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“おひとりさま”が終活で手配しておくべきこと 「死後事務委任契約」について解説

“おひとりさま”が終活で手配しておくべきこと 「死後事務委任契約」について解説

2024年3月6日

今の日本では、配偶者も子どももいない一人暮らしの高齢者が珍しくありません。日々の暮らしや健康も心配ですが、考えておきたいのは、亡くなったときのこと。例えば、死亡届の提出や遺品の整理は、誰がやってくれるのでしょうか? 今回は、おひとりさまが終活でやっておくべきこと、亡くなった後のさまざまな手続きなどを依頼できる「死後事務委任契約」を中心に解説します。

おひとりさまの終活【自分でやれること】

いわゆる終活で考えるべき課題には、身辺整理などの「自分でできること」と、「死後に誰かにやってもらなければならないこと」があります。まずは前者から確認しておきましょう。

身の回りのものを整理、断捨離する

独り暮らしの人が亡くなった場合、残された家財道具や調度品、衣類などの処分が問題になります。不要なものは、生前に整理しておきたいもの。欲しい人があれば譲ったり、価値のあるものを寄付したりすることも考えましょう。

「財産目録」を作っておく

相続はもとより、死後の手続きを進めるうえでも、亡くなった人にどんな財産がどれだけあったのか、よくわからないのでは困ってしまいます。盗難などに注意しながら、預金通帳、銀行印などの保管場所は、諸手続きを行う人にわかるようにしておきましょう。不動産や貴金属なども併せた「財産目録」を作成しておくのが理想です。

注意したいのが、ネット銀行の口座、都市銀行のWeb口座、ネット証券の株や債券の口座といった「デジタル遺産」です。パソコンやスマホのパスワードに加え、それぞれの口座にアクセスするのに必要なパスワードなどを知らなければ、外部の人間は手も足も出ません。これらの財産についても、パスワードとともにリストアップしておくことを忘れないようにしましょう。

遺言書を書いておく

自分の遺産を渡したい相手がいる場合には、遺言書(※)を残すようにします。ただ、自分で書いた遺言書に日付などの必要事項を記載し忘れたりすると、中身はすべて無効になってしまいますから注意してください。また、遺産分割以外のことを書いても、法的な効力は及びません。例えば、「死後の手続きは誰々に頼みたい」と書いたとしても、実行される保証はないのです。

※遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言書」、公証役場で公証人に作成、保管してもらう「公正証書遺言書」、自分で作成し公証役場に持っていく「秘密証書遺言書」がある。

遺言書があれば、法定相続人以外の人に財産を譲ることができます。ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分(最低限もらえる遺産の割合)があることに注意が必要です。

なお、被相続人(亡くなった人)の遺言書がない場合には、遺産は原則として法定相続分を目安に、相続人で分けられます。おひとりさまに相続人がおらず遺言書もないと、その遺産は、最終的には国庫に納められることになります。

おひとりさまの終活【誰かに依頼しておくべきこと】

次に、亡くなった自分ではできないので、生前に誰かに依頼するなど、手はずを整えておく必要のあることがらです。親族がいなかったり、いても疎遠だったりするおひとりさまの場合には、特に重要になる事前準備といえるでしょう。

手配しておくべき手続きなどには、主に次のようなものがあります。

死亡届の提出

人がなくなった場合には、市区町村役場に「死亡届」を提出しなくてはなりません。死亡後7日以内という期限があります。

葬儀の手配と納骨、埋葬

希望に沿った葬儀をしてもらうためには、信頼できる人にその旨を依頼しておく必要があります。また、火葬や埋葬にも手続きが必要です。「火葬許可証」は、「死亡届」を役所へ提出した時に窓口で交付されます。葬儀、火葬終了後、「火葬許可証」に火葬済証明印が押されたものが渡されます。これが「埋葬許可証」となります。

保険証の返却など対役所の手続き

・公的年金の受給停止の手続き
厚生年金の場合は亡くなった日から10日以内に、国民年金の場合は亡くなった日から14日以内に、年金事務所に「年金受給者死亡届」の提出を行う必要があります。日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されていれば、届出の必要はありません。

・介護保険証の返却
要介護・要支援認定を受けていた場合は、14日以内に介護保険被保険証を返却すると同時に、「介護保険資格喪失届」を提出します。

・国民健康保険証の返却
亡くなった人の住所地の市区町村に、国民健康保険証を返却します。

ライフラインなどの清算、解約

電気、ガス、水道、インターネット、携帯電話、クレジットカードなどの清算、解約手続きを行います。

家財などの処分

死亡後に残った家財などの処分、形見分けなどについても、誰にやってもらうのかを明確にしておく必要があります。

賃貸住宅や介護施設などの退去手続き

家賃や利用料の不足分があれば清算したうえで、退去の手続きを完了させなくてはなりません。

「死後事務委任契約」を結ぶという選択もある

人の死後にはやるべき手続きなどがたくさんあり、かなり「面倒くさい」ことがおわかりだと思います。通常、これらは子どもなどの親族に任されるのですが、身内に頼れないおひとりさまも多いはず。そういうときは、誰かと「死後事務委任契約」を結んでおく、という方法があります。

死後事務委任契約とは

ひとことで言えば、自分が亡くなった後に実行してほしいことがらの内容と、それをしてくれる人=「受任者」を決めておくのが、死後事務委任契約です。受任者は、親族でも弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの専門家でも、法人でもかまいません。

通常の委任契約は、依頼する人=「委任者」が亡くなれば終了します。しかし、委任契約の当事者である委任者と受任者が合意することで、自分の死後も受任者が死後事務委任契約に記載された事務を行うことが可能になるのです。

さきほど説明したように、遺言書に死後の手続きなどについて書いたとしても、法的拘束力は及びません。そうしたことがらについては、受任者を決めて死後事務委任契約を結ぶことで、実行の保障になるでしょう。

逆に、死後事務委任契約で遺産の分け方を指定したりすることはできません。おひとりさまの終活では、生前に正しい遺言書を準備し、依頼したい手続きなどを過不足なく記載した死後事務委任契約を結んでおくのがベストといえます。

何が頼めるのか?

死後事務委任契約には、すでに挙げた手続きなどのほか、例えば次のようなことも盛り込むことが可能です。

  • ・永代供養に関する事務
  • ・生命保険に関する手続き
  • ・携帯電話、パソコンなどに記録されている情報の消去
  • ・インターネット上のブログ、SNSなどの閉鎖
  • ・ペットの引き渡し

誰に頼むべきか?

死後の手続きを親族に頼む場合には、わざわざ契約を結ぶ必要性は低いと思われます。おひとりさまが受任者を選ぶとすると、現実的には知人か士業などの専門家ということになるでしょう。

頼める知人がいればいいのですが、手続きの大変さなどを考えると、ハードルが高いかもしれません。引き受け手があっても、煩雑な作業で大きな負担をかけることになるのは、承知しておかなくてはなりません。そうしたことを考えると、専門家に頼むのが、最も確実だといえます。ただし、その分報酬などのコストが高めになるのは、織り込んでおく必要があります。

また、いずれの場合にも、受任者を選ぶ際に忘れてはならないことがあります。委任者が亡くなったら、そのことをすぐに認識して、速やかに必要な手続きを行ってもらえる相手に依頼する、ということです。独り暮らしをしているおひとりさまの場合には、この点に特に注意しなくてはなりません。死後事務委任契約には、受任者には、定期的に委任者に連絡をとり、異変が生じていないかを確認する「見守り契約」がセットになっていることもあります。

死後事務委任契約の方法

では、死後事務委任契約はどのように結べばいいのでしょうか?実は契約に決まった形式はなく、たとえ口頭の約束でも成立します。とはいえ、手続きをする段階では、委任者である自分は亡くなっていますから、きちんと契約書の形にしておくべきです。

お金はかかりますが、公証役場で公正証書を作成しておけば、より安心できます。本人の死後に各種の手続きを行う際にも、公正証書があれば、よりスムーズに進むはずです。

契約で発生するコスト

死後事務委任契約を結ぶことで必要になるコストには、大きく2つあります。葬儀費用や家財などの処分費用、公正証書作成費用など、死後事務そのもので発生するものと、受任者に対する報酬です。

死後事務そのものにかかる費用は、葬儀のやり方などによって異なります。契約前に、概算をまとめておきましょう。

専門家に依頼する場合の報酬にも決まりはなく、依頼する事務の中身などによって、費用は変動します。また、専門家の場合、遺言書の作成業務や、さきほどの見守り契約などとセットでサービスを提供していることが多いのも、頭に入れておく必要があります。

受任者への支払い方法は2通り

受任者への支払いは、生前に「預託金」を預けるか、遺産から支払うかのどちらかになります。

金融機関が委任者の死亡を知ると、その口座は凍結されます。預託金は、そのために死後事務が滞ることを防ぐために預けるもので、事務にかかわる費用のほか、専門家への報酬も含まれるのが一般的です。金額はまちまちですが、数十万円~150万円程度を預けることが多いようです。死後事務を完了した後、余ったお金は故人の遺産に戻されます。

遺産から支払う場合には、遺言書を作成したうえで、受任者を遺言執行者(遺言書の内容を実現するために、必要な手続きを行う人)に指定します。遺言執行者は、単独で口座の凍結を解除することができますから、そのお金で死後事務を進めることになります。

まとめ

おひとりさまの終活では、亡くなってから必要になる手続きなどを誰に頼むのかというのが、大きな課題になります。必要に応じて、死後事務委任契約の利用などを検討しましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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