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相続で親の財産の「使い込み」が発覚!取り戻すための方法と注意点

相続で親の財産の「使い込み」が発覚!取り戻すための方法と注意点

2022年11月24日

母親が亡くなったので遺産を調べてみたら、同居していた兄が親の口座から勝手に何百万円も引き出していた――。相続では、そうした困った事態が起こり得ます。こうした場合、他の相続人が親の遺産を「取り戻す」ためには、どうしたらいいのでしょうか? 返還を求める方法と、その際の注意点を解説します。

遺産の使い込みとは?

遺産の使い込みは、親など財産を譲る立場の人が存命中、すなわち相続開始前に行われる場合と、相続になってから実行される場合があります。たいていは親の資産を管理できる立場の相続人が「犯人」になりますが、相続人以外(例えば、相続人である子どもの配偶者)によって行われることもあります。

実際の使い込みで多いのは、次のようなケースです。

相続開始前の使い込み

◆預貯金を無断で引き出す

最も多いのが、子どもが高齢の親から管理を任されていた預金通帳やキャッシュカードを使って預貯金を引き出し、自分や家族のために消費する、というパターンです。ギャンブルや借金返済が動機になることも珍しくありません。

◆親名義の不動産や有価証券を勝手に売却する

親の実印を持ち出して、不動産や有価証券などの資産を売却し、売却益を着服することもあります。

◆介護していた人が使い込む

子どもに限らず、被相続人(亡くなった人)を介護していた人が、管理を任されていたお金を使い込む事例も増えています。

相続開始後の使い込み

◆口座凍結前に預貯金を移動する

金融機関は、ある人の死亡を確認すると、その人名義の口座を凍結し、特定の相続人などが勝手にお金を引き出せないようにします。その凍結が行われる前に、同居していた子どもなどが、急いで預貯金を自分の口座に移すことがあります。

相続人が他にもいる場合には、被相続人の遺産は「共同相続人による法定相続分での共有」状態となり、遺産分割協議がまとまるまでは、個人の財産ではありません。勝手に手をつけたりすることが許されないのは、いうまでもないでしょう。

使い込まれた遺産を取り戻すには?

特定の相続人などによるこのような使い込みを黙認すれば、遺産が目減りして、他の相続人が不利益を被ることになります。そうした不公平を解消するためには、どうすればいいのでしょうか?

まず証拠を固める

「母親はもっと多くの貯金をしていたはずだ」という程度の話では、“水掛け論”に終わってしまう公算大です。使い込みがあった場合には、きちんとその証拠を集め、具体的な金額などを明確にする必要があります。その過程で、使い込みだと思っていたものが、実は親の介護のために支出されていたお金だった、といったことが判明するかもしれません。

有効な証拠としては、

  • ・被相続人の預貯金口座の取引履歴(相続人ならば開示される)
  • ・使い込みが疑われる人の預貯金口座の取引履歴(後述の訴訟を提起すれば、裁判所の権限で開示可能)
  • ・被相続人所有の不動産の売買契約書
  • ・被相続人の有価証券の取引明細書
  • ・被相続人の介護記録、入院記録、認知症の診断書
などがあります。
その上で、次のような方法で、使い込みに対処します。

証拠を示して、使い込んだ人と協議する

最初にやるべきことは、使い込んだ相手との直接の話し合いです。証拠を示して、法定相続分(民法に定められた遺産の取り分)を超えた金額について、返還を求めるようにします。法定相続分を超えない範囲の「着服」の場合には、遺産分割協議での取り分の主張を減額する、といった着地のさせ方もあるでしょう。

できれば、この話し合いで「決着」させるように努めます。裁判などになれば、本格的な「争族」となり親族間の関係がこじれる上に、時間もコストもかかるからです。

なお、使い込んだのが相続人以外の人だった場合には、相続人側に全額を返還するよう求めます。

遺産分割調停を行う

「遺産分割調停」は、調停委員の立ち合いの下で、家庭裁判所で行う相続人同士の話し合いで、遺産分割協議がまとまらない場合に行われます。

以前は、使い込まれた財産はすでに遺産としては存在しないことを理由に、この調停の対象にはならず、取り戻すためには、次に説明する訴訟の提起しか方法がありませんでした。しかし、2018年に成立した改正民法により、使い込んだ相続人以外の相続人が全員同意すれば、相続開始後に使い込まれた財産を遺産分割調停などの対象とできることになりました。

ただし、相続開始前の使い込みについては、従来通り訴訟を提起して解決を図る必要があります。また、使い込んだのは誰か、使途は何か(例えば、被相続人のために使われた可能性はないか)について争いがある場合には、やはり調停の対象とはならず、訴訟を提起する必要があります。

訴訟を提起して争う

当人が使い込みを認めないなど、話し合いでの解決が困難な場合には、訴訟で解決を目指します。提起する訴訟には、次の2つのパターンがあります。どちらを選択すればいいのかは状況により異なりますから、代理人を依頼する弁護士と相談して決めます(同時に起こすことも可能です)。

●不当利得返還請求
法律上の原因がないにもかかわらず得た利益を「不当利得」といい、それにより損失を被った人には、利得者に対して、受けた利益の返還請求が認められます。相続開始前後に使い込んだ遺産は、この不当利得に該当すると考えられます。

●不法行為に基づく損害賠償請求
不法行為とは、故意または過失によって相手に損害を与えることです。遺産の使い込みは違法であり、それにより他の相続人は損害を被ることになるため、不法行為に該当するでしょう。被害者である相続人は、使い込んだ人に対して、損害賠償請求訴訟を提起できます。

遺産分割が終わったら請求できない?

相続人による遺産分割協議が終わり、正式に分割が行われてから使い込みが発覚することも、あり得ないとはいえません。しかし、その場合には「時すでに遅し」で、もはや取り戻す術はないのでしょうか?

そんなことはありません。今説明した請求権は、遺産分割の内容に影響を受けないのです。ですから、遺産分割後であっても、訴訟を提起することなどは可能です。ただ、その場合には、特に後述する時効に気をつける必要があるでしょう。

使い込みを取り戻せないこともある

ただし、最終的には裁判で決着をつければ、100%不利益を取り戻せるかといえば、必ずしもそうではありません。

「証拠不十分」で敗訴

調停や裁判になっても、「被相続人の財産を、被相続人や相続人全員のためではなく、自己のために使った」ことが認められず、使い込みを訴えた側の「負け」になる可能性もあります。それを証明する、確固たる証拠が必要になるわけです。

返済する資金がない

裁判で勝っても、使い込んだ当人に返還や損害賠償のためのお金がない場合には、現実問題として取り戻すこと自体が困難になったり、回収に長期間かかったりすることも考えられます。。

請求権には時効がある

遺産の使い込みにより不利益を受けた相続人に認められる請求権には、次のような時効があります。これを過ぎてしまうと、どんなに証拠が揃っていても、取り戻すのは困難です

・不当利得返還請求の時効:「権利行使できると知ったときから5年」または「権利の発生時から10年」
・不法行為に基づく損害賠償請求:損害及び加害者を知ってから3年

弁護士費用も検討する

返還の資金を確保するためにも、時効のことを考えても、使い込みが疑われる場合には、速やかに専門家に相談して対処するのが基本です。ただし、調停や裁判のステージに進んで弁護士にサポートを依頼すれば、当然コストが発生します。使い込みの金額、回収可能額などを考慮した「費用対効果」は、検討すべきかもしれません。

まとめ

特定の相続人などによる遺産の使い込みがあった場合、それによる不利益を受けた相続人は、最終的には裁判によって遺産の返還などを求めることができます。使い込みが発覚したら、まずは相続人同士の話し合いで解決を目指し、それでもうまくいかない時には、専門家に相談うるようにしましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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