技術に立ちはだかる「領収書の壁」
~「フィンテック会計」で、納税はどう変わる?
・その2~
技術に立ちはだかる「領収書の壁」  ~「フィンテック会計」で、納税はどう変わる?  ・その2~

2019/4/19

 
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インターネット上のサーバーにデータが保管されるクラウド会計に、お金のやり取りを自動的に取り込む機能を付加した「フィンテック会計」。それを実現する技術の進歩には、目覚ましいものがあります。ただし、本当に「使える」ようにするためには、乗り越えなければならない別の課題も。この分野に詳しい古川孝之先生(公認会計士税理士古川事務所)に聞きました。

自動化のネックとなる「現金」

「フィンテック会計を普及させるために、克服すべき社会的課題」というのは、何ですか?
フィンテック会計の大きな特徴は、事業に関連するお金のやり取りが、自動的に会計ソフトに取り込まれ、仕訳に反映されていくところにあるんですね。そのためには、まず「自動で取り込める」取引方法であることが、前提になります。
今は、現金によるやり取りが主流ですよね。
それだと、この部分の自動化は不可能です。現金を支払うと、領収書が発生するわけですね。それを基に、いったん現金出納帳をつけ、なおかつ税理士事務所が記帳処理をするという、二度手間な作業が必要になってしまうのです。
「フィンテック化」を進めるためには、どうする必要があるのでしょうか?
クレジットカードやスマートフォンを使った決済であれば、いちいち領収書を参照して、という世界からは解放され、自動的な取り込みが可能になります。あるいは、電子データをやり取りする「仮想通貨」(※1)による決済も、フィンテック会計に適合しますよね。
 
とはいえ、今の日本では、おっしゃるように現金取引という商習慣が深く根付いていて、その壁を崩すのは、容易なことではないようにも感じます。例えば中国のように、キャッシュレス化が一気に進むような環境にないのは、確かでしょう。
ここでも、技術の進歩になかなか社会が追いついていない、という現実があるわけですね。
ただ、一歩考えを進めれば、個人で事業をやっている方などは、領収書の発生する取引をできるだけカード決済で行うようにすれば、フィンテック会計を活用して、経理処理の負担を大きく減らしていくことができるのです。実際、そのようにして省力化を図る人も増えてきていますよ。
※1仮想通貨
貨幣を持たずに電子データでやり取りされる、インターネット上でのみ流通する通貨。

フィンテック会計で税務調査も変わる!?

その際留意すべきなのは、必ず事業用カードを作って、仕事上の取引の決済はそれで行うことです。プライベートなものと混じってしまうと、せっかく自動化したのに、結局処理が面倒くさいことになってしまう恐れがあります。
「自動取り込み」になると、そういった事業と関係ない支出などが、紛れ込みやすくなりませんか?
そういう可能性はあるかもしれませんね。領収書をチェックして記帳して、という作業は、我々にとっても「これさえなければ」というくらい大変なのですが、そこが今のような問題の「防波堤」になっていたのは事実です。「お客さま、この領収書は経費にできませんよ」と言うことができたんですね。
 
その工程が取り払われるわけですから、間違いの起こる確率は高まると考えるのが自然。経費として「グレー」なものが取り込まれてしまう可能性も、否定できないでしょう。
その結果、フィンテック会計が本格普及を始めたとたん、やけに申告で計上される経費が膨らむようになったりしたら……。
税務署が、税務調査(※2)で実態を見に来ることになるかもしれませんよね。
そこで「公私混同」が見つかれば、便利な技術がアダになったということになってしまいます。
まあ、そんなことにならないためにも、税理士には新たな役割、お客さまとの向き合い方が求められているのではないかと、私は感じています。
※2税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
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