【2026年最新】令和8年度の税制改正により何が変わる?個人・企業のポイントを解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

2026年は「令和8年度税制改正」がスタートする年です。物価高への対応として基礎控除等を物価に連動させて引き上げる仕組みが新設され、所得税の「年収の壁」が178万円相当に引き上げられます。あわせて、住宅ローン控除の拡充、NISAの拡充、企業向けの大胆な設備投資促進措置、賃上げ促進税制の見直し、インボイス制度の経過措置の延長、自動車税環境性能割の廃止、国際観光旅客税の引上げなど、個人・企業ともに幅広い改正項目が並びます。本記事では、財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日 閣議決定)をベースに、個人と企業のポイントを中立的に整理します。なお、適用時期や具体的な要件は項目ごとに異なるため、個別の判断は税理士など専門家への相談をご検討ください。

2026年(令和8年度)の税制改正とは?何が変わったのか

令和8年度税制改正の全体像と背景

令和8年度税制改正の大綱は、令和7年12月26日に閣議決定されました。柱は大きく次の4つです。

・物価高への対応:物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設、所得税の課税最低限を178万円まで特例的に引き上げ

・「強い経済」の実現:大胆な設備投資の促進税制、研究開発税制の強化、賃上げ促進税制の見直し

・税負担の公平性の確保:極めて高い水準の所得への適正化見直し

・自動車関係諸税の見直しと国際観光旅客税の引上げ:環境性能割の廃止や軽油引取税の「当分の間税率」廃止など

あわせて、防衛力強化のための財源として「防衛特別所得税(仮称)」が令和9年から創設される予定です。

個人・企業が影響を受ける主要な変更点

個人に影響が大きい改正と、企業(特に中小企業)に影響が大きい改正を、ざっくり押さえると次のとおりです。

・個人:所得税の基礎控除引上げ=「年収の壁178万円」、住宅ローン控除の拡充、NISAの拡充(0〜17歳のつみたて投資枠)、教育資金一括贈与の非課税措置の終了、ひとり親控除の引上げ

・企業:大胆な設備投資促進税制の創設、研究開発税制の拡充(戦略技術領域型)、賃上げ促進税制の段階的見直し、インボイス2割特例の終了と個人事業者向け3割特例の創設、免税事業者からの仕入の経過措置の延長

・共通:自動車税環境性能割の廃止、軽油引取税の「当分の間税率」の廃止、国際観光旅客税の出国1回1,000円→3,000円への引上げ

個人に影響がある税制改正ポイント

① 所得税の変更点:税率・控除の見直し

個人にとって最大の改正は、所得税の基礎控除と給与所得控除の見直しです。物価上昇に連動して控除額を引き上げる仕組みが創設され、令和8年分の所得税では次のように適用されます。

・基礎控除:合計所得金額が2,350万円以下の個人について、控除額を4万円引き上げ(物価スライドにより58万円→62万円)。さらに合計所得金額655万円以下(令和10年分以後は132万円以下)の場合、基礎控除に上乗せの特例加算(令和8・9年分は合計所得489万円以下で42万円、489万円超で5万円、令和10年以後は37万円)

・給与所得控除の最低保障額:65万円から69万円に引上げ。さらに令和8・9年分は特例で5万円上乗せされ74万円(個人住民税は令和9・10年度分が対象)

給与所得者にとって、これらの見直しにより、所得税がかかり始める年収(いわゆる「年収の壁」)が178万円相当まで引き上げられます。源泉徴収税額表の適用は令和9年1月以降の給与等からで、初年(令和8年分)は月次の源泉徴収では対応せず、令和8年12月の年末調整から反映されます。
あわせて、ひとり親控除も拡充され、所得税は35万円→38万円、個人住民税は30万円→33万円に引き上げられます。

② 相続税・贈与税の改正:生前贈与の扱いはどうなる?

資産課税では、長年延長されてきた「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の取り扱いが大きな焦点です。

・教育資金一括贈与の非課税措置:当初の適用期限であった2026年(令和8年)3月31日をもって、予定どおり新規の取扱いは終了しました。すでに期限を過ぎているため、現在は新たな一括贈与の非課税信託等の契約を行うことはできません。なお、これまでに同制度を利用して拠出された資金の管理・払い出しの手続きについては、引き続き各金融機関で継続されます。

・固定資産税(新築住宅特例):床面積要件の緩和や災害ハザードエリアに係る立地要件の見直しを行ったうえで、適用期限を5年延長

なお、令和5年度改正で見直された「生前贈与加算」(暦年課税で相続開始前3年→7年に延長)の枠組み自体は引き続き有効で、令和6年以降の贈与から段階的に加算期間が延びていきます。

③ 住宅ローン控除・NISA・ふるさと納税の変更点

住宅と資産形成のテーマでは、次の改正が並びます。

・住宅ローン控除:既存住宅のうち省エネ性能の高い認定住宅・ZEH水準省エネ住宅の借入限度額を引上げ、子育て世帯への上乗せ措置の対象を拡充、床面積要件を緩和したうえで、適用期限を5年延長

・NISA(つみたて投資枠):口座開設可能年齢を0〜17歳に拡充。子(0〜17歳)の口座は年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円。次世代の資産形成支援の強化が狙い

・極めて高い水準の所得への適正化:追加負担の計算基礎から控除する特別控除額を3億3,000万円→1億6,500万円に引下げ、税率を22.5%→30%に引上げ

ふるさと納税については、令和8年度税制改正に直接の見直しは盛り込まれていません。ただし2025年10月から「返礼品ポイント付与」の禁止が始まったため、寄付先の選び方は実質的に変わっています。

企業に影響がある税制改正ポイント

① 法人税:大胆な設備投資の促進措置と研究開発税制の拡充

企業向けの目玉は、新設される「特定生産性向上設備等」(仮称)に係る設備投資促進措置です。

・対象:令和11年3月31日までに、投資計画における生産性向上設備等の取得価額の合計が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)かつ年平均投資利益率15%以上等の基準に適合し、経済産業大臣の確認を受けた設備

・優遇内容:確認日から5年以内に取得した場合、即時償却または税額控除(取得価額の7%、建物・建物附属設備・構築物は4%)の選択適用

・注意点:税額控除における控除税額は当期法人税額の20%が上限。予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応する計画として認定を受けた場合、控除限度超過額は3年間の繰越しが可能

研究開発税制も拡充されます。AI・量子・バイオなど戦略分野の試験研究費を対象とする「戦略技術領域型」が新設され、税額控除率は40%(重点産業技術共同研究開発機関との共同・委託研究は50%)、控除上限は当期法人税額の10%となります。

② 中小企業向けの税制優遇措置の見直し:賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、令和8年度から段階的な見直し・廃止が進められています(2026年5月時点)。

・大企業向け措置:2026年(令和8年)3月31日をもって廃止済み

・中堅企業向け措置:適用要件・税額控除率を見直したうえで、2027年(令和9年)3月31日の適用期限をもって廃止予定

・教育訓練費に係る上乗せ措置:2026年(令和8年)3月31日で廃止済み

中小企業向け本則の措置は当面継続される見込みですが、現行の優遇を活用している企業は、適用状況と今後の見直し内容を税理士と確認しておくと安心です。法人事業税の付加価値割における雇用者給与等支給額の控除措置も、賃上げ促進税制の見直しに合わせ、適用対象から大企業を除外する等の見直しが行われています。

③ インボイス制度の経過措置と適用範囲の見直し

インボイス制度については、これまでの「2割特例」終了と、その後の経過措置の延長が中心です。

・2割特例の終了:令和8年9月30日で適用終了

・個人事業者向け3割特例:2割特例終了後の令和9年分・10年分について、納税額を売上税額の3割とできる措置を2年間設ける(個人事業者限定)

・免税事業者からの仕入の経過措置:最終的な適用期限を2年延長。控除割合の引下げペースを緩和(令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月〜令和13年9月は3割)。免税事業者ごとの年間適用上限仕入額は1億円(現行10億円)に引下げ

個人事業者は、令和9年分以降も3割特例で簡易に申告できる選択肢が残ります。法人・大規模事業者は、令和8年10月からの7割措置に向け、取引先のインボイス対応状況の整理が引き続き必要です。

消費税・社会保険料の変更点

消費税率や軽減税率の見直しはあるのか?

令和8年度税制改正で、消費税率や軽減税率本体の改正は予定されていません。ただし、消費課税の周辺では次の見直しが行われます。

・国境を越えた電子商取引:1万円以下の少額輸入貨物の販売も消費税の課税対象に。国外事業者による国内販売や少額輸入貨物の販売については、プラットフォーム事業者に納税義務を転換する「プラットフォーム課税」を導入

・自動車関係諸税:自動車税等の環境性能割は2026年(令和8年)3月31日で廃止済み。軽油引取税の「当分の間税率」も2026年4月1日で廃止済み

・国際観光旅客税:出国1回につき1,000円→3,000円に引上げ

海外通販を利用する個人や、海外との取引・出張が多い事業者は、コストに直接影響する見直しです。

社会保険料の引き上げと家計・企業負担の増加

税制改正の枠組みとは別ですが、社会保険料の周辺でも家計・企業負担に直結する変化が続いています。

・子ども・子育て支援金制度:2026年4月から段階的に開始。会社員の支援金率は2026年度0.23%で、月収30万円なら月額345円の負担(厚生労働省試算)

・「130万円の壁」扶養認定ルール:2026年4月から、扶養認定を「労働契約上の年収見込み」で判定する取り扱いに変更。一時的な残業代を除いて判定できるように

・「106万円の壁」:パート・アルバイトの社会保険適用拡大に関する議論が継続中

税制改正と社会保険料改正は別の制度ですが、家計の手取りと企業の人件費負担はどちらの影響も受けるため、あわせて把握しておくと判断がしやすくなります。

税制改正による影響と対策

個人が取るべき節税対策

令和8年度改正の影響を踏まえ、個人が今押さえておきたいポイントです。

・年末調整への影響を確認:基礎控除の引上げは令和8年12月の年末調整で反映。月次の手取りは令和9年1月の源泉徴収から変化します。会社員はその時期に手取りが変わる点を理解しておきましょう

・住宅ローン控除の確認:認定住宅・ZEH水準の借入限度額引上げや子育て世帯の上乗せ拡充、床面積要件緩和の対象になるかを購入前に確認

・NISAの活用:子ども(0〜17歳)名義のつみたて投資枠が拡充。長期積立の選択肢として検討

・教育資金一括贈与の駆け込み利用:非課税措置は令和8年3月31日で終了予定。利用したい場合は期限と要件を確認

・ふるさと納税:2025年10月のポイント付与禁止を踏まえ、自治体・返礼品の選び方を見直すと無理のない活用ができます

企業が準備しておくべき税務戦略

企業(特に中小企業)が今動いておきたいポイントです。

・賃上げ促進税制:令和7年度内の適用状況を確認し、令和8年度以降の見直し内容を踏まえて翌期以降の賃上げ計画と税制の組み合わせを検討

・大胆な設備投資促進措置:大型の設備投資を計画している場合、対象基準(取得価額・投資利益率15%・経済産業大臣の確認)に該当するかを早めに検討

・研究開発税制:AI・量子・バイオなどの戦略技術領域に該当する研究開発を行っている企業は、新設の「戦略技術領域型」の活用を検討

・インボイス3割特例(個人事業者):令和9年分・10年分の申告で活用できる選択肢として、要件を確認

・免税事業者との取引:令和8年10月からの控除割合7割への移行を見越して、取引先のインボイス対応状況を整理

・年末調整事務:基礎控除・給与所得控除の見直しが令和8年12月の年末調整に影響するため、給与計算ソフト・社労士・税理士と早めに準備を進める

まとめ

令和8年度(2026年)税制改正の主なポイントを整理すると、次のとおりです。

・所得税の基礎控除・給与所得控除の引上げにより、年収の壁が「178万円」相当に拡大

・住宅ローン控除の拡充、NISAのつみたて投資枠拡大(0〜17歳)、ひとり親控除の引上げ

・教育資金一括贈与の非課税措置は令和8年3月31日で終了

・大胆な設備投資促進措置の創設、研究開発税制の「戦略技術領域型」新設

・賃上げ促進税制は大企業・中堅企業向けが段階的に廃止

・インボイスの2割特例は令和8年9月で終了、個人事業者向け3割特例を2年間新設

・自動車税の環境性能割・軽油引取税の当分の間税率を廃止、国際観光旅客税は1,000円→3,000円に

・防衛特別所得税(仮称)が令和9年1月から創設(復興特別所得税は1%引下げ)

税制改正は個人にも企業にも幅広く影響します。自社・ご自身に直接効く改正項目をリストアップして、年末調整・申告・設備投資・賃上げのスケジュールに反映していくことが大切です。判断に迷う場面は、税理士など専門家への早めの相談をご検討ください。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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