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不動産を共有名義で相続したら、固定資産税は「誰が」「どうやって」支払う?

不動産を共有名義で相続したら、固定資産税は「誰が」「どうやって」支払う?

公開日:2020年7月27日  
最終更新日:2020年10月8日

例えば自宅は、世帯主など特定の個人の名義になっているのが普通でしょう。ただし、複数の人が「共有」で持つことも可能です。こうした不動産の共有は、相続の際に発生することが多いのですが、「他の名義人の承諾がないと売却できない」といったデメリットも指摘されています。実は、固定資産税の支払いも、注意すべきことの1つ。どういうことなのか、わかりやすく解説します。

共有者には、税金の「連帯納付義務」がある

複数の人間がお金を出し合って別荘を購入し、共同で所有するように、1つの物の所有権を複数の人が持っている状態が共有(「共有名義」)です。
その共有物に対する各共有者の権利を「持分」と呼び、この権利自体は、自由に譲渡することができます。
なお、共有に対して、1つの不動産を1人が所有する状態を「単独名義」と言います。

Q.共有名義の税金の納税方法はどっち?

単独名義の不動産であれば、固定資産税の支払い方法に疑問の生じる余地はありません。
では、共有の場合はどうでしょう?例えば次のどちらかが正解か、わかりますか?

  • それぞれの名義人に納付書が届くので、別々に納税する。
  • 共有の代表者のもとに納付書が届き、代表者がまとめて納税する。
A.「2.共有の代表者のもとに納付書が届き、代表者がまとめて納税する」

答えは「2」です。一見、大差ないように感じられるかもしれませんが、実務的にはここに「トラブルの芽」も隠れているのです。

共有名義の税金について解説

「共有名義の税金」について、順を追って説明しましょう。
固定資産税は、市区町村(以下、「自治体」)が徴収する地方税です。地方税法には、「共有物(略)に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う」(第10条の2)という定めがあります。

噛み砕いて説明すると、

  • 共有者は、全員が固定資産税の納税義務者である→共有者間で「この人は税を支払わなくていい」といった取り決めをするのは自由だが、公には通用しない
  • 納税に際しては、連帯債務を負っている→誰かが税を滞納した場合には、その補填(立て替え)をしなくてはならない可能性が生じる

という内容が、法律で決められているわけです。
ちなみに、仮に持分に関わりなく共有者の誰かが固定資産税を全額負担したとしても、税額が納付されていれば、自治体から「待った」がかかることはありません。ただし、こうした場合には、相続税法上、納税した人から他の名義人への贈与ではないか、と国(税務署)から目を付けられる可能性があります。金額によっては贈与税が発生するかもしれませんから、注意しましょう。

固定資産税を直接納めるのは「代表者」

それを踏まえたうえで、さきほどのクイズの話です。
不動産を共有にすると、自治体から「代表者」の選定・通知を求められます。納付書(共有名義1つにつき1通)は、この代表者のもとに届き、代表者が一括納付することになるのです。自治体の固定資産税に対する調査や問い合わせなどに対応するのも、代表者の役目です。

共有不動産の固定資産税の代表者の決め方は?

共有不動産の固定資産税の代表者は、共有者の話し合いで決める必要がありますが、自主的に決定できない場合、とりあえず自治体が選定することもあります。
そのときには、

  • 固定資産税を徴収する自治体やその近隣に住んでいる
  • 持ち分が一番多い
  • 登記簿に記載されている順番が早い

といった点が基準になるようです。
ただし、これは暫定的なもので、あらためて当事者同士の協議で代表者が決まったら、そちらが優先されます。確実な納税を行うためにも、代表者を選ぶときには、その物件に居住またはそれを管理する人にするのが望ましいでしょう。

他の名義人から負担分を徴収できないことも想定しよう

さて、説明したように、固定資産税は、選ばれた代表者が一括納付するわけですが、他の名義人からはその負担分を事前に徴収するなり、事後に精算するなりしなくてはなりません。名義人が多数いたりすると、けっこう手間のかかる作業になります。それでも、すんなり払ってもらえる状況にあるのなら“煩わしい”だけで済むかもしれません。
問題は“誰かが払わない”という状況が生まれたときです。この場合には、共有者の誰かがとりあえず立て替える必要が生まれます。

固定資産税を滞納するとどうなる?

もし、立て替えられずに固定資産税を滞納するとどうなるか?

納税を怠った場合は、自治体から督促状が届く

代表者が期限内の納税を怠った場合には、原因が他の共有者にあるか代表者自身の問題なのかにかかわらず、自治体から督促状が届きます。地方税法に「納期限から20日以内に督促状を発しなければならない」(第329条第1項)とありますから、これは自治体に課せられた義務なのです。
さらに、そこから10日後までに完納しないときには、「市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない」(第331条第1項)ことになっています。現実にはすぐに差押えられるということにはならないようですが、反対に、納付もせず差し押さえもなく見逃されることはない、ということも理解すべきでしょう。

ここで誤解してはならないのが、上で言う「滞納者」は「税を払わない誰か」ではない、ということです。「共有者は、固定資産税の支払いにおいて連帯納付義務を負う」という話を思い出してください。「お互い同士が連帯保証人になっている」と言えばわかりやすいかもしれません。仮に自分の持分相当の金額を代表者に渡していたとしても、この連帯責任からは逃れられません。最悪、自らの財産を差し押さえられてしまう可能性があるのです。

共有名義は避けるのがベター

万が一、固定資産税の滞納が生じ、督促状が届いた場合には、それを「無視」するのではなく、共有者で速やかに善後策を検討する必要があります。
滞納した税金には「延滞税」という利子も課せられますから、対応が遅れるほど傷も深くなっていきます。
そうしたリスクを回避するためにも、“共有の解消”は意味のある選択肢と言えるでしょう。共有者の誰かが、他の共有名義人の持分を買い取るのが一般的です。共有財産を売却し、現金を持分に従って分けるというのも、不動産を手元に残す必要がない場合には、有効な手立てになるはずです。
さらに言えば、共有状態のルーツである相続の際に、できるだけそうならないように、しっかりした対策を講じるべきでしょう。

今お話ししたいずれの段階においても、「素人判断」は、やはりリスクを伴います。不動産や相続に詳しい税理士などの専門家に、サポートを依頼することをお勧めします。

まとめ

共有不動産の固定資産税は、直接的には、共有者の代表者が一括で納付します。ただし、共有名義人は、その納付に関して連帯責任を負うことを、しっかり認識しておきましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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