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遺産分割協議の期限が10年に制限? 法改正の中身を解説します

遺産分割協議の期限が10年に制限? 法改正の中身を解説します

2021年9月6日

被相続人(遺産を譲る人)が亡くなると、遺産の分け方を記した遺言書がない場合には、相続人が「遺産分割協議」を開き、「誰が・どの財産を・どれだけもらうのか」を話し合うことになります。2021年春の国会で、この遺産分割協議に関わる民法の一部改正が行われました。ところで、ネット上では、この改正により「分割協議に10年という期限が設けられる」という指摘もみられます。実際はどうなのでしょう? 法改正のポイントを解説します。

遺産分割協議とは?

そもそも遺産はどう分ける?

はじめに「遺産分割協議」とはどういうものなのか、確認しておきましょう。人が亡くなって相続になったとき、残した財産の分け方でまず優先されるのは、亡くなった人(被相続人)の意思です。それを示したのが、遺言書。正式な遺言書が作成されていた場合には、原則としてその内容に従って遺産を分割することになります。

また、被相続人が遺言書を残さなかった場合の分け方は、民法に「法定相続分」の規定があります。例えば、相続人が妻と子2人の計3人なら「妻が1/2、子は1/4ずつ」という割合で分割します。

ただ、現実には、法定相続分といっても、現金と不動産をどう分けるのか、といったことをめぐって相続人同士の意見が食い違うこともあり、相続人が話し合って、結論を出す必要があります。このような相続人同士の話し合いが、民法に定められた遺産分割協議です。ちなみに、その場で相続人全員の合意があれば、遺言書や法定相続分にこだわらずに遺産を分けることが可能です。

遺産分割協議の期限は?

では、この遺産分割協議には、「いつまでに終わらせる」という期限は設けられているのでしょうか? 話し合いの区切りとして意識されるのは、「相続発生から10ヵ月」という時間でしょう。この期間内に、相続税の申告・納税を済ませなくてはならないからです。だから協議もここまでが期限なのかというと、そうではありません。

それまでに協議がまとまらない場合には、各相続人がさきほどの法定相続分にしたがって取得したものとみなして、いったん納税を済ませ、引き続き話し合いを続けることができます。実は、遺産分割協議には、期限が設けられていないのです。

「所有者不明土地」の解消を狙った民法改正

改正の概要

ここからが本題です。2021年4月21日、国会で民法などの改正法が成立し、不動産の相続登記の義務化などが決定されました。「空き家」も含む「所有者不明土地」(所有者が判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地)が全国で急増し、社会問題化していることを踏まえたもので、そうした土地が新たに生まれるのを防ぐのが主眼です。

この改正で、相続登記の義務化などとともに盛り込まれたのが、遺産分割協議に関する規定の新設でした。被相続人の財産に土地が含まれている場合、協議が長期化すると、それが誰も利用したり処分したりすることのできない“塩漬け”状態になり、ひいては「所有者不明」になりかねません。そうならないために、遺産分割協議に一定の「規制」をかけるものでした。

遺産分割協議自体に期限はない

「規制」の中身について、「遺産分割協議に10年の期限が設けられた」という指摘もみられるのですが、それは正確ではありません。分割協議ができる期間については、引き続き制限は設けられませんでした。

では何が変わったのかと言うと、相続開始から10年が過ぎると、「特別受益」と「寄与分」についての主張ができなくなりました。遺産分割で揉めやすい「論点」に期限を設けることで、協議の早期決着を促そうというわけです。

期限が設定される権利

「特別受益」と「寄与分」について、簡単に説明します。

特別受益とは?

「特別受益」とは、相続人の中に、被相続人から遺贈(※1)や生前贈与によって特別の利益を受けた人がいる場合に、その相続人が受けた利益のことを指します。例えば、住宅取得資金、結婚費用、大学の入学金などが該当します。

このような贈与の額は、相続開始のときに実際に残されていた相続財産の額と合算したうえで、各相続人の相続分を決めなければならない、と定められています。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。相続人のうちに、特別に財産などを贈られた者があった場合、その利益は考慮せずに残りの財産だけを遺産分割協議にかけるのでは、他の相続人との間に不公平が生じるからです。

※1 遺贈
遺言によって他人に財産を贈ること

寄与分とは?

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度です(※2)。相続人の中に被相続人の家業を無給で手伝ってきた人や、介護してきた人がいる場合、その人の貢献を評価しないで法定相続分で遺産を分けるのは、やはり不公平だといえるでしょう。そこで、そうした人には寄与分を認め、相続分を増やすことで公平を図るわけです。

※2 従来、寄与分は相続人にしか認められなかったが、法改正により、2019年7月1日以降に発生した相続については、無償で介護などの労務を提供した場合、相続人ではない親族も、相続発生後に相続人に対して「特別寄与料」という金銭を請求できることになった。

権利主張は10年以内にする必要がある

とはいえ、「特別受益者」や、「寄与分を主張する人以外の相続人」が、「わかりました」とすんなり受け入れるとは限りません。利益を受けたのが昔のことだったり、寄与の度合いが図りにくかったりで、さきほども述べたように「争続」のタネになりやすいのが実情なのです。

それを見越して、今回、その主張に期限が設定されたわけですが、「権利を持つ人」にとっては、それを侵される危険性が強まったということも言えます。遺産分割協議の場できちんと権利を主張するとともに、早めに家庭裁判所の調停を仰ぐといった方策も検討する必要があるかもしれません。

まとめ

遺産分割協議における特別受益と寄与分の主張に、「相続開始から10年」という期限が設けられました。権利の主張を考える場合は、早めの対応を考えるべきでしょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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