元大手銀行審査部審査役が語る
「融資の可否は“会社の状況”と“銀行の事情”で決まる」
元大手銀行審査部審査役が語る  「融資の可否は“会社の状況”と“銀行の事情”で決まる」

2019/9/2

 
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必要な時に必要な額を、スムーズに融資してもらえるか――。それは、時として事業の命運を左右します。しかし、現実には、借りられるかどうかは、銀行次第。その判断基準も、借り手からはよくわかりません。今回は、元銀行マンの肩書を持つ笹井潤一先生(笹井会計事務所)にお話をうかがい、その「ブラックボックス」を覗きながら、融資を受ける際の基礎知識を伝授していただきました。

運転資金の上限は?

先生は、銀行で勤務されていた経験をお持ちですね。
はい。国内の支店を皮切りに、海外支店を経験し、その後、本店審査部で支店から上がってくる融資案件の決済も行っていました。
それなら、「貸す側の論理」を熟知されていらっしゃるはず。今日は、差し支えない範囲で(笑)、お話しいただきたいと思います。
わかりました(笑)。まず大前提として申し上げておきたいのは、例えば、融資を申し込んだけれどもOKが出なかったという場合、多くの人は「会社に問題があったから」と考えると思うのですが、必ずしも理由はそれだけとは限らない、ということです。
といいますと?
もちろん、「危ない会社」には貸しません。足元の業績が良くても、「ずいぶん背伸びをしているな」というような案件には、当然慎重になります。ただ、同時に融資の判断には、その時々の「貸す側の事情」もけっこう大きな影響を与えるんですよ。要するに、融資するかしないかは、「融資対象の企業に対する客観的な評価」と「銀行の事情」、この2つによって決まるのです。
「会社の客観的評価」が同じでも、融資が通ったり、通らなかったりすることがありうるということですか?
はい、あります。それについては後で述べるとして、銀行が会社のどこを評価していくのか、基本的なところから説明しましょう。

まず、当然のことながら、最初に見るのは売上規模です、年商1000万円と10億円の企業とで融資の限度額が異なるのは、個人の場合と同じ。売上だけでなく、経費を差し引いた利益がしっかり確保されているかも注視します。

次にポイントになるのは、借りたお金の「使途」です。どんなに業績好調でも、この説明抜きに会社が融資を受けることはありません。「運転資金」か「設備投資」か、さらに具体的に何に使うのか、ということです。
それぞれ、どんな判断基準があるのでしょうか?
運転資金というのは、例えば、商品を売ったけれども、入金は先。それより前に発生する仕入れ代金や家賃や従業員の給料をどうするか、といったときに、それを穴埋めするお金ですね。事業を円滑に行うためには、そうした資金が必要になる局面は、多くあります。この融資に関しては、ざっと売上の2~3ヵ月分くらいまでなら、健全ライン。それを超えて5~6ヵ月に膨らんでいると、黄色信号。私が担当なら、追加融資は相当に難しいと判断するでしょう。

一方、設備の場合には、その投資が今後の事業にどのように貢献していくのかを、詳しく確認していきます。例えば、それまで職人だけを現場に出していた建設会社が、資材も自社で持ちたい、そのためにはそれを現場に運ぶトラックも必要になるので、まとまったお金を融資してほしい、という案件があったとします。その場合は、その投資で会社の売上や利益はどのくらいアップするのか、増収分を元請けからきちんと支払ってもらえるのか、というところまでチェックするわけです。

銀行としては、貸したお金が利子も含めてきちんと返済されるのか、確認するということですね。
その見通しが立っていれば、喜んで融資を行います。でも、現実には判断に迷うことも、数多くあるんですよ。そういうときに無視できないのが、「銀行の事情」なのです。

銀行も食べていかなくてはならない

この点で最も大きいのが、実は社会・経済情勢なんですよ。ご承知のように、今の日本では「ゼロ金利政策」が実行されています。銀行の貸出金利も下がり、以前に比べて利ざやが小さく稼ぎにくくなっているわけです。つまり、同じ金額を貸していたのでは、収入が減ってしまう。

銀行も、行員に給料を支払い、その他さまざまな経費を負担して、事業を維持していかなくてはなりません。彼らは融資だけで稼いでいるわけではありませんが、この部門の業績悪化は痛い。そこで、本部からは、かつてを上回る額の「営業目標」が提示されることになります。平たく言えば、「頑張って、もっと貸しなさい」ということ。
そうなると、企業にとっては、今はお金を借りやすい環境にあるということができますね。
そうです。銀行の貸し出し姿勢は、相当緩くなっているのが現状です。ちなみに、近年、スルガ銀行の事件など金融機関の「不正融資」問題がちょくちょく報じられるのは、そういう「銀行の事情」と無関係ではありません。
なるほど。では、その「事情」は、これからはどうなると予想されますか?
ゼロ金利政策は、当面は続くでしょう。ただ、問題は、景気が思ったほど上向いていないことです。銀行の貸し出し姿勢が緩いのは、ここ数年、実態面で融資先の倒産が少ないことも影響しています。このまま「オリンピック需要」が一巡したら、建設業界で貸し倒れ(※)が多くなる可能性があります。そうなってくると、融資姿勢は一気に締まってくるかもしれません。特に大口でグレーゾーンの融資は、一段ハードルが上がることも考えられますね。
経営者には、そういうマクロ的な視点も必要になりそうです。
その通りです。とはいえ、「借りやすい今のうちに、できるだけ借りておけ」というのではありませんよ。さっきも言ったように、会社の成長に寄与するのがはっきりしているお金ならば、経済情勢に関わりなく、融資を受けることができるはずです。銀行も、お金を貸すのが仕事ですから。
※貸し倒れ
債権が倒産などにより回収できなくなること。
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