「従業員との良好なコミュニケーション」こそ
新社長の腕の見せどころ

「従業員との良好なコミュニケーション」こそ  新社長の腕の見せどころ

2020/3/30

 
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社長が父から息子にバトンタッチ。緊張するのは、新社長だけではありません。「迎える」従業員たちの間にも、期待と不安が交錯していることでしょう。なんと言っても、会社は人です。そんな従業員たちの不安を取り除き、モチベーションを高めてもらううえで、大事になるトップの心構えとは? 中小企業の経営サポートに実績を持つ藤間元彰先生(藤間元彰税理士事務所)に、お話をうかがいました。

自社株の話は「わかりやすい」

税理士の先生が事業承継のポイントとして真っ先に挙げるのは、自社株対策です。場合によっては、高額の贈与税や相続税を覚悟しなくてはなりません。
そうですね。当事務所でも、「事業承継税制」の活用なども含めて、その会社に合ったプランを提案しています。
新しい事業承継税制を使えば、原則として贈与税、相続税ゼロで、後継者に自社株を渡せるようになりました。使う会社は、増えていますか?
私のお客さまでは、今のところそんなに多くはないんですよ。新しい制度は、「従業員の雇用の維持」といった要件も実質的にはなくなりましたし、とても使いやすくなったのは確かです。ただし、あくまでも「納税猶予」の制度であることには、変わりありません。いろんな「取消事由」が設けられていて、それに抵触すれば、結局納税を求められることになるわけです。そういう説明をすると、「だったら、もう少し考えさせて」という社長さんが多いですね。個人的には、制度としてはもう一歩、改善の余地があるのではないかと感じています。

ともあれ、そういう税金やお金のことは、結果が数字に出ますから、ある意味、わかりやすいのです。税のプロに任せれば、ちゃんとした「答え」を見つけてくれるはず。事業承継において、より難しくかつ重要なのは、そういうハードではなくて、ソフトの部分だというのが、私の持論なんです。税理士らしからぬ言い方かもしれませんが。(笑)

結局は「人間関係」がポイントになる

具体的には、どういう部分なのでしょうか?
ひとことで言えば、従業員との良好なコミュニケーションを構築することです。自社株を問題なく持つことができたとしても、肝心の「人」が動いてくれなかったら、経営はうまくいきません。

よくあるのが、社長の人間的なタイプの落差に、周囲が戸惑うパターン。創業者というのは、ほぼ例外なく「俺についてこい」というマインドの人です。だから、特に幹部クラスの人には、そういう先代に頼るというか、その指示を待つことに慣れた人が多くなります。そういう環境に、「みんなで協力してがんばりましょう」という若社長が登場すると、社内に不協和音が生まれたりするわけです。

新社長は頼りない、とか。
多少社内で武者修行をしていたとしても、やはりバトンを受けてからが、本当の勝負になります。社内をうまくコントロールできるようにするのが、後継者の最初の仕事と言ってもいいでしょう。
確かに、その「答え」は、外部の税理士さんでは出せません。
われわれも、過去の事例なども踏まえてアドバイスはするのですが、最終的には新社長自身が努力して、変えるしかないのです。言い方を変えると、社長の人間力がためされるということになります。

付け加えれば、コミュニケーションが大事といっても、そこは会社です。まして社長と従業員の関係なのですから、仲良くなればいいというわけではありません。ここで言うコミュニケーションは、あくまでも、働く場に相応しい「健全な人間関係」と理解してください。

誰でも、学生時代にひとりやふたり、クラスに馬が合わない人がいたのではないでしょうか。プライベートな集まりなどでも、そうだと思います。そういう場合には、「あえて近寄らない」という選択もあり得ますが、会社ではそうはいきません。気の合わない人にも、やる気を出して働いてもらわなくてはならないのです。

自分が苦手な人は、こちらのことも煙たがっていることが多いですよね。
そこを「わかり合う」ことが重要になります。では、どうするか? 一例を挙げると、「コーチング」というコミュニケーション技術があります。そこでは、「自己主張」と「感情表出」の高低を指標に、人間を4つにタイプ分けします。違うタイプの人同士は、やっぱり合わないんですよ。ただ、これをやると、自分はこのタイプで、あの人はここなんだ、というのがわかる。
わかり合えないのが、わかる。(笑)
そう。その理由を理解することが非常に重要なのです。それができると、「タイプの違うあの人のことも尊重しよう」というふうに、考え方が変わってきます。実は当事務所でも、以前内部向けに、何回か講師を呼んでセミナーを開きました。とても勉強になったので、人間関係に悩むお客さんなどに、お勧めすることもあります。

当然のことながら、どんどん攻める営業マンタイプの人たちだけでは、会社は成り立ちません。一方で、堅実な管理型の人間も必要なのです。いい悪いではなく、そういう得意分野をお互いが認めあって、協力する。そういう組織にできるのかは、まさに新社長の腕の見せどころだと思うのです。

藤間元彰(税理士)

藤間元彰税理士事務所 所長
経営者の悩みを聞くことを大切な使命と考え、税務会計はもちろん、資金繰り、損益分析や労務問題等、親身に対応している。会社を存続させるためのオーダーメイドの経営支援は、お客様への誓いであり、社会に果たす役割のかたち、と掲げる。医療法人やクリニックなど医業のお客様も多い。
URL:http://www.cpa-fujima.jp/

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