相続税の税務調査は“忘れた頃”にやってくる!? 狙われやすい財産、申告漏れのペナルティを徹底解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

亡くなった親の財産分与を済ませ、相続税の申告・納税を終えて何ごともなく過ごしていたのに、突然税務署から「調査」の連絡が来た。相続税の発生する相続では、そういう可能性が誰にもあります。間違いの起こりやすい財産や、申告に問題があった場合のペナルティ、調査になった際の対処法などについて解説します。

そもそも税務調査とは

相続税の税務調査は、申告書の記載内容に誤りがある場合、申告書に記載されていない財産の存在が疑われる場合などに行われます。相続税に限らず、調査には大きく次の2つがあります。

税務署の行う「任意調査」

通常、税務調査といわれるのは、その地域を管轄する税務署が行う任意調査です。「任意」ではありますが、正当な理由なく拒否することはできません。調査になった場合には、誠実に対応する必要があります。

調査対象になると、事前に税務署から連絡(「事前通知」の電話)が来ます。税理士を通して申告していれば、その税理士に連絡の入るのが普通です。調査の日時などは、協議のうえ決定します。

なお、税務署の調査官が被相続人の自宅などにやってきて行う調査を「実地調査」といいます。これ以外に、⽂書、電話によるやり取りや、税務署での⾯接による「簡易な接触」が行われることもあります。

国税局の行う「強制調査」

悪質な隠ぺいや申告書の改ざん、高額な脱税などが疑われる場合には、各地の税務署を統括する国税局査察部(マルサ)による強制捜査になることもあります。テレビドラマなどでもおなじみですが、そこまでいくのはレアケース。ここでは、任意調査について説明していきます。

相続税の税務調査はいつ来るのか

通常は申告から1~2年後

これも相続税に限りませんが、税務署は申告してすぐにやってくるわけではありません。相続税では、調査が行われるのは「申告から1~2年後」というのが目安とされています。1周忌も終えて、さまざまなことに心の整理がつきかけた段階で、税務署から連絡が来るということです。

相続税の時効は5年

逆にいえば、申告から2年を経過すれば、税務調査はほぼ行われないことになります。ただし、100%安心できるかというと、そうともいえません。

相続税にも時効があって、「相続税の申告期限(相続発生を知ったときから10ヵ月)から5年」となっています。この期間には、調査の行われる可能性が残ります。時効を過ぎれば、仮に税務署が申告漏れを把握したとしても、後述するような追徴などはできなくなります。ただし、悪質な財産隠しなどがあった場合には、時効は7年まで延びます。

注意すべき故人の預貯金

税務署は「証拠」を固めて調査に入る

このような税務調査は、決して闇雲に行われるわけではありません。調査にも労力、コストを必要としますから、税務署は「申告漏れの可能性が高い案件」=「多額の追徴課税が見込める事案」に、ある程度ターゲットを絞ってやってくるのです。

税務署は、KSK(国税総合管理システム)というネットワークを備えていて、被相続人(亡くなった人)の過去の申告内容や所得情報などを確認することができます。また、被相続人だけでなく、相続人の預貯金口座の情報を金融機関に照会・調査する権限があり、必要に応じて過去10年に渡るデータを入手したうえで、調査を行います。近年、生成AIの活用により、財産の捕捉などの精度はさらにアップしているともいわれます。

ちなみに、国税庁の「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によると、同年度(2024年7月~25年6月)の実地調査の件数は約9,500件で、そのうちの82.3%で申告漏れなどの「非違」が指摘されています。つまり、税務署が調査に来たら8割以上は“クロ”になる、ということです。

指摘されやすい「名義預金」

では、被相続人のどんな財産が問題になりやすいのでしょうか?

2024年7月〜2025年6月(令和6事務年度)の国税庁の発表資料によると、申告漏れなどを指摘された財産の内訳は、「現金・預貯金等」が62.9%を占め、以下「有価証券」14.2%、「土地」「家屋」が合わせて3.8%となっています。預貯金などの比率が高い状況は、ずっと変わっていません。相続税の申告で税務署から多く指摘されているのは、不動産や株などではなく、「現金まわり」なのです。

さきほども触れたように、税務署は相続の関係者の預貯金口座の中身を“丸裸”にしています。被相続人の通帳を隠しても、あるいは相続人の誰もその存在を知らなかったとしても、彼らは把握している可能性が高いわけです。

預貯金で特に気をつけたいのが「名義預金」です。典型的なのが、被相続人が子どもや孫名義の口座を作って、いつかは渡すつもりでそこに積み立てていた、というパターン。通帳やキャッシュカードを被相続人が管理していて、子どもなどは自由に使えない、あるいは口座の存在自体を知らなかったケースです。

この場合、口座に貯められたお金は、実質的に被相続人の財産とみなされ、相続の際には相続財産に加えなくてはならない点には、注意が必要です。そこを誤解していると、税逃れの意図がなかったとしても、次のような申告漏れのペナルティを科される可能性があります。

相続税の申告漏れのペナルティは

税金の申告をしなかったり、申告額が納めるべき納税額より少なかったりした場合には、本来納付する必要のある税額に加えて、「加算税」などのペナルティの対象になることがあります。

申告後に税務調査が行われ、例えば名義預金を相続財産に加えていなかったなどの申告漏れを指摘された場合には、次のような加算税が課せられます。

■過少申告加算税

税率は10%です。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額か、もしくは50万円のいずれか多いほうの金額を超えている場合、その超えている部分については15%が課せられます。

■重加算税

一方、財産を隠したり、申告書を偽造したりして、納税額を故意に減らそうとした行為が発覚した場合には、さらに重く原則35%の税率が課せられます。悪質な脱税を行うと、刑事罰の対象になることもあります。

また、いずれの場合にも、相続税の納付期限の翌日から、「延滞税」が課税されます。「相続税の税務調査は申告から1~2年後がめど」といいましたが、この期間が長いほど納税額が上がっていくことになります。

延滞税の税率など、詳しくは
No.9205 延滞税について|国税庁

税務調査の通知が来たら

では、税務署から税務調査の連絡が来たら、どのように対処するのがいいのでしょうか?

まずは税理士に相談する

通常の税務調査では、税理士の同席が認められています。税務署から直接連絡が入った場合には、自分で対処しようとせず、まずは申告を依頼した税理士に連絡しましょう。

自分で申告を行っていたり、申告した税理士の対応に不安を感じたりするときには、あらためて相続税の税務調査に強い税理士を探すようにします。ホームページなどの情報を参考にする際には、これまでの実績を確認するのが大事です。信頼できる税理士紹介会社を使うのも1つの方法です。

税務調査のNG行為

調査では、調査官のいいなりになる必要はありません。ただし、嘘をついたり、事実を隠したりするのはやめるべきです。

繰り返しになりますが、相手は被相続人の生涯の所得や、相続人との間のお金の流れなどを掴んだうえで調査に来ます。口座に入れない「タンス預金」ならバレないだろうと工作した結果、それが見つかって重加算税を課せられた、といった話は決して例外ではないのです。

被相続人の配偶者が財産の隠蔽などを行うと、加算税の対象になるだけでなく、相続税の配偶者控除(※)を取り消されるようなこともありえます。調査になったら、税理士のアドバイスに従いながら、きちんと対応するようにしましょう。

※相続税の配偶者控除 配偶者が相続で取得する遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」までは、相続税が課税されない制度。

まとめ

相続税の税務調査は、通常申告から1~2年後をめどに行われます。問題になりやすいのは、被相続人の預貯金です。税務署に指摘を受けることのないよう、申告に万全を期すとともに、万が一税務調査の対象になった場合には、税理士に依頼してきちんと対応するようにしましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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