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亡くなった人の“電子マネー”は、相続の対象になるのか

亡くなった人の“電子マネー”は、相続の対象になるのか

2024年5月22日

買い物の支払いの手段として、「PayPay」「Suica」といったいわゆる電子マネーが、広く普及しました。ところで、亡くなった人の電子マネーに残高があった場合、それは相続の対象になるのでしょうか? 注意すべき点も併せて解説します。

電子マネーとは

対象になるのはプリペイド型電子マネー

電子マネーとは、名前の通り「現金の代わりに使える電子データ化されたお金」のことです。カードやスマートフォンで決済可能で、電子マネーの発行元により、「交通系」「流通系」「クレジットカード系」「QRコード/バーコード系」などに分類されます。

また、電子マネーには次の3つの支払い方式があります。

①プリペイド(前払い)型:事前に現金をチャージし、その残高の範囲内で利用できる
②ポストペイ(後払い)型:クレジットカードと連動させ、使用金額が後日決済される
③デビット(即時払い)型:利用と同時に、決済額が銀行口座などから引き落とされる

このうち、今回の記事に関係するのは、生前に現金がチャージされていた①のプリペイド型の電子マネーです。②と③に関しては、相続発生時に、故人の財産として認められるような経済的な価値がそもそも存在しません。

100万円単位の残高がある可能性も

このプリペイド型電子マネーのチャージ金額には、それぞれ上限額が定められています。交通系、流通系などの場合、一般的には2万円~5万円となっており、上限が5万円の場合でも、一度にチャージできるのは4万9,000円以下に設定されているのが普通です。このような取引の際、5万円以上だと印紙税(契約書や領収書などの経済的な取引に伴って作成した書類に課せられる税金)が課せられるからです。

他方、「PayPay」が200万円、「LINE Pay」は100万円のように、条件に応じて高額のチャージ上限額が設定されているケースもあります。「電子マネーへのチャージ金額など、大したことはないだろう」という思い込みは、捨てたほうがいいでしょう。

電子マネーの残高は相続の対象に

「相続の対象外」→「払戻しに応じる」という流れ

以上を踏まえて、故人の残した電子マネーが相続の対象になるのかどうかを述べていきたいと思いますが、実は電子マネーの相続の際の扱いについては、まだ法律などが未整備の状況にあります。具体的な対応は、各社に任されているのが現状なのです。

こうした中、以前は、被相続人(亡くなった人)が生前にチャージしていたお金は「一身専属性」(特定の者のみに帰属し、他者に移転しない性質の権利)のものであり、相続の対象にはならない、すなわち相続人から支払いの請求があったとしても応じられない、というのが電子マネー各社のスタンスでした。

実際、「2019年時点の情報」という但し書きのある記事には、電子マネーは「契約するのはその人だけで、相続や譲渡には応じないルール。100万円近くある残高であっても、持ち主が死んでしまったら使う権利が露と消えてしまう」という指摘があります。契約書にも、そのような内容が明記されていたわけです。

しかし、そうした対応には消費者保護の観点から疑問の声も高まり、各社の対応も変化しました。それを決定づけたのが、QRコード系電子マネーの最大手「PayPay」の21年1月15日の利用規約改定でした。それまでの「払戻し不可」の姿勢を変え、自社の電子マネーが相続ないし継承可能なことを、次のように明文化したのです。

「利用者に相続が発生し、利用者のPayPay残高アカウントに(略)残高が残っていた場合、当社は当社所定の方法に基づき、法令に定める例外事由等を考慮の上、当該利用者の保有するそれらの残高を正当に相続または承継すると当社が確認した者に対し、振込手数料を控除した額を振り込みます。」

現在は、大半の会社が、このように「被相続人の電子マネーの残高は、相続人への支払いに応じる」という基本姿勢に転換しています。

不明な場合は、問い合わせを

ただ、中には例外もあります。流通系電子マネーの「nanaco」は、22年11月15日に、やはり利用規約の改定を行い、それまでの「会員が死亡した場合には、会員資格は喪失され、(略)nanacoカード内残高およびセンター預り残高はゼロとなり、また、現金の払戻しも行われません。」という条文を削除しました。改定の理由を「実態との齟齬を修正するため」としていますが、一方で相続人への払戻しなどについては、明文化されていません。

また、引き続き「利用者の死亡により権利が消滅する」という内容の規定を掲げている会社も残っています。

しかし、このようなケースでは、残高の相続人への払戻しなどがまったく望めないのかというと、そんなことはありません。そうした会社の多くも、規約を盾にとって話し合いにも応じないというのではなく、「相続人から申し出があれば、個別に対応する」という姿勢のようです。特にチャージ金額が多額の場合には、諦めずに問い合わせてみるべきでしょう。

最初に述べたように、まだ歴史の浅い電子マネーに関しては、法律や各社の規約の整備が実情に追いついていない面があります。全体的な流れを見れば、「被相続人がチャージした電子マネーは、相続の対象」という方向で、ルールが統一されていくのではないでしょうか。

払戻しの手続きに必要なもの

電子マネーの払戻しには、どのような手続き、書類が必要になるのでしょうか? 以下は「Suica」の例です。

以下の必要書類1、2を「サポートセンター」に郵送後、指定されたネット上の「申請フォーム」に入力する。

書類1 会員本人の死亡を証明する公的機関発行の書類(写し可)1点
・死亡診断書
・死亡届記載事項証明書 等

書類2 返金を受けようとする方の本人確認書類(写し可)1点
・旅券(パスポート)の写真付きページ
・運転免許証等
・在留カード
・特別永住者証明書・特別永住者証明書
・外国人登録証明書(在留の資格が特別永住者のもの)
・個人番号カード(写真付き)
・官公庁・特殊法人等が発行した写真付き身分証明書

参照:死亡した会員の退会(払いもどし)手続きを知りたい。 | モバイルSuica よくあるご質問:JR東日本 (mobilesuica.com)

「PayPay」をはじめ、具体的な払戻し方法などを公開していない会社も多くあります。詳細は、各社にお問い合わせください。

電子マネーの相続で注意すべきこと

故人の電子マネーが、相続税の課税対象になるかも

このように、現在では、故人の残した電子マネーはほとんどの場合、親族による払戻しなどができるようになっています。それは嬉しいのですが、注意すべき点もあります。相続できる、すなわち相続財産になるということは、そこに相続税が課税されるかもしれない、ということです。

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額があり、相続財産(遺産)がこれを超えると、超えた金額に課税される仕組みになっています。被相続人の電子マネーの残高も、その相続財産に忘れず加算しなくてはなりません。そのうえで、総額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納税が必要になるわけです。

申告の際、他の財産同様、意図的に隠したりするのはもちろん、被相続人が電子マネーを利用していたことを知らなかったり、相続財産への加算は不要だと勘違いしていたりしていた場合にも、税務署は見逃してはくれません。後日、税務調査が行われ、その事実が発覚すれば、追徴課税(※)の対象になりますから、要注意です。

※追徴課税 申告した税額が本来支払うべき税額より少なかった場合に、その差額分と延滞税や加算税を合計した税額を徴収されること。

なお、電子マネーの残高は、相続財産としては現金と同等(残高が10万円なら10万円)に評価されます。不動産などのように、あらためて財産価値を評価する必要(余地)はありません。

故人の電子マネーが把握できない

ここまで説明してきたことは、「被相続人がどの電子マネーを利用していたのか」「残高はいくらあるのか」が明確になっている状態を前提にしています。ところが、現実には、相続人がそうしたことを把握できず、相続に支障をきたす事態も生まれています。電子データの悪用を防ぐためのセキュリティ対策が、“壁”になってしまうのです。

故人の電子マネーの「ありか」を知るためには、次のような手段が考えられます。

・所有していたカードを調べる
・銀行口座の入出金を調べる
・パソコンやスマホのアプリをチェックする
・同じくメールの内容をチェックする

そのようにして、故人が使っていた電子マネーを突き止めることができれば、必要な手続きを取って残高などを知ることが可能になるかもしれません。しかし、そもそもパソコンやスマホのロックを解除できなければ、相続人にはどうすることもできません。

この問題に対処する責任は、被相続人の側にあるといっていいでしょう。PCやスマホには、電子マネー以外にもネット銀行の口座をはじめとする「デジタル遺産」が残されることがあります。相続人が困ることのないよう、ロックを解除するためのID、パスワードなどをエンディングノートに記載しておく、といった対策を講じておくべきです。

詳しくは「相続の盲点「デジタル遺産」のリスクと対策とは? “アクセス不能”でも相続税の課税対象に!?」をご覧ください。

まとめ

被相続人が利用していた電子マネーの残高は、基本的に相続することができます。相続税がかかる場合には、「申告漏れ」にならないように注意しましょう。相続人が困らないよう、被相続人の生前の準備も重要です。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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