先物取引にかかる税金とは? 個人と法人の違いを徹底比較 | MONEYIZM
 

先物取引にかかる税金とは?
個人と法人の違いを徹底比較

先物取引にかかる税金はもうけや損失が同額でも、取引対象者が個人または法人によって納税額の差が大きくなる可能性があります。しかも、必要書類の提出漏れなど事務的処理の不備によって本来納める必要のない税金が発生しています。そこで、先物取引にかかる税金について個人と法人の違いを徹底比較します。

先物取引の税金のアウトライン

先物取引にかかる税金は個人と法人とでは取り扱いが異なります。まずはアウトラインについて説明します。

先物取引とは

先物取引とは「将来のあらかじめ定められた期日に特定の商品(原資産)を現時点で取り決めた価格で売買する事を約束する取引」することを指します。

 

株取引との違いは次の通りです。

(1)取引期間が決まっている

株取引では、株式を保有または売却するかどうかは本人の自由です。しかし、先物取引には取引の期日が存在し、期日が到来すれば自動的に決済されます。

(2)売りからのスタートも可能

先物取引は、株取引と違い、商品の相場が下落すると予想したときには「売り」から取引を始めることができます。予想通り相場が下落すれば、「買戻す」ことで利益を得ることができます。

(3)差金の受け渡しで決済する

株取引のように、売買の都度、株券や代金を受渡するのではなく、売買損益(差額)のみを受渡します。この差額のみの受渡をする決済方法を「差金決済」といいます。

(4) 資金効率の高い運用ができる

株取引では、100万円の株式を買う場合、原則100万円の資金が必要となりますが、先物取引の場合は10万円などの購入金額よりも少額の資金(証拠金)を担保に差し出すことで取引することが可能です。証拠金に対してより大きな額で運用ができることをテコの原理になぞらえて「レバレッジ効果」といいます。要するに運用資金を超える利益を獲得できたり、損失を被ったりするのが先物取引の特徴といえます。

(5)銘柄の選択が不要

株取引のように個別銘柄に投資した場合は、その企業が倒産した場合のリスクも予め考慮しておく必要があります。しかし、先物取引の場合、日経平均株価(日経225)やTOPIXなどの株価指数を対象とするため、投資先の倒産リスクを避けることができます。
 

例)4月20日時点において、ガソリン50キロリットルを決済期日の6月20日に現時点の価格である1キロリットル当たり65,000円で買う約束をする

 

 

上記図の価格推移の場合、転売日によって損益は次の通りになります。
 

  • 4月30日に転売した場合:50,000円(1キロリットル当たり1,000円)の差益
  • 5月30日に転売した場合:50,000円(1キロリットル当たり1,000円)の差損
  • 決済期日までに転売しなかった場合:1キロリットル当たり65,000円で50キロリットルのガソリンを購入することができる

先物取引の利益に課税される税金

  • 個人:所得税(雑所得)→分離課税
  • 法人:法人税→総合課税

 

先物取引で獲得した利益は所得と認識され、次の税金が課税されます。

(1)個人

他の所得から独立させ、雑所得として所得税と住民税が課税されます。税率は分離課税が適用され、一律20%(所得税15%、住民税5%)です。

(2)法人

本業などにかかる他の法人所得と合算し、法人税などが課税されます。実効税率が約30%です。

先物取引の損失の税金

  • 個人:同じ先物取引の利益と相殺できる、繰越期間3年
  • 法人:すべての利益と相殺できる、繰越期間10年

 

先物取引での損失の取り扱いは次の通りです。

(1)個人

同じ先物取引の利益としか相殺できず、損失の繰越期間は3年です。事業所得など他の所得からの控除は認められていません。

(2)法人

すべての利益と相殺することが可能で、損失の繰越期間は10年です。

未決済の先物取引の含み損益の税金

  • 個人:含み損益を計上しない
  • 法人:含み損益を計上する

 

決算日までに決済期日が到来していない先物取引の含み損益の取り扱いは次の通りです。

(1)個人

含み損益を計上しません。そのため、所得金額や税額に影響せず、あくまでも決済期日までに転売により確定した損益のみが税金の計算対象になります。

(2)法人

決算日に決済したものとしてみなして(仮定して)含み損益を計上します。そのため、含み損益の計算するのを忘れると、法人税などの税額計算にも誤りが生じてしまいます。

先物取引の税金の比較検証~個人vs法人~

先物取引の利益または損失の額は運用資金よりも大きく膨れ上がる可能性があるため、取引を始める前に個人名義または法人名義ですべきかどうかを検討したほうがいいでしょう。そこで、個人と法人の税金の取り扱いについて徹底検証します。

利益を計上する場合

  • 税率の低い個人のほうが有利
    先物取引で利益を計上する場合、税率の低い個人名義ほうが有利です。法人名義の場合、実効税率30%が課税されますが、個人名義なら一律20%で済むためです。

損失を計上する場合

  • すべて所得と相殺でき、繰越期間の長い、法人のほうが有利
    先物取引で損失を計上する場合、法人名義のほうが有利です。法人名義なら他のすべての所得と相殺でき、しかも控除しきれない損失額は翌年度以降10年間繰り越すことができるためです。一方、個人名義の損失額は他の先物取引にかかる所得しか相殺できず、繰越期間も3年間に限られてしまいます。

事務的手間

帳簿の記帳義務のない個人のほうが楽であることを説明します。

 

個人名義の場合、確定申告の時に利益または損失の額を集計するだけで済むため、それほど事務的な手間はかかりません。一方、法人名義の場合、取引ごとに経理処理をしなければなりません。

先物取引の税金で押さえるポイント~個人編~

個人名義での先物取引の税金で押さえるべきポイントについて説明します。

確定申告の義務がある

確定申告の義務があることを説明します。

 

先物取引の税金は株取引と違い、申告不要の制度が存在しません。そのため、利益を獲得した場合はもちろん、損失額を翌年以降繰り越すためにも各取引業者会社が計算した売買損益を基に自分で確定申告をしなければなりません。

確定申告の必要書類

確定申告の必要書類について説明します。

 

確定申告の必要書類は次の通りです。

(1)利益を獲得した年

確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければなりません。

(2)損失を被った年および繰越控除を受ける年

確定申告書に次の書類を添付しなければなりません。

  • 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
  • 所得税の●●申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

無申告はいずれ発覚する

取引業者は各人の先物取引の明細を記載した法定調書を税務署に提出しています。提出期限は原則、1月31日であり、税務署は確定申告シーズン前に申告すべき所得金額を把握しているため、無申告や計算ミスがすぐに発覚する仕組みになっています。

先物取引の税金で押さえるポイント~法人編~

法人名義での先物取引の税金で法人が押さえるべきポイントについて説明します。

取引ごとに経理処理する必要がある

法人は取引ごとに経理処理する必要があり、帳簿に記帳しないと青色申告の取り消し処分を受ける可能性があります。青色申告の取り消し処分を受けると、先物取引の損失を翌年度以降10年間繰り越すこともできなくなってしまいます。

利益・損失が確定した場合の経理処理

「証拠金の差し入れた場合」および「利益・損失が確定した場合」の経理処理について説明します。

 

例)前述のガソリン50キロリットルを1キロリットル当たり65,000円で買う約束をした場合

(1) 取引業者に委託証拠金を300,000円差し入れた場合

借方 金額 貸方 金額
差入保証金 300,000円 現金預金 300,000円

(2) 1キロリットル当たり66,000円の時価で決済した場合

借方 金額 貸方 金額
現金預金 50,000円 先物損益(雑収入) 50,000円
現金預金 300,000円 差入保証金 300,000円

(3) 1キロリットル当たり64,000円の時価で決済した場合

借方 金額 貸方 金額
先物損益(雑損失) 50,000円 現金預金 50,000円
現金預金 300,000円 差入保証金 300,000円

含み損益の経理処理

含み損益の経理処理について説明します。

 

例)前述のガソリン50キロリットルを1キロリットル当たり65,000円で買う約束をした場合

(1)決算日にガソリン1キロリットル当たりの時価が67,000円(含み益100,000円)になった場合

①決算日

借方 金額 貸方 金額
先物取引差金(債権) 100,000円 先物損益(雑収入) 100,000円

②翌期首(決算日の仕訳と反対の仕訳をする)

借方 金額 貸方 金額
先物損益(雑収入) 100,000円 先物取引差金(債権) 100,000円

(2)決算日にガソリン1キロリットル当たりの時価が63,000円(含み損100,000円)になった場合

①決算日

借方 金額 貸方 金額
先物損益(雑損失) 100,000円 先物取引差金(債務) 100,000円

②翌期首(決算日の仕訳と反対の仕訳をする)

借方 金額 貸方 金額
先物取引差金(債務) 100,000円 先物損益(雑損失) 100,000円

まとめ

先物取引で利益を獲得する見込みがあるなら税率が低く、事務的手間のかからない個人のほうが有利でしょう。しかし、損失を他の所得と相殺して節税対策を視野に入れるなら法人名義で先物取引することを検討する価値があります。両者の違いを比較したうえで先物取引をする際は、個人名義または法人名義でするかどうかを選択しましょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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