なぜ「相続税に強い税理士」が必要なのか
結論から言えば、相続税は専門性が極めて高く、税理士によって納税額に数百万円、場合によっては数千万円もの差が出ることがあります。相続税申告の経験が少ない税理士に依頼すると、本来受けられる特例を見逃したり、財産評価を誤ったりして、払わなくてもいい税金を支払うことになりかねません。だからこそ、相続に強い税理士を選ぶことが重要なのです。
相続を専門としない税理士もいる
税理士の専門分野は、大きく法人税務と個人税務に分かれます。弁護士に刑事・民事などの専門分野があるのと同様に、税理士にも得意分野があり、毎年の会計・税務申告を中心に仕事をしている税理士は、相続税をほとんど扱ったことがないというケースも珍しくありません。実際、相続税の申告経験が豊富な税理士は、皆さんが思っているよりもずっと少ないのが現実です。
相続専門の税理士と一般税理士の違い
相続専門の税理士は、日常的に相続税申告を扱い、財産評価や特例適用、遺産分割のサポートに精通しています。最新の税法改正や判例にも詳しく、不動産鑑定士や弁護士との連携も密なため、複雑な案件も総合的にサポートできます。一方、一般税理士は法人税や所得税が主な業務領域で、相続に関する深い知見や実績があるとは限りません。この差が、最終的な納税額や手続きのスムーズさに大きく影響します。
相続で税理士が必要なケース・不要なケース
基本的には、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は税理士への依頼を強くおすすめします。特に不動産や非上場株式など評価が複雑な財産がある場合、税理士に依頼しないと数百万円単位で損をする可能性があります。一方、基礎控除額以下で財産構成がシンプルな場合は、必ずしも税理士は必要ありません。
税理士が必要なケース
相続税の申告が必要かどうかは、まず基礎控除額を超えるかどうかで判断されます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、相続財産がこの金額を超えた場合には相続税の申告が必要となり、税理士への依頼を検討すべきでしょう。
具体的には、以下のようなケースで税理士の専門知識が不可欠になります。
相続財産が基礎控除額を超える場合
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。相続財産がこの金額を超えると申告義務が発生し、適切な財産評価や特例適用の判断が必要になるため、税理士の支援が重要です。
財産の内容が複雑な場合
不動産や非上場株式、美術品、海外資産などが含まれる場合、評価方法が複雑で専門的な知識が求められます。特に不動産については、土地の形状や立地条件によって評価額が大きく変動するため、経験豊富な税理士による適切な評価が節税につながります。
相続人間での協議が難航している場合
遺産分割協議がまとまらない、または相続人同士の関係が良好でない場合、税理士が第三者として中立的な立場から税務面での最適な分割方法を提案することで、円滑な解決に導くことができます。
申告や書類作成に自信がない場合
相続税申告書は複雑で、一般の方が正確に作成するのは困難です。申告ミスによる追徴課税や延滞税のリスクを避けるためにも、専門家に依頼することで確実な申告が可能になります。
税理士が不要なケース
一方で、以下のような状況では必ずしも税理士への依頼は必要ありません。
相続財産が基礎控除額以下の場合
相続財産の総額が基礎控除額を下回る場合、相続税の申告義務がないため、税理士への依頼は基本的に不要です。ただし、財産の評価に不安がある場合は、一度相談してみることをおすすめします。
財産構成がシンプルで相続人関係が良好な場合
現金や預貯金が中心で不動産などの複雑な財産がなく、相続人同士の関係も良好で遺産分割がスムーズに進む場合は、自分たちで手続きを進めることも可能です。
時間と労力をかけられる場合
相続税の仕組みを学び、必要書類の収集や申告書作成に時間をかけられる方は、自力での申告も選択肢の一つです。ただし、ミスのリスクや労力を考慮すると、専門家への依頼が安心といえるでしょう。
相続に強い税理士とは?
相続に強い税理士とは、「相続税専門で年間多数の申告実績があり、担当者が税理士資格を持ち、税務調査率が低く、二次相続まで提案できる税理士」です。事務所の規模や知名度だけでなく、実際に担当する税理士個人の経験と専門性を確認することが重要です。
相続税の専門である
今まで説明してきた通り、相続税は申告の仕方により支払う税額が大きく変わります。税務調査の対象になりやすいこともあり、税理士が関わっていながら“払い過ぎ”の事例が多い、難しい税金でもあるのです。そうである以上、「相続についての知識と経験を蓄積したスペシャリストである税理士」と、例えば「会社の顧問などをしながら相続にも対応するというスタンスの税理士」とでは、差が出て当然といえるでしょう。
税理士事務所に関しては、相続税に専門特化しているか、あるいは相続専門の部署を持っているかが、1つの選択基準になるでしょう。
相続の申告実績が豊富
節税の鍵を握る「財産評価」では、知識もさることながら経験と実績が重要な意味を持ちます。例えば、ひとくちに土地といっても、さまざまな立地や形状のものがあります。税理士が過去に数多くの申告を行い、経験を蓄積していれば、それだけ適切な評価をしてもらえる可能性は高まるでしょう。その点で自信のある事務所は、年間(累計)の相続税申告数、税の還付件数や金額、具体的な事例といった実績を、ホームページで堂々と公表していたりするはずです。
ただし、注意点が1つあります。どんなに実績のある事務所でも、担当税理士の経験が浅くては「相続に詳しい」とは言えません。担当してくれる税理士個人にどれくらいの実務経験があるのかは、きちんと確かめる必要があります。
担当となる人が税理士資格を保有している
特に大手の事務所や税理士法人の場合は「税理士資格を持たないスタッフ」が担当につくこともあります。知識や経験の深さは必ずしも資格の有無とリンクはしませんが、相続という重要な業務を任せるのはやはり不安になります。また、仮に申告後に税務調査になったような場合、無資格のスタッフでは税務署に対応できません。この点も契約前に確認が必要です。
相続の中でも特化している分野がある
相続にもさまざまな形があり、実はニーズに合わせた事務所の専門特化も進んでいます。土地などの不動産が相続財産の多くを占めるような場合には、「不動産の相続に詳しい税理士」がいます。また、経営している会社を相続させる(自社株を渡す)場合、やり方を間違えると経営自体が危うくなるような状況も起こり得るため、「自社株の相続に詳しい税理士」に依頼すべきでしょう。このように、自らの強みを明確にしている税理士は、信頼が置けます。
税務調査の実施率が低い
税務署側もコストと時間をかけて税務調査に入るわけですので、“確実に追徴できる案件”をターゲットにします。その判断基準の1つが、「どの税理士が申告したのか」だといわれています。平たく言えば、「この税理士(事務所)が申告書を作成したのなら、調査に入っても無駄だろう」というバリアになる…ということです。この税務調査率についても、ホームページなどで公開している事務所もあります。
二次相続の提案がある
後述のメリット紹介でも触れるように、一次相続の際に二次相続まで含めた提案をする税理士は、納税者のことをよく考えてくれているプロだといえるでしょう。

- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
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「相続」は一生のうちに一度ないし二度経験するかどうかの出来事ですので、手続きを行う相続人等にとっては初めてのことばかりで何からどうすれば良いのか分からなくて当然です。
これは依頼を受ける税理士にとっても同じで、自ら積極的に相続案件に携わろうとしなければ複雑な財産評価や相続税申告の実務経験を数多く積むことはできません。
その意味で、相続税の専門で申告実績が豊富な事務所を選ぶことはもちろんですが、事務所の規模や法人・個人の形態を問わず実際に担当する税理士がこれまでどの程度相続案件に関与してきたかがとても重要です。 - 松井 信行 公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
相続に強い税理士を選ぶメリット
相続に強い税理士に依頼する最大のメリットは、「適切な節税による数百万円単位の納税額削減」と「申告ミスや税務調査のリスク回避」です。さらに、複雑な申告手続きの時間・手間を省けるだけでなく、遺産分割の提案や二次相続まで見据えた戦略的なアドバイスを受けることで、家族全体での円満な相続と長期的な節税が実現できます。
メリット①申告作業の時間や手間を省ける
相続税の計算は、「相続した財産の金額に税率を掛ける」といった単純なものではありません。申告書の作成にも非常に手間がかかります。財産の評価をどうするかという難問もあります。税理士にそれらを依頼することで、作業に費やす時間も手間も省くことができます。
メリット②適切な節税が期待できる
当たり前のことですが、節税のためには税金や税制についての深い知識が必要です。様々な事例に対応してきた経験も、ものをいいます。財産の評価や特例の使い方などにより納税額に差の出る「相続税」に関しては、税理士に依頼することに大きなメリットがあると言えるでしょう。
メリット③申告ミスを防ぐことができる
申告にミスがあると、払う必要のない税金を支払うことになったり、逆に申告漏れを指摘されてペナルティの対象になったりすることがあります。労力をかけたのに残念な結果になってしまうことは、実は少なくありません。税理士に依頼すれば、正確な財産評価も含めて、ミスのない申告が行えます。
メリット④“争族”にならないようにフォローしてもらえる
「税理士は遺産分割協議の争いに介入できない」という原則ですが、相続人みんなが納得できる節税対策(遺産分割の仕方)を提示することなどにより、争いを未然に防ぐことは可能です。税理士は、誰か1人の代理人となる弁護士と違い、第3者として相続全体に関与できるのです。
メリット⑤税務調査に立ち会ってもらえる
相続税は、申告後の税務調査(※)の多い税目でもあります。税理士に調査に立ち会ってもらうことで、調査官の言いなりに追徴されるといったリスクを避けることができるでしょう。
※税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
メリット⑥二次相続まで見据えた節税ができる
一次相続では、「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」が使えます。この配偶者控除は、相続財産の「1億6,000万円まで」と「自分の法定相続分」のいずれか高いほうまで“無税”で相続できるという制度です。
ここでつい「できるだけ母親に相続してもらって、税金を下げよう」ということになりがちです。しかし、そうやって母親が相続した財産を、二次相続では子どもが引き継ぐことになり、そこで高額の相続税が発生します。トータルで考えると、一次相続の際に、ある程度子どもに相続したほうが有利なケースも多く、節税のためには先を見通した戦略・シミュレーションが必要になるのです。相続財産が多額の場合には、やはり専門家に相談すべきでしょう。
相続に強い税理士に依頼した場合の費用・報酬
税理士に相続税の申告を依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
税理士に支払う報酬は、(1)「基本報酬」+(2)「加算報酬」の“2階建て”となっているのが普通です。
相続税申告の税理士報酬の目安について、詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。
(1)相続財産額によって決まる「基本報酬」
相続財産の額が大きくなるに従って、税理士の報酬も高額になります。相続財産が大きいほど、財産の評価が大変になることなどから、そうした料金体系になっているのです。
料金の目安は、大体以下の通りです。
| 相続財産額 | 基本報酬相場 |
|---|---|
| ~5,000万円 | 15~50万円 |
| 5,000~7,000万円 | 25~70万円 |
| 7,000万~1億円 | 35~100万円 |
| 1億~1億5,000万円 | 50~150万円 |
| 1億5,000万~2億円 | 60~200万円 |
| 2~3億円 | 80~250万円 |
| 3~5億円 | 100~300万円 |
| 5億円~ | 要相談 |
ただし、実際の金額は、事務所によってかなりの差があります。報酬が高ければそれだけ質の高いサービスが受けられる、と言い切れないのは悩ましいところですが、相場よりも高かったり、逆に安めに設定されたりしている場合には、注意が必要といえます。そもそもホームページなどで、きちんと報酬を公開しているかどうかも、選ぶ基準になると思います。
なお、これはあくまでも当初の目安です。作業を進めるうちに相続財産が増えたり減ったりすれば、それによって報酬も変動すると考えてください。
(2)「加算報酬」とは?
これに加えて、次のような作業が必要になる場合には、個別に「加算報酬」というコストがかかります。
土地の評価
1利用区分につき5~6万円が相場とされます。土地の形状が複雑で、不動産鑑定士の鑑定が必要になる場合には、その費用がさらに加算されます。
自社株(非上場株式)の評価
会社の規模などにもよりますが、通常は10~15万円程度です。
相続人が複数いる場合
「基本報酬×10%×(相続人の数-1)」で計算します。旧税理士報酬規程で定められていたものですが、加算する事務所が多いようです。
このほか、物納や納税猶予を行う場合、あるいは申告期限が迫ってからの依頼などの際には、別途報酬が必要になる場合があります。
当初の目安から報酬が変動する可能性があると言いましたが、あえて基本報酬を安く設定し、終わってから高額の支払いを請求する事務所もありますので、要注意です。契約前に、報酬の加算についてしっかり確認するようにしましょう。必要に応じて、複数の事務所に見積もりを出してもらうのも、相場を確かめる意味で有効です。
また、報酬相場の詳細は下記の記事で詳しく説明しています。
相続に強い税理士を選ぶ5つのポイント
相続税申告実績と専門チームの有無
相続税申告の経験が豊富で、専任のスタッフや専門チームを擁する税理士は、複雑な案件にもスムーズに対応可能です。実績件数や専門部署の存在を確認し、より確かな技術力とノウハウを持つ事務所を選びましょう。
料金・報酬体系が明瞭でわかりやすいこと
相談前に報酬基準や見積もりを提示してくれる税理士なら、後々のトラブルを回避できます。料金表の公開や明確な説明があるかをチェックし、安心して依頼できる環境を整えることが重要です。
相談のしやすさとコミュニケーション力
メールや電話での柔軟な対応、丁寧な説明、気軽に質問できる雰囲気など、相談のしやすさも大切なポイントです。わからない点を遠慮なく聞ける相手であれば、相続手続きがスムーズに進みます。
他専門家(弁護士、不動産鑑定士)との連携可能性
相続では、法律問題や不動産評価など、税務以外の専門知識が必要になるケースもあります。他士業との連携ネットワークがあれば、一括で解決策を提案でき、手間と時間を大幅に削減できます。
信頼性の裏付け(口コミ・実績・資格・監修者プロフィール)
利用者の口コミや公的資格、監修者のプロフィールなど、第三者評価があると信頼度が増します。公式サイトや紹介ページで、税理士の実績や所属団体、メディア掲載実績などをチェックしましょう。

- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
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相続全般に強い税理士であれば「いつまでに何をしなければならないか」が分かっていますので、最初に相談を受けた時点から少なくとも委任契約を締結するまでの間に申告書提出までのスケジュールや必要書類を一覧で提示するなど、作業の段取りがスムーズで質問に対する応答も的確かつ迅速なはずです。
また、申告書を提出する際、税理士が相続財産・債務に関してどのような調査を行って評価・計上したかなどを記載した『添付書面』を適切に作成し添付することで、税務署からの指摘や税務調査を受けるリスクを軽減するよう努めているかも判断材料の一つになるでしょう。 - 松井 信行 公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
相続税理士の探し方とチェックポイント
相続に強い税理士を探す方法には、知人からの紹介やインターネット検索などさまざまな選択肢があります。しかし、本当に相続に精通した税理士を見極めるのは簡単ではありません。
だからこそ、私たちビスカス相続財産センターでは、お客様一人ひとりの状況や要望に合わせて、相続に強い税理士を無料でご紹介しています。全国各地の実績豊富な税理士ネットワークの中から、お客様に最適な専門家をマッチングいたしますので、安心してご相談ください。
税理士選びで確認すべきポイント
ご自身で税理士を探される場合は、以下のような質問で専門性を確認することをおすすめします。
- 「年間どの程度の相続税申告を手がけていますか?」
- 「私たちのケースで想定される節税方法はありますか?」
- 「報酬体系と追加費用の可能性について教えてください」
- 「申告後の税務調査率はどの程度ですか?」
- 「二次相続まで考慮した提案は可能ですか?」
- 「担当者は税理士資格を持っていますか?」
ビスカス相続財産センターにご相談いただければ、こうした確認作業も不要です。すでに厳選された相続専門の税理士をご紹介いたします。
相続の実績豊富な税理士15選
ビスカス相続財産センターでは、全国各地で実績のある相続専門の税理士と幅広く提携しています。ここでご紹介するのは、その中でも特にお客様からの評価が高く、相続案件で確かな実績を持つ代表的な税理士の一部です。もちろん、その他にも優秀な税理士・税理士事務所が多数在籍しておりますので、お客様の地域やご状況に応じて最適な専門家をご紹介いたします。まずは、以下の各エリアで特に信頼の厚い税理士をご覧ください。
※2024年の各対象エリアにおける相続案件の成約数・打診数をもとに選出しています。
まとめ
相続手続きは複雑で、精神的な負担も大きいものです。しかし、相続に強い税理士を選び、適切なステップで手続きを進めれば、余計な税負担や手続き上のトラブルを回避し、安心して相続を完了できます。
専門知識と経験を持つ税理士が、財産評価や分割協議、申告書作成、税務署対応といった一連の流れを支えることで、時間的・精神的コストを大幅に削減し、ご家族が納得できる形での資産承継が可能となります。
相続を頼むのなら、相続に詳しい税理士にしましょう。ホームページで専門性を見極めるとともに、必要に応じて税理士紹介会社を利用するのが、間違いのない方法です。
