相続税の基礎控除を徹底解説!知っておきたい計算式と押さえるポイント

相続税の基礎控除を徹底解説!知っておきたい計算式と押さえるポイント
最終更新日:2025/12/25
この記事の監修者
スエナガ会計事務所
代表 末永 寛
「相続税はいくらかかるのか」「うちは申告が必要なのか」──相続を控えた多くの方が抱える不安です。相続税の負担を左右する重要な仕組みが「基礎控除」で、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。法定相続人が3人なら4,800万円、4人なら5,400万円まで非課税です。この金額を超える場合のみ相続税が発生するため、まずは正確な基礎控除額を把握することが相続税対策の第一歩となります。

相続税の基礎控除とは?具体的な計算式と考え方

相続税の負担を大きく左右するのが「基礎控除」です。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算され、この金額までの相続財産には相続税がかかりません。法定相続人が3人なら4,800万円、4人なら5,400万円と、相続人の数によって控除額が変動します。基礎控除に加えて、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を組み合わせることで、さらに税負担を抑えることが可能です。

基礎控除とは?

基礎控除は、相続財産のうち一定額を課税対象から除外する制度です。相続または遺贈により取得した財産の価額から基礎控除額を差し引き、残った金額に対してのみ相続税が課されます。この制度により、比較的小規模な相続については相続税が発生しないよう配慮されています。 
基礎控除の金額は相続が発生した時点での法定相続人の数によって変動するため、家族構成が重要な要素となります。相続人が多いほど財産の分割対象者が増え、一人当たりの取得財産が少なくなることを考慮した制度設計です。

基礎控除額の計算式

相続税における基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。

「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」

法定相続人数別の基礎控除額早見表

法定相続人数に応じた基礎控除額を早見表でまとめました。

法定相続人の数 基礎控除の基本額 法定相続人の加算額 基礎控除額合計
1人 3,000万円 600万円 3,600万円
2人 3,000万円 1,200万円 4,200万円
3人 3,000万円 1,800万円 4,800万円
4人 3,000万円 2,400万円 5,400万円
5人 3,000万円 3,000万円 6,000万円
6人 3,000万円 3,600万円 6,600万円

相続放棄時の注意点

相続放棄をした場合でも、基礎控除の計算上は法定相続人の数に含まれます。例えば法定相続人が3人で1人が相続放棄した場合でも、基礎控除額は4,800万円のままです。 
ただし、相続人が相続権を失っている場合や廃除されている場合は、法定相続人の数に含まれません。この違いを理解しておくことで、正確な基礎控除額を把握できます。

相続税の対象となる財産とは?

相続税の課税対象となる財産は、現金や預貯金だけでなく、不動産、有価証券、生命保険金、さらには美術品や貴金属まで多岐にわたります。一方で墓地や仏壇、一定の生命保険金や退職金には非課税枠が設けられています。自身の財産を正確に把握することが、相続税対策の第一歩です。

主な課税対象財産

相続税の対象となる財産は、被相続人が所有していたすべての財産が基本です。預貯金や有価証券などの金融資産、土地や建物などの不動産、さらには高額な美術品やブランド品も課税対象となります。

課税対象財産の具体例

  • 現金・預貯金・有価証券
  • 土地・建物などの不動産
  • 生命保険金や退職金(非課税枠を超える部分)
  • 事業用資産(店舗、機械設備など)
  • 貴金属、骨董品、美術品
  • 自動車、船舶などの乗り物

主な非課税対象財産

一定の要件を満たす財産については、相続税が課されません。墓地や仏壇などの祭祀財産、生命保険金や退職金の一定額(500万円×法定相続人の数)は非課税となります。 
また、被相続人が受け取るはずだった支給期が到来している給与や賞与のうち、まだ受け取っていなかったものも非課税です。相続人が国や地方公共団体などに寄付した財産も課税対象から除外されます。

主な非課税財産の一覧

  • 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)
  • 死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)
  • 墓地や仏壇などの宗教用財産
  • 相続人が国や地方公共団体などに寄付した財産

記事監修者からのワンポイントアドバイス
その他で相続税の課税対象財産と非課税対象財産で誤りやすいのが未支給の「年金」です。年金は大きく分けて「公的年金」と「私的年金」に分けられ、それぞれ取り扱いが異なります。
まず国民年金や厚生年金などの公的年金ですが、亡くなった年金受給者の3親等内の親族が未支給の年金を受け取ることが可能で、受け取った年金は、受け取った遺族のものとなります。これにより受け取った年金は遺族の一時所得として所得税・住民税が課税されます。
一方、企業年金などの私的年金は、死亡した月までの未支給年金は、公的年金と同様の取り扱いとなりますが、死亡後でも保証期間が付与されており、死亡の翌月から保証期間が満了するまでの年金(遺族給付金)について、遺族が受け取る場合には、相続税の課税対象となります。
このように、同じ年金でも取り扱いが変わりますので、注意が必要です。
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代表 末永 寛

法定相続人と相続順位

相続税の基礎控除額を計算する上で、法定相続人の数が重要な要素となります。法定相続人は民法で定められた順位に従って決定され、配偶者は常に相続権を持ちますが、それ以外の相続人は順位によって相続権の有無が変わります。正確な法定相続人の数を把握することで、基礎控除額を正しく計算できます。

法定相続人とは?

法定相続人とは、民法で定められた相続権を持つ人のことです。被相続人の配偶者と血族が対象となり、血族については順位が定められています。 
法定相続人の数は基礎控除額の計算に直結するため、相続税対策を考える上で最も重要な要素の一つです。例えば法定相続人が3人から4人に増えると、基礎控除額は4,800万円から5,400万円へと600万円増加します。

相続順位の考え方

法定相続人は以下の順位で決定されます。配偶者は常に相続権を持ちますが、それ以外の相続人は上位の順位者がいる場合、相続権を持ちません。

法定相続人の順位

  • 第1順位:配偶者と子や孫など(直系卑属)
  • 第2順位:配偶者と父母や祖父母など(直系尊属)※子や孫などがいない場合
  • 第3順位:配偶者と兄弟姉妹※第1順位、第2順位にいない場合

例えば被相続人に配偶者と子供2人がいる場合、法定相続人は配偶者と子供2人の計3人です。子供が先に亡くなっている場合は孫が代襲相続人となり、法定相続人の数に含まれます。 
被相続人に子供や孫がおらず、両親が健在の場合は、配偶者と両親が法定相続人となります。両親も亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人です。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
私自身、基礎控除額について、トラブルになったことはありませんが、常に気を付けている事は法定相続人が「誰」で「何人」なのかという事です。
ここまでの記事をお読み頂ければご理解頂けると思いますが、法定相続人の人数により基礎控除額は大きく変動します。このため、法定相続人を多くするために「養子」を活用する方もいますが、基礎控除額の計算上、養子には算入制限があります。最大で2人までしか人数に加える事ができませんので、多くの人と養子縁組を結んでも、上限が定められています。
このように、相続税の計算上では、必要以上に養子縁組を行って、不当に基礎控除額を増やすことを防ぐために養子の算入制限が設けられていますので、注意が必要です。
スエナガ会計事務所
代表 末永 寛

相続税の基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算し、相続財産から基礎控除額を差し引いた金額が課税対象となります。法定相続人が3人で相続財産6,000万円なら課税対象額は1,200万円、相続財産4,000万円なら基礎控除額以下のため非課税です。計算の流れを具体的なケースで確認しましょう。

基礎控除額の計算ステップ

相続税の課税対象額を算出する手順は3ステップです。まず法定相続人の数を確定し、次に基礎控除額を計算、最後に相続財産総額から基礎控除額を差し引きます。 
ステップ1では配偶者、子供、両親、兄弟姉妹など、民法で定められた順位に従って法定相続人が何人いるかを確認してください。ステップ2では「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の計算式で基礎控除額を算出します。ステップ3で相続財産総額から基礎控除額を差し引き、残った金額が課税対象額です。

ケース1:夫婦と子供2人の世帯

法定相続人3人、相続財産6,000万円のケースでは、基礎控除額は4,800万円となり、1,200万円が課税対象となります。

計算の流れ

法定相続人:配偶者と子供2人(計3人) 
基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円 
相続財産:6,000万円 
課税対象額:6,000万円−4,800万円=1,200万円

この1,200万円に対して相続税が課されます。実際の税額は、この課税対象額を法定相続分で按分し、相続税の税率を適用して計算します。例えば配偶者が1/2、子供がそれぞれ1/4ずつ相続する場合、配偶者600万円、子供各300万円を基に税額を算出し、実際の取得割合で按分し直します。

ケース2:夫婦と一人っ子の世帯

法定相続人2人、相続財産4,000万円のケースでは、基礎控除額は4,200万円となり、相続財産が基礎控除額以下のため相続税はかかりません。

計算の流れ

法定相続人:配偶者と子供1人(計2人) 
基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円 
相続財産:4,000万円 
課税対象額:4,000万円−4,200万円=−200万円→0円(非課税)

相続財産が基礎控除額以下の場合、相続税の申告は原則不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など特例を適用する場合は、相続税がゼロであっても申告が必要となります。特例の適用を検討している場合は、申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に注意してください。

基礎控除以外の6つの特例・控除

相続税の負担を軽減する方法は、基礎控除だけではありません。配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除の6つの制度を活用することで、相続税の負担を合法的に抑えることができます。これらの制度は基礎控除と併用可能で、複数の控除を組み合わせることでより効果的な税負担の軽減が期待できます。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続する財産については、1億6,000万円または法定相続分までのいずれか大きい額まで相続税が非課税となります。相続財産が3億円で配偶者の法定相続分が1億5,000万円の場合、配偶者の取得分については全額非課税です。 
この制度を利用するためには、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に申告書を提出する必要があります。申告書の提出を忘れると特例が適用されないため注意してください。配偶者が実際に財産を取得していることが要件となるため、遺産分割協議が申告期限までに完了している必要があります。

小規模宅地等の特例

被相続人の自宅や事業用の土地を相続する場合、評価額を最大80%減額できます。居住用宅地は330㎡まで80%の評価減、事業用宅地は400㎡まで80%の評価減が可能です。 
ただし、相続後も事業や居住を継続することなど、いくつかの要件を満たす必要があります。例えば居住用宅地の場合、配偶者または同居していた親族が相続し、申告期限まで居住を継続することが求められます。事業用宅地の場合は、相続後も事業を継続し、申告期限まで保有することが要件です。

未成年者控除

18歳未満の相続人には、18歳になるまでの年数に10万円を掛けた金額が控除されます。15歳の相続人の場合、残り3年分で30万円の控除を受けることができます。 
この控除は自動的に適用されるものではなく、相続税の申告時に必要書類を提出する必要があります。控除額が相続税額を上回る場合、扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

障害者控除

障害のある相続人については、85歳に達するまでの年数に一定額を掛けた金額が控除されます。控除額は、一般の障害者の場合は年10万円、特別障害者の場合は年20万円です。 
45歳の特別障害者の場合、残り40年分で800万円の控除を受けられます。未成年者控除と同様に、控除額が相続税額を上回る場合、扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。障害者手帳の等級によって一般障害者と特別障害者が区分されるため、該当する場合は事前に確認してください。

相次相続控除

10年以内に二重に相続が発生した場合、前回の相続で支払った相続税額の一部が控除されます。控除額は、前回の相続から経過した期間に応じて段階的に減少していきます。 
5年後に再度相続が発生した場合、前回支払った相続税の50%相当額が控除されます。1年経過するごとに控除割合が10%ずつ減少する仕組みです。短期間に相続が続いた場合の税負担を軽減するための制度で、前回の被相続人から財産を取得し相続税を納付していることが要件となります。

外国税額控除

海外に財産がある場合の二重課税を防ぐため、外国で支払った相続税相当額を日本の相続税額から控除する制度です。日本と外国の両方で相続税が課される可能性がある場合に適用されます。 
国によって税制が異なるため、該当する場合は早めに専門家に相談してください。外国税額控除の計算は複雑で、外国の相続税に相当する税額の証明書類が必要となります。国際相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

これらの控除制度は、それぞれに細かな適用要件があり、手続きも異なります。複数の控除を組み合わせることで、より効果的な税負担の軽減が期待できますが、誤った適用は後々のトラブルの原因となる可能性もあります。必ず税理士などの専門家に相談しながら進めてください。

まとめ

相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算され、この金額を超える相続財産に対してのみ相続税が課されます。法定相続人の数によって基礎控除額が変動するため、まずは自身の家族構成を確認し、正確な基礎控除額を把握してください。配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除の6つの制度を基礎控除と併用することで、さらなる税負担の軽減が期待できます。

 

相続税対策は、相続が発生してから始めるのでは遅すぎます。自身の財産を正確に把握し、基礎控除額を計算した上で、必要に応じて生前贈与や資産の組み換えなど具体的な対策を検討してください。相続税の計算や対策は専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することで相続税の試算、適切な節税対策の提案、各種控除制度の効果的な活用方法など、具体的なメリットが得られます。相続財産センターでは、経験豊富な税理士が皆様の相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。

よくある質問

相続税の基礎控除額はいくらですか?

基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。法定相続人が3人なら4,800万円、4人なら5,400万円となります。

基礎控除額はいつから引き下げられましたか?

2015年1月1日以降の相続から基礎控除額が引き下げられました。改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」でしたが、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人数」となりました。

相続放棄した人は法定相続人の数に含まれますか?

相続放棄をした場合でも、基礎控除の計算上は法定相続人の数に含まれます。法定相続人が3人で1人が相続放棄した場合でも、基礎控除額は4,800万円のままです。

養子は法定相続人の数に含まれますか?

養子も法定相続人の数に含まれますが、基礎控除額の計算上、養子には算入制限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に加えることができます。

法定相続人の順位はどのように決まりますか?

第1順位は配偶者と子や孫、第2順位は配偶者と父母や祖父母(子や孫などがいない場合)、第3順位は配偶者と兄弟姉妹(第1順位、第2順位にいない場合)です。配偶者は常に相続権を持ちます。

相続財産が基礎控除額以下の場合、申告は必要ですか?

相続財産が基礎控除額以下の場合、相続税の申告は原則不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など特例を適用する場合は、相続税がゼロであっても申告が必要となります。

基礎控除額を超えた場合、どのくらい相続税がかかりますか?

基礎控除額を超えた金額を法定相続分で按分し、相続税の税率(10%〜55%の累進課税)を適用して計算します。実際の税額は相続財産の総額や相続人の数、各種特例の適用によって異なります。

基礎控除額の計算で注意すべき点は何ですか?

法定相続人の数を正確に把握することが最も重要です。相続放棄した人も法定相続人の数に含まれる一方、養子には算入制限があるため注意が必要です。また、相続人が相続権を失っている場合や廃除されている場合は法定相続人の数に含まれません。

この記事の監修者
スエナガ会計事務所
代表 末永 寛
専門学校卒業後、一般企業において経理事務を約25年経験。39歳で一念発起し、働きながら税理士試験に合格。税理士法人勤務を経て、2023年スエナガ会計事務所開業。特に「相続税」分野を強みとし、相続や中小企業の事業承継(後継者問題)について、相談に応じたり、セミナーを開催したりするほか、金融機関の勉強会やハウスメーカー主催の相続情報や相続対策の講演なども行っている。趣味はマラソンで、これまで100レース以上に出走、現在も記録更新中であり、将来はバイク(自転車)で47都道府県制覇を狙っている。

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この記事の執筆者
相続財産センター編集部

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