年金「211万円の壁」とは?2026年最新・住民税非課税世帯の基準を解説

年収には、その金額を超えると税金や社会保険の扱いが不利になる「壁」が、いくつかあります。例えば、給与年収が103万円を超えると所得税がかかる「103万円の壁」、社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」などです。一方、リタイア世代にも「年金211万円の壁」があることをご存知でしょうか。
2026年度(令和8年度)は、年金額が引き上げられました(国民年金+1.9%・厚生年金+2.0%)。このタイミングで改めて「壁」の仕組みを確認しておくことをおすすめします。
住民税の課税・非課税の「壁」
「年金211万円の壁」の211万円とは、年金収入のみで生活している65歳以上の夫婦2人の世帯が、「住民税非課税世帯」になるかどうかのボーダーラインとなる年金収入額を意味します。収入がこれを超えるかどうかで、税金の支払い以外にも、後述するような有利・不利が生じます。
「壁」の条件について、詳しくみていきましょう。
世帯主の年金収入が211万円以下(1級地の場合)
211万円は、1級地(「級地」については後述します)に住む世帯主の年金収入についての基準です。収入がこの金額を超えれば、住民税非課税世帯には該当しません。
65歳以上の年金生活者である世帯主の非課税限度額は、次のように計算されます。
年金収入は、公的年金等控除(65歳以上は110万円)が受けられます。ですから、101万円+110万円=211万円が住民税非課税限度額となるわけです。
なお、2026年度から年金額が引き上げられており(国民年金で月+約350円程度)、これまで211万円を下回っていた受給者が壁を超えるケースが出てくる可能性があります。ご自身の年金額を年金振込通知書などで確認しておきましょう。
配偶者の年金収入が155万円以下
住民税非課税世帯とされるのは、世帯の全員が非課税レベルの収入であることが前提です。配偶者(65歳以上)の収入の上限は、155万円となります。世帯主が「211万円の壁」をクリアしていても、配偶者がこれを上回った場合には、非課税世帯には該当しません。
計算方法は以下の通りです。
これに公的年金等控除を加算し、45万円+110万円=155万円となります。
「203万円の壁」「193万円の壁」もある
この「壁」=住民税非課税限度額には、居住地の「級地」により3パターンがあります。説明してきたのは大都市圏を中心とする「1級地」の基準です。
「級地」とは、生活保護による扶助を行う際に、地域ごとの物価や生活水準の差などを保護の基準額に反映させることを目的に定められました。級地ごとの非課税限度額(65歳以上の年金収入)をまとめると次のようになります。
1級地(大都市など):世帯主 211万円 / 配偶者 155万円
2級地(中核都市など):世帯主 203万円 / 配偶者 152万円
3級地(それ以外):世帯主 193万円 / 配偶者 148万円
級地区分の詳細は級地区分(H30.4.1)|厚生労働省をご覧ください。
2026年度の住民税改正と「211万円の壁」への影響
2026年度(令和8年度)の住民税改正では、給与所得控除が55万円から65万円に引き上げられました。しかし、年金受給者の「211万円の壁」に直接の影響はありません。
この改正が影響するのは給与所得(働いて得た所得)の控除額です。年金収入から差し引く「公的年金等控除」は65歳以上で110万円のまま変わらず、住民税非課税の合計所得基準(45万円・101万円など)も据え置きです。
「非課税基準が変わるのでは?」と心配された方もいるかもしれませんが、年金受給者にとってはほぼ影響なしです。
そもそも住民税非課税世帯とは
コロナ禍の給付金や物価高対策の給付金の際にも注目された「住民税非課税世帯」。その概要を解説します。
非課税世帯の要件
住民税は、「所得割」と「均等割」から成ります。所得割とは、所得額に応じて課税される部分で、標準税率は10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)です。均等割は、所得に関係なく課税される部分で、2024年度(令和6年度)からは都道府県民税1,000円・市区町村民税3,000円(合計4,000円)が基本です(2023年度まで実施されていた東日本大震災の復興増税・各500円は終了)。なお、2024年度からは国税として「森林環境税」1,000円が均等割と一緒に徴収されるため、住民税と合わせた合計負担額は5,000円となります(自治体によって異なる場合があります)。
住民税非課税世帯とは、一般にこの所得割と均等割の両方が非課税になる世帯のことをいいます。その要件は次の通りです。
<同一生計配偶者または扶養親族がいる場合>
・35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円(被扶養者がいる場合の加算額)+10万円(令和3年度税制改正による一律加算)
<同一生計配偶者または扶養親族がいない場合>
・45万円
また、世帯の全員が住民税非課税である必要があります。
住民税非課税世帯はどれくらいある?
厚生労働省の「2021年国民生活基礎調査」によると、世帯総数5,142万のうち住民税課税世帯は3,924万で、残りの1,218万世帯(約23.7%)が非課税世帯です。全世帯の4分の1近くに住民税が課税されていない計算になります。
年代別の住民税非課税世帯比率を見ると、60代以上で急増する傾向があります。
29歳以下:149万世帯中 35万世帯(23.5%)
30〜39歳:354万世帯中 40万世帯(11.3%)
40〜49歳:640万世帯中 57万世帯(8.9%)
50〜59歳:840万世帯中 87万世帯(10.4%)
60〜69歳:1,063万世帯中 220万世帯(20.7%)
70〜79歳:1,317万世帯中 436万世帯(33.1%)
80歳以上:778万世帯中 343万世帯(44.1%)
年金世代である60代以上の住民税非課税世帯は約999万世帯で、非課税世帯全体の82%を占めています。住民税非課税という基準で給付金などを支給すると、その約8割を年金世代が受け取る一方、子育て世代の家庭にはほとんど分配されません。制度の課題として議論される背景がここにあります。
住民税非課税世帯が受けられる優遇措置とは
住民税非課税世帯に該当すると、さまざまな優遇措置を受けられます。
(1)住民税がかからない
年金生活者といえども、現役世代同様に住民税の納税義務があります。しかし、「世帯主の年金収入が211万円以下」かつ「配偶者の年金収入が155万円以下」であれば課税されません。
(2)国民健康保険料・介護保険料が安くなる
「国民健康保険料」と「介護保険料」が減額されるのも大きなメリットです。減額の幅は自治体によって異なります。
(3)高額療養費・高額介護サービス費でもメリットが
「高額療養費制度」では、同一月に高額な医療費の自己負担が必要となった際に、限度額を超えた分の還付を受けられます。住民税非課税世帯は自己負担の限度額が低く設定されており、課税世帯に比べて多くの還付を受けられます。
また、介護サービスを利用した際の「高額介護サービス費」についても、課税世帯に比べて上限額が低く設定されています。
(4)自治体による特典を受けられる
住んでいる自治体によって、インフルエンザなどの予防接種の無料化、「シルバーパス」の減額といったサービスを受けられることがあります。
(5)住民税非課税世帯への給付金
2024〜2025年の物価高対策として、政府は住民税非課税世帯を対象とした給付金を複数回支給してきました。2026年度においても経済状況に応じた追加支援が議論されており、お住まいの市区町村の案内を定期的に確認することをおすすめします。
2026年度の関連制度改正
在職老齢年金の改正(2026年4月〜)
2026年4月から、「在職老齢年金制度」の停止基準額が月51万円から月65万円に引き上げられました。これにより、これまで年金の一部が停止されていた在職中の高齢者の多くが、年金の全額受給が可能になります。
ただし、この改正で年金収入が増える場合、211万円・155万円の壁を超えるケースが生じる可能性があります。住民税や社会保険料への影響を踏まえた上で、働き方を検討しましょう。
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まとめ
年金の「211万円の壁」は、住民税非課税世帯のボーダーラインです。2026年度は年金額が引き上げられたため(国民年金+1.9%、厚生年金+2.0%)、これまで壁のすぐ下にいた世帯は壁を超える可能性があります。一方、住民税改正(給与所得控除の引き上げ)の影響は年金受給者にはほぼ及ばず、「211万円の壁」の数字そのものに変更はありません。
在職中の方は、2026年4月から在職老齢年金の停止基準額が65万円に引き上げられた点も確認しておきましょう。年金収入が増えることで、壁を超えるリスクが生じる場合もあります。
年金収入や収入計画について専門的なアドバイスが必要な場合は、税理士や社会保険労務士に相談されることをおすすめします。
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