事業承継の際、‟関係消滅“に 最も気をつけるべき
「取引先」とは?

事業承継の際、‟関係消滅“に 最も気をつけるべき  「取引先」とは?

2020/3/27

 
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顧客や仕入先など、会社にはさまざまな取引先、関係先があります。事業承継の際には、それらを問題なく引き継ぐのが理想であることは、言うまでもありません。しかし、ときには「代替わり」を機に、関係が切れてしまうことも。藤間元彰先生(藤間元彰税理士事務所)は、「関係が途絶えると困るのに、あまり重視されない‟盲点“があります」と指摘します。

2代目は、「先代の時代とは違う」ことを心得るのが大事

先生の事務所は「社長の悩みを聞くオーダーメイドの経営支援」を合言葉に、会計まわりだけではなく、経営相談などを含めた幅広いサポートに実績をお持ちです。今回は、事業承継を中心に、お話をうかがっていきたいと思います。
わかりました。実は、今47歳の私自身、事務所の「2代目」なんですよ。だからというわけではないのですが、お客さまには「2代目社長」が非常に多いのです。中小企業の社長は、だいたい60代後半から70歳代にリタイアされるので、それを引き継いだ私と同世代かそれより下の方が、承継を機に声をかけてくれる方が多いです。
大変さもやりがいも「共感」できるから、お客さまも相談しやすいのではないでしょうか。
そういう部分はあるかもしれません。それにしても、そういう若い社長さんたちと話をしていて、あらためて痛感するのは、「先代の頃とは時代が違う」ということです。働く人たちのマインドも違う。そこは意識してし過ぎることはないと感じます。
あえてうかがうと、一番の違いは、どんなところでしょうか?
例えばものづくりだったら、かつては「どうやってつくるのか」が勝負でした。つくれば売れたのです。でも、今はそうはいきません。どんなにいいものでも、売るための工夫、アイデアがないと、事業を伸ばすのは難しいのです。

お客さまに、やはり2代目で、写真館を3店舗展開している会社の社長がいます。おわかりのように、市場環境は厳しい業界です。

デジカメやスマホのカメラで、素人が「いい写真」を撮って、プリントアウトできる時代ですから。
待っていてもお客さんは来ない、店長に個別に話を聞いても、「いい話」が出てこない、と悩んでいたので、私は月例の「店長会議」を提起させていただきました。各店舗の主要メンバーに集まってもらい、月の数字の報告から始まって、課題の明確化、集客の提案、そのブラッシュアップ。夕方5時から夜10時まで、みっちりやります。

写真館の従業員の皆様は、基本的に「職人」なんですね。と同時に、「芸術家」肌のところもある。集まって話をすると、けっこう面白いアイデアを持っていたりするのです。その会議を始めて5年ほどになりますが、意識が変わってきたと感じています。

会社の「外部」をどう引き継ぐか

さて、事業承継に関して、私が経験上感じていることで、一般にはあまり語られていない話をしてみたいと思います。

今の事例は、会社の命運を握る「お客さま」に関する話でした。ただ、会社には、お客さま=得意先のほかにも、銀行や仕入先、外注など仕事を頼んでいる相手といった、外部の関係者の方もいます。中小企業では、社長がそれらのすべてにグリップを効かせているわけですね。事業承継という切り口で考えると、そのどれも、円滑に次期社長に引き継ぎたいところです。

社長が交代したからサヨウナラでは、スタートからつまずいてしまうかもしれません。
では、そういう関係先の中でも、特に注意が必要なのは、どこだと思いますか?
やはり得意先ではないでしょうか。
もちろん得意先がなくなったら困りますが、そこは自社の営業力でカバーすることもできます。原材料などの仕入れ先も、数ある中から選ぶことが可能です。でも、そういかないのが、実は外注先なんですよ。

先代が長年仕事を頼んでいたところは、こちらのニーズを理解しています。多少の無理も聞いてくれるでしょう。結果的に、「自社にとって、なくてはならない存在」になっていたりするのです。

なるほど。そういう状況だと、簡単に別の会社を探すというわけにいかないかもしれません。
「仕事ができる外注先」は、他からの引き合いもあるでしょう。「お世話になった社長がリタイアするのを機に……」ということにならないとも限りません。

さきほどおっしゃったように、事業承継のときにみなさんがまず気にされるのは、得意先のことなんですよ。その陰で、仕事を頼んでいる先への対応は、疎かになっている会社が多いのではないでしょうか。

いきなり関係を切られないためには、どんな手立てが必要になりますか?
承継前の早い段階から、先代がそこに後継者を紹介しておくことは、最低限必要です。その関係先の重要性を新社長がしっかり認識しておくことも、大事になるでしょう。不理解があって、就任早々、単価切り下げの話をしたりすれば、関係が悪化するのは目に見えていますから。
会社にとっての重要な節目がリスクにならないように、事前の準備が必要だということですね。

藤間元彰(税理士)

藤間元彰税理士事務所 所長
経営者の悩みを聞くことを大切な使命と考え、税務会計はもちろん、資金繰り、損益分析や労務問題等、親身に対応している。会社を存続させるためのオーダーメイドの経営支援は、お客様への誓いであり、社会に果たす役割のかたち、と掲げる。医療法人やクリニックなど医業のお客様も多い。
URL:http://www.cpa-fujima.jp/

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