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故人への還付金などを受け取ると、相続放棄が認められなくなる!?知っておきたいリスクを解説

故人への還付金などを受け取ると、相続放棄が認められなくなる!?知っておきたいリスクを解説

2024年5月8日

被相続人(亡くなった人)が大きな借金を抱えていた場合などには、相続人がそれを背負い込まないために、相続放棄の手続きを取ることがあります。ただ、相続放棄には要件があり、例えば被相続人の財産を一部でも取得したりすると、認められなくなります。では、被相続人の死後に支給される公的保険の還付金や年金などの扱いはどうなるのでしょうか?注意点をまとめました。

相続放棄とは

「マイナスの財産」も相続の対象

相続が発生すると、相続人に遺産の分割が行われますが、残したものは経済的にプラスの財産ばかりとは限りません。被相続人が借金などの「マイナスの財産」を抱えていた場合には、相続人はそれも受け継ぐ必要があり、もしマイナスがプラスを上回っていた場合には、相続で損害を被ってしまいます。

こうした場合に使えるのが、相続放棄という制度です。家庭裁判所にその旨の「申述」を行い、認められればマイナスの財産を引き継がなくてすむのです。

相続放棄にはNG行為がある

ただし、この制度は、マイナスの財産だけでなくプラスの財産についても「放棄」することを前提としていることに、注意が必要です。相続財産を隠したり消費したりした場合には、相続放棄は認められません。認められた後にそうした行為が発覚すると、相続放棄が取り消されることもあります。被相続人の預貯金の解約や不動産の譲渡といった財産の処分行為も同様です。相続放棄しようと思ったら、被相続人の財産には一切手を付けないのが鉄則なのです。

亡くなってから支払われる還付金や年金の受け取りは

被相続人の預金を引き出して使えばアウト、というのはわかりやすいでしょう。ただ、死後に支払われる還付金や未支給年金など、受け取ってもいいお金なのか、判断に迷うものもあります。

結論を言えば、これらには、相続放棄をするならば受け取ってはいけないものと、受け取れるものがあります。判断基準は、「被相続人の財産に含まれるか・含まれないか」です。当然、前者であれば受け取ることはできません。個別にみていきましょう。

国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料の還付金⇒受け取り×

被相続人が亡くなったタイミングによって、健康保険や介護保険などの保険料の払い過ぎが生じることがあります。その場合には過払い分が役所から還付(返金)されることになりますが、これはあくまでも被相続人が払い過ぎた保険料ですから、その財産とみなされます。相続放棄する場合には、受け取ることができません。

高額療養費の払戻し⇒受け取り×

国民健康保険には、医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される高額療養費の制度があります。死亡時に入院していて、この制度の対象になるケースも多いと思いますが、この還付金はやはり被相続人の財産とされ、受け取ることはできません。

所得税、住民税などの還付金⇒受け取り×

被相続人に所得税などの税金の還付があった場合にも、それは被相続人の財産とされます。

未支給年金⇒受け取り○

公的年金(国民年金、厚生年金保険)は、2カ月分の「後払い」となっているため、年金受給者が亡くなった時点で受け取っていない年金が発生します。これを未支給年金といいます。

この未支給年金は、1995年11月7日の最高裁判決で、その相続性(相続財産であること)が否定されました。相続財産ではなく、相続人の固有財産とみなされるため、受け取っても相続放棄に問題はありません。

遺族年金⇒受け取り○

国民年金や厚生年金の被保険者が死亡した際に、その配偶者や子どもに対して支払われるのが遺族年金です。遺族年金は、公的年金の被保険者だった被相続人の死亡により、受給対象となる相続人に支払われるものです。被相続人の財産ではなく、相続人の固有財産とみなされるため、相続放棄しても受け取ることができます。

企業年金、個人年金の未支給分⇒受け取り×

一方、同じ「年金」でも、企業が原資を拠出して従業員の退職後に給付する企業年金や、個人年金の未支給分は、被相続人の財産とされ、相続放棄する場合には受け取ることができません。

生命保険金(自分が受取人になっている場合)⇒受け取り○

被相続人の死亡によって支払われる生命保険金は、受取人の固有の財産とされます。相続放棄をする人が受取人に指定されている場合、保険金を受け取っても問題ありません。

生命保険金(被相続人が受取人になっている場合)⇒受け取り×

しかし、被相続人自身が受取人の場合には、保険金は被相続人の財産となり、受け取ることはできません。

就業規則で遺族が受取人に指定された死亡退職金や未払い給与⇒受け取り○

被相続人が勤めていた会社の就業規則で、「死亡退職金や未払い給与については、遺族を受取人とする」と定めている場合には、これらは遺族の固有の財産とされ、相続放棄しても受け取れます。

就業規則で被相続人が受取人に指定された死亡退職金や未払い給与⇒受け取り×

一方、被相続人が受取人になっている場合には、やはり相続財産となるため、受け取ることはできません。

就業規則に明確な定めがないこともあるため、相続放棄しても受け取れるかどうかは、従来の会社の慣習なども踏まえて、慎重に判断する必要があるでしょう。

香典⇒受け取り○

香典は、遺族(喪主)に対して贈られたものと考えられるため、相続財産には当たりません。相続放棄しても受け取ることができます。

墓や仏壇⇒受け取り○

先祖代々の墓や仏壇などは、「祭祀財産」とされ、「祖先の祭祀を主催すべき者が承継する」という民法の規定があります。その立場にある人ならば、相続放棄しても受け継ぐことができます。

「受け取り×」の財産を受け取ってしまったら

とにかく手を付けない

相続放棄を考えていたり、すでに手続きを行っていたりしたにもかかわらず、ミスや誤解から、還付金などを受け取ってしまうことがあるかもしれません。その場合には、使うのはもちろん、口座を移動させるような行為も厳禁です。財産には手を付けず、相続に詳しい弁護士、税理士などの専門家に相談し、サポートを仰ぐようにしましょう。

あえて付け加えれば、相続財産の一部を受け取っていることが裁判所に知られないまま、相続放棄が認められることもありえます。ただ、被相続人の負債が大きい場合、資金回収の機会を失う債権者が、相続人の調査を行う可能性があります。そこで問題が発覚すると、最悪の場合、相続放棄が取り消されるかもしれません。そうしたリスクは、避けるのが賢明でしょう。

相続放棄する前に専門家に相談を

相続放棄には、これ以外にも、例えば一度認められると自分からは撤回できない、自分が相続放棄すると、次の順位の親族に相続権が移る可能性がある、といったさまざまな注意点があります。放棄したいと思ったら、まず専門家に相談することをお勧めします。

相続放棄と注意点については「被相続人の負債は「相続放棄」でチャラに でもそこには、大きなリスクも|今知りたい!相続お役立ち情報 (all-senmonka.jp)」をご覧ください。

まとめ

相続放棄を考える際には、故人が加入していた公的保険の還付金をはじめ、受け取ることができないものがあるのに、注意しなくてはなりません。誤って受け取っていた場合には、財産に手を付けず、専門家に相談するようにしてください。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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