相続における税理士の仕事は、相続税の節税のために知恵を絞り、できるだけ遺産分割協議がスムーズに進むよう、サポートすること。しかし、実際の相続には、それ以外に様々な問題の起こることが珍しくありません。税理士さんは、どこまで力になってくれるのでしょうか? 大貫利一税理士事務所の大貫利一先生のスタンスは、こうだそうです。
相続税と無関係の相談に、
税理士はどうする?
2017/7/31
◆葬儀屋さんから、想定外の依頼が
昔、相続税とはまったく関係ない、こんな事案に出くわしたことがあるんですよ。ある日、知り合いの葬儀屋さんから電話がかかってきて、「最近亡くなった人の奥さんで、相談に乗って欲しいという人がいるから、話を聞いてやってもらえないか」と言うんですね。お会いしてみると、相談というのは、自殺したご主人のことでした。働きづめに働いた末の「過労死」ではないか、というのです。
私は、税理士の他に行政書士の資格も持っています。本来この手のお話は“弁護士マター”なんですけど、相続人は別に会社と争うつもりはなくて、退職金が適切なのかどうかを含めて、とりあえず実情を知りたい、遺品があれば引き取りたいのです、と。ならば行政書士として受けましょうということで、代理人として会社側との話し合いに出て行きました。
でも、過労死を立証するのは、大変だったのではないですか?
はい。相続人の話だと、ご主人は家を出るのは毎朝5時前で、帰宅は早くて11時だったそう。そこで、まずご主人のタイムカードを見せてもらったのですが、これが上場企業でありながら手書きで、勤務時間は毎日8時半から5時くらいになっていました。でも、「虚偽」だと証明するのは難しいわけです。そこで、次に考えたのは、警備会社の記録を調べることです。ただし、それを見るのは、弁護士でなければ無理なんですよ。
「やる」先生もいれば、「やらない」先生もいる
結局、どうなったのですか?
弁護士さんともいろいろ相談しつつ、人事部長とか元同僚だとかに、勤務の実体の話を聞いたりもしたのですけれど、過労死という確たる証拠は、なかなか掴めませんでしたね。相手も上場企業だし、「訴えられでもしたら大変だ」という感じで。何だかんだで、2年くらい関わったでしょうか、最後は奥さんが「もう十分です、先生」と。依頼人の意向ですから、満足いく結果とはいきませんでしたが、それで打ち切りました。
私の知る範囲でも、相続専門の税理士さんにも、きっちり税金関係のことしかやらない先生もいれば、あれこれと面倒をみてくれる方もいます。先生は、明らかに後者だと思います。
そうですね。あくまでも、お客様の要望によりますけど、通り一遍のことをしていたのでは仕事は広がりませんし、私自身もやりがいを感じられませんから。弁護士さんにしか許されていない領域に踏み込んだりすることはできませんが、ギリギリのところまでは、おつき合いすることを基本にしているんですよ。
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