名義変更をしていなくても固定資産税は止まらない
名義変更(相続登記)が完了していない不動産であっても、固定資産税の課税は止まりません。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税される地方税であり(地方税法第343条)、被相続人が死亡すると不動産は相続人全員の共有財産となるため、納税義務もそのまま相続人全員が引き継ぎます。
実務上は、相続人の中から「代表相続人」を選定し、市区町村の資産税課へ届出することで、以後の納付書をその代表者へ送付してもらいます。2020年(令和2年)10月の地方税法改正により、所有者死亡後は3か月以内に現所有者を申告することが義務化されており、正当な理由なく申告しなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。さらに2024年4月からは相続登記自体も相続を知った日から3年以内に申請することが法律上の義務となっています(不動産登記法第76条の2)。
死亡と固定資産税でよくある質問
死亡と固定資産税をめぐっては、手続き面だけでなく税務上の取り扱いで迷うケースが少なくありません。ここからは、実際に寄せられた質問をもとに、実務でよく問題になるポイントについて監修税理士の先生に詳しく伺っていきましょう。
名義変更せずに固定資産税を払い続けても所有権は得られない?
質問: 父が亡くなって5年以上経ちますが、不動産の名義変更をしないまま固定資産税を自分が払い続けています。長年払っているので、法的に自分の所有物として主張できますか?

徳永 圭先生
できません。固定資産税の支払いは所有権の取得とは無関係です。不動産の所有権を対外的に主張するためには、法務局で相続登記(相続による所有権移転登記)を完了させることが唯一の方法です。固定資産税を支払い続けていても時効取得にはならず、未登記のままでは第三者への売却も担保設定も不可能です。代わりに払い続けた固定資産税は、遺産分割協議で実際に不動産を取得した相続人へ返還請求することができます。
名義変更を放置するとどんなリスクがある?
質問: 相続した不動産の名義変更を先延ばしにしています。固定資産税さえ払っていれば問題ないですか?

徳永 圭先生
固定資産税の支払いだけでは不十分です。放置によるリスクは主に3点あります。第一に、相続人が増え続けることです。相続人が死亡するたびに権利関係が複雑になり、数十年後には数十人の同意が必要になるケースも実際に起きています。第二に、売却・活用が一切できないことです。未登記のまま不動産を売ることも、銀行担保に入れることもできません。第三に、2024年4月以降は相続登記の義務違反となることです。3年以内の登記申請を怠ると10万円以下の過料が科される場合があります。固定資産税の支払いは最低限の義務ですが、それで相続手続きが完了しているわけではありません。
固定資産税はいつまでに払う?払えない場合はどうなる?
質問: 相続した不動産の固定資産税の納付書が届いています。いつまでに払えばよいですか?また、まとまったお金がなくて払えない場合はどうすればよいでしょうか?

徳永 圭先生
固定資産税は通常、年4回の納期(6月・9月・12月・翌年2月が目安ですが自治体によって異なります)に分けて納付します。2026年は納期限を過ぎると年9.1%(納期後1か月以内は年2.8%)の延滞金が加算されます。払えない場合、放置せずに市区町村の窓口で分割納付や猶予制度(換価の猶予・納税の猶予)の相談をすることが重要です。これらを利用すれば延滞金を一部免除してもらえる場合があります。放置し続けると最終的に不動産や預貯金が差し押さえられるリスクがあり、相続財産全体に影響が及びます。
亡くなった年の固定資産税は誰がいつまでに払う?
質問: 母が5月に亡くなりました。その年度の固定資産税は母名義のまま課税されているようです。このまま放置してよいですか?

徳永 圭先生
放置はできません。1月1日時点で課税された固定資産税の全額が、相続人全員の納税義務として引き継がれます。年の途中で死亡しても月割りにはならず、年度分の全額が対象です。母名義の納付書はそのまま使って相続人が納付することができます。なお、死亡時点で未払いとなっている固定資産税は「確定した債務」として相続税の債務控除の対象になります(相続税法第13条)。申告の際に必ず税理士へ伝えてください。見落とすと相続税を余計に払うことになります。
相続した空き家の固定資産税が急に高くなる理由は?
質問: 相続した実家を空き家のままにしていたら、翌年から固定資産税が大幅に増えると近所の人から聞きました。本当ですか?どうすれば防げますか?

徳永 圭先生
本当です。住宅が建っている土地には固定資産税を最大6分の1に軽減する「住宅用地の特例」が適用されていますが、自治体から「特定空家」または「管理不全空家」に指定されるとこの特例が除外され、税額が最大6倍程度に跳ね上がります(空家等対策の推進に関する特別措置法)。指定される前に売却・活用・解体のいずれかの方針を決めることが最善策です。解体すると今度は更地として特例なしの税額が恒常的に課されるため、解体か売却かは固定資産税額を試算したうえで判断する必要があります。税理士への早期相談が有効です。
相続不動産の存在を確認する方法は?
質問: 亡くなった父が不動産を持っていたかどうかわかりません。固定資産税の通知書も見当たらないのですが、どこで確認すればよいですか?

徳永 圭先生
市区町村の資産税課で「名寄帳(なよせちょう)の写し」を請求してください。名寄帳とは、特定の所有者がその市区町村内に保有するすべての固定資産をまとめたリストで、相続人であれば取得可能です。被相続人が複数の市区町村に不動産を持っていた場合は、それぞれに請求が必要です。また、法務局の「登記情報提供サービス」(オンライン・有料)でも調査できます。名寄帳で不動産の存在が確認できたら、速やかに相続登記と代表相続人の届出を行いましょう。また、2026年から所有不動産記録証明制度もスタートしています。未登記物件については対応できないので万能ではありませんが、相続財産の漏れが心配な時は当該制度の利用も検討してみてください。
まとめ
名義変更が済んでいない間も固定資産税の課税は止まらず、放置するほど延滞金・過料・権利関係の複雑化というリスクが積み上がります。対応の優先順位は、①3か月以内の現所有者申告、②固定資産税の納付、③3年以内の相続登記の完了です。加えて、未払い固定資産税の債務控除や空き家放置による税額増は、相続税申告・財産管理の両面で見落としやすい落とし穴です。不動産を含む相続は手続きが多岐にわたるため、相続に精通した税理士への早期相談が時間的・金銭的なコストの削減につながります。相続財産センターでは、相続に強い税理士を無料でご紹介しています。まずはお気軽にご相談ください。