まずは「意欲」と「自己資金」
~会社をつくりたいと思ったら・その1~

まずは「意欲」と「自己資金」  ~会社をつくりたいと思ったら・その1~

2019/3/28

 
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「人に使われずに生きていきたい」「自分のアイデアを活かして稼ぎたい」。さまざまな思いを胸に、起業を目指す人が増えています。とはいえ、気持ちだけで実を取れるほど、経営は甘いものではありません。スムーズに事業を立ち上げ、利益を上げるために必要なことは何なのか? 創業支援に強みを持っているアスラン会計事務所の大谷理先生にうかがいます。

半年もちこたえられる自己資金を持つ

今お客さまは何件くらいいらっしゃるのですか?
40~50件といったところです。大半が法人設立の準備からお手伝いした案件なのですが、私自身も独立開業して2年なので、クライアントもほとんどが事業を軌道に乗せるために一生懸命、というステージなんですよ。
 業種は、IT、それもエンジニア関連が多いですね。例えば人材派遣などの忙しい業界の下請けをやったり、独自にアプリの開発をしたり。AIの普及もあって、この分野の創業は、今後も間違いなく増えると思います。
「独立して仕事をしたい」という夢を持つ人はたくさんいると思いますが、それを叶えるために必要になるものは何でしょう?
当たり前のことですけど、「是が非でも夢を実現するんだ」という強い「意欲」が一番大事。言い方を変えると、そういう気持ちがあるのだったら、少しでも早い時期に、若いうちにチャレンジすべきだと思います。
時代の流れは速いですし、迷っているうちにチャンスを逸してしまうかもしれない。
そもそも経営者には、即断即決で、どんどん進んでいく人が向いています。時々そうではないタイプの方がいらっしゃることもありますが、もちろん意欲があるのならば、全力でサポートしますよ(笑)。
 あと、創業時に必須なのは、ある程度の自己資金を持っておくこと。すでに個人事業で収入のベースが構築されていて、その流れで法人化するのなら別ですが、脱サラして会社を立ち上げようというようなケースでは、すぐに売上が立つと考えるのは少し甘いと思います。たいてい半年後くらいからポツポツ注文が入るようになった、というのが普通なんですね。そうした状況も織り込んだうえで、しっかり備えておくべきです。
だいたいどのくらいのお金を用意しておけばいいのでしょうか?
今の話の裏返しで、半年間、まったく収入ゼロだったとしても持ちこたえられる金額は、最低限用意したいところです。「お金はないけれど、売れるアイデアがあるから」というような人もいますけど、特に創業当時は、どんなアクシデントに見舞われるかわかりませんから。

金融機関は、あなたのどこを見るのか?

自己資金は必要不可欠。でも、それだけでは創業資金が足りないことも多いと思います。
その時に上手に資金調達できるのかというのも、起業の成否を決める重要なポイントになります。融資に関しては、日本政策金融公庫や自治体の創業支援融資が一般的ですが、もちろん銀行から借り入れることも可能です。今は、金余りの中で金融機関がいい借り手を探している状況ですし、政府も起業支援に力を入れているという背景があるので、総論的に言えば「お金が借りやすい」環境にあることは確かでしょう。
 とはいえ、「会社をつくりたいから」と言えば、どんどん融資してくれるわけでは、もちろんありません。最大のネックは、まさに「創業」だということ。普通の会社と違って、「この事業でこれだけ儲けている」といった実績がないのです。
当然、貸し手のほうは慎重にならざるを得ません。では、何を見て「融資するか、しないか」を決めるのでしょう?
まずは「事業計画書」です。要するに、売上や利益などの見通しですね。そのポイントについては、次回説明したいと思います。
 その他の判断材料として重要視されるのが、実は「過去の経験」です。この人は、今まで何をやってきたのか? それは、この事業に活かされるのか?
なるほど。同じ脱サラでも、そこで蓄えたスキルを活かすという方向の事業なのかそうでないのかでは、だいぶ印象が違います。
そういうことです。過去の経験や人脈、あるいは販路などの裏付けがあれば、実際、成功確率も高まるはず。そうではなくて、「何か違うことがやりたい」「憧れの仕事がしたい」というレベルでは、融資の担当者を説得するのはなかなか難しいかもしれません。
先生は、補助金のサポートもなさっていますよね。
条件が合えば、申請のお手伝いはします。ただし、積極的に「補助金を取りましょう」というスタンスではないんですよ。
それは、どうしてですか?
資金調達は、あくまでも本業を伸ばしていくための手段です。融資が基本的にその目的とリンクしているのに対して、補助金の場合は「人を何人雇ったらOK」のように、事業と必ずしも関連しない政策的な要素が入り込んでくることが多いわけです。それが本業の足かせにならないとも限りません。
 実際、補助金をたくさんもらってうまくいっている会社は、多くはないのではないでしょうか。基本的には、それに頼らない意気込みを持って事業モデルを確立するのが、成功への道だと私は思います。

大谷理(公認会計士・税理士)プロフィール

アスラン会計事務所 所長
大学を卒業後、税理士事務所にて税務業務に従事。その後、大手監査法人にて上場企業等の財務諸表監査等を経験し、独立開業。現在は創業間もないスタートアップ企業、ベンチャー企業の支援に強みを持ち、創業時の資金繰りや資金調達のサポートも行っている。
URL:http://asruntax.jp

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