相続をつつがなく終えるためには、事前の準備が大切! そう言われても、「私はまだそんな歳ではない」「そもそも、どんな準備をしたらいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。でも、親が財産の分け方をきちんと決めておかなかったばかりに、死んだ後に子どもたちがそれをめぐって骨肉の争いを始めるというのは、決して珍しいことではないのです。相続に詳しい佐藤徹先生(佐藤徹税理士事務所)は、「しっかりした相続対策を講じるのは、“先代”の責任です」と話します。
「争続」を防ぐのは、親の責任
まずは資産の“棚卸”から始めましょう
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2019/5/17
資産状況がわかれば、やるべきことも見えてくる
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先生は、20年近く相続の案件に関わって来られたわけですが、そういう経験を踏まえて、相続にとって一番大事なことは何だとお考えですか?
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当然のことなのですが、生前の対策です。親が亡くなってから、「相続になったのですが、どうしたらいいでしょう?」と相談に来られる方も少なくないのですが、それでは節税しようと思っても、打てる手は限られてしまいます。
生前の対策は、相続で子ども同士の揉め事を招かないためにも重要なんですね。計画的に生前贈与を行っておくなり、相続人が不満を抱かないような遺言書を用意するなりしておけば、まず争いにはなりません。
生前の対策は、相続で子ども同士の揉め事を招かないためにも重要なんですね。計画的に生前贈与を行っておくなり、相続人が不満を抱かないような遺言書を用意するなりしておけば、まず争いにはなりません。
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逆に言えば、それがないから揉め事になりやすいわけですね。
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そうです。「遺産はこれだけあるから、あとはお前たちで話し合って分け方を決めてもらいたい」という姿勢は、間違いのもとだと思ってください。
資産や家族の状況などにもよるけれど、65歳になったら真剣に相続対策を考えるべきだというのが、私の個人的な意見です。人間、歳を取ると何をするにも億劫になってくるわけです。大切な資産のこと、ましてそれが原因で子どもたちが仲たがいするほどの不幸はないのですから、頭も体も健康なうちに、必要な手立てを打っておくに越したことはありません。まあ、とはいえ、今の65歳は元気ですから(笑)。
資産や家族の状況などにもよるけれど、65歳になったら真剣に相続対策を考えるべきだというのが、私の個人的な意見です。人間、歳を取ると何をするにも億劫になってくるわけです。大切な資産のこと、ましてそれが原因で子どもたちが仲たがいするほどの不幸はないのですから、頭も体も健康なうちに、必要な手立てを打っておくに越したことはありません。まあ、とはいえ、今の65歳は元気ですから(笑)。
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体がピンピンしているうちは、なかなか相続を我が事とはとらえられないのかもしれません。
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ただ、親の世代の方にわかって欲しいのは、相続に関して子どもから「対策してよ」とは言いにくいことです。
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遺産目当てだと思われないか、などといろいろ考えますからね。
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ですから、相続の事前準備は、遺産を譲る親の側が自分でその気にならないと、始まらないんですよ。それは“先代”の責任だろうと、私は思います。
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では、「その気」になったとして、事前の準備は何から手を付けたらいいのでしょう?
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実は、自分にどんな資産があるのか、それがどれくらいの金額になるのかを把握できていない方が、少なくありません。その状態では、「誰に何をあげる」という話が、そもそもできませんよね。まずやるべきは、資産の“棚卸”です。
例えば、所有する不動産の評価額がわかれば、他の財産との「つり合い」を測ることができます。「ここは分けにくいから、相続の前に売っておこう」といった対策もみえてくるでしょう。それが、相続対策の第1歩だと心得てください。
例えば、所有する不動産の評価額がわかれば、他の財産との「つり合い」を測ることができます。「ここは分けにくいから、相続の前に売っておこう」といった対策もみえてくるでしょう。それが、相続対策の第1歩だと心得てください。
節税ばかりに目が行くと、悲惨な老後に!?
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その相続対策で、特に気をつけたいことはありますか?
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具体的な対策は案件ごとに違うのですが、最近ちょっと気になるのは、資産が1億円前後で50歳代くらいの比較的若い方が、けっこう相談にいらっしゃるんですよ。2015年に相続税の基礎控除(※)が引き下げられて、東京のような大都市部圏に自宅を持つサラリーマン家庭でも、相続税の課税対象になるケースが増えたからです。
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みなさん、「自分が課税対象になるかもしれない」という認識をお持ちなのですね。
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税金のことは、すごく詳しかったりする(笑)。そして、口を揃えて「相続税は払いたくありません。どうしたらいいですか?」と言うのです。
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先生は、どう答えるのでしょう?
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最もオーソドックスなのは、子どもに少しずつ贈与を行うことです。年間110万円までなら、贈与税はかかりません。そうやって自らの相続財産を減らしていけば、確実に相続税を減免することができます。ですから、そういうお話をするわけですが、同時に「あげたお金は戻ってきませんよ」という「警告」もするんですよ。
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それはなぜですか?
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「自分たちの老後資金は大丈夫ですか?」ということです。老後は長い。例えば、体が弱って老人ホームに入ることになるかもしれません。入所の際の一時金や月々の費用を考えると、とても年金で賄える金額ではないはず。
はっきり言って、何億円も資産があるのならば、そうした心配はする必要がないのです。でも、「相続税がかかるかどうか」という層の方が、税金対策ありきでどんどん贈与してしまうと、気づいたら自分のためのお金に窮していた、という笑えない話になりかねません。そこは、少し冷静になって、長い目で自分の人生を考えるべきではないでしょうか。
はっきり言って、何億円も資産があるのならば、そうした心配はする必要がないのです。でも、「相続税がかかるかどうか」という層の方が、税金対策ありきでどんどん贈与してしまうと、気づいたら自分のためのお金に窮していた、という笑えない話になりかねません。そこは、少し冷静になって、長い目で自分の人生を考えるべきではないでしょうか。
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相談相手には、そういうアドバイスをもらえる専門家を選びたいですね。
※相続税の基礎控除額
課税のボーダーラインとなる遺産総額。現在は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、遺産総額がこれ以下なら相続税はかからない。
課税のボーダーラインとなる遺産総額。現在は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、遺産総額がこれ以下なら相続税はかからない。
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佐藤徹(税理士)プロフィール
佐藤徹税理士事務所 所長
日本有数規模の税理士法人にて相続申告では300件、事業承継では50人を超える相談に対応。仕事の質を維持しながらも手ごろな価格で対応する税理士を目指して、2016年に独立開業。金融機関やハウスメーカーからセミナー・研修等の依頼を通算100回以上受ける人気講師でもある。
URL:http://www.10000-consultation-office.com/
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