入るべきもの、入ってはいけないもの
「社長の生命保険」について考える
入るべきもの、入ってはいけないもの  「社長の生命保険」について考える

2019/10/11

 
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法人税の節税対策や、退職金の積み立てなどの目的で、中小企業の経営者が生命保険に加入するのは珍しくありません。ただ、中には「節税になる」という言葉につられて、会社にダメージを与えるような「入り方」をしているケースもあるようです。反対に「絶対に入っていてほしい」保険と併せて、税理士法人ウィズの橋本秀明先生にお話をうかがいました。

「お金がない」が口癖の社長

他の会計事務所から当事務所に顧問を変更されたお客さまに、「とにかくお金がないんです」とこぼす社長がいました。小売業をなさっていたのですが、業績は悪くないし、大きな借金をしていて返済に四苦八苦しているわけでもありませんでした。

そこでよくよく調べてみると、社長と役員である奥さんがたくさんの生命保険に加入していて、その保険料が会社の財務に大きく響いていることがわかったのです。「どうしてこんなに保険に入っているのですか?」と聞いたら、「前の税理士さんに、節税しながら退職金が積み立てられるから入りなさい」と勧められたそう。

会社のお金で保険料を払っていくわけですね。ところが、言われるままに加入していたら、経営を圧迫するほど、その保険料がかさんでいた。
確かに、保険料の一部または全部を損金に算入することができますから、目先の法人税の減税効果はあります。「解約返戻金」のある貯蓄型の保険に入れば、返戻率がピークのタイミングで解約し、退職金を支給することにより解約返戻金と相殺されて課税されません。それだけ聞けば、「できるだけ入っておこう」と考えるのも、わからないではありません。

でも、その会社の場合は、保険料の支払額が明らかに会社の体力に見合っていなかったのです。社長が「お金がない、お金がない」と嘆くのも、当然のレベル。

退職金は大事だけれど、そのために肝心の事業が傾いてしまったのでは、元も子もありません。
保険料に限らず、「会社は、それに今いくら払えるのか、払っていいのか」がピンときていない経営者の方は、少なくないと感じますね。その感覚がないので、税理士に「将来の蓄えが必要でしょう」「節税になりますよ」と言われたりすると、疑問に思わずに契約してしまうわけです。
今のケースでは、保険料が会社の経営を圧迫していることが明らかになりました。先生は、どうされたのですか?
すぐに保険の見直しに着手しました。要は「リストラ」です。今のような状況を説明し、「将来の退職金よりも、今の経営が大切」ということを理解していただいたうえで、「不要な」保険は切りました。解約返戻金は払い込んだ保険料を大きく下回りましたが、月々の支払いは、以前の1/10くらいに減ったんですよ。キャッシュフローも大きく改善しました。

絶対に必要な保障とは?

保険料が1/10に!? どれだけ過剰な保険契約をしていたのかが、よくわかりますね。ただ、全部の保険を解約したわけではないのですね?
私は、「社長は生命保険に入るな」と言っているのではありません(笑)。逆に、「この保険には入っておきましょう」と勧めることもあるのです。絶対に必要なのは、「社長の家族や後継者に金銭的な負担を負わせないための保険」です。
具体的には?
会社が銀行からお金を借りる時には、原則として社長が個人で連帯債務保証しますよね。会社が倒産したりしたら、社長個人が会社の借金を弁済しなくてはならないのです。その社長の「負債」は、社長が死んだら相続人が引き継がなくてはなりません。
マイナスの財産も相続の対象ですから。
最近、こんな事例がありました。少し前から体調を崩していた社長が亡くなり、予定よりも早く息子さんが会社を引き継ぐことになったんですね。社長には、数千万円の保証債務がありました。でも、その額と相応の死亡保険金が支払われる生命保険に加入していたために、債務は消えました。息子さんは、晴れて無借金状態で会社を引き継ぐことができたんですよ。

これはまさに成功例で、逆にここを見落としていると、次期社長が大きな負担を抱えたままスタートしなければならなくなるわけです。この生命保険は、さきほどの貯蓄型のものではなく、とにかく死亡保険金が出る掛け捨てタイプのもので十分。保険料も安くて済むでしょう。

銀行に個人保証をしている社長は、必須と言えますね。
そこは文字通り、会社の責任で「保険をかける」必要があります。貯蓄型だけに加入している人には、こちらの優先度のほうが高いことを説明し、やはり保険の見直しを勧めています。

情報発信している税理士を

それにしても、前段の例では、本来お客さまの資金をどうやって増やしていくのかに知恵を絞るはずの税理士が、結果的に真逆のアドバイスをしていたことになります。
そうですね。何のための保険なのか、何のための節税なのか、節税ありきの判断は結果として資金繰りを悪くすることをアドバイスするのも税理士の役目だと思います。
残念ながら、税理士であればみんなが「役に立つ」とは、言えない現実があります。いい先生を選ぶには、どんなところに着目したらいいとお考えですか?
税理士自身の口から言うのは、難しいですね(笑)。今の保険の話に引きつけて言うと、「これに入りなさい」ではなく、いろんな選択肢を示したうえで、考えさせてくれる、まずは、社長の話をよく聞いてくれる税理士が、相談しやすいかもしれません。

あとは、ホームページやニュースレターなどを通じて、積極的に情報発信している事務所。そういう行動は、「なんとかお客さまのために役立ちたい」という気持ちの表れである場合が多いように感じます。

橋本秀明(税理士)プロフィール

税理士法人ウィズ 代表税理士
20代前半で税理士試験合格、平成17年に現法人を設立。顧問先の95%以上は中小のオーナー企業。『日本の中小企業経営者と共に100年企業を創造し、地域社会に貢献する。』をミッションに、情報発信だけに留まらず、きめ細やかな気遣いを大事にしながら、会社経営を税務と財務の面からサポートしている。
URL:http://www.z-with.or.jp/

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