株式の相続で知っておきたい基本と放置リスク
株式の相続は「上場株式」か「非上場株式」かで手続きも評価方法も全く異なります。上場株式は証券会社を通じた名義変更手続き、非上場株式は発行会社との対応が中心になり、見落とされがちな論点が複数あります。個人株主数は東京証券取引所の調査(2024年度)で8,359万人(11年連続増加・過去最高)に達しており、株式が相続財産に含まれるケースは年々増加しています。
株式を相続した場合、遺産分割協議が成立するまでは相続人全員の共有状態が続きます。共有のまま放置すると、議決権の行使に共有者全員の同意が必要となり、会社経営に支障をきたすリスクがあります。また、相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月以内と定められており、評価額の算出や書類収集に時間がかかる株式の相続は、早めに動き始めることが欠かせません。
株式の相続で起こりがちなリアルな疑問
上場株式の評価から非上場株式の難しさ、売却後の税務対応まで、相続財産に株式が含まれる場合は論点が多岐にわたります。ここからは、実際に寄せられた質問をもとに、株式の相続の実態について監修税理士の先生に詳しく伺っていきましょう。
上場株式の相続税評価額の計算方法は?
質問: 父が上場株式を保有したまま亡くなりました。評価額はどの時点の株価を使えばよいですか?

松井信行先生
相続税において上場株式の評価額は、次の4つの価額のうち最も低い価額により評価します。
①課税時期(被相続人の亡くなられた日)の最終価格(終値)
②課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
③課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
④課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
例えば、亡くなられた日の終値が1,000円でも前々月の終値の月平均額が900円で最も低ければ900円が評価額になります。
また、亡くなられた日が土日祝日で終値がない場合は、前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2つある場合にはその平均額)を終値とします。
証券会社がどこかわからないときはどこに問い合わせる?
質問: 遺品を整理しても証券会社の書類が見つかりません。どこに問い合わせればよいですか?

松井信行先生
証券保管振替機構(通称、ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」を行うと良いでしょう。ほふりには上場株式等の口座情報が集約されており、相続人が戸籍謄本など相続関係を証する書類を提出することで、被相続人が生前に開設していた口座のある証券会社・信託銀行等を一覧で確認できます。但し、口座に保有している株式銘柄や株数・残高までは分かりませんので、口座がある場合は記載されている証券会社等に個別に問い合わせる必要があります。
また、配当金計算書等があれば株式発行会社の株主名簿管理人(信託銀行等)に被相続人名義の株式の有無を確認するようにして下さい。
非上場株式の評価はどうやって行う?
質問: 父が中小企業を経営していました。会社の株式の評価額はどうやって出すのですか?

松井信行先生
非上場株式の評価方法は、会社の規模と株主の立場によって「原則的評価方式」か「特例的評価方式(配当還元方式)」に分かれます。会社の経営を支配する目的の同族株主等が株式を取得する場合は原則的評価方式が適用され、会社の規模に応じ大会社は原則として「類似業種比準方式」、小会社は原則として「純資産価額方式」、中会社は両者の折衷により評価します。
一方、主に配当目的の同族株主等以外(少数株主)が株式を取得する場合は、会社の規模に関わらず計算が簡便な「配当還元方式」により評価します。
同じ会社の株式でもどの方式を適用するかで評価額が大きく変わりますので、非上場株式を評価する際は相続専門の税理士に相談されることをお勧めします。
株式の遺産分割で揉めやすいポイントは?
質問: 兄弟で遺産分割をする際、株式の分け方でトラブルになりやすい点はありますか?

松井信行先生
上場株式であれば市場を通じて容易に売却・換金できるため分け方で揉めることはあまりありません。しかし、非上場株式の場合、株主はその会社のオーナーや経営者であることが通常ですので、株式を簡単に換金できないだけでなく、株式を誰がどのように承継するかが極めて大きな問題となります。兄弟だからといって安易に分けると、将来兄弟間に不仲が生じて会社の経営に重大な支障をきたす恐れがあります。
非上場株式の相続では誰が株式を取得するかが会社の経営権の帰属に直結するため、専門家の助言も参考にしながら生前のうちに後継者に株式を贈与するか、あるいは遺言書で株式の取得者(相続人)を明確にしておくことが紛争防止には不可欠です。
相続した株式を売却したら確定申告は必要?
質問: 相続で取得した株式を売って利益が出ました。相続税を払ったのに、さらに税金がかかりますか?

松井信行先生
相続税とは別に、譲渡益に対して所得税と住民税(合計20.315%)が課税されます。譲渡益は譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算しますが、相続等により取得した株式は被相続人の取得時期・取得価額を引き継ぎます。
例えば、被相続人が20年前に100万円で購入した株式を相続人が500万円で相続・売却した場合、取得費は500万円ではなく100万円になります。尚、相続により取得した株式を相続から3年10ヶ月以内に売却した場合は「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」を使うと支払った相続税額の一部を取得費に加算できますので、課税される譲渡益を圧縮することができます。
相続発生後に受け取った配当金は誰の収入になる?
質問: 父が亡くなった後に証券口座に配当金が振り込まれました。この配当金は相続財産ですか?

松井信行先生
配当金が被相続人の亡くなられた日より前に「配当基準日(権利確定日)」の到来していたものであれば被相続人の相続財産として相続税の課税対象になります。またその配当金は、被相続人の所得税の準確定申告に含めて申告しなければならない場合があります。
一方、被相続人の亡くなられた日以降に配当基準日が到来した配当金は、その株式を相続した相続人の財産(配当所得)として所得税の課税対象になります。亡くなられた日と配当基準日のタイミングによって被相続人と相続人のどちらの財産になるか、相続税と所得税のどちらの課税対象になるかが変わってきますので、証券会社から届く配当金計算書等で両者の前後関係を必ず確認して下さい。
まとめ
相続財産に株式がある場合、評価方法の選択ミスと手続きの放置が最もリスクの高い落とし穴です。上場株式は4つの株価のうち最低額で評価し、非上場株式は会社規模・株主区分によって評価方式が決まります。遺産分割では換金性の問題、売却後は取得費加算特例の活用、配当金の準確定申告への計上など、対応すべき論点が多岐にわたります。
株式の相続は税理士の専門性が申告額に直結する分野です。相続財産センターでは、相続に強い税理士を無料でご紹介しています。1995年の創業以来培ってきた紹介データをもとに、最適な先生をご案内しますので、まずはお気軽にご相談ください。