利益を「見える化」する ~大企業のノウハウ、
問題点を中小企業経営に活かす・その2~
利益を「見える化」する ~大企業のノウハウ、  問題点を中小企業経営に活かす・その2~

2019/3/4

 
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経営にも「王道」「定石」があるでしょう。しかし、「これは絶対だ」と信じていたものが、実は単なる思い込みに過ぎなかったら、業績の足を引っ張ることになってしまうかもしれません。吉野拓朗先生(吉野拓朗税理士事務所)は、「そうならないためには、利益の『見える化』が有効です」と言います。今回も、事例を含めてお話しいただくことにします。

調べて分かった利益の実態

どこが儲かっているのか、反対に赤字になっているのか、実はよくわからずに仕事をしている経営者も多いのではないでしょうか。
それは、中小企業に限ったことではありません。今回も、生活消費財のメーカーへ携わった事例からお話ししましょう。
 消費者向けの製品をつくっていたそのメーカーの販売チャネルは、大きく分けると普通の小売りと販売機器の2つがありました。後者は、定価で売れるし、時々商品を補充しておけば、お客さまが勝手に買っていってくれる。当然、利益率が高いはずだ、売れたら売れただけ利益が上がる、とみんなが思っていたんですよ。
そうではなかったのですか?
「時々商品を補充しておけば」と言いましたが、考えてみれば、それにも「人手」がかかっています。当然、コストが発生しているわけで、「トータルに見た時に、実際のところどれだけ儲かっているのだろう?」という話になったのです。
 そこで、プロジェクトを立ち上げて、調べてみることにしました。商品補充のための人件費のほか、それに必要な車両代や、もちろん機器自体のコストなどもエリアごとに計算し、集計したんですね。そうしたら、「儲けはどれくらい」どころか、販売機器全体で年に何億円もの赤字を垂れ流していることがわかったのです。
販売の優等生だと思っていたら、とんでもなかった(笑)。
「けっこう厳しいかも」という予想もあったのですが、まさかこれほどとは、という数字でした。それだけに、社内では「嘘だろう」とさんざん言われもしましたよ。調査と、その結果に社内の理解を得るために、やはり1年ほどかかりました(笑)。
思い込みは怖いですね。
結果を踏まえて、取り組んだのは、1つは販売機器と営業拠点をオンラインで結ぶことによる、補充作業の合理化。商品の減り具合が事前に把握できるので、作業時間、人員の削減が可能になりました。もう1つは、単純に、利益の上がっていない機器の撤去です。
 そうした具体的な対策を講じることができたのも、利益の実態が明らかになったから、利益の「見える化」ができたからに他なりません。

キーは「人件費」にあり

もちろん、それは中小企業にとってもものすごく大事なことなんですね。
 これは現在進行形なのですが、花屋さんを経営するお客さまに対して、対策を進めている案件があります。奥さまが店舗販売を担当し、ご主人はイベント用の花飾りを受注して、現場に訪問して制作する、という事業をなさっています。
そのケースでの「見える化」のポイントは、何ですか?
ご主人の仕事がどれくらい利益を上げているのか、どうしたら伸ばせるか、です。イベント用の花は、普通にお客さん相手に売っているのと違い、1回受注すれば、まとまった売り上げにはなります。半面、ご主人が費やす時間や労力は、普通に店で花を売っているのとは違います。使う花の量や種類も多い。
そのぶん、コストもかかっているわけですね。
1日に回れる件数も限られますから、しっかり利益を取っていかないと、逆に経営の圧迫要因にもなりかねません。まずは、そうした実態をはっきりさせるべく、分析を進めているところです。
 ともあれ、ご主人は、今の仕事にすごくやりがいを感じていらっしゃるんですよ。仮に利益率が思わしくなかったような時には、その対策も講じつつ、将来的には弟子を取って事業を拡大していくような方向性も考えていきましょう、という話もしています。
事業の本当の姿を知ることで、将来の夢も開けるということですね。
 ところで、先生はお客さまにお話のような利益面でのアドバイスをしようとする時、その会社のどこに注目するのですか?
やはり、第一に人件費ですね。それ自体に削減の余地があるかどうかという点ももちろん大事ですが、例えば前段の事例の車両費のように、人の動きには必ずいろんな経費がつながってくるわけです。それらを、これは営業にかかわる経費、このシステム使用料は管理の経費、というようにグループ分けをしていく。
なるほど。まさに「見える化」です。
そうすると、「営業にこれだけ経費を使っていたら、利益が上がらないのも無理はない」といった会社の実情を明らかにできるんですね。中小企業の場合には、会社の中で1人が何役もこなしている場合も多いので、作業に工夫が必要ですが、いろいろ絡まっているものを解きほぐしてみる意味は大きいと感じます。
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