災害や盗難による損失は「雑損控除」できる
「振り込め詐欺」で取られたお金は?

災害や盗難による損失は「雑損控除」できる  「振り込め詐欺」で取られたお金は?
公開日:
2019/12/18
 
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例えば地震や台風などの災害で家や家財が損害を被った場合、所得税の「雑損控除」で、損失の一部を取り戻せることをご存知でしょうか? 被害を受けたのが日常生活に必要な資産であるといった要件を満たせば、税金計算のベースになる所得から一定金額を差し引くことで、支払う税額を減らすことができるのです。ところで、この雑損控除は、盗難や横領による損失も対象となります。ならば、「振り込め詐欺」で犯人に渡してしまったお金は、戻ってくるのでしょうか? 控除の対象、計算方法などを解説します。

対象は、自然災害に限らない

雑損控除は、医療費や社会保険料控除と同様、所得から一定の金額を差し引くことが認められた「所得控除」で、その対象となる災害などは、次の5つと定められています。

 

  • (1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  • (2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  • (3)害虫などの生物による異常な災害
  • (4)盗難
  • (5)横領

 

(1)自然災害や(2)火災の損失が控除されるのには、「なるほど」という印象を持つのではないでしょうか。(3)は、具体的には、シロアリ被害の損失や、スズメバチなど危険生物の駆除費用などを指します。

 

(4)盗難や(5)横領による損失も対象になることには、やや意外な感じがあるかもしれません。被害に遭った場合には、確実に控除の手続きを取りましょう(方法は後述します)。ちなみに、本人の知らないところでキャッシュカード情報を盗まれ、現金を引き出されてしまうスキミングや、ネットバンクのハッキング被害なども、ここに含まれます

 

ただし、詐欺や恐喝による損失は、雑損控除の対象にはなりませんから、注意が必要です。犯罪被害者であることに変わりはないのですが、「騙され」たり「脅され」たりしたにせよ、「自らお金を渡した」という点が横領などとは違う、と解釈されるのです。残念ながら、依然としてなくならない「振り込め詐欺」や「還付金詐欺」のような「特殊詐欺」の被害は、税の面からは救済されません

ぜいたく品や事業用資産は認められない

では、どんな人や資産が雑損控除の対象になるのでしょうか?

 

要件の1つ目は、「損失を受けた資産の所有者が、納税者本人か納税者と生計を一にする(※1)配偶者やその他の親族で、その年の給与所得金額などが38万円以下の人」であること。言い方を変えると、納税者だけでなく、その配偶者や扶養家族の受けた被害も控除の対象になるわけです。

 

ただ、同時に「棚卸資産若しくは事業用固定資産、または『生活に通常必要でない資産』のいずれでもない資産であること」が必要です。「生活に通常必要でない資産」とは、別荘、ゴルフ会員権、貴金属や骨とう品など1個または1組30円超のものを指します。雑損控除は、あくまでも「生活に必要な資産」の損失をフォローする制度であるため、事業に関係する資産や「ぜいたく品」などは、その対象外とされるのです。

 

※1生計を一にする(生計一)
「日常の生活の資を共にすること」(国税庁ホームページ)。同居していなくても、生活費、学資金、医療費などを常に送金している場合などには、税法上「生計を一にする」とみなされる。

「災害などに関連する支出」も控除の対象に

次に、計算方法をみていくことにします。キーワードは、「差し引き損失額」です。

 

災害や盗難などに備えて保険に加入していた場合には、保険金が支給されます。損失額から保険で支給された金額を引いた分、要するに保険金ではカバーしきれなかった金額(該当する保険に未加入ならば全額)が「差し引き損失額」で、この数字が雑損控除の計算のベースになるのです。

 

なお、この場合の損失額には、(a)「損害金額」だけでなく、(b)「災害関連支出の金額」も加えることができ、計算式は

 

「差し引き損失額」=(a)+(b)-保険金などにより補填される金額

 

となります。

 

(a)は、資産取得時の金額ではなく、「損害を受けたときの直前の時価」を基に計算することになっています。資産が減価償却(※2)資産の場合は、「取得価額-減価償却費累計額相当額」を基に計算することもできます。

 

(b)は、「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とされています。例えば、災害や火災で損壊した家や家財を取り壊したり、廃材を除去したりする費用や、その後の被害拡大を防止するための費用と考えてください。

 

以上を踏まえ、雑損控除の金額は次の(1)、(2)で計算します。そのいずれか多い方の額を控除することができます。

 

  • (1)差し引き損失額-総所得金額等×10%
  • (2)差し引き損失額のうち災害関連支出の金額-5万円

 

※2減価償却
建物、機器、設備などの固定資産は、年々価値が減少していく。その目減り分を費用として計上すること。

控除を受けるためには、確定申告が必要

ありがたい制度ではありますが、雑損控除で損失を取り戻すためには、確定申告が必要になります。年末調整では控除されないので、サラリーマンの方は注意してください。

 

確定申告では、申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、さきほど説明した「災害関連支出」についての領収書を添付、提示することが求められます。給与所得がある場合には、併せてその源泉徴収票の原本を添付します。

 

なお、損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれないときには、最長3年間繰り越して、各年の所得から控除することができます。

まとめ

災害や盗難による損失は、所得税の雑損控除によって、取り戻すことができます。ただ、控除の対象になるのかの判断、いくら取り戻せるのかの計算は、一般の人には難しい面も。制度を有効に活用するためにも、対象になりそうな場合には、専門の税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

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