千葉豪雨で店舗・事務所が浸水したら?中小企業が使える融資・保証・税金の減免をまとめて解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

2026年8月13日から14日にかけて千葉県を襲った記録的な大雨は、気象庁により「令和8年8月千葉豪雨」と命名されました。千葉市では24時間降水量が360ミリを超え(8月の平年1か月分の3倍以上)、観測史上1位を更新。内閣府のまとめ(8月16日10時時点)では死者8人、住家被害は床上浸水597棟・床下浸水490棟を含む計1,160棟にのぼっています(数値は速報値であり今後変わる可能性があります)。千葉県の25市町には災害救助法が適用され、経済産業省・中小企業庁は8月14日、被災した中小企業・小規模事業者向けの支援措置を発表しました。店舗・事務所・社用車が被害を受けた事業者の方に向けて、「今すぐやるべきこと」と「使える制度」を資金繰り・税金・保険の順に整理します。

1. まずやること——罹災証明書の申請と被害の記録

すべての支援制度の入り口になるのが罹災証明書です。市町村が被害の程度(全壊・半壊・床上浸水など)を認定して交付するもので、融資・保証の手続きや保険金請求、税の減免手続きでも提示を求められることがあります。

・① 被害状況を写真で記録する:片付けや修理を始める前に、建物の外観・内部・浸水の高さ・被害を受けた設備や商品在庫をスマートフォンで多方向から撮影しておく

・② 罹災証明書を申請する:店舗・事務所の所在する市町村の窓口(多くはオンライン申請も可)へ。事業用資産の被害は「被災証明書」など別様式の場合もあるため、自治体の案内を確認

・③ 損害の一覧を作る:修理見積書・領収書・廃棄した商品のリストなどを保存。後述の税務処理や保険請求の根拠資料になります

2. 資金繰り——「別枠100%保証」から「原則即日の貸付」まで

経済産業省・中小企業庁が8月14日に発表した支援措置は、次の5本柱です。

セーフティネット保証4号(一般保証と別枠・融資額100%保証)

災害救助法が適用された千葉県の25市町(千葉市・市川市・船橋市・松戸市・茂原市・佐倉市・東金市・習志野市・柏市・市原市・八千代市・我孫子市・鎌ケ谷市・四街道市・八街市・印西市・白井市・大網白里市・館山市・富里市・山武市・酒々井町・九十九里町・白子町・長柄町)で、豪雨の影響により売上高等が前年同月比20%以上減少するなどの要件を満たす中小企業・小規模事業者が対象です。一般保証とは別枠の限度額で、信用保証協会が融資額の100%を保証します。
なお、地域指定の官報告示は「近日中に行う予定」とされており(8月17日時点では告示前)、信用保証協会での事前相談はすでに始まっています。認定申請は市町村の商工担当窓口で行うため、最新の告示状況とあわせて確認してください。

災害復旧貸付(日本公庫・商工中金)

被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象に、日本政策金融公庫・商工組合中央金庫が運転資金・設備資金を融資します。復旧のための設備買い替えや当面の運転資金に使えます。

小規模企業共済の災害時貸付(原則即日・低利)

小規模企業共済に加入している方は、中小企業基盤整備機構による災害時貸付を利用できます。原則として即日、低利で借りられるのが特長で、当座の資金を最速で確保する手段になります。掛金の範囲内など限度はありますが、加入者はまず検討したい制度です。

既往債務の返済条件緩和・特別相談窓口

すでに借入がある場合も、返済猶予などの条件変更・貸出手続きの迅速化・担保徴求の弾力化について、実情に応じて対応するよう国が金融機関側へ要請しています。返済が苦しくなりそうな場合は、早めに取引金融機関へ相談しましょう。また、千葉県の日本公庫・商工中金・信用保証協会・商工会議所・よろず支援拠点などに特別相談窓口が設置されています。何から手を付けるべきか迷ったら、まず相談窓口の利用をおすすめします。

3. 税金——期限延長・納税猶予・損失の取り扱い

申告・納付期限の延長(現時点では「個別申請」)

災害で申告・納付が期限内にできない場合、税務署に申請することで期限の延長(災害がやんだ日から2か月以内)が認められます。8月17日時点では国税庁による地域指定(告示)は行われていないため、現時点では納税者ごとの「個別申請」による延長となります。この申請は期限が過ぎた後からでも行えます。今後、地域指定が行われれば申請なしで自動延長となるため、国税庁ホームページの災害関連情報を確認してください。

納税の猶予

災害により財産に相当な損失を受けた場合、税務署に申請することで納税の猶予(原則1年以内)を受けられる制度もあります。資金繰りが厳しい場合は、融資の相談とあわせて検討しましょう。

事業用資産の損失は「必要経費」または「損金」に

店舗・機械・車両・商品在庫など事業用資産の損失は、個人事業主なら事業所得の必要経費、法人なら損金に算入できます。損壊した資産の取り壊し・撤去費用、原状回復のための修繕費も対象です。被害額の算定には、前述の写真記録や見積書・領収書が根拠になります。

個人の住宅・家財は「雑損控除」と「災害減免法」の選択

自宅や家財の損害については、確定申告で雑損控除(損失額のうち一定額を所得控除、引ききれない分は3年間繰越可)か、災害減免法(その年の所得金額1,000万円以下で、住宅・家財の損害が価額の2分の1以上の場合に所得税を軽減・免除)の有利な方を選択できます。どちらが有利かは所得や損害の程度により異なるため、税理士や税務署に相談しながら判断すると安心です。

4. 保険——車の水没は「車両保険」、建物・設備は火災保険の水災補償

浸水被害の保険請求では、対象によって使う保険が異なる点に注意が必要です。

・店舗・事務所の建物や設備・什器:火災保険の「水災補償」の対象。ただし契約によっては水災補償を外している場合があるため、証券の補償内容を確認

・社用車・自家用車の水没:火災保険ではなく自動車保険の「車両保険」の対象。一般型・エコノミー型のいずれでも水災(台風・洪水・高潮など)は原則補償されます。車両保険を付けていない場合は補償されません

・請求の流れ:保険会社への連絡→被害状況の写真・修理見積の提出→鑑定・支払い。罹災証明書の取得を待たずに、まず保険会社へ第一報を入れておくとスムーズです

5. 「浸水想定区域の外」でも被災——BCPを見直すきっかけに

ウェザーニューズが約2万件の浸水被害報告を分析したところ、今回の千葉豪雨では被災者の2人に1人が浸水想定区域の”外”で被災した可能性が指摘されています。ハザードマップで安全とされる場所でも、短時間の記録的な大雨では内水氾濫(排水が追いつかず溢れる浸水)が起こりうるということです。

・自社の拠点をハザードマップで再確認しつつ、「区域外=安全」と考えない

・重要書類・サーバー・在庫の保管場所を1階から上層階へ移すなど、低コストでできる対策から着手

・帳簿・請求データのクラウドバックアップ、緊急連絡網の整備など、BCP(事業継続計画)を点検

災害に限らず、人材流出や資金繰りなど、中小企業を取り巻く経営リスクは多様化しています。リスクへの備えという観点では、こちらの記事もご参考ください。

あわせて読みたい:「賃上げできず人材流出→倒産」が83件・5年連続増——退職が引き金になる「従業員退職型」倒産から会社を守るには

まとめ

・まず罹災証明書の申請と被害の写真記録。すべての支援の入り口になる

・資金繰りはセーフティネット保証4号(別枠・100%保証/官報告示は近日中の予定、事前相談は開始済み)、災害復旧貸付、小規模企業共済の災害時貸付(原則即日)を活用

・税金は期限延長(現時点は個別申請・期限後でも可)と納税猶予。事業用資産の損失は必要経費・損金、住宅・家財は雑損控除か災害減免法の有利な方を選択

・車の水没は火災保険ではなく車両保険。建物・設備は火災保険の水災補償を確認

・浸水想定区域外でも被災は起こる。これを機にBCPの点検を

被害からの復旧と並行して制度を使いこなすのは簡単ではありません。特別相談窓口や顧問税理士に早めに相談し、使える支援を漏れなく活用してください。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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