青色申告特別控除が75万円へ!「優良電子帳簿」とは?2026年中の準備ガイド


令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の上限が現行制度の65万円から75万円へ引き上げられることが決定しました。それに伴い、特別控除の区分や要件の見直しも実施されます。
この記事では、2027年分から実施が予定されている青色申告特別控除の改正について、全体像や2026年中に必要な対応などを紹介します。
1. 青色申告特別控除とは?現行の3段階の仕組みをおさらい
青色申告特別控除とは、複式簿記やe-Tax申告(電子申告)などの要件を満たすことで所得から一定額を控除できる仕組みです。ここでは、2026年分(2027年の確定申告分)で適用される現行制度について概要を紹介します。
10万円・55万円・65万円の3区分 それぞれに求められる要件の違い
ここでは、2027年3月が期限となる令和8年(2026)分の確定申告における特別控除の区分を紹介します。現行制度では控除額の異なる3つの区分があり、それぞれの要件は以下の通りです。
控除額10万円|簡易帳簿や期限後申告
控除額55万円|複式簿記(青色申告)+書面による申告
控除額65万円|複式簿記(青色申告)+e-Tax提出(電子申告)または一定の要件を満たす電子帳簿保存
現行制度では、複式ではなく単式簿記で帳簿を付けている方や期限を過ぎてから申告する方も、10万円の控除が受けられます。e-Taxではなく、申告書を書面で提出する場合でも、仕訳帳・総勘定元帳について優良な電子帳簿の保存要件を満たしていれば、現行制度では最高65万円の控除を受けることができます。
65万円控除に必要な「e-Tax申告」または「電子帳簿保存」とは現行制度での位置づけ
現行制度では、65万円の青色申告特別控除を受けるには、55万円控除の要件に加え、「e-Taxによる申告」または「一定の要件を満たす電子帳簿保存」のいずれかの要件を満たす必要があります。 しかし、2027年分の確定申告からは、65万円の控除を受けられる要件が変わることに注意しましょう。
具体的にいうと、現行制度で「e-TAX」している方は、引き続き65万円の控除の対象です。一方で、申告書を書面で提出する場合は、電子帳簿保存を行っていたとしても、2027年分以後は青色申告特別控除の上限が原則10万円となります。
つまり、引き続き65万円の控除を受けたい方はe-TAX経由での確定申告が必須となります。e-TAXの利用にはマイナンバーカードやスマホまたはパソコン、場合によってはICカードリーダーなどが必要です。e-TAXの利用経験がない方は早めに準備を進めるとよいでしょう。
控除が大きいほど課税所得が減る 税率別の節税効果を金額で確認する
2027年度分の確定申告より青色申告特別控除の要件が変更されます。この変更による主な影響は、新しい要件に対応しなければ控除額が減る可能性があり、その結果として納めるべき税金が増えることです。一方で、制度に対応すれば最高75万円の控除を受けられるため、節税できる可能性もあります。
原則として控除が大きいほど課税所得を減らせるため、納税額を抑えられます。累進課税制度を採用している日本では特に課税所得が多く、税率の高い方ほど節税効果は大きくなるのが一般的です。
たとえば課税所得200万円、所得税率10%の方の場合、控除額が変わることによる節税効果は以下の通りです。
【控除額10万円】節税効果は10万×10%=1万円
【控除額65万円】節税効果は65万×10%=6.5万円
控除額が増えることにより5.5万円節税できます。
課税所得が高く、所得税率がさらに高い方であれば節税効果はより大きくなります。課税所得700万円、所得税率23%の方の場合、節税効果は以下の通りです。
【控除額10万円】節税効果は10万×23%=2.3万円
【控除額65万円】節税効果は65万×23%=14.95万円
手取りを増やすのであれば青色申告特別控除への対応は必須といえるでしょう。
※上記は所得税のみを単純計算した場合の金額です。
2. 令和8年度税制改正の全体像 2027年分から何がどう変わるか
令和8年度税制改正により、2027年分から青色申告特別控除の控除額や要件が変更されます。2026年までと同じ方法で確定申告すると、控除額が減少するおそれがあります。ここでは、改正後に必要な要件などを解説しますので参考にしてください。
改正後の4段階構造 75万円・65万円・10万円・0円それぞれの適用条件一覧
2027年分の確定申告より、青色申告特別控除額は要件により以下の4段階に分かれます。
控除額75万円|複式簿記(青色申告)+e-Tax提出(電子申告)+優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存
控除額65万円|複式簿記(青色申告)+e-Tax提出(電子申告)
控除額10万円|前々年分の事業所得等に係る収入金額が1,000万円以下+簡易簿記等
控除額0円|前々年分の事業所得等に係る収入金額が1,000万円超+簡易簿記
※不動産所得については、事業的規模に該当する場合など取扱いが異なります。
2026年分までとの大きな違いは、以下のとおりです。
・控除額が最大75万円まで引き上げられること
・前々年分の収入金額によって控除額が変わる場合があること
・控除なし(0円)になる場合があること
また、2027年分から75万円の特別控除を受けるためには、65万円控除の要件に加えて、「優良な電子帳簿の保存」または「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を満たす必要があります。
書面申告では55万円が廃止され控除上限は10万円に 紙で申告し続けると最大45万円の控除を失う
今回の改正ではe-Taxの浸透が進んできたという認識により、税務署に書面を提出して確定申告を行う場合、青色申告特別控除の上限額が55万円から10万円へ引き下げられます。 現行制度で55万円の控除を受けている方は控除額が45万円減るため、実質的な増税といえるでしょう。
一方で、複式簿記による記帳などの要件を満たしたうえでe-Taxを利用すれば最高65万円、さらに一定の電子帳簿保存等の要件を満たせば最高75万円の控除を受けられます。 この機会にe-TAX利用を始めるのがおすすめです。
前々年分の収入金額1,000万円超の簡易簿記は10万円控除も対象外に 複式簿記移行が求められる規模の目安
2027年分の確定申告からは簡易帳簿を利用している事業者の控除額に対して、前々年分の収入金額の要件が加わります。複式簿記を導入していない事業者のうち、前々年にあたる2025年分の収入金額が1,000万円以下の事業者は10万円の控除を受けられますが、前々年分の収入金額が1,000万円を超える場合は、簡易簿記による10万円控除の対象外となります。
複式簿記はある程度専門知識も必要であり、会計ソフトや表計算ソフトの利用も欠かせないためハードルが高いと感じる方もいるでしょう。しかし、複式簿記を導入すれば最高75万円の控除が受けられる可能性があります。前々年分の収入金額が1,000万円を超える規模であれば複式簿記に移行するメリットは特に大きいといえます。
現在、書面で確定申告を行い55万円控除を受けている方は、今回の改正による影響が特に大きくなります。複式簿記で記帳していても、e-Taxを利用しなければ控除額が大幅に減少するため、2026年中から電子申告への移行準備を進めておくことをおすすめします。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
3. 75万円控除の核心 「優良な電子帳簿」の要件と会計ソフトでの対応方法
2027年分からの改正で注目されている内容の一つが控除額の75万円への引き上げです。ただし、75万円の控除を受けるには、65万円控除の要件に加えて「優良な電子帳簿の保存」または「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を満たす必要があります。ここでは、そのうち「優良な電子帳簿」について詳しく解説します。
優良な電子帳簿が求める3つの要件 訂正削除履歴・検索機能の確保・帳簿間の相互関連性
優良な電子帳簿が求める要件は以下の3つです。
・訂正削除履歴
・検索機能の確保
・帳簿間の相互関連性
訂正削除履歴とは、帳簿データを訂正・削除・追加した場合に、その履歴が確認できることなどをいいます。検索機能については、取引年月日・取引金額・取引先などを条件として取引を検索できる機能が求められます。また、帳簿間の相互関連性とは、仕訳帳と総勘定元帳など複数の帳簿について、同一の取引であることを相互に確認できる状態をいいます。
「パソコンで会計ソフトを使っているだけでは不十分」 通常の電子保存と優良電子帳簿の違い
会計ソフトや表計算ソフトを利用して帳簿を作成しているだけで、自動的に「優良な電子帳簿」に該当するわけではありません。75万円控除を受けるために優良な電子帳簿の保存を選択する場合には、訂正・削除等の履歴、帳簿間の相互関連性、検索機能など一定の要件を満たす必要があります。利用している会計ソフトや保存方法が要件に対応しているか、事前に確認しておきましょう。
会計ソフトで優良電子帳簿に対応する具体的な設定手順と注意点
青色申告特別控除が75万円へ引き上げられるのは2027年分以降ですが、すでに一部の会計ソフトは優良電子帳簿に対応しています。ただし、ユーザー自身で設定が必要になることが多いでしょう。
会計ソフトを優良電子帳簿対応にするには、設定画面から「優良な電子帳簿を利用する」「訂正・削除履歴を残す」などの名称の機能をオンに設定します。優良電子帳簿対応の会計ソフトを導入していても、2027年分の帳簿を登録し始める前にこの機能をオンにし忘れると75万円の控除の対象とならないため設定漏れに注意しましょう。
会計ソフトを利用しているだけで、自動的に75万円控除の要件を満たすわけではありません。利用しているソフトの機能だけでなく、帳簿の保存方法や必要な設定、届出の要否まで確認し、2027年の帳簿作成開始前に運用方法を整理しておくことが重要です。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
4. 自分はどのケースに当てはまる?パターン別の対応チェックと2026年中の準備ガイド
青色申告特別控除の改正に対応していない場合、一部の事業者は2027年分から特別控除額が減少するおそれがあります。特に現行制度でe-Taxを利用していない方は注意しましょう。一方で、今回の改正は現行制度より多い75万円の控除を受けられるチャンスでもあります。ここでは現在の状況別に、2026年中に準備しておきたい項目を紹介します。
【今すぐ対応必須】書面申告で55万円控除を受けている人がやるべきこと
現行制度で書面申告により55万円控除を受けている方は、e-Taxへの移行を進めましょう。具体的にはマイナンバーカードの取得、e-Taxが利用できる環境の整備が必要です。
マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン(iPhoneまたはAndroid)、パソコンを用意しましょう。ICカード読み取り機能がない機種を使う場合は、別途ICカードリーダーを準備する必要があります。
【75万円を取りに行く】e-Tax申告済みの人が優良電子帳簿に追加対応する手順
現行制度でe-Taxを利用し65万円控除を受けている方は、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たすことで、最高75万円控除の対象となります。利用している会計ソフトが優良電子帳簿に対応しているかを確認し、追加の設定が必要であれば早めに設定しておくとよいでしょう。
優良電子帳簿に未対応の会計ソフトを使っている場合は、今後のアップデート予定などを確認したうえで会計ソフトの乗り換えも選択肢になるでしょう。
適用は2027年分から 2026年を「準備の年」として今年中に済ませておくべきこと
青色申告特別控除の75万円への引き上げは2027年分から実施されます。ただし、会計ソフトの設定のように2026年中に実施しておくべきこともあるため、早めに準備を進めましょう。e-Taxへの移行を検討している方は、可能であれば2027年3月期限の2026年分の確定申告から電子申告を利用してみるとよいでしょう。
今回の改正では、現在の申告方法や帳簿の付け方によって、2027年分以降に受けられる控除額が変わってきます。まずは自分がどの区分に当てはまるのかを確認し、e-Taxへの移行や会計ソフトの設定など、必要な対応を2026年中に整理しておくことが大切です。

さいたまクラウド税理士事務所代表税理士 中澤 竜之助(税理士)
まとめ
2027年分から青色申告特別控除の要件が変更されます。特にe-Taxを利用していない方は控除額が大きく減るおそれがあるため、早めに対応を検討するとよいでしょう。
また、e-Taxを利用している方は優良な電子帳簿と認められる会計ソフトを利用することで現行制度より多い75万円の控除が受けられる可能性もあります。制度の改正は2027年分からですが、取りこぼしのないように2026年中に対応を済ませておきましょう。
記事監修者 中澤税理士からのワンポイントアドバイス
今回の改正では、青色申告特別控除の最高額が75万円に引き上げられる一方、記帳方法やe-Tax、電子帳簿への対応状況によって控除額に大きな差が生じます。
特に現在、書面申告で55万円控除を受けている方や、簡易簿記で10万円控除を受けている方は注意が必要です。また、10万円控除の1,000万円基準は、その年ではなく前々年分の収入金額で判定されます。75万円控除についても、単に会計ソフトを導入するだけではなく、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存など一定の要件への対応が必要です。
2027年分からの適用に向け、2026年中に現在の申告・記帳方法を確認し、余裕を持って準備を進めておきましょう。
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