新たな技術が促す税理士の差別化
~「フィンテック会計」で、納税はどう変わる?
・その3~
新たな技術が促す税理士の差別化  ~「フィンテック会計」で、納税はどう変わる?  ・その3~

2019/4/22

 
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「将来AI(人工知能)に奪われる職業」。税理士は、そんなランキングの上位に置かれているようです。経理業務を大幅に合理化、簡素化する「フィンテック会計」は、税理士業界に、実際どのような影響を与えるのでしょうか?「より付加価値の高い仕事がどれだけできるかの競争になり、差別化が進む」というのが、古川孝之先生(公認会計士税理士古川事務所)の予測です。

税理士事務所の役割はシフトする

フィンテック会計の普及には、「現金決済からの決別」といったハードルがあるというお話でした。ただ、世の中は何かのきっかけで、急速に変わることがあります。ハードルがクリアされて、それが本格的に導入され始めたとき、税理士の仕事はどうなるとお考えですか?
前にお話ししたように、納税者に代わって申告に必要な帳簿付けを行う記帳代行の業務は、少なくとも個人事業や零細、小規模企業向けについては、ほとんどなくなるのではないでしょうか。申告自体も、どんどんお客さま自身でやりやすくなっていますから、そうした業務で稼ぐのは困難です。
 
そういう意味では、フィンテック会計に仕事を奪われるわけですね。でも、税理士の存在意義がなくなるのかといえば、そんなことはないだろうと考えています。
どういうところに存在意義を見出すのでしょう?
ひとことで言えば、お客さまに対する提案型、コンサル型の付加価値の高い仕事です。これからの税理士事務所は、人を抱えて記帳代行などの案件を数多くこなして、というスタイルから、そちらの方向にシフトしていかざるを得ないと思いますね。そこで、どれだけ他の事務所と差別化できるかが勝負。まさに「税理士の生きる道」だと思っています。

「AI時代」だからこそ必要になるお客さまとの信頼感

逆に納税者の側からしても、フィンテックを利用すれば、確かに楽にはなるかもしれないけれど、それで「会計も申告も全部自分のところでやれる」ということには、ならないように思います。例えば、節税したいと考えても、プロでない方の知識やノウハウには、限界があるのですから。
そうですね。事業の規模にもよりますが、しっかり節税しようと思ったら、「システム任せ」にはできないでしょう。そもそも、データが取り込まれて仕訳がされて、一気通貫で申告書までできたからといって、その申告の中身が「正しい」という保証はありません。
前回お話に出たようなミスが、スルーされてしまうこともある。
今のAIは、そうしたところまで判断できるレベルには、ぜんぜん達していないんですよ。節税から業務コンサルまでAIがやってくれる時代というのは、実現したとしても相当先のことになるはず。ですから、そこは引き続きというか、より一層我々税理士が、ちゃんとフォローしていく必要があるでしょう。
 
フィンテック会計に、どんなデータをどこまで取り込むのか? そこを上手にハンドリングして、適正な税務の根拠を作っていくのかというのは、実は我々にとって新しい領域でもあるんですね。ですから、これからノウハウも蓄積しつつ、納税者の方により良い提案を行っていかなくてはなりません。そこを差別化できた事務所には、十分勝機があると思うのです。
なるほど。「フィンテック時代」には、それにふさわしい税理士の役割、お客さまからすると「活用の仕方」があるということですね。
同時に、私が最近感じるのは、ますますお客さまとの信頼関係が重要になってきている、ということなんですよ。
それはなぜでしょう?
前回お話ししたように、フィンテック会計になると、我々が領収書を預かって記帳作業を行うのではなく、領収書自体はお客様の手元に置かれたままです。サーバーに領収書はアップされますが、その確認作業が重要になります。よく考えると、お客さまを信頼できなかったら、成り立たない構図なんですね。
IT化が進むと、余計に信頼というある種アナログ的な部分が大事になるというのは、おもしろいですね。
いろんな手続きが簡素化されたぶん、今まで以上にお客さまとのコミュニケーションに努めて、もちろんお客さまからの信頼も勝ち取っていかなくてはなりません。案外そんなところも、勝負の分かれ目になるのかもしれません。

古川孝之(公認会計士・税理士)プロフィール

公認会計士税理士古川事務所 所長
『決算書が判る経営者になって頂きたい』と願い、法人・個人を問わず様々な業種の経営者の方の疑問を紐解き、最終的に決算書の数値がしっくりと理解できるように助言されている。税務だけでなく、M&Aや知財にも見識を持たれ、また、過去にシステムエンジニアでの職務経験から、フィンテック会計には関心がある。
URL:http://www.furukawa-cpa.com

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