相続の際、不動産や現金以上に精査され、実際に問題が指摘されることも最も多いのが、「名義預金」であることをご存知でしょうか? 2015年の基礎控除額引き下げ以降は、今まで以上に注意が必要です。税理士の久野豊美先生に聞きました。
最も多い「否認事項」はこれ!「名義預金」に要注意
2015/1/28
「名義預金」とは?
例えば、子ども名義の銀行口座に、コツコツ預金する。よかれと思ってしたその行動が、相続の際、子どもの身に思わぬ災いを招くかもしれません。「表向き、通帳には子どもの名前が記されていても、お金の出所は父親」という場合、それは「父親の財産」とみなされるのです。 父から子への贈与では? いえ、贈与というのは、「渡した」「もらった」という認識が両者にあって成り立つもの。父親が亡くなった後、引出しから見たこともない自分名義の通帳が出てきた、などという場合は認められません。
相続税の対象になっている場合に、これを申告に含めなかったら「申告漏れ」です。その場合は、無申告による追徴課税ということになるかもしれません。中には相続税対策として、子どもや妻名義の通帳に資産を「移す」方もいますが、逆に「増税」となる可能性もあるわけですね。長年「積み立てて」いれば、相応の金額になっている可能性もあるでしょう。
2015年1月から、相続税の「課税のボーダーライン」が、4割引き下げられます。これが見つかったために、そのラインを超えて税金を払う羽目になってしまった。知っていれば、打つ手はあったのに――などという悲劇が起こらないとも限りません。注意が必要です。
税務調査のメインは「名義預金」
税務調査で最も問題になるのは、名義預金――。実は、これは多くの税理士の共通認識と言ってもいいのです。実際、税務署が調査に入った場合にも、「そんなに収入の多くないはずの長男名義の通帳に、5000万円の残高は不自然だ」「お金の出所はどこだ」といった点を集中的に調べていく、と聞きました。
裏を返せば、それだけ世の中には「名義預金」が多く、かつ「それが問題なのだ」という認識が一般の人たちには希薄だ、ということだと思います。前にも言いましたが、ここは税務署の立場になって考えてみましょう。相続税で持って行かれるくらいなら、妻や子に残したい。とりあえず家族の口座に預金を移しておけば、自分の財産だとは思われないはず――。そうした納税者の心情や「無知」を、彼らはお見通しなのです。 繰り返しになりますが、預金の名義を変えただけでは、相続税の対象から外されることはありません。「災い」を招かないためには、きちんと贈与を行うことです。贈与の証拠を、契約書などの形で残すのがポイント。いずれにせよ、さきほど触れたように「渡す」「もらう」という合意のあることが、大前提になるでしょう。「内緒のプレゼント」は、相続に関してはやめておきましょう。
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