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海外に住む相続人が遺産を受け取ったら相続税はどうなる?

海外に住む相続人が遺産を受け取ったら相続税はどうなる?

2022年8月8日

生活スタイルが多様化し、海外で生活する人も増えています。ところで、そうした状況で日本にいる親が亡くなって遺産を受け取った場合、やはり日本の相続税が課税されるのでしょうか?相続前に海外に移されていた財産の扱いは?実は厳格な要件が定められている「海外居住者の相続」について解説します。

海外に住む相続人の扱い

どこに住んでいても相続はできる

初めにそもそもの話をすれば、民法で定められた相続人(法定相続人)であれば、日本以外のどこに住んでいても、相続人です。たとえ日本での住民登録を抹消していても、その権利がなくなるわけではありません。つまり、海外に住んでいても、相続になれば、被相続人(亡くなった人)の財産を受け取ることができます。

ただし、被相続人の遺言書が残されていない場合などには、他の相続人とともに遺産分割協議を行い、その分け方を決めなくてはなりません。帰国が難しければメールなどオンラインでのやり取りで参加することも可能ですが、いずれにしても他の相続人と同様の手続きを踏む必要があるということです。

海外居住者に対する相続税課税のルール

包括遺贈とは?

そして、遺産総額が「基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)」を超え、相続税が課税される相続であれば、海外に住んでいようとも納税する必要があります。ただし、その際に、被相続人の遺産のうち、「日本国内の財産だけに課税される」のか、「海外に財産があった場合、それも含めて全部の財産に課税される」のか、という点が問題になることがあります。どういう問題かは後述しますが、前者のケースを「制限納税義務者」、後者を「無制限納税義務者」といいます。

この基準について、2000年の法改正以前は、 ● 相続人の住所が日本国内にあれば、被相続人の国内・国外財産ともに課税(無制限納税義務者)
● 相続人が海外に居住している場合は、国内財産のみに課税(制限納税義務者) と、シンプルなルールになっていました。

無制限納税義務者の対象を拡大

ところが、この原則で運用すると、「租税の公平性」の観点から不都合な状況が生まれたのです。例えば、子どもが海外に住んでいる場合、親があらかじめ財産を海外に移しておきます。今の原則に従えば、相続の際に子どもがその国外財産のみをもらえば(国内財産を取得しなければ)、納税義務者になることはありません。この仕組みは贈与にも適用されます。財産を海外に移して、受贈者(贈与を受ける人)も移住したうえで贈与を行えば、同じように納税を免れることができたわけです。

実際にこうした「租税回避」が問題になったことを受け、数回にわたって法改正が行われ、国外財産への課税強化=無制限納税義務者の範囲の拡大が実行されてきました。

以下、現行ルールについて説明しますが、課税パターンは以前に比べ複雑化しています。とはいえ、「普通に海外に住んでいただけの相続人」の場合は、国内にいるのと課税対象自体は変わりません。問題になりやすいのは、節税目的などで海外に移住したり、財産を移したり、あるいは被相続人や相続人が外国人の場合だったりするケースだと考えてください。そのような場合には、自らの課税の要件がどうなっているのか、きちんと調べておく必要があるでしょう。

相続税の課税パターンを解説

国内に住所があれば、無制限納税義務者

前提として、被相続人・相続人のいずれかの住所が日本国内にあれば、一部外国人のケースを除き、国内・国外全ての財産が相続税課税対象となります。「相続人のみ海外居住」のケースは、無制限納税義務者に組み入れられたわけです。住所を日本に残したまま海外に居住している場合も同じですので、注意してください。

相続前10年以内に日本に住んでいた

では、相続発生時に、被相続人・相続人ともに海外に居住していた場合は、どうなるのでしょうか?このケースでは、相続発生前、何年間日本に住んでいたか(住所があったのか)で課税対象が変わります。

被相続人・相続人のいずれかが10年以内に日本国内に住所があった場合には、やはり国内・国外全ての財産が課税対象です。親子ともに海外に移住して短期間に贈与を行ったり、相続を見越して移住したり、といった租税回避行動を防ぐ目的で、「移住後10年経過しないと国外の財産にも課税する」という定めを設けたわけです。なお、移住後の経過期間は、2000年の法改正時点で5年だったものが、その後10年に延長されました。

相続前10年以内に日本に住んでいない

一方、被相続人・相続人のいずれも相続開始前10年以内に日本国内に住所がない場合には、国内の財産のみに課税されます。つまり、親子ともども10年を超えて海外に住んでいる状態で相続が発生した場合には、国外の財産には相続税がかかりません。財産を海外に移していれば、税金を払わずに相続することが可能です。

ちなみに、世界にはシンガポールやオーストラリアのように、もともと「相続税ゼロ」の国があります。こうしたところに移住すれば、無税で相続が可能と考えがちですが、それは誤解です。日本国籍を捨てない限り、日本の相続税が課税されることになるのです。

外国人の課税ルール

日本に住む外国人の数も増えました。外国人の相続についても、原則として今のルールが適用されます。ただ、たまたま日本に働きに来ていた外国人が国内で亡くなった場合などに適用すると、日本国籍を持たない子どもにまで、海外の財産を含めた日本の相続税の納税義務が発生することになります。

そこで、外国人の相続に関しては、たとえ相続開始時に相続人の住所が日本にあっても、相続人が「一時居住者(※1)」であり、被相続人が「一時居住被相続人(※2)」または「非居住被相続人(※3)」である場合には、日本国内の財産を相続しなければ納税義務者にはならない、といった法改正が行われました。相続人が日本に住んでおらず、日本国籍も持たない場合には、被相続人が日本に定住していない限り、納税義務は生じません。

簡単にいえば、日本に短期滞在の目的で来ていたような外国人が亡くなっても、相続人には、実質的に日本の相続税は課税されないということです。

※1一時居住者:相続開始の時において在留資格を有する者であって、その相続の開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である人
※2一時居住被相続人:相続開始時に在留資格を有し、かつ、日本国内に住所を有していた被相続人で、相続開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の人
※3非居住被相続人:相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、①相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある人のうち、そのいずれの時においても日本国籍を有していなかった人、または②その相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人

まとめ

説明したように、相続税や贈与税の節税目的で海外に移住したり、財産を移したりする行為に対しては、規制強化の方向にあります。誤解していて「申告漏れ」が生じると、加算税をはじめとするペナルティの対象になりますので、該当する要件を確認し、慎重な判断を行うようにしてください。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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