「交際費」「会議費」「福利厚生費」。
その違いはどこに?
社員との飲食も「接待」になる!?

「交際費」「会議費」「福利厚生費」。  その違いはどこに?  社員との飲食も「接待」になる!?

2016/1/4

 
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支出したお金が会社の経費として認められれば、そのぶんは損金として利益から差し引けますから、法人税の節税になります。でも、例えば同じ飲食でも、「交際費」か「会議費」や「福利厚生費」になるかで、どこまで経費と認められるか、税法上の扱いは違ってきます。やはり経営者が悩むこれらの経費について、聞きました。

【今回の専門家は…】税理士 久野豊美先生(税理士法人Dream24)


飲食などの出費が「交際費」か「会議費」か「福利厚生費」なのか? これも、時として微妙な問題になります。

例えば、社外の人と同じように食事をしながら話をしたとしても、それが「接待」なのか「会議」になるのかというのは、おっしゃるように線引きが難しいですよね。でも、それで支払う法人税が違ってくることもあるので、注意が必要です。
ざっくり申し上げると、会議費、福利厚生費については、全額が経費として認められますが、交際費は支払った金額のうち800万円までが経費として計上できる、という金額の上限が決められているのです。ちなみに、これは中小法人(資本金が1億円以下で、資本金5億円以上の法人の100%子会社ではない法人)の場合で、それ以外の法人は、飲食費以外の交際費は課税対象、飲食費についてはその50%が課税対象となっています。


だから会社側からすれば、支出をできるだけ会議費、厚生費にしたい。逆に税務署は、「この飲食代は、交際費ではないのですか?」というまなざしを向けてくるわけですね。(笑)

そういうことです。まず、それぞれについて総論的にみていきましょう。
税務上の交際費は、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入れ先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為のために支出する費用」と法に定められています。ここで注意しなければいけないのは、社内の人間と飲食した場合でも、それが会議などでなければ、交際費として計上する必要があるということ。“交際費=接待=社外の人”というイメージだと思うのですけど、税務上の扱いは、そういう世間の常識とは少し違うんですね。
次に税務上の会議費は、「会議に関連して、会議のための室料、資料代、食事代、弁当などの飲食物を供与する費用」とされています。
また、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」は福利厚生費として、交際費からは除外されます。新年会とか慰安会とかの費用は、全員に参加資格があってかつ相当数の社員が参加した、といった条件を満たせば、経費として落とせるわけです。

さきほど説明いただいたように、そのうち交際費だけは、「経費として処理できるのは800万円まで」という上限金額が設けられている。

それを超えた部分には法人税がかかるんですね。ただし、1人当たり5000円以内の飲食であれば、交際費から除外し会議費として計上することができます。まあ、1人5000円以下だったら「会議」だろうという判断なのでしょうけど、この「5000円ルール」が適用されるのは、1人でも社外の人が参加している場合で、社員だけではNGなんですね。

社外の人がいて1人5000円というのが、はたして現実的なのかどうかというのは、やっぱり微妙なところに思えます。

そうですね。そのあたりも含めて、次回は具体例にも沿ってお話ししてみようと思います。

同じ金額の飲食代でも、適用は異なる場合がある


私自身、経営者ですので、特に飲食代に関しては、交際費と会議費、厚生費の適用に迷うというか、実情を考えると正直しっくりこないな、という思いをすることもあるんですよ。

実際に多く聞くのは、交際費か会議費かという疑問ですね。福利厚生費が認められるのは、基本的に社員全員参加に近い懇親会のような場合とされていますから。
では、「5000円ルール」を超えて、1人2~3万円の飲食代になりました。でも、きちんとミーティングをやりました――といった場合に、はたして会議費と認められるのか?

実際、そんなにお酒をガブガブ飲んだりしなくても、会社にとって大事な話をするためにお店を選んだら、けっこうな金額になるんですよ。

まず前提としてあるのは、交際費と接待費を分ける明確な金額の基準はない、ということです。確かにお話しした「5000円ルール」はあるけれど、「それを超えたら一律交際費扱い」というわけでは、決してないんですね。
 まず基本的に大事なファクターとしてあるのは、「会議の場所」です。社内の会議室でやったのならば、それなりに高級な弁当に飲み物を提供しました、というのも認められると思います。会議にふさわしいところで飲食している、というのが明白ですからね。
逆に「あの日は、バーで大事な打ち合わせをやったんですよ」と言っても、たとえビール1~2本の飲食であっても、認められないかもしれません。

現実問題として、どの程度のグレードの店や金額までなら許されるのでしょう?

曖昧な言い方ばかりで申し訳ないのですけど、そこもケースバイケースで、たぶん税理士によっても判断が異なるところだと思います。私自身は、例えば領収書の金額が1人2万円を超えているから交際費にしておこう、というやり方は、基本的にしないんですよ。高級居酒屋とかフランス料理の店、寿司屋さんなんかは、会議にふさわしい場所だと思っています。
場所に加えて、「誰と飲食したのか?」も重要です。例えば、相手が1部上場企業の社長だった場合。「ちょっと打ち合わせを」といっても、普通の居酒屋などに連れて行くわけにはいかないでしょう。結果的に1人5万円くらいになったとしても、それは会議費に計上できると思いますよ。

社員を数人連れて「ご苦労さん」と飲んだりすることもあるのですけど、個人的には、それは福利厚生費に分類されるのが妥当だと感じるんですね。特定の人間ばかりと行くわけではないし、厳密に言えば詰めた会議をやるわけではないから、会議費とは違う。税務署としては「交際費ではないか」と言いたいのかもしれませんが、それも実態に合わないと感じるのです。

実際に、そういうケースを福利厚生費として申告することもありますよ。おっしゃるように「その場には、一部の社員しか参加していない」という、税務署にとっての突っ込みどころはあるのですけど、よほど「非常識な」領収書でない限り、それで否認されることはないでしょう。
 ただし、あえて申し上げておけば、これらもおかしな処理をしようとすれば、ペナルティを食うことがありますから、注意してください。例えば「5000円ルール」だからと、領収書を複数に書き分けたり、人数をごまかしたりしたのが税務署に発覚すれば、重加算税の対象になりますよ。
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