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相続で認められる寄与分・特別寄与料とは?時効はある?

相続で認められる寄与分・特別寄与料とは?時効はある?

2022年8月30日

相続における「寄与分」「特別寄与料」をご存知ですか?言葉を聞くと、なんとなく「長年親の介護をしてきた人が、多く遺産をもらえる仕組み」といったイメージですが、実際の要件はどうなっているのでしょうか?また、もらう際に時効はあるのでしょうか?分かりやすく解説します。

寄与分とは何か?

寄与分が認められる要件

民法には「法定相続分」の定めがあります。例えば、相続人が妻と子ども2人だった場合、被相続人(亡くなった人)の遺言書がなければ、遺産は妻が1/2、子どもはそれぞれ1/4ずつもらう権利があります。ただし、民法は同時に、 相続人の中に「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」がいた場合には、その人に「寄与分」を認める 、と規定しています(904条の2)。

平たく言えば、被相続人に対して、生前経済的な貢献をした相続人は、他の相続人より多く遺産をもらうことができます。その「割り増し分」が「寄与分」です――ということです。

要件を整理すると、

  1. ① 法定相続人である
  2. ② 特別の寄与があった
  3. ③ それにより被相続人の財産が維持または増加した

ということになります。

「特別の寄与」の考え方

まず引っかかるのは、②「特別の寄与」とはどういうものなのか、ということでしょう。「特別」ですから、「通常の寄与」では、寄与分は認められません。

例えば、妻が被相続人の夫のために通常の家事労働を行っていたとしても、夫婦間には協力扶助義務(民法752条)があるため、特別の寄与には該当しません。子どもが親と同居して家事の援助を行った場合も、親族間の扶養義務・互助義務(民法877条1項)の範囲内とされる可能性が高いでしょう。

また、③にあるように、お金に換算できない単なる精神的な援助なども、寄与分の対象にはなりません。相続人の貢献によって、財産の減少や負債の増加が阻止された、または財産の増加や負債の減少がもたらされたことが必要になるのです。

具体的には、次に挙げるような行為が「特別の寄与」に該当すると考えてください。

寄与分が認められる具体的なケースとは?

(1)労務の提供をした

被相続人の事業を手伝っていた相続人は、財産形成に貢献したとして、寄与分が認められる可能性があります。ただし、他の従業員と同等の給与をもらっていたような場合には該当しません。「無償または無償に近い貢献」である必要があります。

(2)金銭を出資した

例えば、被相続人の老人ホームの入居費用を負担していたり、借金を代わりに弁済していたりして、その財産維持に貢献したとみなされるケースには、寄与分が認められる可能性があります。ただし、被相続人が経営していた会社への金銭出資は、原則として寄与分が認められませんので、注意が必要です。

(3)療養看護を行った

相続人が仕事を辞めるなどして、被相続人の介護に長期間にわたって専念していたような場合は、「特別の寄与」と認められる可能性が高いでしょう。作業を介護職員に任せ、自分は話し相手になっていた…という程度では、寄与分は認められません。

(4)扶養した

例えば、働けない被相続人の生活費を負担していた場合は、寄与分が認められる可能性があります。ただし、十分生活できる収入があるような被相続人に対し、扶養を行ったとしても、寄与分は認められません。また、夫婦・親子・兄弟姉妹には相互に扶養する義務がありますので、通常考えられる範囲を超えた扶養でなければ、認められるのは難しいと考えてください。

(5)財産管理を行った

例えば、被相続人所有の賃貸不動産の清掃や手入れなどの管理をしていた場合は、財産維持に貢献したと認められる可能性があるでしょう。ただし、そもそも財産管理をする必要性がなかった場合には、寄与分として認められません。相続人が管理会社の管理する賃貸不動産を清掃しても、それは「特別の寄与」には当たらないのです。

寄与分はどう決まる?

遺産分割協議で決めるのが基本

では、寄与分は具体的にどのように算定されるのでしょうか? この点は、法律などに明確な基準が示されているわけではなく、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で決めるのが基本です。寄与分を主張する相続人が、その金額と根拠を示して、他の相続人の同意を得ていくわけです。

もし、他の相続人がそれを認めなかった場合、寄与分を獲得するためには、家庭裁判所の「遺産分割調停」、さらには「遺産分割審判」で争うことになります。

算出の目安は?

家庭裁判所での調停や審判の際、寄与分を決める判断の目安には、次のようなものがあります。

  1. 1. 労務提供 → 本来受け取るべき給与
  2. 2. 金銭の出資 → 贈与金額
  3. 3. 療養介護 → 看護人、介護人に依頼した場合の金額
  4. 4. 扶養 → 扶養金額の一定部分
  5. 5. 財産管理 → 第3者に委任した場合の金額

ただし、あくまでも目安で、実際にはこれらの金額にさまざまな「裁量」が加えられます。

寄与分が認められた場合の相続分の計算

まず寄与分を差し引いて計算する

特定の相続人Aに寄与分が認められた場合には、次のようにしてそれぞれの相続人の遺産の取り分が決まります。
● まず遺産総額からAの寄与分を差し引く
● 残りの遺産額を相続人全員で分ける
● Aの相続分に寄与分を加える

例えば、被相続人の遺産総額が5,000万円で、相続人がA(寄与分1,000万円)とB(寄与分なし)だった場合は、次のようになります。
● 5,000万円-Aの寄与分1,000万円=4,000万円
● Aの相続分:4,000万円÷2+1,000万円=3,000万円
● Bの相続分:4,000万円÷2=2,000万円

遺言書があったらどうなる?

さて、説明してきた寄与分は、遺産が法定相続分によって分けられることを想定しています。被相続人の遺言書が残されていた場合には、原則としてその内容に沿って遺産分割が行われることになるのですが、寄与分はどうなるのでしょうか?

答えは「遺言書の内容は、寄与分に優先する」です。つまり、全ての財産が遺贈(遺言書による遺産分割)の対象になっていたら、どんなに被相続人を経済的に支えてきたとしても、寄与分は0ということになるのです。

「特別寄与料」とは何か?

相続人でなくても寄与が認められる

ところで、最初に寄与分が認められる要件として、「法定相続人であること」と説明しました。ただ現実には、相続人である息子の配偶者(妻)が、長く被相続人の介護に携わってきた…といった事例が珍しくありません。

相続の際、「相続人ではないことを理由に、そうした人たちの貢献が認められないのは理不尽だ」という議論が以前からありました。そこで、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(民法1050条第1項)ができ、2019年7月1日に施行されました。対象となる人を「特別寄与者」、寄与に応じて受け取れる金額を「特別寄与料」といいます。
仮に財産の1/2ずつを相続する相続人が2人いた場合、特別寄与者は、それぞれに特別寄与料の1/2を請求します。

特別寄与者の要件

この制度の要件は、以下の通りです。

  1. ① 被相続人の相続人以外の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)であること
  2. ② 被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をしたこと
  3. ③ それにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

寄与分と違い、相続人は特別寄与料をもらうことはできません。相続放棄をした人、相続人の欠格事由に該当する人や廃除された人も対象外です。

相続人の「相続欠格」「廃除」については、下記の記事で解説しています。

また、対象となる寄与は、法律の条文上、「療養看護その他の労務の提供」に限られています。相続人の寄与分のように、事業に対する出資などには認められない可能性が高いので、注意しましょう。

時効はあるのか?

寄与分はいつまで主張できる?

例えば、寄与分が認められること自体を知らず、遺産分割が終わってから自分にその資格があると気づいた場合、分割のやり直しを求めることはできるのでしょうか?

寄与分自体に法的な時効はありません。しかし、全ての相続人の合意で遺産分割が行われた場合、原則としてそれ以降は、合意内容を覆すことはできません。寄与分を主張できるのは、実質的に「遺産分割の合意が成立するまで」の間ということになります。

また、寄与分の主張は、“遺産分割協議の初めの段階”で行うのが鉄則です。というのも、話し合いが進んでから持ち出せば、揉め事に発展する危険性が高いからです。同時に、納得のいく寄与分を手にするためには、この遺産分割協議がポイントになると考えてください。家庭裁判所の調停や審判になった場合、被相続人の財産維持などに貢献した具体的な証拠がないと、認められる可能性は低くなります。

特別寄与料には時効がある

では、特別寄与料は、いつまで主張できるのでしょうか?
言葉も意味合いも似ているのですが、寄与分が遺産の分け方にかかわることがら(すなわち、決まるまでは権利を主張できる)のに対して、特別寄与料は相続人に対する請求権=債権であるという点で、両者には法的な性質の違いがあります。

特別寄与料に関する協議が整わない場合、特別寄与者は、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求することができます。ただし、それには6ヵ月の「消滅時効」があり、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時からこの期間が過ぎ、相続人が時効の完成を主張すると、その権利がなくなってしまうのです。さらに、相続開始から1年間が経過すると、自動的に権利を失います(「除斥期間」の経過)。ですから、特別寄与料の請求を行う場合には、「相続開始から6ヵ月以内」という時間を意識する必要があるわけです。

まとめ

被相続人に生前「特別の寄与」をした相続人には、相続の際に寄与分が認められます。また、相続人以外の親族には、特別寄与料の制度が設けられました。ただし、それぞれ一定の要件があり、権利を主張できる期間に限りがあることにも注意が必要です。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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