支払う税金はできるだけ少なく、そして何よりも円満な相続にしたい――。税理士に相続について相談する人は、みんなそう願っているはず。では、アドバイスを送る側は、最良のサービスを提供するために何を考え、依頼者にどう接しようと思っているのでしょうか? 今回は、そんな税理士さんの心情を、税理士法人経世会の筒井亮次先生にうかがいました。
よりよい相続のために、
プロが心掛けていること
2017/6/13
相続は、身内同士が骨肉の争いを繰り広げて、場合によっては絶縁状態になってしまうところが、怖いですよね。
単に仲が悪くなるだけなら、まだましかもしれません。けっこうあるのが、父親が経営していた事業を長男に譲ったのに、その相続が揉めた結果、父親の持っていた自社株が他の兄弟たちなどにも分散してしまうような事態です。会社の株主総会で何かを決めようと思えば、株を保有する他の兄弟の賛同を得なくてはなりません。しかし、相続の後遺症で、お互いは犬猿の仲。こうなると、長男は株主対策にかかりきりで、肝心の経営が疎かになってしまうわけです。相続は、そういう「実害」を招く危険性も秘めているんですよ。
さきほど、揉め事は未然に防ぐのが肝要で、そのために遺言書の作成が必要だとお話ししました。いったん話し合いがこじれ始めると、だんだん修復が難しくなっていき、そうなるともはや私たち税理士の手には負えなくなってしまいます。
調停とか、最悪、裁判で決着をつけるという方向に行くかもしれませんね。そうならないために、相談を受けた時に特に心がけていることはありますか?
特別なことではないのですけど、私の場合は、自分がでしゃばってどうこうしようというよりも、とにかくお客様の話をよく聞くことを心掛けているんですよ。例えば、被相続人の財産の中身を正確に把握しなかったら、私たちの仕事は成り立ちません。でも、そのためには、お客様に資産の細かな部分まですべてお話しいただく必要があります。こちらが「お聞きしますよ」という姿勢に徹することで、そういうやり取りもスムーズに進むと思うのです。
逆に言うと、信頼できる税理士さんが見つかったら、資産については初めから包み隠さず正確に伝えることが、相続対策を円滑に進めるコツと言えそうです。
お客様の話を聞いていると、いろんなことがみえてきます。以前、「愛知の人はストレートにものを言う」と話しました。そんなふうにやり合っていても、実はお互いの利益は侵しておらず、単にコミュニケーションが取れていないだけだったりすることもあります。そんな時には、絡んだ糸をほぐすようにして、話し合いを落ち着かせることもできるんですね。
反対に、たまった憤りを他の相続人にぶつけることができずに、悶々としている人もいます。そういう方が、「聞き役」の私に対して憤懣を吐き出すことで、冷静さを取り戻して協議の場に戻ったりということも、よくありますよ。相続人同士の話が円満に進むのなら、私はノープロブレム(笑)。
お話をうかがって、「こちらの話を親身になって聞いてくれるかどうか」も、税理士選びの大事なポイントだと感じました。
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