります。ただし、約款が別段の定めをしている場合はその定めに従います。
受取人未指定の場合(原則:相続財産ではないが約款確認が必要)
受取人が指定されていない保険契約について、一律に相続財産となるわけではありません。多くの約款では「相続人を受取人とする」旨の定めがあり、その場合は受取人である相続人の固有財産として扱われ、遺産分割の対象外となります。
ただし、保険会社により約款の内容は異なるため、契約内容の確認が不可欠です。約款の定めによっては取り扱いが変わる可能性があるため、まずは保険会社に確認することをお勧めします。
受取人を「相続人」と指定した場合(原則:相続財産ではない)
受取人を「相続人」と指定した死亡保険金は、受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象になりません。配分は約款や判例に従います。(最高裁判例平成6年7月18日:原則、法定相続分で按分)
特段の事情による特別受益の類推適用(相続財産に含めるのではなく持戻し計算で調整)
最高裁判決平成16年10月29日(民集58巻7号1979頁)は、諸事情総合で「到底是認できないほどの著しい不公平」がある特段の事情に限り、持戻しの類推適用を認めるとしています。特別受益の持戻しとは相続人が生前に受けた贈与などを相続財産に加え戻して、相続分を再計算する制度です。生命保険金は本来この対象外ですが、著しく不公平な場合は例外的に同様の扱いをするということです。
保険金額と遺産総額との比較、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等を総合考慮して判断されます。
生命保険金と遺産分割・特別受益の関係
生命保険金が遺産分割や特別受益にどう関わるか、不公平是正の仕組みや実務上の注意点を解説します。生命保険金の取り扱いは、相続人間の公平性に大きな影響を与える可能性があるため、慎重な検討が必要です。
遺産分割協議における生命保険金の扱い
生命保険金は原則として遺産分割協議の対象外です。遺産分割協議書に生命保険金を記載する必要はありませんが、相続人間での認識を統一するために「死亡保険金は遺産分割の対象外である」旨を任意で記載することもあります。
実際の相続手続きでの流れ
相続手続きでは、以下の順序で進めることが一般的です。
- 被相続人の財産調査 預金、不動産、有価証券等の把握
- 生命保険契約の確認 保険会社への連絡、受取人の確認
- 保険金請求手続き 必要書類の準備、保険会社への請求
- 遺産分割協議 保険金以外の財産について協議
- 相続税申告 保険金を含めた相続税計算
重要なのは、生命保険金の受取人と金額を早期に確認し、他の相続人との間で認識を共有することです。保険金額が遺産総額に比べて著しく大きい場合は、特別受益の問題が生じる可能性があるため、専門家への相談を検討しましょう。
特別受益が問題になりやすい実務場面
生命保険金は原則として相続財産に含まれませんが、金額や受取人の状況によっては「著しい不公平」と評価され、特別受益として扱うべきかが問題になることがあります。実務では次のような場面で注意が必要です。
保険金が遺産総額に比べて大きい場合
生命保険金が他の遺産に比べて極端に大きいと、相続人間の公平感を損ねることがあります。協議の際には「保険金の存在をどう考慮するか」を早めに話し合うことがトラブル防止につながります。
一部の相続人だけが受け取る場合
特定の子どもや配偶者だけが高額な保険金を受け取るケースでは、他の相続人から不満が出やすい傾向があります。相続財産に含まれないとしても、調整のために遺産分割協議で配慮を行うのが実務上望ましいです。
扶養や介護の状況との不均衡
被相続人の介護や生活支援をしてきた相続人が保険金を受け取れない一方、他の相続人が高額の保険金を受け取る場合には、不公平感が強まりやすいです。この場合は寄与分制度とあわせて調整を検討する必要があります。
相続人間の公平を保つための他の制度(寄与分・遺留分)
生命保険金に関するトラブルを防ぐため、民法には相続人間の公平を図る制度が設けられています。
寄与分制度との関係
寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした場合に、その貢献度に応じて相続分を増加させる制度です。生命保険金の受取人でない相続人が被相続人の介護等に貢献していた場合、寄与分を主張することで相続分の調整を図ることができます。
生命保険金は原則として遺留分算定の基礎財産に含まれない
最高裁判例(平成14年11月5日)に基づき、生命保険金は原則として遺留分算定の基礎となる財産には含まれません。これは、保険金が受取人固有の財産であり、被相続人の遺産ではないためです。
商品性や実質により遺贈・贈与相当と評価される特異ケースで学説・下級審での議論可能性がありますが、一般化はできません。2018年民法改正後も基本的な枠組みは維持されています。
生命保険金にかかる相続税と非課税枠の活用法
生命保険金の税務上の取り扱い、非課税枠、課税対象となる場合の計算例などを詳しく解説します。相続税法上、生命保険金は「みなし相続財産」として扱われ、相続財産とは異なる特別なルールが適用されます。
みなし相続財産とは:民法上は相続財産に含まれないものの、相続税法上は相続により取得したものと同様に扱われる財産のことです。生命保険金の他、死亡退職金なども該当します。
生命保険金の課税区分と税務上の位置づけ
税務上、生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。これは、民法上は相続財産に含まれないものの、相続により取得したものと同様の経済的効果があるためです。
課税される税目の区分(国税庁準拠)
生命保険金にかかる税金は、契約者(保険料負担者)、被保険者、受取人の関係によって決まります。
契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | 課税される税目 | 根拠(タックスアンサー) |
---|---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人 | 相続人 | 相続税 | No.4114 |
受取人 | 被相続人 | 受取人 | 所得税 | No.1750 |
第三者 | 被相続人 | 相続人 | 贈与税 | No.4417 |
注意:典型的落とし穴 家族で保険料を負担していた等の混在時は要注意です。実際の保険料負担者を正確に把握することが重要となります。
生命保険金の非課税枠と計算方法
生命保険金には相続税の非課税枠が設けられており、「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。この非課税枠は相続税対策の重要なポイントとなります。
非課税枠の計算方法
法定相続人の数は以下のように判定します。配偶者は常に相続人となります。子は第1順位の相続人、親は子がいない場合の第2順位の相続人、兄弟姉妹は子も親もいない場合の第3順位の相続人となります。
非課税枠の適用要件
- 相続人以外が受け取った保険金→非課税適用なし
- 相続放棄者の受取分→非課税適用なし
- 養子の数の制限あり(実子がいるとき1人、いないとき2人まで算入)
人数カウントは、相続放棄者を含む(放棄がなかったものとした場合)法定相続人の数で計算します。ただし、非課税の適用対象は相続人が受け取った部分のみです(放棄者が受け取った保険金は非課税対象外)。
具体的なシミュレーション事例
配偶者と子2人が相続人の場合を例に考えてみましょう。
法定相続人の数は3人(配偶者1人+子2人)となり、非課税枠は500万円×3人=1,500万円です。生命保険金が2,000万円の場合、相続税課税対象額は2,000万円-1,500万円=500万円となります。
相続放棄との関係では、相続人の一人が相続放棄をした場合でも、非課税枠の計算では放棄前の法定相続人の数を使用します。ただし、相続放棄をした人は生命保険金の非課税枠を利用できません。
仮例として、配偶者と子2人のうち、子1人が相続放棄した場合を考えてみましょう。
非課税枠の計算は500万円×3人=1,500万円で変わりませんが、非課税枠の利用は配偶者と残りの子1人のみとなり、実際の按分は各自の受取金額に応じて行われます。
家族構成別のシミュレーション
配偶者のみの場合は法定相続人の数が1人で非課税枠は500万円となります。
配偶者+子1人の場合は法定相続人の数が2人で非課税枠は1,000万円です。これは最も一般的なケースといえます。
配偶者+子3人の場合は法定相続人の数が4人で非課税枠は2,000万円となり、大家族の場合により大きな非課税枠を活用できます。子2人のみの場合は法定相続人の数が2人で非課税枠は1,000万円となり、これは配偶者が先に死亡している場合に該当します。
なお、この非課税枠は配偶者控除や基礎控除とは別制度ですので、混同にご注意ください。

徳永 圭
記事監修者からのワンポイントアドバイス
生命保険についてよくある誤解は契約内容にかかわらずお亡くなりになられた被相続人に係る生命保険金は全て相続税申告の対象であり、非課税枠の適用ができると思っている点です。
資産税実務をやっていると生命保険に係る資料をたくさん見ます。中には保険料負担者(≒契約者)が被相続人自身でないものが含まれていたりします。当該保険契約は相続税申告の対象とはなりません。この場合、非課税枠適用という話にならず所得税や贈与税の課税対象となります。
勘違いしたまま全ての生命保険を相続税申告に含めて計算し、非課税枠内に収まったと安心していたら後日、贈与税や所得税の申告漏れでペナルティを課されてしまうということもあるので注意が必要です。
相続税対策としての生命保険活用術
生命保険は相続税対策として非常に有効な手段です。主な活用方法をご紹介します。
節税対策としての活用
非課税枠の最大活用により、法定相続人の数×500万円まで非課税とすることができます。納税資金の確保として、相続税の支払資金として活用することも可能です。また、遺産分割対策として、特定の相続人に確実に財産を残す方法としても有効です。
効果的な契約の組み方
契約者と被保険者を同一にすることで、相続税の非課税枠を活用できます。受取人を相続人にすることで、相続税の対象として非課税枠を適用できます。保険金額については、他の財産とのバランスを考慮して調整することが重要です。
契約者、被保険者、受取人の組み合わせによっては、想定外の税金がかかる場合があります。契約時には税務上の取り扱いを必ず確認し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。
生命保険金を巡るトラブル・注意点
実際によくあるトラブル事例や注意点、回避策を具体的に紹介します。生命保険金に関するトラブルは予想以上に多く、事前の対策が重要です。
受取人が先に死亡していた場合の扱い
指定された受取人が被保険者より先に死亡している場合、保険金の受取権がどうなるかは保険法の規定と保険約款によって決まります。
法律上の原則として、保険法46条により受取人が死亡した場合はその相続人全員が新受取人となります。配分は民法427条の等分原則に従いますが、約款に別段の定めがあればその定めに従います。
参考:約款特則例 かんぽ生命では「被保険者の遺族」等の約款特則があります。保険会社により異なるため、契約内容の確認が必要です。
受取人変更手続きの重要性
このようなトラブルを避けるためには、定期的な受取人の見直しと変更手続きが重要です。特に結婚・離婚、子の出生、受取人の死亡、家族関係の変化などの場合には、受取人変更を検討しましょう。
遺言変更は「相続人または遺言執行者の通知到達」が対抗要件(保険法44条)。被保険者同意が必要(保険法45条)。到達前に旧受取人へ支払われた場合の扱いについては、保険会社の規定を確認する必要があります。
保険金請求の時効・手続きの注意点
生命保険金の請求には時効があります。保険法95条により3年の消滅時効が定められています。起算点は「請求権を行使できる時」からとなり、実務では保険者が援用した場合に消滅(請求不可)となります。
必要書類と手続きの流れ
各社の約款・手続案内に従った書類や案内に従うことが重要です。
代表例として、保険金請求書は保険会社から取得し、受取人本人が記入・押印します。死亡診断書(死体検案書)は医療機関から取得します。被保険者の住民票(除票)は市区町村役場から取得し、死亡の記載があるものが必要です。受取人の印鑑登録証明書や本人確認書類も必要となります。
印鑑証明書の有効期限や必要書類は保険会社によって異なるため、各社の手続案内を必ず確認してください。
放置によるリスク
保険金請求を放置すると、様々なリスクが生じます。時効による請求権の消滅として、3年経過で権利が失効してしまいます。必要書類の取得が困難になり、時間経過により取得が困難になる場合があります。相続人間の関係悪化として、手続き遅延による不信が増大する可能性があります。相続税申告への影響として、申告期限内の処理が必要となります。
相続放棄と生命保険金の詳細な関係
相続放棄をしても保険金を受け取れる法的根拠
相続放棄をした人でも生命保険金を受け取ることができます。これは、生命保険金が受取人固有の財産であり、相続財産ではないためです。
最高裁判例(昭和40年2月2日)では、「死亡保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に受取人の固有財産となり、被保険者の遺産ではない」と明確に判示されています。
実務上よくある誤解と注意点
相続放棄に関してよくある誤解があります。「相続放棄したら保険金も放棄したことになる」という誤解がありますが、正しくは保険金は受取人固有の権利として受け取り可能です。「相続放棄した人の分は他の相続人が受け取る」という誤解もありますが、正しくは受取人として指定されている限り、放棄者本人が受け取ります。
税務上の取り扱いとして注意すべき点があります。相続放棄をした人が受け取る保険金は、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を利用できません。また、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象となります。
相続人間の不公平感・争いが生じやすいケース
生命保険金を巡る相続トラブルの多くは、相続人間の不公平感から生じます。
トラブルが生じやすい典型例
生命保険金を巡るトラブルでよく見られるパターンは以下の通りです。
- パターン1:金額の不公平:保険金が遺産総額を大幅に上回る場合や、特定の相続人だけが高額保険金を受け取る場合
- パターン2:貢献と受益の不一致: 長年介護をしていた相続人が保険金を受け取れず、介護に関わらなかった相続人が受け取る場合
- パターン3:家族関係の変化:離婚・再婚・養子縁組などで家族構成が変わったのに、受取人指定が古いまま放置されている場合
よくある相談と対処法
相談例1:「介護していた私が保険金をもらえないのは不公平」
対処法:被相続人の生前に家族で話し合い、介護貢献分を他の財産(預金・不動産等)で調整する。または寄与分を主張する方法もあります。
相談例2:「父の再婚で前の結婚の子が冷遇された」
対処法:受取人を変更する際は、遺言書で前婚の子への配慮を明記し、財産全体でバランスを取ることが重要です。
専門家相談が必要な状況
以下に当てはまる場合は、早めに税理士や弁護士に相談しましょう。
緊急度:高
- 相続人同士で既に対立や不満が表面化している
- 複数の保険契約があり、非課税枠を超える可能性がある
- 海外居住者が関わる相続
緊急度:中
- 受取人が認知症で成年後見が必要
- 保険会社が複数あり手続きが複雑
専門家相談前の準備資料
相談をスムーズに進めるため、以下を事前に準備してください。
必須資料
- 保険証券・約款のコピー
- 被相続人と相続人全員の戸籍謄本
- 遺産目録(財産の一覧表)
あると良い資料
- 過去の贈与に関する資料
- 家族関係の変遷が分かる資料

徳永 圭
記事監修者からのワンポイントアドバイス
家族関係は千差万別であり全ての家庭に当てはまる正解(対策)はありません。ただ、「絶対にウチは大丈夫」と言っていたお客様でもいざ相続が発生し、その分配をめぐり相続人間で揉めるという事象は何度も目にしてきました。
特別受益は相続対策を計画的に行わなければ平等に行き渡らせることが難しく、不公平感が生まれます。介護貢献は正確に数値化することがほぼ不可能であり、客観性に乏しく特別受益よりも更に公平感が薄れます。
よって、被相続人自身が財産の分割に関与することが重要と考えます。つまり、遺留分に配慮した「遺言書」の作成です。法律面のみならず、精神面においても財産の持ち主自身が決めた配分は納得感が高まります。
まとめ
生命保険金は原則として相続財産には含まれず、受取人固有の財産として扱われます。しかし、受取人の指定方法や保険金額によっては、特別受益として相続分の調整対象となったり、相続人間のトラブルの原因となったりする可能性があります。
重要なポイントを再確認しますと、生命保険金は原則として遺産分割の対象外です。税務上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。非課税枠(500万円×法定相続人の数)の活用が可能です。著しい不公平がある場合は特別受益として持戻しの可能性があります。受取人の定期的な見直しと適切な手続きが重要です。
生命保険金に関する相続手続きは複雑で、法律と税務の両面から検討が必要です。適切な相続対策と円滑な手続きのためには、相続に精通した税理士等の専門家への相談をお勧めします。
相続でお困りの際は、税理士紹介センターにて相続税に強い税理士をご紹介いたします。お客様のご要望に応じて、生命保険金の適切な取り扱いから相続税申告まで、経験豊富な税理士をご紹介いたします。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q:生命保険金の非課税枠はどのように活用すればよいですか?
A:法定相続人の数×500万円まで相続税が非課税となります。相続税対策として、この枠を最大限活用できるよう保険金額を設定することをお勧めします。ただし、他の財産とのバランスも重要です。
Q:相続放棄をした場合、生命保険金は受け取れますか?
A:はい、受け取れます。生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではないため、相続放棄をしても保険金の受取権利は失われません。ただし、相続税の非課税枠は利用できなくなります。
Q:保険金の受取人を後から変更することはできますか?
A:はい、可能です。被保険者の同意が必要(保険法45条)で、保険会社所定の手続きが必要となります。遺言による変更も可能で、通知到達で対抗できます(保険法44条)。家族関係の変化に応じて定期的に見直すことをお勧めします。
Q:生命保険金が遺留分侵害の対象となることはありますか?
A:いいえ、原則として遺留分算定の基礎財産には含まれません(最高裁判例平成14年11月5日)。ただし、商品性や実質により遺贈・贈与相当と評価される特異ケースで学説・下級審での議論可能性がありますが、一般化はできません。個別の事情によって判断されるため、専門家への相談が必要です。
Q:複数の保険会社で契約がある場合、非課税枠はどうなりますか?
A:合算は「相続人が受け取った死亡保険金の総額」であり、相続人以外の受取分は非課税枠の母数外となります。保険会社ごとに個別に計算するのではなく、相続人が受け取った保険金の総額で判定されます。