そのとき問われる、あなたの「説明力」
~「税務調査」にはこう臨む・その2~

そのとき問われる、あなたの「説明力」  ~「税務調査」にはこう臨む・その2~

2019/4/16

 
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どんな会社でも、きちんと納税していても、「来るときには来る」のが税務調査。では、そこでは何が調べられるのでしょうか? 受けて立つ側に、必要になることとは? 痛くもない腹を探られたあげく、多額の税金を納めざるをえなくなった、などということにならないためのポイントを、税理士法人エム・エム・アイの高橋節男先生に聞きました。

実際に多いのは「期ずれ」の指摘

一般的な税務調査では、具体的にどんなところが調べられるのですか?
最も目立つのが、「期ずれ」なんですよ。ひと言で言えば、仕入れ、売り上げ、在庫の関係ですね。当期に計上されるべき売り上げが、次の期になっているとか、その逆だとか。売り上げが「間違って」いれば、支払われるべき法人税の額も違ってきますから、税務署もそこに注目するのです。
でも、決算期とは関係なく取引は動いていますから、そこをきちんと管理するのは、なかなか大変な面もあります。
そうです。中には、その期の売り上げを小さくするために、わざと来期に計上するといった振る舞いがあるかもしれませんが、たいていはそうではなくて、ミスして期ずれが生じているんですね。
 管理システムが整っている大企業ならいざ知らず、中小・零細企業がそこを正確に「切る」というのは、おっしゃるように容易ではないのです。そこにかかる労力やコストを考えたら、あとで税務調査を受けて修正申告した方がコストパフォーマンス的にいい、というケースがあるくらい、大変。だからミスも起こるわけです。
ただし、税務署は、故意か単純ミスなのかは、基本的に勘案してはくれませんよね。
期ずれを指摘されたら、「すみません」と言うしかありません。だから、そこはあんまり揉めようがないとも言えます。
 繰り返しになりますが、税務調査で多いのは、この期ずれの指摘。法律の解釈をめぐって論争が展開されるというようなことは、滅多にありません。

税務調査が終わったら……

税務調査に入ったけれど、まったくお咎めなし、ということもあるのでしょうか?
ありますよ。私が担当する案件では、1割くらいは「申告是認」、要するに問題なしで調査が終わります。
 そうでない場合は、納税者が自らの意思で「修正申告」を行うか、それをしない納税者に対して、税務署が「更正」をしてくるか、ということになります。後者は、税務署が強制的に不足税額を確定することですが、彼らにとっても面倒くさいし、その先争いに発展する可能性も高くなりますから、できればしたくない。そこで、納税者に強く修正申告を促してきたりもするんですよ。場合によっては、税務署自ら修正申告書を作成して、「これに判を押してください」なんていうこともある。
そこまでやるのですか。
でも、納得がいかなかったら、判を押してはいけません。その瞬間に税務調査は終了で、以後は争えなくなってしまうからです。
 とはいえ、むやみに悪あがきをしていても、プラスになることはあまりありません。仕方ない、と納得できたのなら、速やかに修正申告を行うべきでしょう。
その際は、ある程度のペナルティを覚悟しなくてはならないわけですね。
更正の場合でも、納税する時には、当初申告の状況により、延滞税の他に過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などを支払わなくてはなりません。
 ちなみに、最も重いペナルティである重加算税は、さきほどの期ずれとかではなく、売り上げそのものの計上漏れがあったときなどに課せられます。たまたま現金で回収したものを、社長が会社の口座にいれるのを忘れていた、などという場合でも、まず見逃してはくれません。「故意ではなかった」ことを証明するのは、ほぼ不可能だからです。

「節税」か「租税回避行為」か?

税務調査では、社長自身もいろいろとヒアリングを受けるわけですよね。その際に気をつける点はありますか?
いろいろあるのですが、私は、結果的に節税対策になっている行為について、それが「租税回避」、すなわち合法的ではあるけれども合理的ではない取引――などではないことを、きちんと説明できる力が大事だと感じるんですよ。
少し噛み砕いて、説明してください。
例えば、同じ相手との同じ取引にもかかわらず、前期よりも今期の単価が上がっていたとします。実は、それは「継続してお取引いただけるのならば、初回はおまけします」という営業の結果だったのだけど、税務署は「前期は利益が膨らみそうだったから、あえて落としたんじゃないのか」と勘ぐっていた。こんなケースで、「合理的な取引」であることを、商習慣なども踏まえて理路整然と説明し、調査官を説得できるかどうか。
なるほど。はたから見るとおかしな数字にも、ちゃんと理由があるのだ、と。
そういう、節税として認められるかどうかの境目を理解したうえで、「どうしてそのような取引をしたのか」というストーリーを、ちゃんと説明できることが重要なのです。

髙橋節男(税理士)

税理士法人エム・エム・アイ 代表社員
創業50年以上の会計事務所。複数の税理士の他、FPや経営革新等支援機関のコンサルタントら、それぞれの専門分野を持ったスペシャリストがお客様の要望に応えている。『皆で幸せになろう』を経営理念に掲げ、お客様の120%満足を目指す。
URL:https://www.mmigr.jp/

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