あなたの会社の社員数
適正水準の要点は「平均年収」にあり
あなたの会社の社員数  適正水準の要点は「平均年収」にあり

2019/10/10

 
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「人を増やしてほしいと現場から突き上げられている」「満足のいく給料が払えず、社員が辞めてしまう」――。中小企業にとって、「人の問題」はますます重要かつ深刻です。ただし、そもそも何人の社員を雇うのが合理的なのか、意識して経営している人が、どれだけいるでしょうか? 税理士法人ウィズの橋本秀明先生は、「社員数には適正水準があります。ただし、それは会社によって異なるのです」と言います。その“極意”をお話しいただきましょう。

社員の数、「なんとなく」で決めていませんか?

前に、人を2人増やそうか3人にしようか迷っていた社長が、たまたま人件費をテーマにした私の講演を聞きに来て、結局2人に決めた、という事例がありました。「結果オーライだった」と喜んで、その後、当事務所のお客さまになってくれたのですが。
2人にした判断基準は、どういうものだったのでしょう?
ひとことで言えば、「その会社の適正な社員数は何人か」というのを会計的に割り出して、それをベースに検討したんですね。その社長は、実際に自社の決算書を見ながら、自分で判断したのです。
そういう場合、普通は「経験と勘」でなんとなく決められているような気がします。
その通りだと思います。例えば、社員が辞めたような場合には、「社長、忙しいから人を入れてください」と現場から言われるままに、とりあえず補充する。あるいは、同業の同じ規模の会社がこうだから、とあまり深く考えずに人を採る。そうした発想や行動が、むしろ普通だと言えるかもしれません。

しかし、当然のことながら、新しく社員を雇えば人件費が増えて、財務を「圧迫」します。右肩上がりの時代ならともかく、過剰な人件費を抱える余裕は、多くの中小企業にはないでしょう。

とはいえ、必要な人員を確保しなければ、事業の成長はおぼつかない。
そうです。同時に、人件費を節約したいからといって、ちゃんとした給料が支払わなければ、人を採用したくてもできません。社員の数は、こうした「方程式」を解きながら考えていくべきものなのです。
なるほど。その答えが、先生の言う「会計的に計算した社員数の適正水準」なのですね。その「公式」を教えてください。
実は、それは「一般公式」ではないのです。会社によってそれぞれに合った適正水準がある、というのが正確でしょう。

大事なのは「社長の思い」

「会社に合った適正水準」というのは?
順を追って説明しましょう。まず念頭に置くべき一般公式として、「労働分配率」があります。粗利(限界利益(※))のうちのどれだけを人件費に回すのか、という指標ですね。これは、会社の規模や業種などによって、大まかな適正水準、平均値が示されています。例えば、その数値を大きく上回っていたら、人件費をかけ過ぎているということになるわけです。
実際、それが原因で潰れた会社がたくさんあります。
その労働分配率から逆算すれば、今の社員数、給与水準を維持するためには、どのくらいの粗利を確保する必要があるのかがわかります。例えば「新規事業のためにどうしても3人雇用したい。そのために、利益をこれだけ伸ばしていこう」「当面、利益の伸びは期待できないけれど、給料は上げたい。ならば社員数を減らそう。かといって首切りはできないから、辞めた社員を補充するのは控えよう」と、人件費に関して、数字の裏付けを持った戦略的な思考ができるようになるんですね。
「経験と勘」に頼るのとは、大違いです。
そのときにもう1つ大事になるのが、「社長の思い」だと私は考えています。具体的には、「社員の平均年収をどのくらいに設定するか」ということです。人件費の総額が同じでも、平均年収400万円と600万円では、雇える人数は変わりますよね。「会社に合った適正水準」というのは、そういう意味なのです。
人件費を「事業を成長されるためのコスト」とばかり考えるのではなく、社員の立場に立って見つめ直してみることが必要だ、ということですね。
単純に高ければいいと言うのでは、もちろんありません。ただ、多くの場合、「世間相場はこのレベルだから」「このくらい出さないと、来てはくれないだろう」という発想で、月々の給料を決めているというのが、実情ではないでしょうか。社員の平均年収にまで思いが至っている経営者は、正直そう多くはないと思います。でも、それでこの人手不足、売り手市場の時代に、思うような人材を採用し、戦力として定着してもらえるのかと考えると、非常に心もとない気がするのです。
労働分配率というモノサシに、「社長の思い」を加味して考える。最初の社長さんのエピソードのように、実践するのはそう難しくないように感じます。
※限界利益 売上高から変動費を差し引いた数字。

橋本秀明(税理士)プロフィール

税理士法人ウィズ 代表税理士
20代前半で税理士試験合格、平成17年に現法人を設立。顧問先の95%以上は中小のオーナー企業。『日本の中小企業経営者と共に100年企業を創造し、地域社会に貢献する。』をミッションに、情報発信だけに留まらず、きめ細やかな気遣いを大事にしながら、会社経営を税務と財務の面からサポートしている。
URL:http://www.z-with.or.jp/

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