不動産の「とりあえず共有」は危険。
「とりあえず未分割」という手もある
不動産の「とりあえず共有」は危険。  「とりあえず未分割」という手もある

2019/6/17

 
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相続の際に問題になりやすいのが、土地などの不動産です。現金と違って分けにくく、そもそも「いくら」なのかが簡単にわからない、という性質があるためです。ですから、相続人の間でなかなか折り合いがつかず、その結果、「じゃあ、とりあえず共有名義にしておこう」ということにもなりがち。しかし、これは後々重大な問題を起こしかねない、相続の“禁じ手”なのです。分けづらい不動産の相続にどう対処すべきなのか、この分野に詳しい中島宜秀先生(税理士法人けやきパートナーズ)にうかがいました。

その場は「平等」でも、将来に向かって「矛盾」が拡大

「相続財産である不動産を、子どもたちの共有にしてはいけない」というのは、相続の鉄則と言えます。
あらためて、不動産を複数の人間の共有名義にした場合にどんな不都合が生じるのか、解説をお願いします。
1つの不動産を数人が共同して所有するのが、「共有」です。自分の他にも所有者がいるのですから、その行為はさまざまな制約を受けることになるんですね。例えば、不動産を第三者に貸そうと思ったら、共有者の持ち分価格の過半数の同意が必要です。ただし、土地の賃貸で5年、建物の賃貸で3年を超える場合には、全員の同意が必要になります。不動産の売却や建物の建て替えなども、全員が賛成しないとできません。せっかく不動産を相続しても、「使い勝手」は非常によくないわけです。

加えて、将来的に所有者が増えていくという懸念も強い。例えば、3人兄弟が1/3ずつの持ち分で相続した不動産は、彼らが亡くなれば、その子どもが相続することになります。それぞれ2人ずつ子どもがいて、みんな対等に受け継いだとしたら、持ち分1/6ずつの共同所有者が6人誕生。そうやって、所有は細分化していく危険性があるのです。

実際、所有者が何十人にも膨らんで、にっちもさっちもいかなくなった土地の話を、時々耳にします。
遺産分割協議において、折を見て不動産を売却して代金を分けるとか、共有物分割してそれぞれの単独名義に書き換えるとかの合意ができているのなら話は別でしょう。しかし、「まとまらないから、とりあえず共有にしておこう」という判断は、NG。今お話ししたデメリットを、よく考えてもらいたいと思います。

「あえて協議を急がない」という選択肢

ただ、「ではどうするか」という答えがなかなか見つからない、そうこうするうちに、「被相続人が亡くなってから10ヵ月以内」という相続税の申告期限が迫ってきた、というようなことも、現実にはあるのではないでしょうか。
だから「とりあえず」という発想になったりするのですが、そこでいったん、「何が一番重要なのか」ということを整理してみる必要があると思うんですよ。土地などの不動産を相続する場合、「名義変更しなくては」「登記が必要だ」と、共有にしろ単独所有にしろ、まずそちらに頭が行くことが多くないですか?
確かにそうですね。とにかく、そのままにしておいてはまずい気がします。
でも、登記を急がないでもよいケースもあります。例えば、相続税が発生しないようなケースでは相続税の申告期限を気にする必要がなくなります。もっと言えば、共有名義というあまり好ましくない登記をするくらいなら、それを先延ばしにして、打開策を検討した方がいい場合もあるということです。具体的には、あえて不動産は「未分割」にしておいて、相続税の支払いが必要ならばいったん支払ったうえで、協議を続行するのです。
もちろん、借入をしている場合には金融機関との関係も出てきますし、また、期限を気にしなくなるだけに、先延ばしにしてしまうといったことも考えられるため、あくまでも1つの手段と考えてもらった方がいいかと思います。
「未分割」というのは、相続人による遺産分割協議が整わない状態のことですね。ただ、未分割で申告した場合には、配偶者控除(※1)や小規模宅地等の特例(※2)を受けることができませんよね。
そうです。ですから、納税面ではデメリットが生じるかもしれません。ただし、申告期限から3年以内に協議が整えば、あらためて申告を行うことにより、それらの特例を受けることもできます。要するに、払い過ぎた税金があれば、返してもらえるのです。
不動産が未分割ということは、その名義は亡くなったお父さんのままということ。ずっとそのままの状態で放置することは許されませんが、分割協議の間そのままにして、結論が出てから名義変更の登記を行うということについては、何ら問題はありません。
先生がおっしゃった「一番重要なこと」というのがよくわかりました。それは、登記を急ぐことではなく、話し合いのための時間を確保して、不動産の共有という禍根を残しかねない相続を極力避ける道を探る、ということなんですね。
その通りです。
※1 相続税の配偶者控除
配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が1億6000万円まで、それを超えても法定相続分までは課税されない制度。
※2 小規模宅地等の特例
親と同居しているといった一定の要件を満たす相続人は、相続の際の自宅の土地の評価額を80%減額できることなどを定めた特例。

中島宜秀(税理士)プロフィール

税理士法人けやきパートナーズ 代表社員
2008年に税理士登録。相続税・贈与税などの資産税に特化し、相続対策に強みを持つ資産税のプロフェッショナル。現在は資産税と法人監査を両軸に、税務・会計以外の各種相談業務も行い、お客様目線に立った対応を心掛けている。
URL: http://www.keyaki-pt.com/

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