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税制改正で「相続時精算課税制度」のメリット拡大?2024年からの改正点、デメリットも中心に解説

税制改正で「相続時精算課税制度」のメリット拡大?2024年からの改正点、デメリットも中心に解説

2023年3月31日

「年110万円までの贈与には、税金がかからない」という話を聞いたことがあると思います。これは、暦年贈与(贈与税の「暦年課税」)。 贈与の仕方にはもう1つ、まとまった財産を2,500万円まで無税で贈与でき、相続時に相続税と相殺する「相続時精算課税制度」があります。 2023年度の税制改正により、24年1月から、その節税効果がアップすることになりました。ただし、制度の利用には注意点もあります。 今回の改正点、制度のメリット・デメリットを解説します。

生前贈与のやり方は2つ

生前に子や孫などに現金や不動産をはじめとする財産を渡す(贈与する)場合、一定額を超えると贈与税がかかります。課税のされ方には次の2つがあり、任意で選択することができます。いうまでもないことですが、課税対象なのに申告を怠ったりしたことが発覚すると、「加算税」「延滞税」などのペナルティが課せられることになります。

暦年贈与

「暦年贈与」では、受贈者(財産をもらう人)1人当たりの暦年(毎年1月1日から12月31日まで)の贈与額が110万円(基礎控除額)以下であれば、贈与税がかかりません。110万円を超えた分に贈与税が課税されます。長期間、少額ずつ渡していけば、大きな節税効果が得られます。

この暦年贈与については、税務署などへの届出は必要ありません。納税が必要になった場合に、申告・納税すればOKです。

相続時精算課税制度とは

一方、今回の記事の主題である「相続時精算課税制度」を選択すれば、贈与時に2,500万円の特別控除額を使うことができます。つまり、贈与額(a)が2,500万円以下であれば、贈与税はかかりません。(a)が2,500万円を超えた場合には、その超えた金額に一律20%の贈与税(b)が課税されますから、この時点で納税します。

次に税金が問題になるのは、贈与者(財産を贈る人)の相続が発生したときです。相続では、(a)を相続財産に加算して相続税を計算します。その税額からは、すでに納めている(b)を控除する(差し引く)ことができます。引き算の結果、もし納め過ぎがあれば、その分は還付(返還)されます。

制度は贈与者ごとに適用される

暦年贈与もそうですが、この相続時精算課税制度も、贈与者ごとに利用することができます。例えば、父母の両方からこの制度を使って贈与を受ける場合には、それぞれ2,500万円ずつ、計5,000万円の特別控除枠を使うことができるのです。父親が相続時精算課税、母親は歴年課税、という使い方もできます。

ただし制度の利用には要件がある

この制度を利用できるのは、贈与者および受贈者が、次の要件にあてはまる場合です。

  • ・贈与者
  • 贈与をした年の1月1日現在で60歳以上であること。

  • ・受贈者
  • 贈与者の直系卑属(子、孫などで血縁関係のある人)である推定相続人または孫で、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の人。

「推定相続人または孫」というのは分かりにくい表現ですが、要するに「血縁関係のある孫は受贈者の資格がある」と理解してください。

利用には手続きが必要

暦年贈与とは違い、この制度を利用して贈与を行う場合には、税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。提出期限は、この制度を選択しようとする贈与者から最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間です。

届け出には、以下のような添付書類が必要です。

  • ・受贈者の戸籍謄本または抄本など(受贈者の氏名、生年月日、および受贈者が贈与者の推定相続人である子又は孫であることを証明する書類)
  • ・受贈者の戸籍の附票の写しなど(受贈者が20歳に達した時以後の住所などを証明する書類)
  • ・贈与者の住民票または戸籍の附票の写しなど(贈与者の氏名、生年月日、および贈与者が60歳に達した時以後の住所などを証明する書類)

相続時精算課税制度の改正点

24年1月から基礎控除110万円が創設される

従来、この相続時精算課税制度は、生前に贈与税の負担を抑えてまとまった財産が渡せるものの、結局相続税の支払い時に「清算」されることから、節税効果自体はあまり期待できないとされてきました。しかし、今回の税制改正で、贈与の仕方によっては、事情が変わりそうです。

ポイントは、相続時精算課税制度にも、暦年贈与と同じような基礎控除額(年間110万円)が創設されることです。この制度を選択すると、110万円の基礎控除を活用して、贈与しながら相続財産を減らす、というスキームは使えなかったのですが、24年1月からは、それが可能になるのです。少額の贈与でも必要だった税務署への申告も、基礎控除以下であれば、暦年贈与同様、しなくていいことになります。

節税効果が大きくなるのは、暦年贈与のように何年にもわたって贈与をしていく場合です。基礎控除額があることによって、贈与税そのものが減額されることに加え、今も述べたように相続財産を年に110万円ずつ減額していくことができるからです。

加えて、23年度税制改正で、暦年贈与にも変更が加えられたことから、税負担からみた相続時精算課税制度の相対的な優位性は、改正前より高まったといえます。

暦年贈与の「持ち戻し」は3年→7年に

暦年贈与には、贈与者が亡くなった日から過去3年の間に贈与した財産に関しては、基礎控除額も含めて(基礎控除額以下でも)、相続財産に「持ち戻し」て相続税を計算しなければならない、という規定があります。相続税負担を軽くするための、亡くなる直前の駆け込み贈与を防止するのが目的です。

税制改正により、この3年が7年に延長されることになりました。つまり、贈与者が亡くなる前7年間の贈与については、基礎控除による相続財産の減額ができなくなる、ということです。

一方、相続時精算課税制度の場合は、贈与開始からのすべてを相続財産に加算しますから、そもそも「持ち戻し期間」は関係ありません。例えば、10年間贈与を行えば、10年分がすべて相続財産への持ち戻しになります。

同時に、新設される基礎控除に期間の制限などはありません。贈与者が亡くなる1年前の贈与であっても、110万円が控除されるのです。暦年贈与に比べて、最大で770万円(110万円×7年)多く相続財産を減額できることになるわけです。

暦年贈与か、相続時精算課税制度か

税(贈与税、相続税)負担の観点から、実際に2つの贈与のどちらが有利なのかは、贈与の額や期間などにより、ケースバイケースです。

暦年贈与は、基礎控除額を意識して、少額ずつ長期にわたって贈与を行えば、節税効果が大きくなります。例えば15年間贈与を行っても、相続財産に加算するのは亡くなる前7年分(改正後順次期間が延長され、7年になるのは2029年から)で済みます。

相続時精算課税制度は、今も説明したように、税制改正により相続開始まで基礎控除が適用されることになった点が魅力です。暦年贈与から始め、途中で相続時精算課税制度に切り換える、という方法もあります。

制度利用のメリット・デメリット

そもそもこの相続時精算課税制度は、親から子への早めの資産移転を促し、消費などに回してもらう、という「国策」に基づいてつくられました。 今回の改正も、そうした流れに沿ったものといえるでしょう。ただし、デメリットもあることに注意が必要です。

相続時精算課税制度のメリット

税制改正により節税の可能性が広がることに加えて、次のようなメリットがあります。

①課税を「先送り」して、一度に贈与ができる
不動産の譲渡など、何年もかけて贈与するのが困難な場合もあります。一度に生前贈与を済ませたいと考えることもあるでしょう。

とはいえ、例えば2,000万円を一度に渡す場合、暦年贈与だと585万5,000円の贈与税が発生する計算になります(直系尊属から贈与する場合)。相続時精算課税制度であれば、特別控除額の範囲内ですから、贈与税は課税されません。当座、受贈者に税負担能力がない場合でも、この制度を使えば贈与を受けることができます。

ただし、説明した通り、贈与を受けた分は、贈与者の相続の際に清算することになります。税金が「消える」わけではありません。

②将来値上がりする財産を渡すことができる
この制度を使って不動産などを贈与した場合、相続時に相続財産に加算されるのは、贈与時の評価額になります。 将来値上がりが期待できる物件を、評価の低いうちに(課税額が少ないうちに)渡すことができます。

相続時精算課税制度のデメリット

一方、デメリットとしては、次のような点が挙げられます。

①財産の価値が下落すると「損」になる
メリットの②の反対に、贈与された不動産などの時価(取引価格)が贈与時に比べて下落すると、以前の高い評価額を基に相続税を支払うことになります。現金以外のものをこの制度を使って贈与する場合には、価値の下落が起こらないか、十分注意すべきでしょう。

②「小規模宅地等の特例」が受けられない
自宅などを相続する場合に、被相続人(亡くなった人)と同居していたなど、一定の要件を満たせば、その評価額を最大8割減額できる「小規模宅地等の特例」があります。しかし、相続時精算課税制度を使って贈与を受けた家は、この特例の適用外となります。

③「居住用の3,000万円特別控除」が使えない
贈与後に子どもが実家を売却した場合に、譲渡益から最大3,000万円を控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使うことができません。

④一度、相続時精算課税制度を選ぶと、暦年贈与には変更できない

まとめ

生前贈与には、2,500万円の特別控除が活用できる「相続時精算課税制度」があります。税制改正により、24年1月から新たに基礎控除額が設けられるなど、節税の幅が広がりました。ただし、一度この制度を選択すると「暦年贈与」に変更することはできません。デメリットもありますから、事前によく確認するようにしましょう。不明な点がある場合には、相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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