法定相続分の計算方法と注意点を徹底解説【税理士監修】

法定相続分の計算方法と注意点を徹底解説【税理士監修】
最終更新日:2026/06/19
この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
相続が発生した際、「法定相続分」の正確な計算方法を理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。法定相続分は相続人それぞれが相続できる割合を定めた重要な基準で、遺産分割協議や相続税の計算に欠かせません。本記事では、法定相続分の基本概念から具体的な計算方法、実務上の注意点まで分かりやすく解説します。

法定相続分とは?基本と役割

法定相続分は民法(900〜902条)が定める遺産の取得割合で、遺産分割協議の基準・相続税計算の基準として機能します。ただし強制的な割合ではなく、遺言や相続人全員の合意があれば異なる分割も可能です。法定相続分・指定相続分・協議分割の優先順位と、それぞれが使われる場面を整理します。

法定相続分の意味と民法上の位置づけ

法定相続分とは、民法(900〜902条)で定められた、相続人が取得できる遺産の割合です。遺言がない場合の遺産分割協議の基準であり、相続税の総額計算にも使われます。ただし強制的な割合ではなく、相続人全員の合意があれば異なる分割も可能です。

法定相続分が使われる3つの場面

法定相続分が適用される主な場面は3つあります。①遺産分割協議における話し合いのスタートラインとして使われるケース、②家庭裁判所での調停・審判において判断基準になるケース、③相続税の総額を算出する計算基準として使われるケースです。相続税計算では、まず全員が法定相続分で相続したと仮定して税額の合計を出し、その後に実際の取得割合で各人に按分するという二段階の仕組みになっています。

法定相続分・指定相続分・協議分割の優先順位

法定相続分(法律が定める割合)・指定相続分(遺言で指定された割合)・協議分割(相続人全員の合意による分割)の3つは優先順位が異なります。遺言がある場合は指定相続分が優先されますが、遺留分(後述)を侵害する内容は修正されることがあります。遺言がなく協議がまとまらない場合に、法定相続分が判断の基準となります。

法定相続人の範囲と順位

配偶者は常に相続人となり、血族相続人には「子・孫など直系卑属(第1順位)→父母・祖父母など直系尊属(第2順位)→兄弟姉妹(第3順位)」の優先順位があります。上位順位者がいれば下位順位者は相続人になりません。血縁があっても相続人にならないケース(内縁・連れ子など)や、相続放棄・欠格・廃除で相続権を失うケースも押さえておく必要があります。

第1順位:子・孫など(直系卑属)と代襲相続

第1順位は子・孫など直系卑属(自分より下の世代の直系血族)です。実子と養子は区別なく同等の相続権を持ちます。子が被相続人より先に死亡している場合は、その子の子(孫)が代わりに相続します(代襲相続)。この代襲相続は直系卑属に限り何代でも続きます。

第2順位・第3順位とそれぞれの代襲相続

第2順位は父母・祖父母など直系尊属(自分より上の世代の直系血族)で、子がいない場合に相続人となります。父母の両方が存命なら両方が、父母が亡くなっていれば祖父母が相続人になります。第3順位は兄弟姉妹で、子も直系尊属(父母・祖父母など)もいない場合に相続人になります。兄弟姉妹が先に死亡していればその子(甥・姪)が代襲相続しますが、代襲は一代限りで甥・姪の子には及びません。

法定相続人にならないケース

内縁の配偶者・離婚した元配偶者・養子縁組をしていない連れ子(継子)は、法定相続人にはなりません。民法が法律婚主義を採用しているため、婚姻届のない内縁関係は相続権が生じません。なお、離婚した元配偶者との間の子は相続人になります。連れ子に相続させたい場合は、生前に養子縁組をするか遺言で遺贈する方法があります。

相続放棄・相続欠格・相続廃除の影響

相続放棄・相続欠格・相続廃除により相続権を失うケースもあります。相続放棄は相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、放棄した人は「初めから相続人ではなかった」ものとみなされます。相続欠格は遺言書の偽造・変造など重大な非行があった場合に法律上当然に相続権を失う制度、相続廃除は被相続人が家庭裁判所に申請して虐待・侮辱などを理由に相続権を奪う制度です。いずれの場合も残りの相続人で法定相続分を再計算することになるため、まず正確な相続人の確定が必要です。

法定相続分の割合と計算方法

相続人の組み合わせごとの割合を一覧で確認したうえで、基本3パターンと代襲相続が発生するケースの計算例を示します。相続税の計算では実際の分割内容に関わらず法定相続分を基準に総額を算出する仕組みになっており、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例との関係も重要です。

法定相続分の割合一覧

法定相続分の割合は、相続人の組み合わせによって次のように定まっています(国税庁No.4132)。同順位の相続人が複数いる場合は均等割りが原則です。

相続人の組み合わせ 配偶者 その他の相続人
配偶者+子 1/2 子全体で1/2(均等割り)
配偶者+直系尊属(父母・祖父母など) 2/3 直系尊属全体で1/3(均等割り)
配偶者+兄弟姉妹 3/4 兄弟姉妹全体で1/4(均等割り)
配偶者のみ 全部 -
子のみ - 子全体で全部
直系尊属(父母・祖父母など)のみ - 直系尊属全体で全部
兄弟姉妹のみ - 兄弟姉妹全体で全部

兄弟姉妹に全血(両親が同じ)と半血(片親のみ同じ)が混在する場合、半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の1/2になります(民法900条4号ただし書)。

ケース別計算例

自分のケースに近い例で具体的な金額を確認してください。

ケース1:配偶者と子2人(遺産総額6,000万円)

  • 配偶者:3,000万円(1/2)
  • 子1:1,500万円(1/4)
  • 子2:1,500万円(1/4)

ケース2:配偶者と父母(遺産総額3,000万円)

  • 配偶者:2,000万円(2/3)
  • 父:500万円(1/6)
  • 母:500万円(1/6)

ケース3:配偶者と兄弟姉妹2人(遺産総額4,000万円)

  • 配偶者:3,000万円(3/4)
  • 兄:500万円(1/8)
  • 姉:500万円(1/8)

ケース4:代襲相続が発生するケース(遺産総額6,000万円)
相続人:配偶者・長男(死亡)・長男の子2人・次男。長男が被相続人より先に死亡しているため、長男の子(孫)2人が長男の相続分を引き継ぎます。

  • 配偶者:3,000万円(1/2)
  • 長男の子1:750万円(1/8)
  • 長男の子2:750万円(1/8)
  • 次男:1,500万円(1/4)
監修者

徳永 圭

記事監修者からのワンポイントアドバイス

上述にある通り法定相続分の計算はいたってシンプルです。よって、法定相続人が誰になるのかが分かればそれほど難しいものではありません。ただし、その「法定相続人」が誰なのか?が少し複雑であり、注意が必要です。昨今様々な家族の形が存在し、よくあるモデルケース通りに法定相続人が決まる事ばかりではなくなりました。離婚・再婚率の上昇に伴う連れ子(継子)の存在、配偶者とは別の異性との間に出来た子(婚外子)、内縁関係の配偶者、家族関係悪化による相続放棄、欠格・廃除事由の有無など法定相続人を確定させる上で注意すべき点がいくつかあります。ご自身の置かれている状況をよく確認し、証拠資料を集めて法定相続人が誰なのかを正確に把握しましょう。

相続税と法定相続分の関係

相続税の計算では、実際の遺産分割の内容に関わらず、いったん全員が法定相続分で取得したと仮定して税額の合計(相続税の総額)を算出します。その後、実際の取得割合に応じて各人に按分します。この仕組みにより、遺産分割の方法が違っても相続税の総額は変わりません。

配偶者が相続する場合は「配偶者の税額軽減」により、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。また、自宅の土地を相続する場合は「小規模宅地等の特例」で330㎡まで80%の評価減が受けられます。これらの特例は申告要件があるため、詳細は相続専門の税理士への相談をお勧めします。

計算で注意すべきポイント

実務では法定相続分がそのまま使われないケースの方が多いのが実態です。遺言による指定相続分、相続人全員の合意による協議分割、寄与分・特別受益による調整、遺留分の請求など、法定相続分を修正する制度が複数あります。それぞれの計算方法と、トラブルを招きやすい落とし穴を整理します。

指定相続分・協議分割が優先される場合

法定相続分より優先されるルールが2つあります。①被相続人が遺言で相続分を指定している場合(指定相続分)、②相続人全員の合意がある場合(協議分割)です。

協議分割は相続人全員の合意が必要で、合意内容は遺産分割協議書として書面化し、全相続人が署名・押印します。遺産分割協議のやり直しや代償分割による金銭の授受は、贈与税の課税リスクを生じさせることがあるため、事前に税理士など専門家への相談をしてください。

寄与分がある場合の計算方法

寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に認められる制度で、介護・事業手伝い・財産管理などが該当します。寄与分がある場合、遺産から寄与分を差し引いた残りを法定相続分で按分し、貢献した相続人にはその分を上乗せします。

計算例:遺産総額6,000万円、配偶者と子2人、長男の寄与分1,000万円

  1. みなし相続財産:5,000万円(6,000万円-1,000万円)
  2. 法定相続分での分割:配偶者2,500万円、子それぞれ1,250万円
  3. 長男の最終取得額:2,250万円(1,250万円+1,000万円)

特別受益がある場合の計算方法

特別受益とは、相続人が被相続人から受けた遺贈や、結婚・独立のための生前贈与(住宅資金援助・事業資金提供など)のことです。特別受益がある場合は遺産に受益額を加算した「みなし相続財産」で按分し、受益者はその分を差し引いた金額を取得します。

計算例:遺産総額5,000万円、配偶者と子2人、長女の特別受益1,000万円

  1. みなし相続財産:6,000万円(5,000万円+1,000万円)
  2. 法定相続分での分割:配偶者3,000万円、子それぞれ1,500万円
  3. 長女の最終取得額:500万円(1,500万円-1,000万円)

遺留分との違いと混同注意

遺留分は、配偶者・子・直系尊属(父母・祖父母など)に対して法律上保障された最低限の相続分です。法定相続分とは異なる概念なので混同しないよう注意してください。兄弟姉妹には遺留分は認められません。

遺留分の割合は、直系尊属(父母・祖父母など)のみが相続人の場合は法定相続分の1/3、それ以外の場合は法定相続分の1/2です。遺留分を侵害する遺言がある場合や生前贈与により遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は相続開始を知った時から1年以内に遺留分侵害額請求を行うことができます。遺言作成時は遺留分への影響を必ず確認し、事前に専門家に相談することをお勧めします。

監修者

徳永 圭

記事監修者からのワンポイントアドバイス

法定相続分と異なる協議分割を行う場合、相続財産が増えるわけではないので、法定相続分と比較して得する人・損する人が発生します。被相続人に対する貢献(寄与分)や生前に与えられた利益(特別受益)については客観性を持たせることが難しく、話し合いで解決することが困難となる状況も出てきます。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判を受けることとなり、時間・体力・心が消耗します…。自分がいなくなった後、相続人同士が争うことを喜ぶ人はいません。このような事態を避けるためには、生前の準備が重要です。遺留分を配慮した上で、寄与分・特別受益その他もろもろの事情を反映させた遺言書を作成しておけば、当該遺言書に沿った相続が行われ、争いが避けられるのでおススメしています。

よくある質問(Q&A)

相続放棄・内縁の配偶者・胎児の扱いなど、法定相続分の計算でよく出る疑問をまとめました。

Q1:相続放棄をした人がいる場合、法定相続分はどうなりますか?

相続放棄した人は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、残りの相続人で法定相続分を再計算します。配偶者と子2人のうち1人が放棄した場合、配偶者1/2・残る子1/2となります。

Q2:内縁の配偶者に財産を残したい場合はどうすればよいですか?

内縁の配偶者は法定相続人ではないため、遺言による遺贈が必要です。法定相続人の遺留分を侵害しないよう注意してください。生命保険の受取人指定も有効な方法の一つです。

Q3:胎児は相続人に含まれますか?

胎児は相続については既に生まれたものとみなされ、相続人に含めて計算します。ただし死産の場合は遡って相続人ではなかったことになるため、再度計算し直します。


まとめ

法定相続分は相続の出発点ですが、遺言・協議分割・寄与分・特別受益・遺留分によって実際の取り分は大きく変わります。まず相続人を正確に確定し、自分のケースに当てはまる割合を割り出すことが最初のステップです。相続人の構成が複雑な場合や不動産・自社株など評価が難しい財産がある場合、また相続税の申告が必要な場合は、早めに相続専門の税理士へ相談することで、節税機会の見落としやトラブルを防ぐことができます。

相続財産センターでは、相続に精通した税理士を無料でご紹介しております。相続税の申告から遺産分割の税務アドバイスまで幅広くサポートします。相続に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
大学で財務会計ゼミに入ったことがきっかけとなり税理士資格を取得。総合不動産会社、不動産証券化(SPC)特化型事務所、総合会計事務所を経て令和へ年号が変わるとともに開業。これまでの職歴から不動産周りの税務会計、資産税(相続)に強みがあります。

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この記事の執筆者
相続財産センター編集部

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